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第23話
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こう着した状態が続くために、編集長は自分たちの事情を話す事にする。
「表向きは怪異事件の取材ということで取材旅行の申請を出しているけれど、本音としてさっきも言った通り、本件を解決してしまいたいのよ。犯罪率が下がったとはいえ、街の人は安心して暮らせないし、それに……」
「それに?」
編集長の言葉を少し言いよどませると、部長がつられたように反応する。
「昨夜は命知らずが突撃してね、一人が重傷、一人が重体となっているわ。いるのよね、興味本位で度胸試しをして地獄を見る連中って……」
「そうか、珍しくバイクの音が聞こえるなと思ったら、そういうことなのか」
この時の部長は苦虫を噛み潰したかのような険しい表情をしていた。自分の兄や兄の先輩の事が頭をよぎったからだ。
「大通りで転倒したバイクが見つかったってニュースが出てるな」
「あら、本当だわ」
編集長の話を聞いた勇人がスマホでニュースを見つけたようだ。都は震えながらもそのニュースを覗き込んでる。
「襟峰市は怪異事件で夜中は人が出歩かない、車もほぼ走らない、信号も意味をなさないとあって、暴走族連中からは密かに注目を集めていたみたいよ。それが暴走した結果が、その記事というわけだね」
「なるほど、ってことはあいつらは高速で走るバイクですら標的にできるってわけか」
勇人はそういいながら、あまりの恐ろしさに身震いをしていた。
だが、ここで編集長が話を止める。
「む、どうしたのかな」
「周りが聞き耳を立てているようだ。これ以上はここで話をするには危険なようだな」
編集長の言葉で周りを見ると、ちらちらと視線を送ってくる姿が見えた。
部長たちはそれに同意すると、黙々と食事を済ませてファミレスを後にしたのだった。
場所を移動して、キャンピングカーの中で座る五人。さすがにここまでの人数は想定していなかったのでかなり狭い。
だが、プライベートな空間を維持するにはここで話すしかなかったのだから仕方がない。
「さて、改めて君たちに問おう。あの家の近くに居たということは、君たちも怪異事件を追っているということで間違いないな?」
「ああ、そうだ。私は、兄に大けがをさせた犯人を追っているんだ」
「部長?!」
編集長の問い掛けに答えた部長の発言に、勇人と都が驚いている。初耳なのだ。
「ふむ……、君のお兄さんも怪異に襲われたのか。大けがといっているということは、ご存命ということでいいのかな」
編集長が問い掛けると、こくりと部長は頷いた。
その様子を見ていた勇人と都は、部長がこの件にやけにご執心になっていることに納得がいった。身内が酷い目に遭ったのだ。ならばその原因をはっきりさせたいというの気持ちは、つい抱いてしまうものなのだ。
「パソコンはあるか?」
部長が編集長と男に問い掛ける。
「ああ、いつでも記事が書けるように持ち歩いている」
「貸してくれ」
「おいっ」
男がノートパソコンを取り出すと、部長はそれを奪い取るように手に取る。そして、起動させてとあるページを表示させた。
それは、部室で勇人と都に見せたあの画面だった。
「私の執念で調べ上げた怪異事件の発生場所と時間を記した地図だ。よく見てくれ」
部長が普段見せることがないような表情と気迫で編集長たちに話し掛けている。その言葉に反応して、編集長たちが画面を覗き込む。
「おいおいおい、これは面白いことになってるな……」
「よく調べ上げたもんだな。警察だって簡単に教えてくれないだろうに」
「それはちょっと伝手があってね。……とりあえずそれはどうでもいい。その反応を見ると編集長とかいうあんたは、何かを悟ったようだな」
部長が編集長に視線を向けて、強い口調で尋ねている。
「ああ、分かるとも。私たちが出くわした住宅街……。あそこが事件の中心というわけか」
編集長の口角が上がっていく。記者としての血がうずき始めたのだ。
「気に入ったぞ。君たちも子どもだけでは不安だろう。私たちがしっかりとサポートしてやろうではないか、なあ」
(ああ、また編集長の悪い癖が……)
ここに思わぬ協力体制ができたのだが、部長と編集長以外はちょっと距離を取っているようだった。
「表向きは怪異事件の取材ということで取材旅行の申請を出しているけれど、本音としてさっきも言った通り、本件を解決してしまいたいのよ。犯罪率が下がったとはいえ、街の人は安心して暮らせないし、それに……」
「それに?」
編集長の言葉を少し言いよどませると、部長がつられたように反応する。
「昨夜は命知らずが突撃してね、一人が重傷、一人が重体となっているわ。いるのよね、興味本位で度胸試しをして地獄を見る連中って……」
「そうか、珍しくバイクの音が聞こえるなと思ったら、そういうことなのか」
この時の部長は苦虫を噛み潰したかのような険しい表情をしていた。自分の兄や兄の先輩の事が頭をよぎったからだ。
「大通りで転倒したバイクが見つかったってニュースが出てるな」
「あら、本当だわ」
編集長の話を聞いた勇人がスマホでニュースを見つけたようだ。都は震えながらもそのニュースを覗き込んでる。
「襟峰市は怪異事件で夜中は人が出歩かない、車もほぼ走らない、信号も意味をなさないとあって、暴走族連中からは密かに注目を集めていたみたいよ。それが暴走した結果が、その記事というわけだね」
「なるほど、ってことはあいつらは高速で走るバイクですら標的にできるってわけか」
勇人はそういいながら、あまりの恐ろしさに身震いをしていた。
だが、ここで編集長が話を止める。
「む、どうしたのかな」
「周りが聞き耳を立てているようだ。これ以上はここで話をするには危険なようだな」
編集長の言葉で周りを見ると、ちらちらと視線を送ってくる姿が見えた。
部長たちはそれに同意すると、黙々と食事を済ませてファミレスを後にしたのだった。
場所を移動して、キャンピングカーの中で座る五人。さすがにここまでの人数は想定していなかったのでかなり狭い。
だが、プライベートな空間を維持するにはここで話すしかなかったのだから仕方がない。
「さて、改めて君たちに問おう。あの家の近くに居たということは、君たちも怪異事件を追っているということで間違いないな?」
「ああ、そうだ。私は、兄に大けがをさせた犯人を追っているんだ」
「部長?!」
編集長の問い掛けに答えた部長の発言に、勇人と都が驚いている。初耳なのだ。
「ふむ……、君のお兄さんも怪異に襲われたのか。大けがといっているということは、ご存命ということでいいのかな」
編集長が問い掛けると、こくりと部長は頷いた。
その様子を見ていた勇人と都は、部長がこの件にやけにご執心になっていることに納得がいった。身内が酷い目に遭ったのだ。ならばその原因をはっきりさせたいというの気持ちは、つい抱いてしまうものなのだ。
「パソコンはあるか?」
部長が編集長と男に問い掛ける。
「ああ、いつでも記事が書けるように持ち歩いている」
「貸してくれ」
「おいっ」
男がノートパソコンを取り出すと、部長はそれを奪い取るように手に取る。そして、起動させてとあるページを表示させた。
それは、部室で勇人と都に見せたあの画面だった。
「私の執念で調べ上げた怪異事件の発生場所と時間を記した地図だ。よく見てくれ」
部長が普段見せることがないような表情と気迫で編集長たちに話し掛けている。その言葉に反応して、編集長たちが画面を覗き込む。
「おいおいおい、これは面白いことになってるな……」
「よく調べ上げたもんだな。警察だって簡単に教えてくれないだろうに」
「それはちょっと伝手があってね。……とりあえずそれはどうでもいい。その反応を見ると編集長とかいうあんたは、何かを悟ったようだな」
部長が編集長に視線を向けて、強い口調で尋ねている。
「ああ、分かるとも。私たちが出くわした住宅街……。あそこが事件の中心というわけか」
編集長の口角が上がっていく。記者としての血がうずき始めたのだ。
「気に入ったぞ。君たちも子どもだけでは不安だろう。私たちがしっかりとサポートしてやろうではないか、なあ」
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ここに思わぬ協力体制ができたのだが、部長と編集長以外はちょっと距離を取っているようだった。
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