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第21話
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傷を負った男を隣町の病院まで運んだ編集長たち。その病院で、運んだ男たちの仲間と思しき連中と出くわした。
見た目が軽装であり、近くにバイクが見えることから間違いないだろう。
彼らはリーダー格の男からの呼び出しを受けてここまで撤収してきたようだ。
「あらあなた。血まみれじゃないの」
つい気になった編集長が、リーダー格の男に声を掛けてしまう。
すると、リーダー格の男はつい下を向いてしまう。
「俺たちもけが人を連れてここへやって来たんだ。よかったら話を聞かせてくれないか?」
記者の男が事情を説明すると、リーダー格の男が顔を上げて詰め寄ってきた。
「もしかして、俺たちの仲間の事か? 無事なのか?」
胸倉を掴んで激しく揺さぶってくる男。
「大丈夫だ。発見が早かったから、多少傷を負ってはいるがそこまで深刻じゃない」
「そ、そうか……」
記者の男の答えを聞いて、リーダー格の男はほっとしたような表情を浮かべた。
だが、それも束の間だった。
「あなたたちね。襟峰市の現状は知っているのでしょう? どうしてこんな事をしたのよ」
編集長から問い詰められたのだ。
「ど、度胸試しのつもりだったんだ。怪物がうろつくっていう噂のある街の中を無事に走り終えたとなれば、武勇伝になると思って……」
「呆れたわね。それで仲間を二人も危険な状態にしてしまったのよ? これに懲りたら二度としないことね。私たち大人に任せて、子どもはおとなしくしている事よ」
「す、すいません……」
必死に訴えるリーダー格の男であったが、編集長からしっかりと言いくるめられてしまう。やはり二人も大けがをさせたのは後ろめたいのだ。
「とりあえず、リーダー格であるあなたはちょっと話を聞かせてもらってもいいかしらね。他のみんなは帰ってもいいわよ」
「分かりました。おいみんな、心配なのは分かるが、ここは家に戻ってくれ」
リーダー格の男に言われると、バイク集団はおとなしく帰宅の途に就いたのだった。意外と素直だった。
リーダー格の男はキャンピングカーに乗せられる。そこでとりあえず血のべっとりついた状態をどうにかしてもらい、コンビニでご飯を買い込んで話を聞くことにした。
彼から聞き出せたのは、人食いの魔物の正体が犬であるということだった。これは編集長たちと見た内容と合致する。
ただ、普通の犬かといわれたら首を捻る状況だった。なんといっても執拗に首を狙っているあたりが、普通の犬とは思えなかったからだ。
実際、リーダー格の男が助け出した仲間も、首のあたりから大量の血を流していた。執拗に噛まれていたためである。
相当に危ない状態だったらしいが、どうにか一命は取り留めたらしく、その話に編集長たちはほっと胸を撫で下ろしていた。
「そうそう、今回の事は絶対口外しないようにね。犬だなんて分かると、あなたたちみたいな人が出てきかねない。死人が出てしまったら、あなたたちは責任を取れるのかしらね」
「わ、分かりました。絶対に口外しません。SNSにも投稿しません」
話を終えて男にしっかりと約束をさせる編集長たち。そして、男を元の場所で降ろすと、男は深く頭を下げてバイクで走り去っていった。
「それにしても、やっぱり人食いの魔物って犬で間違いなさそうね」
「まったくですね。半年もの間、都市を恐怖に陥れていたのがただの犬だなんて、嘘くさくて記事にできませんよ」
「そうね。記事にするのなら、もう少し突っ込んで調べる必要がありそうですね」
深く考えながら、編集長は次の行動を決定する。
「少年を助け出した時、かなりの犬がいましたね。君、襟峰市内の犬の居る場所を徹底的に洗い出してちょうだい」
「分かりました」
編集長の言葉に、男はすぐにパソコンを開いていた。いつでも記事が書けるようにと携帯しているのである。
「……まったく、長くて熱い夏になりそうね」
編集長はキャンピングカーの中で寝そべると、そのまま眠ってしまったのだった。
見た目が軽装であり、近くにバイクが見えることから間違いないだろう。
彼らはリーダー格の男からの呼び出しを受けてここまで撤収してきたようだ。
「あらあなた。血まみれじゃないの」
つい気になった編集長が、リーダー格の男に声を掛けてしまう。
すると、リーダー格の男はつい下を向いてしまう。
「俺たちもけが人を連れてここへやって来たんだ。よかったら話を聞かせてくれないか?」
記者の男が事情を説明すると、リーダー格の男が顔を上げて詰め寄ってきた。
「もしかして、俺たちの仲間の事か? 無事なのか?」
胸倉を掴んで激しく揺さぶってくる男。
「大丈夫だ。発見が早かったから、多少傷を負ってはいるがそこまで深刻じゃない」
「そ、そうか……」
記者の男の答えを聞いて、リーダー格の男はほっとしたような表情を浮かべた。
だが、それも束の間だった。
「あなたたちね。襟峰市の現状は知っているのでしょう? どうしてこんな事をしたのよ」
編集長から問い詰められたのだ。
「ど、度胸試しのつもりだったんだ。怪物がうろつくっていう噂のある街の中を無事に走り終えたとなれば、武勇伝になると思って……」
「呆れたわね。それで仲間を二人も危険な状態にしてしまったのよ? これに懲りたら二度としないことね。私たち大人に任せて、子どもはおとなしくしている事よ」
「す、すいません……」
必死に訴えるリーダー格の男であったが、編集長からしっかりと言いくるめられてしまう。やはり二人も大けがをさせたのは後ろめたいのだ。
「とりあえず、リーダー格であるあなたはちょっと話を聞かせてもらってもいいかしらね。他のみんなは帰ってもいいわよ」
「分かりました。おいみんな、心配なのは分かるが、ここは家に戻ってくれ」
リーダー格の男に言われると、バイク集団はおとなしく帰宅の途に就いたのだった。意外と素直だった。
リーダー格の男はキャンピングカーに乗せられる。そこでとりあえず血のべっとりついた状態をどうにかしてもらい、コンビニでご飯を買い込んで話を聞くことにした。
彼から聞き出せたのは、人食いの魔物の正体が犬であるということだった。これは編集長たちと見た内容と合致する。
ただ、普通の犬かといわれたら首を捻る状況だった。なんといっても執拗に首を狙っているあたりが、普通の犬とは思えなかったからだ。
実際、リーダー格の男が助け出した仲間も、首のあたりから大量の血を流していた。執拗に噛まれていたためである。
相当に危ない状態だったらしいが、どうにか一命は取り留めたらしく、その話に編集長たちはほっと胸を撫で下ろしていた。
「そうそう、今回の事は絶対口外しないようにね。犬だなんて分かると、あなたたちみたいな人が出てきかねない。死人が出てしまったら、あなたたちは責任を取れるのかしらね」
「わ、分かりました。絶対に口外しません。SNSにも投稿しません」
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「分かりました」
編集長の言葉に、男はすぐにパソコンを開いていた。いつでも記事が書けるようにと携帯しているのである。
「……まったく、長くて熱い夏になりそうね」
編集長はキャンピングカーの中で寝そべると、そのまま眠ってしまったのだった。
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