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第19話
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バイクの轟音を響かせながら、市内を疾走する男たち。人食いの魔物たちが怖くて警察すらも動かないような街中では、走り放題というわけだ。
ただし、この男どもは自分たちがその人食いの魔物の捕食対象になっているという自覚がなさすぎた。知らない間に走り回る事に熱中してしまっていたのである。
市内を爆走し始めてから10分も経たないうちに最初の異変が訪れる。
闇に包まれ静まり返った街の中に、突如としてガチャンという金属の音が響き渡ったのだ。
その音をかすかに聞きつけた男が、音のした方向へとバイクを走らせる。
なまじ音が聞こえてしまったがために、男には妙な不安感が湧き上がり始めていた。心臓の鼓動は速くなり、冷や汗もじわじわと浮かんでくる。
しばらく走らせていると、バイクのライトが信じられない光景を照らし出す。
人の足と、それに群がる黒い何かが見えたのだ。
「うわああああっ!!」
男は思わず叫んでいた。そして、群がる何かに向かってバイクを突っ込ませていく。
勢いよく突っ込んでくるバイクに気が付いて、群がる何かは素早く退避行動を取る。
だが、バイクが通り過ぎるとすぐさま再び群がり始める。男はすぐにUターンをして再び突っ込む。それを数度繰り返すと、ようやく群がっていた何かは去っていった。
男は危険を承知で群がっていた場所へと近付き、バイクを停める。
「うっ……」
そこで見た光景に思わず、吐きそうになる。
男が目にしたのは首を真っ赤に染めた仲間の姿だった。ただ、幸いまだ息があるようだ。
男は倒れていた仲間を背負うと腕を縛って固定して、バイクにまたがった。
(よかった、まだ生きてる。早く脱出して医者に見せないと……)
仲間を背負った男は、一目散に襟峰市外に向けてバイクを走らせる。
仲間を襲った連中がまた襲ってくるかもしれない。その恐怖に怯えながら、男はバイクを飛ばしに飛ばす。制限速度なんてくそくらえと言わんばかりのスピードである。
(あれは……、犬だった。間違いなく犬だ。なんで犬があんなことを……)
いろいろと疑問が湧いてくるが、とにかく今は負傷した仲間を病院へ送り届けるためにバイクを走らせた。
一方、爆音を聞きつけて車を走らせる編集長たち。しばらく走っていると、道路に無造作に横たわったバイクを発見する。
「エンジンがかかったままだわね。ということは、街に侵入してきた連中のバイクというわけかしら」
車に乗ったまま状況を分析する編集長。ヘッドライトに照らされたバイクを眺めながら、ナンバープレートと車種を記録していた。
「慎重に車を走らせて。バイクがエンジンのかかった状態で倒れているということは、間違いなく魔物に襲われているわ」
「は、はい。分かりました……」
編集長に言われて、ゆっくりと車を走らせる男。交通が途絶えているので、車道を逆走しても問題はない。
しばらく戻ったところの車道上に、なにやら水たまりのようなものを発見する。その色はなんとも赤黒いものだった。
「これは……血の跡ね」
目を凝らしながら編集長が結論付ける。
「ってことは、さっきのバイクは人食いの魔物に襲われたやつのものってことか……?」
「残念だけどそういうことになるわね。でも、妙ね。辺りには人影は見えないわ。地面の状況からするに、相当なけがを負っているはずだから、動けるわけがないもの」
「仲間が助けに来たってことでしょうね。まったく、この危険な状況下でよくやるもんだ」
「自らの危険を顧みずに仲間を救出する……。これだけを聞けば美談でしょうね」
鼻で笑う編集長である。
「爆音が街の中にまだ響いているわ。とっとと追い出さないと、次の犠牲者が出るわよ」
「分かりました。とりあえずこの現場だけは写真に収めておきましょう」
「ええ、そうね。でも、急いでちょうだいね」
編集長の了承を得た男は、カメラを取り出して現場の写真を数枚撮っていた。
そして、十分な枚数を撮り終えると、響き渡る爆音を頼りに闇に包まれた街を走らせたのだった。
ただし、この男どもは自分たちがその人食いの魔物の捕食対象になっているという自覚がなさすぎた。知らない間に走り回る事に熱中してしまっていたのである。
市内を爆走し始めてから10分も経たないうちに最初の異変が訪れる。
闇に包まれ静まり返った街の中に、突如としてガチャンという金属の音が響き渡ったのだ。
その音をかすかに聞きつけた男が、音のした方向へとバイクを走らせる。
なまじ音が聞こえてしまったがために、男には妙な不安感が湧き上がり始めていた。心臓の鼓動は速くなり、冷や汗もじわじわと浮かんでくる。
しばらく走らせていると、バイクのライトが信じられない光景を照らし出す。
人の足と、それに群がる黒い何かが見えたのだ。
「うわああああっ!!」
男は思わず叫んでいた。そして、群がる何かに向かってバイクを突っ込ませていく。
勢いよく突っ込んでくるバイクに気が付いて、群がる何かは素早く退避行動を取る。
だが、バイクが通り過ぎるとすぐさま再び群がり始める。男はすぐにUターンをして再び突っ込む。それを数度繰り返すと、ようやく群がっていた何かは去っていった。
男は危険を承知で群がっていた場所へと近付き、バイクを停める。
「うっ……」
そこで見た光景に思わず、吐きそうになる。
男が目にしたのは首を真っ赤に染めた仲間の姿だった。ただ、幸いまだ息があるようだ。
男は倒れていた仲間を背負うと腕を縛って固定して、バイクにまたがった。
(よかった、まだ生きてる。早く脱出して医者に見せないと……)
仲間を背負った男は、一目散に襟峰市外に向けてバイクを走らせる。
仲間を襲った連中がまた襲ってくるかもしれない。その恐怖に怯えながら、男はバイクを飛ばしに飛ばす。制限速度なんてくそくらえと言わんばかりのスピードである。
(あれは……、犬だった。間違いなく犬だ。なんで犬があんなことを……)
いろいろと疑問が湧いてくるが、とにかく今は負傷した仲間を病院へ送り届けるためにバイクを走らせた。
一方、爆音を聞きつけて車を走らせる編集長たち。しばらく走っていると、道路に無造作に横たわったバイクを発見する。
「エンジンがかかったままだわね。ということは、街に侵入してきた連中のバイクというわけかしら」
車に乗ったまま状況を分析する編集長。ヘッドライトに照らされたバイクを眺めながら、ナンバープレートと車種を記録していた。
「慎重に車を走らせて。バイクがエンジンのかかった状態で倒れているということは、間違いなく魔物に襲われているわ」
「は、はい。分かりました……」
編集長に言われて、ゆっくりと車を走らせる男。交通が途絶えているので、車道を逆走しても問題はない。
しばらく戻ったところの車道上に、なにやら水たまりのようなものを発見する。その色はなんとも赤黒いものだった。
「これは……血の跡ね」
目を凝らしながら編集長が結論付ける。
「ってことは、さっきのバイクは人食いの魔物に襲われたやつのものってことか……?」
「残念だけどそういうことになるわね。でも、妙ね。辺りには人影は見えないわ。地面の状況からするに、相当なけがを負っているはずだから、動けるわけがないもの」
「仲間が助けに来たってことでしょうね。まったく、この危険な状況下でよくやるもんだ」
「自らの危険を顧みずに仲間を救出する……。これだけを聞けば美談でしょうね」
鼻で笑う編集長である。
「爆音が街の中にまだ響いているわ。とっとと追い出さないと、次の犠牲者が出るわよ」
「分かりました。とりあえずこの現場だけは写真に収めておきましょう」
「ええ、そうね。でも、急いでちょうだいね」
編集長の了承を得た男は、カメラを取り出して現場の写真を数枚撮っていた。
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