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第10話
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翌朝、早朝の安全な時間になってインターネットカフェを後にする姉弟。
店を出る際に没収された金属バットを返してもらえたが、見た目が分からないように店の廃材に放り込まれていた。
「さすがにそんなものを見える状態で持ち歩いていたら、警察官に職質されますからね。勝手ではありますけれども、見えないようにしておきました」
「あはは、ありがとうございます」
受け取った姉弟は顔を引きつらせながら笑っていた。
とはいえ、ちょうど細長い備品が入っていた箱に入れられ、持ち運びがしやすいように担げるようにまでしてある。店の人たちが気を利かせてくれたのがよく分かる状態だった。
「さーて、安地を探しに行くわよ、弟」
「ちょっと待ってよ、姉さん」
早歩きで移動する姉を必死に追いかける弟。
朝食はさっきのインターネットカフェで終わらせており、朝から精力的に動く二人だ。
「いとこのたっくんより先に、この怪現象を解明するわよ。えいえいおーっ!」
「え、えいえい、おー……」
夏休みに入った襟峰市に、元気な姉と控えめな弟の声が響き渡るのだった。
―――
「ぶえっくしゅん!」
その朝、鎌瀬家の中に、大きなくしゃみが響き渡る。
「部長、どうしたんですか?」
「お腹出して寝て風邪を引いたんですかね」
あまりに大きなくしゃみだったので、隣の兄の部屋で寝ていた勇人と都が顔を出してきた。ちなみにだが、ちゃんと二人は距離を取って寝ていたので、何も問題はない。
「いや、布団はちゃんとかけて寝たし、起きた時も問題はない。誰かが私の噂をしているのだろう」
ずびずび鼻をいわせながら答える部長だったが、その姿にまったく説得力はなかった。
「まあそんな事よりもだ。怪異を釣り出すための準備をしようではないか。まずは正体を突き止めなければな」
廊下でポーズを決めながら話す部長。
「そのためには、餌を用意しなければならない。人を襲って食いちぎっているのだから、飢えた獣である事は間違いないだろう」
何度も頷きながら話す部長だが、勇人と都はなんとも言えない表情で部長を見ている。
「本当にその作戦、うまくいくんでしょうね、部長」
「なに、この私の事を信じられないというのか?!」
疑いの目を向けられて、声を荒げる部長。
「夜通しで話をするって言っておいて、真っ先に寝てしまったのは誰ですかね」
勇人が反論すると、部長はうっと口ごもる。痛いところを突かれたからだ。
ちなみに勇人たちが眠ったのも、部長が寝てしまって起きている理由がなくなったからだった。
「べ、別にいいではないか。必要最低限の事は決まったのだからね。さあ、腹ごしらえをして、早速準備に取り掛かろうではないか、同士たちよ」
慌てながらごまかそうとする部長だったが、二人からは疑いのジト目を向けられていた。
まったく、こんなまとまりがない状態で大丈夫なのだろうか。他人が見たら不安しかない状態だった。
ひとまずは部長の両親と一緒に朝食を取る三人。その後は、店が開くまでの間の時間を使って、昨夜の話の再確認を行う。
「我々が用意する者は、怪異を引き付ける囮となる餌だ。それっぽく仕立てた人形を地面に転がして、連中の出方を安全な場所から見守ろうと思う」
「それはそれとして、その姿をどうやって撮影するんですかね。暗い上に距離があるんじゃ、スマホじゃまともな画像は撮れませんよ」
部長の作戦を聞いて、勇人が冷静にツッコミを入れている。
ところが、部長は人差し指を顔の前に立てて左右に揺らす。
「ちっちっちっ、その点は抜かりはないよ。直前に貯金をはたいてこいつを購入したからね」
「ビデオカメラ?」
部長が取り出したのは、手のひらサイズの高性能ビデオカメラだった。
パソコンといい、よくもまあ中学生のお小遣いで買えたものである。
「そうだ。これなら明かりがそんなに多くなくても鮮明に撮影ができる。ナイトモードというのを使えば、暗視撮影ができるというわけだよ」
自慢げな部長である。
しかし、まだまだ問題点がある。夜9時の直前までは、街の中は普通に機能しているというのがネックなのだ。
昨日の話し合いの中で、安全に忍び込める箇所を絞り込んだ。しかし、そこまでどうやって餌を運んで仕掛けるのか。そういう問題だった。
タイミングが悪いとパトカーなどに見つかって計画が無駄になりかねないのだ。
なにせ、オルト研究部の面々は全員が中学生だ。この襟峰市の状況の中で夜8時に外をうろついているのが発見されれば、補導されてしまうのは目に見えているのだから。
クリアすべき課題は多いものの、目的に向かって動き始める襟峰中学校オカルト研究部なのであった。
店を出る際に没収された金属バットを返してもらえたが、見た目が分からないように店の廃材に放り込まれていた。
「さすがにそんなものを見える状態で持ち歩いていたら、警察官に職質されますからね。勝手ではありますけれども、見えないようにしておきました」
「あはは、ありがとうございます」
受け取った姉弟は顔を引きつらせながら笑っていた。
とはいえ、ちょうど細長い備品が入っていた箱に入れられ、持ち運びがしやすいように担げるようにまでしてある。店の人たちが気を利かせてくれたのがよく分かる状態だった。
「さーて、安地を探しに行くわよ、弟」
「ちょっと待ってよ、姉さん」
早歩きで移動する姉を必死に追いかける弟。
朝食はさっきのインターネットカフェで終わらせており、朝から精力的に動く二人だ。
「いとこのたっくんより先に、この怪現象を解明するわよ。えいえいおーっ!」
「え、えいえい、おー……」
夏休みに入った襟峰市に、元気な姉と控えめな弟の声が響き渡るのだった。
―――
「ぶえっくしゅん!」
その朝、鎌瀬家の中に、大きなくしゃみが響き渡る。
「部長、どうしたんですか?」
「お腹出して寝て風邪を引いたんですかね」
あまりに大きなくしゃみだったので、隣の兄の部屋で寝ていた勇人と都が顔を出してきた。ちなみにだが、ちゃんと二人は距離を取って寝ていたので、何も問題はない。
「いや、布団はちゃんとかけて寝たし、起きた時も問題はない。誰かが私の噂をしているのだろう」
ずびずび鼻をいわせながら答える部長だったが、その姿にまったく説得力はなかった。
「まあそんな事よりもだ。怪異を釣り出すための準備をしようではないか。まずは正体を突き止めなければな」
廊下でポーズを決めながら話す部長。
「そのためには、餌を用意しなければならない。人を襲って食いちぎっているのだから、飢えた獣である事は間違いないだろう」
何度も頷きながら話す部長だが、勇人と都はなんとも言えない表情で部長を見ている。
「本当にその作戦、うまくいくんでしょうね、部長」
「なに、この私の事を信じられないというのか?!」
疑いの目を向けられて、声を荒げる部長。
「夜通しで話をするって言っておいて、真っ先に寝てしまったのは誰ですかね」
勇人が反論すると、部長はうっと口ごもる。痛いところを突かれたからだ。
ちなみに勇人たちが眠ったのも、部長が寝てしまって起きている理由がなくなったからだった。
「べ、別にいいではないか。必要最低限の事は決まったのだからね。さあ、腹ごしらえをして、早速準備に取り掛かろうではないか、同士たちよ」
慌てながらごまかそうとする部長だったが、二人からは疑いのジト目を向けられていた。
まったく、こんなまとまりがない状態で大丈夫なのだろうか。他人が見たら不安しかない状態だった。
ひとまずは部長の両親と一緒に朝食を取る三人。その後は、店が開くまでの間の時間を使って、昨夜の話の再確認を行う。
「我々が用意する者は、怪異を引き付ける囮となる餌だ。それっぽく仕立てた人形を地面に転がして、連中の出方を安全な場所から見守ろうと思う」
「それはそれとして、その姿をどうやって撮影するんですかね。暗い上に距離があるんじゃ、スマホじゃまともな画像は撮れませんよ」
部長の作戦を聞いて、勇人が冷静にツッコミを入れている。
ところが、部長は人差し指を顔の前に立てて左右に揺らす。
「ちっちっちっ、その点は抜かりはないよ。直前に貯金をはたいてこいつを購入したからね」
「ビデオカメラ?」
部長が取り出したのは、手のひらサイズの高性能ビデオカメラだった。
パソコンといい、よくもまあ中学生のお小遣いで買えたものである。
「そうだ。これなら明かりがそんなに多くなくても鮮明に撮影ができる。ナイトモードというのを使えば、暗視撮影ができるというわけだよ」
自慢げな部長である。
しかし、まだまだ問題点がある。夜9時の直前までは、街の中は普通に機能しているというのがネックなのだ。
昨日の話し合いの中で、安全に忍び込める箇所を絞り込んだ。しかし、そこまでどうやって餌を運んで仕掛けるのか。そういう問題だった。
タイミングが悪いとパトカーなどに見つかって計画が無駄になりかねないのだ。
なにせ、オルト研究部の面々は全員が中学生だ。この襟峰市の状況の中で夜8時に外をうろついているのが発見されれば、補導されてしまうのは目に見えているのだから。
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