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第9話
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長い夏休みが始まる。
襟峰中のオカルト研究部が会議をしているその頃、襟峰市内に怪しい影が近付いていた。
「ふふん、ここが噂の襟峰市ね」
「ちょっと、姉ちゃん。やめようよ。僕、死にたくないよ?」
男女のペアが夜の街に姿を見せていた。姉と呼んでいるからには、この二人は姉弟なのだろう。
「オカルトハンターとしては見逃せないわよ。準備のために夏まで待たなきゃいけなかったのは痛かったけれどね」
二人の服装は夏らしい軽装になっているが、よく見ると手首足首、それと首の3か所は重装備になっていた。
「襟峰市に出現する魔物は、首を執拗に狙ってくる。ならば、首とつく部分を重点的に防御しておけば大丈夫なはずよ」
「本当に大丈夫かなぁ……」
ものすごく不安そうにしている弟である。
ちなみに服装はタンクトップに短パン、スニーカーという共通の装備に加え、姉はサイハイ、弟はハイソックスである。
姉が言った通り、重要な部位を守るために首には医療用のコルセットを巻き、手首足首にはサポーターを巻いている。武器として金属バットを構えている。
比較的手に入れやすい装備ばかりだが、そんな装備で大丈夫なのだろうか。
まだ時間には早いために、市内を散策しながら場所の確認をしている。
「安全地帯は確実に確保しなければいけないわ。襲われて生き残れた人たちは、ことごとく精神がやられてしまっているらしいからね。なんとしても冷静に行動しなきゃ」
姉はどんどんと力強く歩く中、弟はびくびくとしながらついて行く。
スマホを取り出して時計を確認すると、表示されたのは夜の8時40分。噂で聞いた沈黙の時間までもう少しだった。
「うーん、今日の決行はやめておきましょうか。確か駅前にネカフェがあったわね。ギリギリになるけど入れるかも知れないわ」
姉の言葉にほっと胸を撫で下ろす弟である。
とりあえず時間もないので、二人はインターネットカフェに向かって走っていった。
どうにか時間ギリギリにインターネットカフェに駆け込んだ二人は、持っていた金属バットで入店を断られかけた。
しかし、夜の9時ギリギリでちょうど入口を閉めようとしていたところだったので、どうにか入る事ができたのだ。
当然ながら金属バットは没収となり、お店側が厳重管理することになった。退店の時には返してくれるらしく、二人はほっとした様子だった。
「弟、明日は安地確保をするわよ。お金があるからといっても、何日間いられるか分からなんだから、なるべく早くよ」
「わ、分かったよ、お姉ちゃん」
割り当てられた部屋に向かいながら、改めて意気込む姉。こんな強引な姉に付き合わされるとは、可哀想な弟である。
「はあ、こんな事ならもっと下調べしてくればよかったわ」
初日からいきなり頓挫してしまって、ため息が漏れる姉であった。
その代わり、せっかくインターネットカフェに来たので、改めて情報収集を始める。転んでもただでは起きないのだった。
適当にインターネットカフェの食事を頼んで腹ごしらえをした姉は、襟峰市に関する情報を集めるためにパソコンで検索を始める。
いろいろと生々しい報道が連なる中、姉はちょっと気になるものを見つけた。
「へえ……、私たち以外にもこの情報を追っている人がいるんだ……」
襟峰市で起きている怪異事件についてまとめられた個人サイトだった。
おそるおそるそのサイトのURLをクリックする姉。そして、画面に表示されたのは具体的な情報がまとめられた本格的なサイトだった。
(これはこれは、見つからないように検索避けまでしてあるとはね。ただ、無駄だったみたいだけど)
ソース表示をしてくすくすと笑っている姉。
笑い終えると、しっかりとそのサイトの情報をメモに取っていく。自分たちの行動に有益に働くだろうから。
(どこの誰だか知らないけれど、有効活用させてもらうわ。この怪異事件を最初に解決するのは、この私なんだからね)
目的に一歩前進できた姉は、個室の中でにやりとほくそ笑んだのだった。
襟峰中のオカルト研究部が会議をしているその頃、襟峰市内に怪しい影が近付いていた。
「ふふん、ここが噂の襟峰市ね」
「ちょっと、姉ちゃん。やめようよ。僕、死にたくないよ?」
男女のペアが夜の街に姿を見せていた。姉と呼んでいるからには、この二人は姉弟なのだろう。
「オカルトハンターとしては見逃せないわよ。準備のために夏まで待たなきゃいけなかったのは痛かったけれどね」
二人の服装は夏らしい軽装になっているが、よく見ると手首足首、それと首の3か所は重装備になっていた。
「襟峰市に出現する魔物は、首を執拗に狙ってくる。ならば、首とつく部分を重点的に防御しておけば大丈夫なはずよ」
「本当に大丈夫かなぁ……」
ものすごく不安そうにしている弟である。
ちなみに服装はタンクトップに短パン、スニーカーという共通の装備に加え、姉はサイハイ、弟はハイソックスである。
姉が言った通り、重要な部位を守るために首には医療用のコルセットを巻き、手首足首にはサポーターを巻いている。武器として金属バットを構えている。
比較的手に入れやすい装備ばかりだが、そんな装備で大丈夫なのだろうか。
まだ時間には早いために、市内を散策しながら場所の確認をしている。
「安全地帯は確実に確保しなければいけないわ。襲われて生き残れた人たちは、ことごとく精神がやられてしまっているらしいからね。なんとしても冷静に行動しなきゃ」
姉はどんどんと力強く歩く中、弟はびくびくとしながらついて行く。
スマホを取り出して時計を確認すると、表示されたのは夜の8時40分。噂で聞いた沈黙の時間までもう少しだった。
「うーん、今日の決行はやめておきましょうか。確か駅前にネカフェがあったわね。ギリギリになるけど入れるかも知れないわ」
姉の言葉にほっと胸を撫で下ろす弟である。
とりあえず時間もないので、二人はインターネットカフェに向かって走っていった。
どうにか時間ギリギリにインターネットカフェに駆け込んだ二人は、持っていた金属バットで入店を断られかけた。
しかし、夜の9時ギリギリでちょうど入口を閉めようとしていたところだったので、どうにか入る事ができたのだ。
当然ながら金属バットは没収となり、お店側が厳重管理することになった。退店の時には返してくれるらしく、二人はほっとした様子だった。
「弟、明日は安地確保をするわよ。お金があるからといっても、何日間いられるか分からなんだから、なるべく早くよ」
「わ、分かったよ、お姉ちゃん」
割り当てられた部屋に向かいながら、改めて意気込む姉。こんな強引な姉に付き合わされるとは、可哀想な弟である。
「はあ、こんな事ならもっと下調べしてくればよかったわ」
初日からいきなり頓挫してしまって、ため息が漏れる姉であった。
その代わり、せっかくインターネットカフェに来たので、改めて情報収集を始める。転んでもただでは起きないのだった。
適当にインターネットカフェの食事を頼んで腹ごしらえをした姉は、襟峰市に関する情報を集めるためにパソコンで検索を始める。
いろいろと生々しい報道が連なる中、姉はちょっと気になるものを見つけた。
「へえ……、私たち以外にもこの情報を追っている人がいるんだ……」
襟峰市で起きている怪異事件についてまとめられた個人サイトだった。
おそるおそるそのサイトのURLをクリックする姉。そして、画面に表示されたのは具体的な情報がまとめられた本格的なサイトだった。
(これはこれは、見つからないように検索避けまでしてあるとはね。ただ、無駄だったみたいだけど)
ソース表示をしてくすくすと笑っている姉。
笑い終えると、しっかりとそのサイトの情報をメモに取っていく。自分たちの行動に有益に働くだろうから。
(どこの誰だか知らないけれど、有効活用させてもらうわ。この怪異事件を最初に解決するのは、この私なんだからね)
目的に一歩前進できた姉は、個室の中でにやりとほくそ笑んだのだった。
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