真夜中血界

未羊

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第2話

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 昼休みが終わったので、一度解散した勇人たち。
 だが、部長から伝えたい話があると言われたので、放課後にもう一度部室に集まる事となった。

 放課後になると、勇人と都は約束通り部室に顔を出す。そこにはすでに部長が待ち構えており、昼間に出していた画面をもう一度表示していた。

「いやあ、待っていたよ同士」

 くるりと振り返ってご機嫌な部長である。

「さて、早速だが……」

 再びパソコンの画面に向かう部長。そして、二人に対して近付くように手招きをする。

「この分布を見て、何かに気付かないかね?」

「うーん……」

 部長の言葉に、勇人は思い切り頭を捻っている。無造作に打ち込まれた点にしか見えないようだ。
 ところが、都は何かに気が付いたようで声を上げた。

「もしかして、被害現場が円状になっている?」

「その通りだね。大雑把だけど、このような円の中に被害が集中しているんだ」

 部長はそう言いながら、青い円を画面上に表示させる。これなら勇人も納得できるというものだ。

「つまりどういうことかというと……。この青色の円の中心付近に、この状況の発生源があると考えられるということだね」

 部長は推測を述べると、画面をこつんと叩いた。

「という事は、人為的な事件である可能性があるというわけか?」

「確証はないけれど、そう考えてもいいんじゃないかな。オカルト研究部としては非常に残念な結論ではあるけどね」

 本当に声の感じからも残念そうな雰囲気が感じられる。部長はそのくらいにオカルトが大好きなのである。

「しかし、これは慎重に調べないといけないよ。現状はただの推測でしかないんだからね。勝手な憶測で押しかけることほど、愚かしい行為はないよ」

 部長は再び勇人たちの方へと振り向いた。

「さて、遅くならないうちに君たちにはひとつお話をしておきたい」

「どんな話なんですか」

 指を立てて言ったかと思うと、部長はすごく重苦しそうな表情をする。この雰囲気の落差に、二人は思わずごくりと息を飲む。

「実はだね。この怪異に襲われながらも生き残った人物の証言があるんだ。聞いてみるかい?」

 この時の部長の雰囲気に、思わず飲まれてしまいそうになる二人。
 怖いけれども興味がある。オカルト研究部に所属してしまった二人がゆえに、つい迷ってしまうのだ。
 しかし、最終的には好奇心の方が勝ってしまい、二人は部長の話を聞く事にしたのだった。

 ―――

 それはまだ、この怪異の話が広まる前の話だった。
 時期はまだ真冬。
 その人物は当時は新聞配達をしていた。

 ある日のこと、配達のためにコンビニに寄っていたところ、先輩となる人物と出くわしていた。

「よう、こんなところで会うなんてな」

「それはこっちのセリフですよ、先輩。俺の配達コースなんですから、ここは」

「ああ、そうだっけか。ははは、悪い悪い」

 たまたま一緒になって会話をする二人。

「じゃ、俺は配達に戻るからな。終わったらどうだ、一杯やらないか?」

「俺はまだ未成年なんで遠慮しときますよ。講義だってあるんですからね」

「そっか、残念だな。それじゃまたな」

 先輩と呼んだ人物と別れたその人物は、いつものように配達を済ませてコンビニを後にする。
 配達のコースをあらかた回って、いよいよ販売所に戻ろうとしたその時だった。
 目の前に転倒したバイクを見つけたのだ。
 よく見ると、そのバイクは見覚えのあるものだった。
 まさかと思ってバイクを降りる人物。近付いていくとその近くに思わぬものを発見してしまった。

「先……輩……?」

 横たわる大きな男の体。うつ伏せになった体はぴくりとも動く様子はなかった。
 バイクが倒れている事もあって交通事故だと判断して電話を取り出そうとするが、思わぬ衝撃が彼を襲う。

「うわっ!」

 あまりに強い衝撃に男は地面に叩きつけられ、スマホは手から大きく放り出されてしまった。

(な、なんだよ、これは!)

 くるりと仰向けになって状況を確認しようとするが、その時の恐怖は忘れられなかった。
 何か得体のしれないものが、自分目がけて襲い掛かってきたのだ。
 その得体のしれないものは執拗に首を狙ってきていたが、かぶっていたフルフェイスのおかげでどうにか防げていた。
 なんとか振り払おうとするも、最初の一撃で全身を強打しており、思うように体に力が入らない。狙われる首を必死に守るのが精一杯だった。
 どのくらい防いでいただろうか。腕が血まみれになりながらどうにか首を死守していた彼がもうダメだと思った時、突然得体のしれないものの動きが止まった。
 さっきまでの攻撃性はなんだったのか。そう思えるくらいに静かにどこかへと走り去っていった。

「助……かった?」

 彼はそう呟くと、そのまま気を失ってしまったのだった。
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