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第1話
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襟峰市は人口7万程度の小さな都市。
朝になると通勤通学に向かう人たちが行き交う、そこら普通の都市と変わらない風景が広がっている。
この日も、彼らは普段と変わらない様子で中学校へと登校している。
「おっはよー、勇人」
「おう、都か。相変わらず朝から元気だな、お前は」
少女に挨拶をされた少年は、眠たそうに大あくびをしている。
「まったく、なんでそんなに眠そうなのよ……」
「うっせぇ。うっかり昨夜はゲームで徹夜しちまったんだよ。それにしても、今日は久しぶりに騒がしいな」
寝不足の勇人が目を覚ますのも無理はない。
今日は朝からパトカーがサイレンを鳴らしながら走りまくっている。
「本当ね。これだけパトカーを見るのは久しぶりじゃないかしらね」
「……事件でもあったんだろうけど、このままじゃ遅刻するな。気になるが行こうぜ」
「うん、そうだね」
勇人と都はけたたましく鳴り響くサイレンの音を気にしながらも、学校へと急いだのだった。
学校に着くと、何やらクラスの中がざわついている。
「やっぱり何かあったのね。ちょっと聞いてみる?」
「いや、すぐ分かるだろうから放っておこう」
気になる都に対して、勇人は放置するように言う。
しかし、ホームルームがもう始まるとあって、誰も話し掛けてくる者は居なかった。
結局、友人も話し掛けてくる事なく1時間目を終えると、教室に予想外な人物が訪ねてきた。
「やあやあ、親愛なる同士よ。いきなりですまないのだが、昼休みに部室に集まってくれたまえ」
眼鏡を掛けた男子学生が教室に入り込んできた。
「何なんですか、部長……」
「はーっはっはっはっ。何、いよいよ我らがオカルト研究部の本領を発揮する時だと思ってね。同士に声を掛けに来たのだ」
非常に迷惑そうに言う勇人であるが、部長はまったく意に介していなかった。
「では、伝えたからな同士勇人よ。同士都も昼休みには部室へ来てくれたまえ。アデュー」
嵐のように去っていく部長だった。
あまりの唐突さに、勇人も都も呆気にとられた表情で部長の出ていった後を見に行った。
「まったく、何しに来たんだよ、部長は」
「誘いに来ただけみたいね。だけど、行かないと拗ねそうだし、昼休みは部室に行かなきゃ……ね」
「だなぁ……」
ぼりぼりと頭を掻きながら、勇人は自分の席に戻っていったのだった。
そして、昼休みになると、二人はオカルト研究部の部室へとやって来た。
「オカルト研究『部』とは言ってるけど、部員が足りなくて『会』なんだよな。部長は諦めきれずに『部』って言い張ってるけどさ」
「しーっ。聞こえてたらどうするのよ」
勇人の愚痴を口を塞いで黙らせる都。
ところが、困ったことに同時に中から声が聞こえてきた。
「おお、同志よやって来たかね。何度も言うがオカルト研究『部』だ、間違えないでおくれよ」
部長の声なのだが、ちゃっかり聞かれてしまっていたようだった。
大きくため息をつきながら、苦笑いする都と一緒に部室へと入っていく勇人だった。
中では、パソコンを見つめる部長の姿があった。
室内に置いてあるパソコンは、なんでも自費で購入して持ち込んだらしい。その際には教師ともめたとかなんとか。
そんな細かいことはさておき、勇人と都は部長へと近付いていく。
「何をパソコンで見てるんですか」
「おお、よく聞いてくれたね。ささっ、画面を見てくれたまえ」
うるさいと思いつつも、二人は部長と一緒にパソコンの画面を覗き込む。
その画面を見た勇人と都は、予想もしてなかった画面に首を傾げている。
「部長、これって襟峰市の地図ですか」
「その通りだよ、同士勇人」
「思ったより広いんですね、襟峰市って」
画面を見ながらそんな感想を漏らす勇人と都。部長の意図がうまく汲み取れていないようである。
「分からないという顔をしているようだね。君たちも知っているだろう、この街の怖い話を」
「ああ、真夜中に出歩いていると魔物か何かに食い殺されるってやつですよね」
部長が確認を取ると、勇人は腕を組んで答えている。
「そうだ。そして、今朝、久しぶりにその犠牲者が出てしまった。その場所を今から出す」
部長がそう言うと、画面に赤い点が1つ点灯する。
「ここは……、襟峰公園か。ずいぶんと広い場所だけど、夜は真っ暗だからな、あそこは」
「そうだ。どうもその犠牲者は出張で襟峰市を訪れて、当時は酒に酔っていたらしい。……なんとも痛ましい話だね」
「今朝の話なのに、どこで情報仕入れてるんですか、部長は……」
情報網のすごさに、都が驚きを越えて呆れている。
「ふっふっふっ、私の手にかかればそのくらいわけはないよ。それでだが、今までの被害の情報もすべてようやくデータベース化できた。今から出すから見ていておくれ」
部長はそう言うと、キーボードをカタカタと叩き始める。そして、最後にエンターキーを叩くと地図上に赤い点が一斉に表示されていった。
その赤い点は襟峰市中に広範囲にわたっていて、その数の多さに二人は思わず息を飲んでしまった。
「これほどまでに多くの犠牲者が出てしまっているというのに、私は不謹慎にも心躍っているのだよ。この謎を解き明かす事が、我がオカルト研究部の使命だとね」
次の瞬間、部長はがたりと椅子から立ち上がる。
「さあ、我が同士よ。一緒にこの謎に挑んでみる気はないかね?」
部長の勢いに、勇人と都はつい首を縦に振ってしまうのだった。
朝になると通勤通学に向かう人たちが行き交う、そこら普通の都市と変わらない風景が広がっている。
この日も、彼らは普段と変わらない様子で中学校へと登校している。
「おっはよー、勇人」
「おう、都か。相変わらず朝から元気だな、お前は」
少女に挨拶をされた少年は、眠たそうに大あくびをしている。
「まったく、なんでそんなに眠そうなのよ……」
「うっせぇ。うっかり昨夜はゲームで徹夜しちまったんだよ。それにしても、今日は久しぶりに騒がしいな」
寝不足の勇人が目を覚ますのも無理はない。
今日は朝からパトカーがサイレンを鳴らしながら走りまくっている。
「本当ね。これだけパトカーを見るのは久しぶりじゃないかしらね」
「……事件でもあったんだろうけど、このままじゃ遅刻するな。気になるが行こうぜ」
「うん、そうだね」
勇人と都はけたたましく鳴り響くサイレンの音を気にしながらも、学校へと急いだのだった。
学校に着くと、何やらクラスの中がざわついている。
「やっぱり何かあったのね。ちょっと聞いてみる?」
「いや、すぐ分かるだろうから放っておこう」
気になる都に対して、勇人は放置するように言う。
しかし、ホームルームがもう始まるとあって、誰も話し掛けてくる者は居なかった。
結局、友人も話し掛けてくる事なく1時間目を終えると、教室に予想外な人物が訪ねてきた。
「やあやあ、親愛なる同士よ。いきなりですまないのだが、昼休みに部室に集まってくれたまえ」
眼鏡を掛けた男子学生が教室に入り込んできた。
「何なんですか、部長……」
「はーっはっはっはっ。何、いよいよ我らがオカルト研究部の本領を発揮する時だと思ってね。同士に声を掛けに来たのだ」
非常に迷惑そうに言う勇人であるが、部長はまったく意に介していなかった。
「では、伝えたからな同士勇人よ。同士都も昼休みには部室へ来てくれたまえ。アデュー」
嵐のように去っていく部長だった。
あまりの唐突さに、勇人も都も呆気にとられた表情で部長の出ていった後を見に行った。
「まったく、何しに来たんだよ、部長は」
「誘いに来ただけみたいね。だけど、行かないと拗ねそうだし、昼休みは部室に行かなきゃ……ね」
「だなぁ……」
ぼりぼりと頭を掻きながら、勇人は自分の席に戻っていったのだった。
そして、昼休みになると、二人はオカルト研究部の部室へとやって来た。
「オカルト研究『部』とは言ってるけど、部員が足りなくて『会』なんだよな。部長は諦めきれずに『部』って言い張ってるけどさ」
「しーっ。聞こえてたらどうするのよ」
勇人の愚痴を口を塞いで黙らせる都。
ところが、困ったことに同時に中から声が聞こえてきた。
「おお、同志よやって来たかね。何度も言うがオカルト研究『部』だ、間違えないでおくれよ」
部長の声なのだが、ちゃっかり聞かれてしまっていたようだった。
大きくため息をつきながら、苦笑いする都と一緒に部室へと入っていく勇人だった。
中では、パソコンを見つめる部長の姿があった。
室内に置いてあるパソコンは、なんでも自費で購入して持ち込んだらしい。その際には教師ともめたとかなんとか。
そんな細かいことはさておき、勇人と都は部長へと近付いていく。
「何をパソコンで見てるんですか」
「おお、よく聞いてくれたね。ささっ、画面を見てくれたまえ」
うるさいと思いつつも、二人は部長と一緒にパソコンの画面を覗き込む。
その画面を見た勇人と都は、予想もしてなかった画面に首を傾げている。
「部長、これって襟峰市の地図ですか」
「その通りだよ、同士勇人」
「思ったより広いんですね、襟峰市って」
画面を見ながらそんな感想を漏らす勇人と都。部長の意図がうまく汲み取れていないようである。
「分からないという顔をしているようだね。君たちも知っているだろう、この街の怖い話を」
「ああ、真夜中に出歩いていると魔物か何かに食い殺されるってやつですよね」
部長が確認を取ると、勇人は腕を組んで答えている。
「そうだ。そして、今朝、久しぶりにその犠牲者が出てしまった。その場所を今から出す」
部長がそう言うと、画面に赤い点が1つ点灯する。
「ここは……、襟峰公園か。ずいぶんと広い場所だけど、夜は真っ暗だからな、あそこは」
「そうだ。どうもその犠牲者は出張で襟峰市を訪れて、当時は酒に酔っていたらしい。……なんとも痛ましい話だね」
「今朝の話なのに、どこで情報仕入れてるんですか、部長は……」
情報網のすごさに、都が驚きを越えて呆れている。
「ふっふっふっ、私の手にかかればそのくらいわけはないよ。それでだが、今までの被害の情報もすべてようやくデータベース化できた。今から出すから見ていておくれ」
部長はそう言うと、キーボードをカタカタと叩き始める。そして、最後にエンターキーを叩くと地図上に赤い点が一斉に表示されていった。
その赤い点は襟峰市中に広範囲にわたっていて、その数の多さに二人は思わず息を飲んでしまった。
「これほどまでに多くの犠牲者が出てしまっているというのに、私は不謹慎にも心躍っているのだよ。この謎を解き明かす事が、我がオカルト研究部の使命だとね」
次の瞬間、部長はがたりと椅子から立ち上がる。
「さあ、我が同士よ。一緒にこの謎に挑んでみる気はないかね?」
部長の勢いに、勇人と都はつい首を縦に振ってしまうのだった。
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