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第192話 それはまるで……
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パステルピンクたちが扉を開けると、そこはなんと色鮮寺だった。
確認するためにバタバタと外へ出て振り返って見上げてみると、そこにそびえ立っていたのは色鮮寺の中で目立つ建物である五重塔だった。
「これは驚きですね。まさか寺の敷地の中に繋がっているなんて……」
これに最も驚いているのは住職だった。
だが、パステルピンクたちが自分のたちの姿を見てさらに驚く。
「なっ、まだ変身したままじゃないか!」
「本当だわ。どういう事なのかしら」
そう、まだパステル戦士の姿に変身したままだったのだ。確かに変身はまったく解いていなかったのだが、聖獣たちと離れた状態でも変身したままだとは思わなかった。これには驚かされるばかりである。
パステルピンクたちはこくりと無言で頷くと、再び五重塔の中へと戻っていく。そこでさらに驚かされる光景を見たのだ。
「なっ、何だこの扉……!」
「あらやだ。これじゃまるで青くて丸いロボットが出す道具みたいじゃないですの」
そう、五重塔の階層のど真ん中に、ぽつんと扉が立っていたのだ。その扉はまるで、開けるとどこへでも行けそうな雰囲気を放っている。
「おやおや、不思議な事があるものですね」
住職が顎を触りながら扉に近付いていく。
「みなさん、気になりますよね」
こくこくと激しく頷くパステルピンクたち。なにせ目の前の扉には、開けてもいいよと言わんばかりにドアノブが備えられていたのだ。これは開けてみたくなるものである。
「心の準備はよろしいですね?」
「ああ、いいぜ」
「はい」
「もちろんですわ」
三者三様の返事をすると、住職がドアノブに手を掛けて、ゆっくりと回して開こうとする。すると、
「おや、おかしいですね。ドアノブが回りませんよ」
ガチャガチャと音を立てるものの、押せど引けども扉が開く気配はなかった。その様子に、パステルピンクたちは思わずこけてしまった。
「もしかして……」
ふと思いついたパステルシアンが扉に近付いていく。
「パステル戦士の力の強さは思いの力に比例する。だったら……」
パステルピンクはそう言いながら、住職に声を掛ける。
「私に開けさせてもらえますか?」
「えっ、ああいいですよ」
二つ返事で住職が扉から離れ、パステルシアンが扉の前に立つ。そして、深呼吸ひとつ、ドアノブにそっと手を掛ける。
(お願い、パステル王国につなげて!)
パステルシアンは願いを込めてドアノブを回す。すると……。
ガチャリと扉が開いた。手前側に。するとそこには、
「えっ!?」
「これはどういう事だ?」
なんと、扉を開けた目の前には、さっき別れたばかりのレインとシイロが立っているではないか。時間的なずれもない。まさに別れた時のままである。後ろにはパステルオレンジたちの姿も見えるのだから。
「ははは……冗談だよな?」
「さっきまでの思い詰めた気持ちは何だったのかしら……」
正直パステルピンクとパステルパープルも、引きつった笑いしか出てこなかった。今生の別れのつもりで覚悟して扉をくぐったというのに、いとも簡単に戻れてしまったのだから。もはやただただ拍子抜けするしかなかった。
「ちょっと、どういう事なの。説明してちょうだい!」
パステルブラウンが突っ掛かってくる。
「あはは、色鮮寺の五重塔に扉があったから、開けてみたらパステル王国とつながってたのよ」
「なにそれ、訳が分からないわ」
パステルシアンの答えに、パステルオレンジが怒っている。そりゃ二人だって、どれだけの覚悟を決めて別れる決意をしたのか分からないからだ。こうも簡単に戻れてしまうのなら、覚悟と涙を返せと叫びたくなるものである。
「あはは、何にしてもよかったよ。また会う事ができるんだね」
「まったくだな。よりにもよって色鮮寺か。まったくよう、あの寺は本当に謎の多い場所だよなぁ……」
「まったくよね……」
チェリーたち聖獣たちも、嬉し涙を浮かべながら、それぞれに愚痴めいた事を言ってみたり、喜びを表したりと反応に忙しそうである。
「そういえば、お三方とも変身が解けていませんね。お父様がそこに居られるというのも、こちらとつながった理由の一つなのかも知れませんね」
レインはどうにか平静を装いながら、色鮮寺とパステル王国がつながった理由を推測していた。だとしたら、偶然というか奇跡というか、もう運命レベルの何かを感じずにはいられないのである。
「それだったら、姉さん、あたしたちもそっちに行っちゃう?」
「ああ、悪くはないかもね」
パステルオレンジとパステルブラウンも困惑した表情を浮かべながら、扉の向こう側へ行くかどうか相談していた。ただ、もう結論は出ているようだったが。
「ええ、戻って来れるというのなら、その方がいいかも知れませんね。あなたたちの気持ちに、正直に従いなさい」
レインはにこりと笑顔でパステルオレンジとパステルブラウンに声を掛けた。
「はい、女王陛下」
その言葉に二人はにこりと笑顔を浮かべていた。
こうして、今生の別れから一転、2つの世界を行き来するという生活が始まったのであった。
確認するためにバタバタと外へ出て振り返って見上げてみると、そこにそびえ立っていたのは色鮮寺の中で目立つ建物である五重塔だった。
「これは驚きですね。まさか寺の敷地の中に繋がっているなんて……」
これに最も驚いているのは住職だった。
だが、パステルピンクたちが自分のたちの姿を見てさらに驚く。
「なっ、まだ変身したままじゃないか!」
「本当だわ。どういう事なのかしら」
そう、まだパステル戦士の姿に変身したままだったのだ。確かに変身はまったく解いていなかったのだが、聖獣たちと離れた状態でも変身したままだとは思わなかった。これには驚かされるばかりである。
パステルピンクたちはこくりと無言で頷くと、再び五重塔の中へと戻っていく。そこでさらに驚かされる光景を見たのだ。
「なっ、何だこの扉……!」
「あらやだ。これじゃまるで青くて丸いロボットが出す道具みたいじゃないですの」
そう、五重塔の階層のど真ん中に、ぽつんと扉が立っていたのだ。その扉はまるで、開けるとどこへでも行けそうな雰囲気を放っている。
「おやおや、不思議な事があるものですね」
住職が顎を触りながら扉に近付いていく。
「みなさん、気になりますよね」
こくこくと激しく頷くパステルピンクたち。なにせ目の前の扉には、開けてもいいよと言わんばかりにドアノブが備えられていたのだ。これは開けてみたくなるものである。
「心の準備はよろしいですね?」
「ああ、いいぜ」
「はい」
「もちろんですわ」
三者三様の返事をすると、住職がドアノブに手を掛けて、ゆっくりと回して開こうとする。すると、
「おや、おかしいですね。ドアノブが回りませんよ」
ガチャガチャと音を立てるものの、押せど引けども扉が開く気配はなかった。その様子に、パステルピンクたちは思わずこけてしまった。
「もしかして……」
ふと思いついたパステルシアンが扉に近付いていく。
「パステル戦士の力の強さは思いの力に比例する。だったら……」
パステルピンクはそう言いながら、住職に声を掛ける。
「私に開けさせてもらえますか?」
「えっ、ああいいですよ」
二つ返事で住職が扉から離れ、パステルシアンが扉の前に立つ。そして、深呼吸ひとつ、ドアノブにそっと手を掛ける。
(お願い、パステル王国につなげて!)
パステルシアンは願いを込めてドアノブを回す。すると……。
ガチャリと扉が開いた。手前側に。するとそこには、
「えっ!?」
「これはどういう事だ?」
なんと、扉を開けた目の前には、さっき別れたばかりのレインとシイロが立っているではないか。時間的なずれもない。まさに別れた時のままである。後ろにはパステルオレンジたちの姿も見えるのだから。
「ははは……冗談だよな?」
「さっきまでの思い詰めた気持ちは何だったのかしら……」
正直パステルピンクとパステルパープルも、引きつった笑いしか出てこなかった。今生の別れのつもりで覚悟して扉をくぐったというのに、いとも簡単に戻れてしまったのだから。もはやただただ拍子抜けするしかなかった。
「ちょっと、どういう事なの。説明してちょうだい!」
パステルブラウンが突っ掛かってくる。
「あはは、色鮮寺の五重塔に扉があったから、開けてみたらパステル王国とつながってたのよ」
「なにそれ、訳が分からないわ」
パステルシアンの答えに、パステルオレンジが怒っている。そりゃ二人だって、どれだけの覚悟を決めて別れる決意をしたのか分からないからだ。こうも簡単に戻れてしまうのなら、覚悟と涙を返せと叫びたくなるものである。
「あはは、何にしてもよかったよ。また会う事ができるんだね」
「まったくだな。よりにもよって色鮮寺か。まったくよう、あの寺は本当に謎の多い場所だよなぁ……」
「まったくよね……」
チェリーたち聖獣たちも、嬉し涙を浮かべながら、それぞれに愚痴めいた事を言ってみたり、喜びを表したりと反応に忙しそうである。
「そういえば、お三方とも変身が解けていませんね。お父様がそこに居られるというのも、こちらとつながった理由の一つなのかも知れませんね」
レインはどうにか平静を装いながら、色鮮寺とパステル王国がつながった理由を推測していた。だとしたら、偶然というか奇跡というか、もう運命レベルの何かを感じずにはいられないのである。
「それだったら、姉さん、あたしたちもそっちに行っちゃう?」
「ああ、悪くはないかもね」
パステルオレンジとパステルブラウンも困惑した表情を浮かべながら、扉の向こう側へ行くかどうか相談していた。ただ、もう結論は出ているようだったが。
「ええ、戻って来れるというのなら、その方がいいかも知れませんね。あなたたちの気持ちに、正直に従いなさい」
レインはにこりと笑顔でパステルオレンジとパステルブラウンに声を掛けた。
「はい、女王陛下」
その言葉に二人はにこりと笑顔を浮かべていた。
こうして、今生の別れから一転、2つの世界を行き来するという生活が始まったのであった。
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