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第188話 隠された部屋
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レインが連れてきた場所は、なんと女王の私室の一角だった。つまり、全然移動していないのである。
「実は、私の部屋には隠し部屋があるのです。代々国王または女王だけが使えるこの部屋には、隠された部屋があるのだと伝えられているのです」
レインはそのように話しているのだが、どうやら元国王である住職にも心当たりがあるようである。
「ああ、それなら私も国王の座を引き継いだ時に聞かされたな。ついでに言えば、レインに伝えたのは私だしな」
住職の言葉にレインはこくりと頷く。
「しかし、その部屋を見た者は誰も居ないという風に伝えられています。実際、私も見た事がありませんから」
レインが立つ目の前にあるのは長方形の大きな姿見だ。しかし、その大きさはよくよく見れば不自然なのだ。住職の背よりも高いし幅もある。まるで扉くらいの大きさがあるのである。
「ここに連れてきた時点でお察しかと思いますが、この姿見が入口になっているのだそうです」
「だが、私もレインも一度もこの扉が開いたところを見た事がない。すまないけれど、言い伝えというだけで、確証が持てないのだよ」
レインたちがそう話す通り、見れば見るほどただ大きいだけの姿見にしか見えなかった。
「うーん、何かないかな?」
パステルピンクが姿見をべたべたと触り始める。
「ちょっと、パステルピンク。不用意に触れちゃだめよ」
パステルシアンが止めようとする。
「だってよ。見てるだけじゃ何も分かんねえだろ?」
そう言って、パステルシアンの制止を振り切って姿見を触り出すパステルピンク。パステルシアンはその姿に呆れるばかりだった。
「それにしても、パステルピンクの言葉遣いが何だか男の子っぽいですね」
レインは妙な事を気にしていた。
「そりゃそうだろう。パステルピンクは男の子だからな。どういうわけか、伝説の戦士の素質があったようで、こうやって変身できているんだよ」
「はあ?!」
住職がしれっと答えれば、シイロが驚いて住職に突っ掛かっていた。
「一体どういう事なんだ。伝説の戦士は少女ではなかったのか?」
「い、いや。変身したらちゃんと少女になっているだろう? それに、変身できてしまっているのだから、私に問い詰められても困る」
実の娘に迫られてたじたじになる住職。さすがは護衛騎士。その迫力は圧巻の一言である。
「だったら、チェリー。お前はどうなんだ」
パステルピンクは春の季節の力をまとった伝説の戦士だ。だから、当然のように春の聖獣であるチェリーに詰問が飛ぶのである。
「ぼ、ボクだって分からないよ。ただ、千春とは波長が合ったとしか言いようがないよ。ボクの姿を見る事ができたんだから」
「ふむ、そうか……」
チェリーの姿を見る事ができた。これにはシイロも納得せざるを得なかった。パステル王国の人間以外では、聖獣を目視できる存在はごく稀なのだ。大体はその存在に気付く事ができないのである。
そうこう話をしている間、姿見を触っていたパステルピンクがあるものに気が付いた。
「うん? 何だこれ」
姿見を取り囲む装飾が施された枠に、違和感を感じて手を触れようとしたその時だった。
姿見がぱあっと光って音を立てながら動き出したではないか。
「ちょっ、ちょっと何をしたのよ、パステルピンク?!」
「分かんねえよ。枠に違和感を感じて触ってたら勝手に動いたんだよ」
問い詰めるパステルシアンに、慌てて言い訳をするパステルピンク。その騒ぎをよそにパステルパープルが姿見の枠を確認する。
「ははーん、そういう事ですのね」
「どういう事なんだ?」
ワイスが確認のために問い掛ける。
「ここをご覧下さいまし」
パステルパープルが指差した部分を見る一同。すると、その部分だけ装飾が周りとは違う事に気が付いた。
「おそらくこれが起動のスイッチですわね。ここに触れて力を流せば、姿見がずれて入口が現れるようになっていたのですわ」
パステルパープルの言う通り、姿見の後ろにはぽっかりと空いた空間があった。これがレインたちの言う隠し部屋なのだろう。
「本当に隠し部屋があっただなんて……。伝承というものを疑ってしまって恥ずかしい限りです」
「いやはや、私だって驚いているよ」
レインと住職は揃って反省をしていた。
「と、とにかく、気を取り直してまいりましょう。伝承の通りでしたら、この奥に何かしらの答えがあるはずです!」
すぐさま気持ちを切り替えるレイン。その言葉に全員が素直に頷いていた。
「では、私が最初に入りましょう。女王陛下に何かあってはいけません。それが護衛騎士としての務めですから」
伝えられてきただけで、実質忘れ去られていた部屋なのだ。地下の封印の間と同様に何があるか分からない。だからこそ、騎士たるシイロが先陣を切って、中の確認をするのである。
ごくりと息を飲むレインたち。剣を携え、中の様子を窺いながら姿見の後ろから現れた穴へと進み入っていくシイロ。
パステル王国の王位継承者だけに伝えられてきた部屋には、一体何があるというのだろうか。そして、パステルピンクたちは無事に地球に戻る事はできるのだろうか。その答えを求めて、シイロに続いて謎の空間へと進んでいくのだった。
「実は、私の部屋には隠し部屋があるのです。代々国王または女王だけが使えるこの部屋には、隠された部屋があるのだと伝えられているのです」
レインはそのように話しているのだが、どうやら元国王である住職にも心当たりがあるようである。
「ああ、それなら私も国王の座を引き継いだ時に聞かされたな。ついでに言えば、レインに伝えたのは私だしな」
住職の言葉にレインはこくりと頷く。
「しかし、その部屋を見た者は誰も居ないという風に伝えられています。実際、私も見た事がありませんから」
レインが立つ目の前にあるのは長方形の大きな姿見だ。しかし、その大きさはよくよく見れば不自然なのだ。住職の背よりも高いし幅もある。まるで扉くらいの大きさがあるのである。
「ここに連れてきた時点でお察しかと思いますが、この姿見が入口になっているのだそうです」
「だが、私もレインも一度もこの扉が開いたところを見た事がない。すまないけれど、言い伝えというだけで、確証が持てないのだよ」
レインたちがそう話す通り、見れば見るほどただ大きいだけの姿見にしか見えなかった。
「うーん、何かないかな?」
パステルピンクが姿見をべたべたと触り始める。
「ちょっと、パステルピンク。不用意に触れちゃだめよ」
パステルシアンが止めようとする。
「だってよ。見てるだけじゃ何も分かんねえだろ?」
そう言って、パステルシアンの制止を振り切って姿見を触り出すパステルピンク。パステルシアンはその姿に呆れるばかりだった。
「それにしても、パステルピンクの言葉遣いが何だか男の子っぽいですね」
レインは妙な事を気にしていた。
「そりゃそうだろう。パステルピンクは男の子だからな。どういうわけか、伝説の戦士の素質があったようで、こうやって変身できているんだよ」
「はあ?!」
住職がしれっと答えれば、シイロが驚いて住職に突っ掛かっていた。
「一体どういう事なんだ。伝説の戦士は少女ではなかったのか?」
「い、いや。変身したらちゃんと少女になっているだろう? それに、変身できてしまっているのだから、私に問い詰められても困る」
実の娘に迫られてたじたじになる住職。さすがは護衛騎士。その迫力は圧巻の一言である。
「だったら、チェリー。お前はどうなんだ」
パステルピンクは春の季節の力をまとった伝説の戦士だ。だから、当然のように春の聖獣であるチェリーに詰問が飛ぶのである。
「ぼ、ボクだって分からないよ。ただ、千春とは波長が合ったとしか言いようがないよ。ボクの姿を見る事ができたんだから」
「ふむ、そうか……」
チェリーの姿を見る事ができた。これにはシイロも納得せざるを得なかった。パステル王国の人間以外では、聖獣を目視できる存在はごく稀なのだ。大体はその存在に気付く事ができないのである。
そうこう話をしている間、姿見を触っていたパステルピンクがあるものに気が付いた。
「うん? 何だこれ」
姿見を取り囲む装飾が施された枠に、違和感を感じて手を触れようとしたその時だった。
姿見がぱあっと光って音を立てながら動き出したではないか。
「ちょっ、ちょっと何をしたのよ、パステルピンク?!」
「分かんねえよ。枠に違和感を感じて触ってたら勝手に動いたんだよ」
問い詰めるパステルシアンに、慌てて言い訳をするパステルピンク。その騒ぎをよそにパステルパープルが姿見の枠を確認する。
「ははーん、そういう事ですのね」
「どういう事なんだ?」
ワイスが確認のために問い掛ける。
「ここをご覧下さいまし」
パステルパープルが指差した部分を見る一同。すると、その部分だけ装飾が周りとは違う事に気が付いた。
「おそらくこれが起動のスイッチですわね。ここに触れて力を流せば、姿見がずれて入口が現れるようになっていたのですわ」
パステルパープルの言う通り、姿見の後ろにはぽっかりと空いた空間があった。これがレインたちの言う隠し部屋なのだろう。
「本当に隠し部屋があっただなんて……。伝承というものを疑ってしまって恥ずかしい限りです」
「いやはや、私だって驚いているよ」
レインと住職は揃って反省をしていた。
「と、とにかく、気を取り直してまいりましょう。伝承の通りでしたら、この奥に何かしらの答えがあるはずです!」
すぐさま気持ちを切り替えるレイン。その言葉に全員が素直に頷いていた。
「では、私が最初に入りましょう。女王陛下に何かあってはいけません。それが護衛騎士としての務めですから」
伝えられてきただけで、実質忘れ去られていた部屋なのだ。地下の封印の間と同様に何があるか分からない。だからこそ、騎士たるシイロが先陣を切って、中の確認をするのである。
ごくりと息を飲むレインたち。剣を携え、中の様子を窺いながら姿見の後ろから現れた穴へと進み入っていくシイロ。
パステル王国の王位継承者だけに伝えられてきた部屋には、一体何があるというのだろうか。そして、パステルピンクたちは無事に地球に戻る事はできるのだろうか。その答えを求めて、シイロに続いて謎の空間へと進んでいくのだった。
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