187 / 197
第187話 帰れる? 帰れない?
しおりを挟む
実に宴は盛大なものだった。国を救った英雄であるパステル戦士たちに対して、来る人来る人がみんな頭を下げてくる。中には土下座をしてきた者まで居た。そのくらいには国を救った英雄という存在は大きいのである。
パステル王国の料理はどうかと思ったものの、意外とパステルピンクたち地球人の口にも合ったようである。
その宴の中ではダンスまでする事になったのだが、パステルピンクは食事に夢中でパス。そもそも踊れやしないし、今履いている靴では確実といっていいくらいに、人の足に穴を開けかねないからだ。よく分かってる。
そんなわけで、パステルシアンとパステルパープル、パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロという組み合わせでダンスが披露されたのだった。パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロは双子という組み合わせもあってか、ものすごく息が合っていた。パステルシアンとパステルパープルは、パステルパープルのリードがうまかったので何事もなかったようである。
こうして宴は大盛況のうちに終わったのだった。
あとは騒ぎ足りないパステル王国の住民たちに宴の席は任せて、レインはパステル戦士たちを連れて再び自室へと戻ってきた。
「それでは、みなさんの世界に戻る方法というのをお教えしましょう」
椅子に座ったレインが、神妙な面持ちで語り出した。その雰囲気に、パステルピンクたちはごくりと息を飲んだ。
「正直言いまして、確証は持てません。片道なのか行き来ができるのか、はたまたちゃんと目的の場所に飛べるのかも分かりません。なにせ伝承ですからね」
レインは右頬に手を当てながら、首を傾げて話している。
「姉さん、それだったら多分大丈夫だ。私が行き来できる」
「そうだったわね。地球にも出てきてたし、モノトーン空間へあたいたちを引き込む事もできたものね」
シイロの言葉に、パステルブラウンが補足する。しかし、レインは首を横に振っている。
「それはモノトーン空間の話よ。パステル王国とは違うわ。同じ場所にあったらしいけれども、それはダクネースの力によって歪められていたからなのよ。だから、モノトーンでの話がそのままパステル王国に通用するとは限らないわ」
「くっ、言われてみれば、そうでございますね」
レインの言い分に、シイロは言いくるめられてしまった。
だが、レインの指摘だって間違ってはいない。今まではダクネースと同じ漆黒のオーラをまとっていたからこそ行使できていた可能性は否定できないのだ。それをパステル王国にそのまま適用しようとすると、そもそも飛べないか、とんでも戻って来れないといった事態が発生しないとも限らない。それに、それが使えるのがシイロというのなら、レインは姉として全力で止めなければならなかったのである。
しかし、シイロのさっきの言葉に、一人考え込んでいる人物が居た。
「それでしたら」
そう、パステルパープルだった。
「ダクネースと同じ力が使える条件があればよいというわけですわね」
「ええ、そうですね」
パステルパープルの質問に、レインは肯定する。
「でしたら、この城に同じ状態になっている場所が、一か所ございませんこと?」
続けて発言したパステルパープルの言葉に、レインたちは目をぱちぱちとさせていた。
「そうか、封印の間か」
ワイスが叫んだ。
「確かに、ダクネースはあそこで誕生したんだからな。負の感情が集まって形成された漆黒のオーラが漂っちゃあいるな……」
「ええ、ですが、危険といえば危険ですね」
ワイスも両手を組むくらいに悩んでいる。レインの苦言も仕方のない事だ。
「それを言うなら、女王陛下も他の世界にボクたちを飛ばせましたよね?」
「そうです。モノトーンの襲撃に、私たちを必死に逃がして下さいました。だったら……」
チェリーとグローリが口々に話すのだが、レインの表情は暗く、ただ左右に首を振るだけだった。
「いえ、私の力では狙った場所に飛ばす事はできません。あの時だって、最後の希望に賭けて必死でしたから、今の私ではきっと無理です」
レインにきっぱり否定されてしまった。
「だったら、最初に言ってた伝承ってやつをだな……」
パステルピンクが声を荒げてレインに迫ろうとしたのだが、その時に見せたレインの表情に、つい飲まれてしまう。
「まあ、その伝承なら、私も聞いた事がある」
ここで住職が出てくる。
「住職?」
「和尚……」
パステルオレンジとパステルブラウンが揃って住職に顔を向ける。
「多分、私が地球に転生したのは、もしかしたらその伝承のせいかも知れない。だったら……」
住職が語気を強めると、場の空気が一気に変わる。
「私が住職を務める、あの色鮮寺。もしかしたらあそこは、パステル王国と地球を結ぶ特異点なのかも知れないな」
住職は顎に手を当てて、真剣な表情で悩んでいる。
「……確かにそうかも知れない。あそこはダクネースの力を使おうとしても発動できなかった。もしかしたら、あそこはパステル王国とつながっているのかも知れない」
思わぬところから、地球に帰れる希望が出てきたのであった。その状況に驚いたレインは、
「……分かりました。では、今からその場所へとご案内致しましょう」
覚悟を決めたように椅子から立ち上がったのだった。
パステル王国の料理はどうかと思ったものの、意外とパステルピンクたち地球人の口にも合ったようである。
その宴の中ではダンスまでする事になったのだが、パステルピンクは食事に夢中でパス。そもそも踊れやしないし、今履いている靴では確実といっていいくらいに、人の足に穴を開けかねないからだ。よく分かってる。
そんなわけで、パステルシアンとパステルパープル、パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロという組み合わせでダンスが披露されたのだった。パステルオレンジとパステルブラウン、レインとシイロは双子という組み合わせもあってか、ものすごく息が合っていた。パステルシアンとパステルパープルは、パステルパープルのリードがうまかったので何事もなかったようである。
こうして宴は大盛況のうちに終わったのだった。
あとは騒ぎ足りないパステル王国の住民たちに宴の席は任せて、レインはパステル戦士たちを連れて再び自室へと戻ってきた。
「それでは、みなさんの世界に戻る方法というのをお教えしましょう」
椅子に座ったレインが、神妙な面持ちで語り出した。その雰囲気に、パステルピンクたちはごくりと息を飲んだ。
「正直言いまして、確証は持てません。片道なのか行き来ができるのか、はたまたちゃんと目的の場所に飛べるのかも分かりません。なにせ伝承ですからね」
レインは右頬に手を当てながら、首を傾げて話している。
「姉さん、それだったら多分大丈夫だ。私が行き来できる」
「そうだったわね。地球にも出てきてたし、モノトーン空間へあたいたちを引き込む事もできたものね」
シイロの言葉に、パステルブラウンが補足する。しかし、レインは首を横に振っている。
「それはモノトーン空間の話よ。パステル王国とは違うわ。同じ場所にあったらしいけれども、それはダクネースの力によって歪められていたからなのよ。だから、モノトーンでの話がそのままパステル王国に通用するとは限らないわ」
「くっ、言われてみれば、そうでございますね」
レインの言い分に、シイロは言いくるめられてしまった。
だが、レインの指摘だって間違ってはいない。今まではダクネースと同じ漆黒のオーラをまとっていたからこそ行使できていた可能性は否定できないのだ。それをパステル王国にそのまま適用しようとすると、そもそも飛べないか、とんでも戻って来れないといった事態が発生しないとも限らない。それに、それが使えるのがシイロというのなら、レインは姉として全力で止めなければならなかったのである。
しかし、シイロのさっきの言葉に、一人考え込んでいる人物が居た。
「それでしたら」
そう、パステルパープルだった。
「ダクネースと同じ力が使える条件があればよいというわけですわね」
「ええ、そうですね」
パステルパープルの質問に、レインは肯定する。
「でしたら、この城に同じ状態になっている場所が、一か所ございませんこと?」
続けて発言したパステルパープルの言葉に、レインたちは目をぱちぱちとさせていた。
「そうか、封印の間か」
ワイスが叫んだ。
「確かに、ダクネースはあそこで誕生したんだからな。負の感情が集まって形成された漆黒のオーラが漂っちゃあいるな……」
「ええ、ですが、危険といえば危険ですね」
ワイスも両手を組むくらいに悩んでいる。レインの苦言も仕方のない事だ。
「それを言うなら、女王陛下も他の世界にボクたちを飛ばせましたよね?」
「そうです。モノトーンの襲撃に、私たちを必死に逃がして下さいました。だったら……」
チェリーとグローリが口々に話すのだが、レインの表情は暗く、ただ左右に首を振るだけだった。
「いえ、私の力では狙った場所に飛ばす事はできません。あの時だって、最後の希望に賭けて必死でしたから、今の私ではきっと無理です」
レインにきっぱり否定されてしまった。
「だったら、最初に言ってた伝承ってやつをだな……」
パステルピンクが声を荒げてレインに迫ろうとしたのだが、その時に見せたレインの表情に、つい飲まれてしまう。
「まあ、その伝承なら、私も聞いた事がある」
ここで住職が出てくる。
「住職?」
「和尚……」
パステルオレンジとパステルブラウンが揃って住職に顔を向ける。
「多分、私が地球に転生したのは、もしかしたらその伝承のせいかも知れない。だったら……」
住職が語気を強めると、場の空気が一気に変わる。
「私が住職を務める、あの色鮮寺。もしかしたらあそこは、パステル王国と地球を結ぶ特異点なのかも知れないな」
住職は顎に手を当てて、真剣な表情で悩んでいる。
「……確かにそうかも知れない。あそこはダクネースの力を使おうとしても発動できなかった。もしかしたら、あそこはパステル王国とつながっているのかも知れない」
思わぬところから、地球に帰れる希望が出てきたのであった。その状況に驚いたレインは、
「……分かりました。では、今からその場所へとご案内致しましょう」
覚悟を決めたように椅子から立ち上がったのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜
ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!?
主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。
転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く…
※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。
※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる