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第175話 これがラスボス
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パステルピンクたちが合流している間、フォシンズはまだ瞑想の中に居た。まるで眠っているかのようにぴくりとも動かないフォシンズだが、その力は着実に増えていっていた。だが、その意識ははっきりしている。
(おや、おかしいな。目の前の壁が砕ける気配がない。あの軍勢の中を無事に生き延びているというのか?)
自分の置かれている状況に変化がない事をなんとなく悟ったフォシンズは、ゆっくりと目を開ける。そして、自分の置かれた状況を見て驚きを隠せなかった。
「なっ、君たち、いつの間に!?」
フォシンズは知らない間に、パステル戦士たちに囲まれてしまっていた。
「はっ、戦いの最中に眠りこけるたあ、大した余裕だな、フォシンズさんよぉ?」
のしのしと、成体のワイスがフォシンズを見上げながら言い放つ。
「バカなっ、あの数の僕の軍勢を相手にしながら、どうして無事なんだい?!」
「はっ、お前さんはパステル戦士たちの力を舐めすぎなんだよ!」
フォシンズが周りを見回しながら、慌てたように叫んでいる。しかし、自分の周りには聖獣たちと五人のパステル戦士が既に星形の結界を築いており、それを発動させようとしていた。聖獣の足りないところはシイロと住職が代わりに入っている。どうやらパステル王家の血筋がゆえに、いざという時にはその代役ができるようなのだ。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン」
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ」
「命実る時、秋の妖精パステルブラウン」
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル」
先程のモノトーン空間と同じように、五人は呪文の詠唱を始める。
「命は目覚め」
「命は躍動し」
「命は色を染め」
「命は成熟し」
「命はやがて眠る」
この言葉と同時に、五色の結界が二重に発動し、フォシンズは苦しみ始める。
「くそう。この僕が、こんな簡単に……」
「はっ、余裕ぶっこいて棒立ちしてるのが悪いんだよ! てめえの油断が全部悪いのさっ!」
フォシンズがぎりぎりと歯ぎしりをしている。ワイスは結界を維持しながら、フォシンズを煽り続けている。さすがは最古参の聖獣。余裕があるようだ。
だが、次の詠唱に入ろうとした瞬間だった。
「舐めるなぁ! 僕の力を間に合わせの力で封じ込められると思うじゃないよ!」
フォシンズは、瞑想で強めた力を一気に解き放つ。
すると、すでに結界が発動しているというのに、フォシンズの力は結界の光をかき消さんとするような勢いで辺りを飲み込み始めた。
「チュナラ大王ならともかく、シイロはまだ未熟。その不完全な結界で、僕の動きを封じたつもりか!」
フォシンズは結界がいまいち弱い、シイロが立つ位置を中心的に漆黒のオーラで攻撃し始めた。
「ぐっ……!」
あまりの攻撃の重さに、シイロの表情が歪む。
「シイロ!」
住職が叫ぶ。
「お、父さん……、だ、大丈夫よ」
強がるシイロだが、その表情はあまりにも険しい。
「はははっ、やせ我慢はやめるんだね! そうらもういっちょっ!」
フォシンズは瞑想で増幅させた力を、これでもかと惜しげにシイロの立つ位置へとぶつけていく。すると、シイロはさすがに耐え切れなくなってしまったのか、片膝をついてしまった。
「くっ、なんのこれしき……」
「ふん、未熟な護衛騎士ごときが、出しゃばり過ぎなんだよ!」
フォシンズが一気にオーラを放出すると、シイロは吹き飛んでしまった。
「きゃあっ!!」
その声と同時に、ここまで張り巡らせてきた結界が消えてしまう。さすがにこの状況には、パステルピンクたちは驚きを隠しきれなかった。
「ふふふ、残念だったね。僕が油断しているうちに浄化するつもりだったんだろうけれど、ただ寝てたわけじゃないんだよ」
フォシンズがにやりと不気味な笑みを浮かべる。
「さあ、パワーアップした僕の力を、その身に受けるといいさ。そして、儚く散れっ!」
フォシンズは雄たけびのようなものを上げると、両腕を伸ばしてその場で大きく振り回す。それと同時に凄まじいまでの漆黒のオーラが飛び出し、辺りに強い風圧を生み出した。
「くそっ、何だってんだ、この力は!」
「今までの比じゃないくらいに強い……」
その力に必死に耐えているパステル戦士と聖獣たち。だが、その圧倒的な力の前に、耐える事も限界を迎えてあえなく吹き飛ばされてしまう。
「ぐはっ!」
「くっ……!」
「うわあっ!」
周りを取り囲むパステルピンクが張り巡らせた蔓に、全員吹き飛ばされて叩きつけられてしまう。特に、女王の方向の壁は凍り付いているのでことさらダメージがきつかった。
「ぐう……」
それでもゆらりと立ち上がる。この程度で負けてたまるものかと必死だった。
「くくくっ、僕の寝首を掻くつもりだったのだろうけれど、残念だったね。こうなった以上は、もう君たちには勝ち目はないよ。パステル王国や女王ともども、すべて滅び去ってしまうのさ!」
フォシンズがじゅるりという音を立てている。
「ふふん、死ぬ時くらい、いい顔を見せておくれよ?」
フォシンズはそう言って、愉悦の咆哮を轟かせるのだった。
(おや、おかしいな。目の前の壁が砕ける気配がない。あの軍勢の中を無事に生き延びているというのか?)
自分の置かれている状況に変化がない事をなんとなく悟ったフォシンズは、ゆっくりと目を開ける。そして、自分の置かれた状況を見て驚きを隠せなかった。
「なっ、君たち、いつの間に!?」
フォシンズは知らない間に、パステル戦士たちに囲まれてしまっていた。
「はっ、戦いの最中に眠りこけるたあ、大した余裕だな、フォシンズさんよぉ?」
のしのしと、成体のワイスがフォシンズを見上げながら言い放つ。
「バカなっ、あの数の僕の軍勢を相手にしながら、どうして無事なんだい?!」
「はっ、お前さんはパステル戦士たちの力を舐めすぎなんだよ!」
フォシンズが周りを見回しながら、慌てたように叫んでいる。しかし、自分の周りには聖獣たちと五人のパステル戦士が既に星形の結界を築いており、それを発動させようとしていた。聖獣の足りないところはシイロと住職が代わりに入っている。どうやらパステル王家の血筋がゆえに、いざという時にはその代役ができるようなのだ。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン」
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ」
「命実る時、秋の妖精パステルブラウン」
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル」
先程のモノトーン空間と同じように、五人は呪文の詠唱を始める。
「命は目覚め」
「命は躍動し」
「命は色を染め」
「命は成熟し」
「命はやがて眠る」
この言葉と同時に、五色の結界が二重に発動し、フォシンズは苦しみ始める。
「くそう。この僕が、こんな簡単に……」
「はっ、余裕ぶっこいて棒立ちしてるのが悪いんだよ! てめえの油断が全部悪いのさっ!」
フォシンズがぎりぎりと歯ぎしりをしている。ワイスは結界を維持しながら、フォシンズを煽り続けている。さすがは最古参の聖獣。余裕があるようだ。
だが、次の詠唱に入ろうとした瞬間だった。
「舐めるなぁ! 僕の力を間に合わせの力で封じ込められると思うじゃないよ!」
フォシンズは、瞑想で強めた力を一気に解き放つ。
すると、すでに結界が発動しているというのに、フォシンズの力は結界の光をかき消さんとするような勢いで辺りを飲み込み始めた。
「チュナラ大王ならともかく、シイロはまだ未熟。その不完全な結界で、僕の動きを封じたつもりか!」
フォシンズは結界がいまいち弱い、シイロが立つ位置を中心的に漆黒のオーラで攻撃し始めた。
「ぐっ……!」
あまりの攻撃の重さに、シイロの表情が歪む。
「シイロ!」
住職が叫ぶ。
「お、父さん……、だ、大丈夫よ」
強がるシイロだが、その表情はあまりにも険しい。
「はははっ、やせ我慢はやめるんだね! そうらもういっちょっ!」
フォシンズは瞑想で増幅させた力を、これでもかと惜しげにシイロの立つ位置へとぶつけていく。すると、シイロはさすがに耐え切れなくなってしまったのか、片膝をついてしまった。
「くっ、なんのこれしき……」
「ふん、未熟な護衛騎士ごときが、出しゃばり過ぎなんだよ!」
フォシンズが一気にオーラを放出すると、シイロは吹き飛んでしまった。
「きゃあっ!!」
その声と同時に、ここまで張り巡らせてきた結界が消えてしまう。さすがにこの状況には、パステルピンクたちは驚きを隠しきれなかった。
「ふふふ、残念だったね。僕が油断しているうちに浄化するつもりだったんだろうけれど、ただ寝てたわけじゃないんだよ」
フォシンズがにやりと不気味な笑みを浮かべる。
「さあ、パワーアップした僕の力を、その身に受けるといいさ。そして、儚く散れっ!」
フォシンズは雄たけびのようなものを上げると、両腕を伸ばしてその場で大きく振り回す。それと同時に凄まじいまでの漆黒のオーラが飛び出し、辺りに強い風圧を生み出した。
「くそっ、何だってんだ、この力は!」
「今までの比じゃないくらいに強い……」
その力に必死に耐えているパステル戦士と聖獣たち。だが、その圧倒的な力の前に、耐える事も限界を迎えてあえなく吹き飛ばされてしまう。
「ぐはっ!」
「くっ……!」
「うわあっ!」
周りを取り囲むパステルピンクが張り巡らせた蔓に、全員吹き飛ばされて叩きつけられてしまう。特に、女王の方向の壁は凍り付いているのでことさらダメージがきつかった。
「ぐう……」
それでもゆらりと立ち上がる。この程度で負けてたまるものかと必死だった。
「くくくっ、僕の寝首を掻くつもりだったのだろうけれど、残念だったね。こうなった以上は、もう君たちには勝ち目はないよ。パステル王国や女王ともども、すべて滅び去ってしまうのさ!」
フォシンズがじゅるりという音を立てている。
「ふふん、死ぬ時くらい、いい顔を見せておくれよ?」
フォシンズはそう言って、愉悦の咆哮を轟かせるのだった。
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