165 / 197
第165話 隠れていた真実
しおりを挟む
バアンっと大きな音を立てて扉が開く。
真っ先に飛び込んだシイロが剣を構えて辺りを見回すが、特に何かが居る気配はなかった。
だが、バルコニーの方に視線をやった時に、シイロの表情は驚愕に染まってしまう。
「あ……あ……、女王、陛下……」
後ろからぞろぞろと入ってきたパステルピンクたちも、その声に反応してシイロが見る方向を見る。
「噓っ、女王様?!」
聖獣たちが驚きの声を上げる。
その視線の先には、いまだに石化したままのレインの姿があったのだ。その姿は聖獣たちを逃がした後の祈りの姿そのままだった。
「なぜだ? ダクネースを倒したのに、なんで固まったままなんだよ……」
ワイスがてとてととレインへと近付いていく。石になっているとはいえ、そこからわずかに感じ取れる力のおかげで、その石像がレイン本人だと確認された。
「間違いねえ……。この石はレイン様本人だ……」
「レイン!」
住職が石化したレインに駆け寄る。しかし、触って何かあってはいけないと、住職は触れる事はできなかった。
パステル王国の住人からしたら、誰もが疑いたくなる光景だが、これが現実なのである。
「なぜだ……。なぜダクネースを倒したというのに、レイン様は、パステル王国は元に戻らないのだ……」
シイロが愕然として膝を落としている。
「噓でしょ? 私たち、頑張ったのにこんな事ってありえるの?」
パステルシアンも泣きそうな顔をしながら、この状況を見守っている。
誰もがこの状況に気を取られている最中、予想外の行動に出る者が居た。だが、
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
それにいち早く気が付いたパステルパープルによって、その者の動きを止められてしまった。
「あたたた……、気付かれちゃうなんて、予想外だったな」
「フォシンズ。あなた、今何をなさろうとしましたの?」
パステルパープルがフォシンズを睨み付ける。だが、フォシンズは悪びれる様子もなくにこにことしている。
「何って、君たちは僕の事を信じ切っていたからね。裏切ったらどんな反応をするのか見てみたかったんだよ」
「なぜ、そのような事を?」
にこにことしながら答えるフォシンズに、パステルパープルは更に表情を険しくする。
「フォシンズ、お前まさか……」
ワイスが走ってくる。
「まさか? とんでもない。僕は最初から、君たちの仲間なんかじゃないんだよ。忘れたのかい? 僕が誕生した経緯を」
フォシンズはにやりと笑って、ワイスたちを睨み付けている。
「あははははっ、滑稽だったね。僕を信じ切っている君たちの姿は。なぜ僕が鳴いて、ダクネースの力で生み出された連中が止まったのか、不思議に思わなかったのかい?」
そう話すフォシンズの体が、みるみるうちに変わっていく。
「僕はね、君たちの上位の聖獣には違いないさ。でも、その実態は……」
可愛らしかった外見が、みるみる醜い化け物へと変わっていく。その変化に、パステルシアンたちは固まって動けなかった。
「うらあっ!」
「へぶっ!」
パステルピンクを除いて。
気が付いたらパステルピンクがフォシンズに蹴り掛かっていた。その飛び蹴りを食らったフォシンズは、変身途中とあって簡単にその攻撃を食らい、吹き飛んでしまう。
「ちょ、ちょっと待ってよ。変身中は攻撃しないっていうお約束じゃないのかい?」
「敵だと認識したらそうともいかないだろうが!」
メタいツッコミを入れるフォシンズに、そんな事知るかと言い切るパステルピンク。その光景に誰もがぽかーんと立ち尽くしていた。
「まったく、せっかく決めようとしたのに締まらなくなっちゃったじゃないか」
フォシンズは立ち上がりながら、体の埃を払っている。そして、改めて変身を完了させてパステルピンクたちに向き合った。
「僕は聖獣フォシンズなのはいいよね?」
確認を取ってくるので、パステルピンクたちは頷く。
「でも、その実態はダクネースの分身なんだ。浄化されて君たちの側に傾いたダクネース本人なんだよ」
さらりとフォシンズはとんでもない事を告白してくる。
「つまり、お前を倒さないと真の平和は訪れないって事だな」
「まあそういう事だね。ただ、倒せるかどうかといったら、倒す事はできないけれどね」
「どういう事だ?」
フォシンズの強がりに、パステルピンクが睨みを利かせる。
「ダクネースの正体は負の感情だ。つまり僕もその負の感情の塊なんだ。その感情が尽きる事がない以上、消し去る事は不可能なんだよ」
フォシンズが怯む事なく説明をする。
「だから、今までは僕の体を媒体として、再び城の地下に閉じ込める事で事態を収束してきたんだ」
「つまり、さっき倒したダクネースは、過去のお前ってわけなのか」
「そういう事だね」
さらりと明かされるとんでもない真実。この事にはシイロたちは驚きを隠せなかった。
「でも、今回は予想外だったね。ダクネースが最後の力を振り絞って、僕の中に入ってきたんだから」
フォシンズはそう呟くと、鋭い目をパステルピンクたちに向ける。
「今は……君たちを殺したくて仕方がないよ。さあ、真の平和のために僕に刃を向ける覚悟はあるかい?」
そう言い放つフォシンズの瞳が怪しく光ったのだった。
真っ先に飛び込んだシイロが剣を構えて辺りを見回すが、特に何かが居る気配はなかった。
だが、バルコニーの方に視線をやった時に、シイロの表情は驚愕に染まってしまう。
「あ……あ……、女王、陛下……」
後ろからぞろぞろと入ってきたパステルピンクたちも、その声に反応してシイロが見る方向を見る。
「噓っ、女王様?!」
聖獣たちが驚きの声を上げる。
その視線の先には、いまだに石化したままのレインの姿があったのだ。その姿は聖獣たちを逃がした後の祈りの姿そのままだった。
「なぜだ? ダクネースを倒したのに、なんで固まったままなんだよ……」
ワイスがてとてととレインへと近付いていく。石になっているとはいえ、そこからわずかに感じ取れる力のおかげで、その石像がレイン本人だと確認された。
「間違いねえ……。この石はレイン様本人だ……」
「レイン!」
住職が石化したレインに駆け寄る。しかし、触って何かあってはいけないと、住職は触れる事はできなかった。
パステル王国の住人からしたら、誰もが疑いたくなる光景だが、これが現実なのである。
「なぜだ……。なぜダクネースを倒したというのに、レイン様は、パステル王国は元に戻らないのだ……」
シイロが愕然として膝を落としている。
「噓でしょ? 私たち、頑張ったのにこんな事ってありえるの?」
パステルシアンも泣きそうな顔をしながら、この状況を見守っている。
誰もがこの状況に気を取られている最中、予想外の行動に出る者が居た。だが、
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
それにいち早く気が付いたパステルパープルによって、その者の動きを止められてしまった。
「あたたた……、気付かれちゃうなんて、予想外だったな」
「フォシンズ。あなた、今何をなさろうとしましたの?」
パステルパープルがフォシンズを睨み付ける。だが、フォシンズは悪びれる様子もなくにこにことしている。
「何って、君たちは僕の事を信じ切っていたからね。裏切ったらどんな反応をするのか見てみたかったんだよ」
「なぜ、そのような事を?」
にこにことしながら答えるフォシンズに、パステルパープルは更に表情を険しくする。
「フォシンズ、お前まさか……」
ワイスが走ってくる。
「まさか? とんでもない。僕は最初から、君たちの仲間なんかじゃないんだよ。忘れたのかい? 僕が誕生した経緯を」
フォシンズはにやりと笑って、ワイスたちを睨み付けている。
「あははははっ、滑稽だったね。僕を信じ切っている君たちの姿は。なぜ僕が鳴いて、ダクネースの力で生み出された連中が止まったのか、不思議に思わなかったのかい?」
そう話すフォシンズの体が、みるみるうちに変わっていく。
「僕はね、君たちの上位の聖獣には違いないさ。でも、その実態は……」
可愛らしかった外見が、みるみる醜い化け物へと変わっていく。その変化に、パステルシアンたちは固まって動けなかった。
「うらあっ!」
「へぶっ!」
パステルピンクを除いて。
気が付いたらパステルピンクがフォシンズに蹴り掛かっていた。その飛び蹴りを食らったフォシンズは、変身途中とあって簡単にその攻撃を食らい、吹き飛んでしまう。
「ちょ、ちょっと待ってよ。変身中は攻撃しないっていうお約束じゃないのかい?」
「敵だと認識したらそうともいかないだろうが!」
メタいツッコミを入れるフォシンズに、そんな事知るかと言い切るパステルピンク。その光景に誰もがぽかーんと立ち尽くしていた。
「まったく、せっかく決めようとしたのに締まらなくなっちゃったじゃないか」
フォシンズは立ち上がりながら、体の埃を払っている。そして、改めて変身を完了させてパステルピンクたちに向き合った。
「僕は聖獣フォシンズなのはいいよね?」
確認を取ってくるので、パステルピンクたちは頷く。
「でも、その実態はダクネースの分身なんだ。浄化されて君たちの側に傾いたダクネース本人なんだよ」
さらりとフォシンズはとんでもない事を告白してくる。
「つまり、お前を倒さないと真の平和は訪れないって事だな」
「まあそういう事だね。ただ、倒せるかどうかといったら、倒す事はできないけれどね」
「どういう事だ?」
フォシンズの強がりに、パステルピンクが睨みを利かせる。
「ダクネースの正体は負の感情だ。つまり僕もその負の感情の塊なんだ。その感情が尽きる事がない以上、消し去る事は不可能なんだよ」
フォシンズが怯む事なく説明をする。
「だから、今までは僕の体を媒体として、再び城の地下に閉じ込める事で事態を収束してきたんだ」
「つまり、さっき倒したダクネースは、過去のお前ってわけなのか」
「そういう事だね」
さらりと明かされるとんでもない真実。この事にはシイロたちは驚きを隠せなかった。
「でも、今回は予想外だったね。ダクネースが最後の力を振り絞って、僕の中に入ってきたんだから」
フォシンズはそう呟くと、鋭い目をパステルピンクたちに向ける。
「今は……君たちを殺したくて仕方がないよ。さあ、真の平和のために僕に刃を向ける覚悟はあるかい?」
そう言い放つフォシンズの瞳が怪しく光ったのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる