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第164話 帰還、パステル王国
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ダクネースとプリムが消え去ると、辺りの空間が歪み始める。
「な、なんなんだ、これはっ!」
慌てるパステルピンク。この状況でもフォシンズとワイスは冷静だった。
「心配すんな。ダクネースが消えて空間が元に戻っていくだけだ」
「そう、ここはダクネースの力で生み出された空間だからね。その力の源が消えたから、それに伴って作られた空間も維持ができなくなったんだ」
歪んでいく空間が、やがて本来の姿を見せる。
「なっ、ここは!」
歪みが消えた瞬間、目の前に広がった景色にシイロたちが驚いている。
「ここは、パステル王国じゃないの!」
「でも、なんだ……? ダクネースを倒したのに、滅ぼされた時のままじゃないか」
パステルオレンジとパステルブラウンが、声を上げて驚いている。
「確かにこれは妙だね。ダクネースたちを倒せば、その力の影響が抜けて元に戻っていくはずなのに……」
フォシンズもものすごく訝しんでいる。
「そんな事よりも、女王陛下は?!」
シイロが叫んでいる。母親が消えた悲しみで涙を流してはいるが、すぐに気持ちを切り替えるあたり、さすがは騎士だと言える。
「まあ、落ち着け。これだけ荒れた状態のままなんだ。何が起こるか分からねえから、慎重に王城を目指そう」
ワイスの言葉に全員が頷いて、一路パステル王城を目指す事になった。
それにしても、城を目指す道中に見た景色は酷いものである。空はどんよりと灰色の分厚い雲に覆われ、地面はあちこちが抉れて土の色が見え、湖などの水場も土と瘴気で濁っている。誰がどう見ても、ダクネースの影響がまだ残っているようだった。
「これは……酷すぎるぜ」
「どうして、こんな……」
パステルピンクとパステルシアンは、そんな言葉を漏らしていた。
他のみんなもいろいろ思うところはあるのだが、とにかく状況を確認するべく、パステル王城への道をひたすら走っていった。
「見えた! あれがパステル王城だよ!」
もう叫ぶのはチェリーである。
「なんて事……、城もあの時のままだわ」
グローリが嘆いている。
それもそのはずである。チェリーたち聖獣は、レイン女王が最後の力を振り絞って城を脱出させたのだ。つまり、レイン女王の居る城に居たわけである。
パステル王城は白い壁と色とりどりの屋根と旗に包まれた、それはとても美しい城なのだ。それがどうだろうか。あちこち壁が破壊されて中が見えており、場所によっては完全に崩れ去っている。そこには、在りし日の美しさなど微塵も残っていなかったのだ。
「なんて事だ……。約50年ぶりに見た我が城が、このような状態にあるとは……」
住職も愕然として城を眺めている。
城の周りを取り囲む堀。そこに架かる橋も破壊されており、これでは一部の面々が中には入れない。
「大王、僕の背中に乗って」
「すまないね、フォシンズ」
フォシンズが背中に住職を乗せる。今の住職はただの人間であり、とても堀の幅を飛び越える事などできなかった。
聖獣たちは自分の力を与えたパステル戦士の肩に乗る。シイロは飛び越えようと思えば飛び越えられるのだが、
「シイロも背中に乗りなさい」
「いや、しかし」
「君は騎士です。いざという時のために力を残しておきなさい」
「はっ、承知致しました」
父親である住職に説得されて、シイロもフォシンズの背中に乗り込んだ。
「さあ、城に入るよ!」
フォシンズが先頭切って堀を飛び越える。それに続いてパステルピンクたちも飛び越えて中へと入っていく。そして、瓦礫を飛び越えながら、一路レイン女王の居る場所を目指した。
「俺っちたちが最後に女王陛下を見たのは、女王陛下の自室だ。そこへ行けば女王陛下が居られるから、状況が分かるはずだぜ」
「分かった、女王の自室だね」
ワイスの声に、フォシンズは頷く。フォシンズも聖獣なので、女王の部屋は把握していた。瓦礫や倒れた柱を飛び越え、階段を駆け上がり、一路レイン女王の部屋を目指した。
「そこの突き当たりが女王陛下の部屋だ。……だが、なんか妙だな」
廊下の突き当たりにある扉を見たワイスが違和感を覚える。
「そうだね。やけにきれいすぎないかな」
フォシンズも違和感を口にする。
それもそうだろう。これだけ周りが破壊されているというのに、女王の部屋の扉だけは無傷なのである。ワイスたち聖獣が女王の力によって脱出させられた時は、激しい襲撃の真っ只中だったのだ。それを考えると、扉が無傷というのは違和感しかなかったのである。いくら女王の力があるとはいえ、あの時は聖獣たちを逃がすのに必死で、その結界が機能していたとは思えなかった。
「どうやら、あの部屋の中に入る際には、細心の注意を払った方がよさそうだね」
「ああ、まったくだぜ。ここに来てこんな嫌な予感がするなんて思わなかった」
「分かりましたわ。とにかく、あの部屋には注意ですのね」
「そういうこった」
女王の部屋の前にたどり着いたパステルピンクたち。確かに目の前の扉は、周りのどこよりも白く、まったくの無傷である。だが、違和感はそれだけではなかった。
「女王陛下の結界がない。結界があるなら七色の光が見えるはずだからな」
「そうね。本当におかしいわ」
聖獣たちが思い当たる事を口にする。
「だったら、私が扉を開けて中に進もう。騎士たる者の務めだ」
シイロの言葉に、住職を含めて全員が黙って頷く。そして、シイロが扉に手を掛け、ゆっくりとその扉を開いたのだった。
「な、なんなんだ、これはっ!」
慌てるパステルピンク。この状況でもフォシンズとワイスは冷静だった。
「心配すんな。ダクネースが消えて空間が元に戻っていくだけだ」
「そう、ここはダクネースの力で生み出された空間だからね。その力の源が消えたから、それに伴って作られた空間も維持ができなくなったんだ」
歪んでいく空間が、やがて本来の姿を見せる。
「なっ、ここは!」
歪みが消えた瞬間、目の前に広がった景色にシイロたちが驚いている。
「ここは、パステル王国じゃないの!」
「でも、なんだ……? ダクネースを倒したのに、滅ぼされた時のままじゃないか」
パステルオレンジとパステルブラウンが、声を上げて驚いている。
「確かにこれは妙だね。ダクネースたちを倒せば、その力の影響が抜けて元に戻っていくはずなのに……」
フォシンズもものすごく訝しんでいる。
「そんな事よりも、女王陛下は?!」
シイロが叫んでいる。母親が消えた悲しみで涙を流してはいるが、すぐに気持ちを切り替えるあたり、さすがは騎士だと言える。
「まあ、落ち着け。これだけ荒れた状態のままなんだ。何が起こるか分からねえから、慎重に王城を目指そう」
ワイスの言葉に全員が頷いて、一路パステル王城を目指す事になった。
それにしても、城を目指す道中に見た景色は酷いものである。空はどんよりと灰色の分厚い雲に覆われ、地面はあちこちが抉れて土の色が見え、湖などの水場も土と瘴気で濁っている。誰がどう見ても、ダクネースの影響がまだ残っているようだった。
「これは……酷すぎるぜ」
「どうして、こんな……」
パステルピンクとパステルシアンは、そんな言葉を漏らしていた。
他のみんなもいろいろ思うところはあるのだが、とにかく状況を確認するべく、パステル王城への道をひたすら走っていった。
「見えた! あれがパステル王城だよ!」
もう叫ぶのはチェリーである。
「なんて事……、城もあの時のままだわ」
グローリが嘆いている。
それもそのはずである。チェリーたち聖獣は、レイン女王が最後の力を振り絞って城を脱出させたのだ。つまり、レイン女王の居る城に居たわけである。
パステル王城は白い壁と色とりどりの屋根と旗に包まれた、それはとても美しい城なのだ。それがどうだろうか。あちこち壁が破壊されて中が見えており、場所によっては完全に崩れ去っている。そこには、在りし日の美しさなど微塵も残っていなかったのだ。
「なんて事だ……。約50年ぶりに見た我が城が、このような状態にあるとは……」
住職も愕然として城を眺めている。
城の周りを取り囲む堀。そこに架かる橋も破壊されており、これでは一部の面々が中には入れない。
「大王、僕の背中に乗って」
「すまないね、フォシンズ」
フォシンズが背中に住職を乗せる。今の住職はただの人間であり、とても堀の幅を飛び越える事などできなかった。
聖獣たちは自分の力を与えたパステル戦士の肩に乗る。シイロは飛び越えようと思えば飛び越えられるのだが、
「シイロも背中に乗りなさい」
「いや、しかし」
「君は騎士です。いざという時のために力を残しておきなさい」
「はっ、承知致しました」
父親である住職に説得されて、シイロもフォシンズの背中に乗り込んだ。
「さあ、城に入るよ!」
フォシンズが先頭切って堀を飛び越える。それに続いてパステルピンクたちも飛び越えて中へと入っていく。そして、瓦礫を飛び越えながら、一路レイン女王の居る場所を目指した。
「俺っちたちが最後に女王陛下を見たのは、女王陛下の自室だ。そこへ行けば女王陛下が居られるから、状況が分かるはずだぜ」
「分かった、女王の自室だね」
ワイスの声に、フォシンズは頷く。フォシンズも聖獣なので、女王の部屋は把握していた。瓦礫や倒れた柱を飛び越え、階段を駆け上がり、一路レイン女王の部屋を目指した。
「そこの突き当たりが女王陛下の部屋だ。……だが、なんか妙だな」
廊下の突き当たりにある扉を見たワイスが違和感を覚える。
「そうだね。やけにきれいすぎないかな」
フォシンズも違和感を口にする。
それもそうだろう。これだけ周りが破壊されているというのに、女王の部屋の扉だけは無傷なのである。ワイスたち聖獣が女王の力によって脱出させられた時は、激しい襲撃の真っ只中だったのだ。それを考えると、扉が無傷というのは違和感しかなかったのである。いくら女王の力があるとはいえ、あの時は聖獣たちを逃がすのに必死で、その結界が機能していたとは思えなかった。
「どうやら、あの部屋の中に入る際には、細心の注意を払った方がよさそうだね」
「ああ、まったくだぜ。ここに来てこんな嫌な予感がするなんて思わなかった」
「分かりましたわ。とにかく、あの部屋には注意ですのね」
「そういうこった」
女王の部屋の前にたどり着いたパステルピンクたち。確かに目の前の扉は、周りのどこよりも白く、まったくの無傷である。だが、違和感はそれだけではなかった。
「女王陛下の結界がない。結界があるなら七色の光が見えるはずだからな」
「そうね。本当におかしいわ」
聖獣たちが思い当たる事を口にする。
「だったら、私が扉を開けて中に進もう。騎士たる者の務めだ」
シイロの言葉に、住職を含めて全員が黙って頷く。そして、シイロが扉に手を掛け、ゆっくりとその扉を開いたのだった。
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