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第143話 光
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「なんだ、この光はっ!?」
パステルピンクが叫ぶ。
「急に光り出したけれど、何だというの?」
パステルブラウンも知らない光だった。
その光は黒い玉を急激に包み込むと、急激に黒い玉に吸い込まれていく。そして、その光は黒い玉に完全に吸い込まれてしまった。
「えっ、どういう事?」
パステルシアンは呆然としている。これは全員がそうである。急激にまばゆい光が放たれたかと思うと、そのすべてが黒い玉に吸い込まれて消えてしまったのだから。一体何だったのだろうか。
そう思った瞬間、黒い玉が激しく揺れ始める。この光景に、パステルピンクたちは一斉に構える。何が起こるか分かったものではないからだ。
やがて激しい揺れが収まると、黒い玉にピシピシと亀裂が入り始め、そこから眩いばかりの光が漏れ始めた。
「一体、何が始まるのですの?」
パステルパープルがぽつりと漏らす。
そうしている間にも黒い玉の亀裂は増えていく。そして、亀裂に耐え切れなくなった黒い玉は再び激しく揺れ始めた。この様子にパステルピンクたちにより一層の緊迫感が漂う。
ついに、眩いばかりの光を放ち、黒い玉は激しく砕け散った。
「うわあぁっ!!」
あまりの眩しさに声を上げてしまうパステルピンクたち。これにはチェリーたちも同じように声を上げてしまっていた。
やがて、光が収まると、そこから現れたのは翼の生えたふわふわの獣だった。
「な、んだ、こいつは……」
パステルピンクが思わず手に取ってしまう。
「きゅい……」
すると、その獣はパステルピンクの顔を見てにこりと笑った。あまりの可愛さに、パステルピンクの表情が崩壊していた。
「はっ、それよりシイロは?!」
しばらくその姿を見ていたパステルオレンジとパステルブラウンが、星形の結界に囲まれていたシイロの方を勢いよく見た。すると、シイロの下半身を凍らせていた氷はすっかり無くなっており、シイロはその場に膝をついて座り込んでいた。倒れていないあたりはさすが元騎士といったところである。
「う……」
シイロが声を上げて動き出した。
「みんな、シイロが目を覚ましたわ」
パステルブラウンの声に、パステルピンクたちも構える。ただ、パステルピンクだけは腕に生まれたばかりの獣を抱き締めたままである。
「……ここは、どこだ?」
ボーっとした感じで顔を上げて、シイロは辺りを見回した。さっきまでとは明らかに様子が違う。
「目ぇ覚めたか? シイロ」
「あんたは……、確かワイスだったな」
「おうよっ。冬を司る静寂のワイス様よ」
静寂……、どこが静かなんだろうか。うん、突っ込んではいけないとパステルピンクたちは思った。
ワイスはパステルピンクたちを睨んだ後、シイロに向き合った。サングラスのせいで、本当に睨んだかどうかは分からないが、多分睨んだだろう。
「お前さんは今まで、負の感情に捕らわれて正気を失ってたってわけよ。モノトーン三傑の一人としてな」
「モノトーン……三傑?」
「おう、それでもって、お前さんは格下であるモノトーン四天王を使ってパステル王国他、いろんな国を滅ぼしてきたんだ」
ワイスはちらりとイエーロを見る。
「ええ、そうね。パステル王国の攻略はシイロ様は直接関わってはいなかったけれど、作戦は立てられましたわねぇ」
イエーロから証言が得られる。
「そんな……、私が……パステル王国を?」
シイロは驚愕の表情を浮かべて、頭を抱える。
「……それでは、それではレイン様は一体?!」
シイロが叫ぶと、ワイスは左右に首を振った。
「俺っちたちを逃すために全力を使い果たして、石になっちまった」
「そ、そんな……」
シイロは膝をついたまま前のめりに倒れる。そして、上体を起こしたかと思うと、剣を手に取った。
「護るべき方を護れず、ましてや手に掛けてしまうなど、護衛騎士としてあるまじき行為! ここで私は……っ!」
「待てよっ!」
剣を手に取ったシイロは、それを自分に突き立てようとする。だが、それをワイスが制止した。
「石にはなっちまったが、死んだと決まったわけじゃねえ。俺っちたちは無事だし、ましてや伝説の戦士たちも誕生している。……まだ元に戻す手立てが残ってるはずだ」
「!?」
ワイスが強く言うと、シイロはぴたりと手を止めた。
「……ならば、私はまだ後戻りができるのか?」
「さあな。元に戻れるかどうかは、お前さん次第と言ってはいいだろうがな」
シイロの言葉に、ワイスは少し厳しめに答える。すると、シイロは下を向いてしばらく考えていた。
「……分かった。全然覚えてはいないが、お前たちに迷惑を掛けていた事は重々把握した。レイン女王陛下の護衛騎士シイロ。贖罪のためにお前たちと同行、協力しよう」
「はっ、騎士ってのは堅苦しいなぁ。本当に変わんねえな、シイロはよ」
シイロの言い回しに苦言を呈するワイス。その姿を見て、チェリーとグローリは苦笑いをするしかなかった。
「まっ、これで残る敵はダクネースただ一人か。シイロがこれだけの強敵に変わってたんだ。奴も一筋縄じゃあ、いかねえだろうな」
ワイスは禍々しい気配を感じる方向を見て呟く。
ついに迎えた、モノトーンのボスとの対決である。
パステルピンクたちはモノトーンを倒し、平和を取り戻す事はできるのだろうか?
パステルピンクが叫ぶ。
「急に光り出したけれど、何だというの?」
パステルブラウンも知らない光だった。
その光は黒い玉を急激に包み込むと、急激に黒い玉に吸い込まれていく。そして、その光は黒い玉に完全に吸い込まれてしまった。
「えっ、どういう事?」
パステルシアンは呆然としている。これは全員がそうである。急激にまばゆい光が放たれたかと思うと、そのすべてが黒い玉に吸い込まれて消えてしまったのだから。一体何だったのだろうか。
そう思った瞬間、黒い玉が激しく揺れ始める。この光景に、パステルピンクたちは一斉に構える。何が起こるか分かったものではないからだ。
やがて激しい揺れが収まると、黒い玉にピシピシと亀裂が入り始め、そこから眩いばかりの光が漏れ始めた。
「一体、何が始まるのですの?」
パステルパープルがぽつりと漏らす。
そうしている間にも黒い玉の亀裂は増えていく。そして、亀裂に耐え切れなくなった黒い玉は再び激しく揺れ始めた。この様子にパステルピンクたちにより一層の緊迫感が漂う。
ついに、眩いばかりの光を放ち、黒い玉は激しく砕け散った。
「うわあぁっ!!」
あまりの眩しさに声を上げてしまうパステルピンクたち。これにはチェリーたちも同じように声を上げてしまっていた。
やがて、光が収まると、そこから現れたのは翼の生えたふわふわの獣だった。
「な、んだ、こいつは……」
パステルピンクが思わず手に取ってしまう。
「きゅい……」
すると、その獣はパステルピンクの顔を見てにこりと笑った。あまりの可愛さに、パステルピンクの表情が崩壊していた。
「はっ、それよりシイロは?!」
しばらくその姿を見ていたパステルオレンジとパステルブラウンが、星形の結界に囲まれていたシイロの方を勢いよく見た。すると、シイロの下半身を凍らせていた氷はすっかり無くなっており、シイロはその場に膝をついて座り込んでいた。倒れていないあたりはさすが元騎士といったところである。
「う……」
シイロが声を上げて動き出した。
「みんな、シイロが目を覚ましたわ」
パステルブラウンの声に、パステルピンクたちも構える。ただ、パステルピンクだけは腕に生まれたばかりの獣を抱き締めたままである。
「……ここは、どこだ?」
ボーっとした感じで顔を上げて、シイロは辺りを見回した。さっきまでとは明らかに様子が違う。
「目ぇ覚めたか? シイロ」
「あんたは……、確かワイスだったな」
「おうよっ。冬を司る静寂のワイス様よ」
静寂……、どこが静かなんだろうか。うん、突っ込んではいけないとパステルピンクたちは思った。
ワイスはパステルピンクたちを睨んだ後、シイロに向き合った。サングラスのせいで、本当に睨んだかどうかは分からないが、多分睨んだだろう。
「お前さんは今まで、負の感情に捕らわれて正気を失ってたってわけよ。モノトーン三傑の一人としてな」
「モノトーン……三傑?」
「おう、それでもって、お前さんは格下であるモノトーン四天王を使ってパステル王国他、いろんな国を滅ぼしてきたんだ」
ワイスはちらりとイエーロを見る。
「ええ、そうね。パステル王国の攻略はシイロ様は直接関わってはいなかったけれど、作戦は立てられましたわねぇ」
イエーロから証言が得られる。
「そんな……、私が……パステル王国を?」
シイロは驚愕の表情を浮かべて、頭を抱える。
「……それでは、それではレイン様は一体?!」
シイロが叫ぶと、ワイスは左右に首を振った。
「俺っちたちを逃すために全力を使い果たして、石になっちまった」
「そ、そんな……」
シイロは膝をついたまま前のめりに倒れる。そして、上体を起こしたかと思うと、剣を手に取った。
「護るべき方を護れず、ましてや手に掛けてしまうなど、護衛騎士としてあるまじき行為! ここで私は……っ!」
「待てよっ!」
剣を手に取ったシイロは、それを自分に突き立てようとする。だが、それをワイスが制止した。
「石にはなっちまったが、死んだと決まったわけじゃねえ。俺っちたちは無事だし、ましてや伝説の戦士たちも誕生している。……まだ元に戻す手立てが残ってるはずだ」
「!?」
ワイスが強く言うと、シイロはぴたりと手を止めた。
「……ならば、私はまだ後戻りができるのか?」
「さあな。元に戻れるかどうかは、お前さん次第と言ってはいいだろうがな」
シイロの言葉に、ワイスは少し厳しめに答える。すると、シイロは下を向いてしばらく考えていた。
「……分かった。全然覚えてはいないが、お前たちに迷惑を掛けていた事は重々把握した。レイン女王陛下の護衛騎士シイロ。贖罪のためにお前たちと同行、協力しよう」
「はっ、騎士ってのは堅苦しいなぁ。本当に変わんねえな、シイロはよ」
シイロの言い回しに苦言を呈するワイス。その姿を見て、チェリーとグローリは苦笑いをするしかなかった。
「まっ、これで残る敵はダクネースただ一人か。シイロがこれだけの強敵に変わってたんだ。奴も一筋縄じゃあ、いかねえだろうな」
ワイスは禍々しい気配を感じる方向を見て呟く。
ついに迎えた、モノトーンのボスとの対決である。
パステルピンクたちはモノトーンを倒し、平和を取り戻す事はできるのだろうか?
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