マジカル☆パステル

未羊

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第127話 三傑決戦・その10-紫 対 灰

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 残るモノトーン三傑はシイロとグーレイのみ。召喚した化け物は全部撃破されたので、本当に残り二人だけである。
 三傑からすれば、グーレイの敗北は予想外だった。三傑になるくらいには実力は確かな人物だったので、未熟なパステル戦士に敗れるなど、露ほども思わなかった。
 次々と戦いが決着する中、パステルパープルとグーレイの戦いも激化している。互いにトリッキーな戦い方をするがゆえに、攻めきれずに決め手を欠いている状態だった。それでも、パステルパープルは地球人としてはかなりの実力の持ち主で、グーレイと対等に渡り合っている。
「ぐぬぅ、これ程までにやるとは、甘く見ておったわ」
「そちらこそ、姑息な忍者かと思いましたが、想像以上のやり手でしたわね」
 お互いに思った以上の相手だと認めあっていた。それがゆえに、この戦いに割って入れるような雰囲気はなかった。だからこそ、パステルブラウンは住職の方を気にしながらも、パステルパープルの戦いに乱入するような事はしなかった。
「戻りなさい、パステルパペット」
「カーラフルー」
 パステルブラウンはパステルパペットを消して、二人の戦いを見守っている。
「ふっ、お前の仲間は手を貸さぬつもりか」
「それだけ信用頂けているという事ですわ。それに……」
「それに?」
「1対1の勝負に手を出すなど、野暮な真似はしないという事ですわ!」
 パステルパープルから、いつも以上の冷気が漏れ出す。それだけ能力が高まったという事だ。これには、さすがのグーレイも少し焦りを覚えた。舐めていた相手であるパステル戦士が、自分と対等に渡り合うまでに成長しているのだ。
(ふっ、ブラークを倒されたというのに、何だ、この高揚感は……)
 攻撃を交えるたびに、グーレイの中には不思議な感覚が湧き上がっていた。
 モノトーン三傑の起こりは、パステル王国の城の地下に封じられた負の感情だ。それがゆえに、パステル王国に対しては異常なまでの憎悪を抱いている。だからこそ、パステル王国の生き残りが居ると聞いた時には、すぐにでも向かいたい気になった。それでもダクネースによってしばらくそれは許されず、溜まりに溜まった感情は今こうして爆発の時を迎えていた。
 だが、どうだろう。ブラークの死に際もそうだったが、パステル王国の伝説の戦士に対して、グーレイも今までに感じた事のない感情を抱き始めていた。
 言い知れぬ恨みの感情に突き動かされていたモノトーン三傑だが、ブラークとグーレイには戦いを重ねるうちに違った感情が生まれてきていたのだ。自分たちは強いと自惚れていたのだが、その自分たちに肉薄してくるパステル戦士に対して強い興味を持ち始めたのだ。
「ふっ、実に面白い連中だが、ダクネース様をこれ以上怒らせるわけにはいかぬ。実に惜しいとは思うが、我らがモノトーンの繁栄のため、その礎となってもらおう!」
 グーレイは首を激しく横に振ると、パステルパープルに向けて叫ぶ。これに対して、パステルパープルは身を引き締める。次の一撃は確実にこちらを仕留めに来ると確信したからである。
「実にお前たちは面白い。面白いがゆえに気の済むまで戦ったみたくなった。だが、我らはダクネース様に仕えるモノトーン三傑。主たるダクネース様の御心を乱すわけにはいかんのだ!」
 グーレイが木炭を大量に発生させる。
「さあ、パステルパープルよ。いい加減に決着をつけようぞ!」
 グーレイの覚悟を決めた声が響き渡る。これに対して、パステルパープルは大きく頷いた。
「そうですわね。あまり長引くと、野次馬が寄ってきてしまいますもの。次で決めますわ!」
 どんと、パステルパープルはイレーサーシールドを構えた。
「いざ、尋常に勝負っ!!」
 グーレイは全力でパステルパープルへとその身を走らせる。周りの木炭は初撃としてはフェイントだったのだ。だが、パステルパープルだって慌てない。そのパターンだってシミュレート済みである。相手はトリッキーな動きのグーレイだ。このまま突っ込んでくる可能性は低い。パステルパープルは盾を構えながら、グーレイの動きを見極める。
「くらえ、針千本、剣一閃!」
 微妙にダサい技名が飛び出す。だが、これは技名ではなく、攻撃そのものの予告だった。グーレイが放った無数の木炭がパステルパープルへと襲い掛かる。だが、そちらに意識を向ければグーレイの小太刀による攻撃が飛んでくる。逆にグーレイに意識を取られ過ぎれば、後方から無数の黒炭をその身に浴びる事になる。なるほど、捨て身のようでいて、同時に別の攻撃を放つ事で相手を縛り付ける効果があるというわけらしい。
「面白い攻撃ですわね。ですが、わたくしの能力を忘れてはおりませんか?」
 パステルパープルはにやりと笑う。グーレイも木炭もすぐそこまで迫っているというのに、なんて余裕な笑みなのだろうか。
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
 パステルパープルがこう叫ぶと、パステルパープルを中心に、今までに見た事のないレベルの猛吹雪が吹き荒れる。
「ぬおっ?!」
 十分引きつけた上で放たれた猛吹雪は、グーレイの木炭をすべて凍らせ、グーレイ自身をもその強風で吹き飛ばしてしまう。
「かはっ!!」
 勢いよく吹き飛んだグーレイは、そのまま数本の木をなぎ倒し、背中を強打して前のめりに倒れ込んだ。
「勝負、ありましたわね」
 顔を上げたグーレイの前には、氷のレイピアを構えたパステルパープルが立っていたのだった。
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