126 / 197
第126話 三傑決戦・その9
しおりを挟む
「モノォッ!!」
化け物がパステルオレンジに襲い掛かる。こっちもこっちで葉っぱの攻撃が通じないと見て、肉体言語に訴えかけてきた。拳を振り回して殴りかかってくる。
だが、こうなるとパステルオレンジには希望が見えてきた。
その実、伝説の戦士というのは、最初の頃は素手攻撃が中心だったのである。特殊攻撃が増えたのは、それでの限界を悟ったためだった。特に数を相手にする上では、どうしても複数を一度に攻撃できる手段が必要となってしまった。今あるパステル戦士の技はそうした中で編み出されてきた技なのである。
パステルオレンジは鞭をしまい、化け物と1対1で肉弾戦を繰り広げる。だが、そうした攻撃も、化け物の方が威力が数段も上だった。
それでもパステルオレンジは、自分の方に利があると踏んでいた。明らかに化け物の表情に焦りが見えるのだ。おそらくは生み出したシイロともども、圧倒的な戦いにして慣れていないのだろう。思わぬ苦戦を強いられて、化け物は屈辱のようなものを感じているのかも知れない。それがゆえに、どうしても攻撃が甘いのである。
こうなってくると落ち着きのあるパステルオレンジの方に少しずつ形勢が傾いていく。
(勝てる!)
そう思うのも無理はない。完全にパステルオレンジが押しているのだ。
しかし、これは化け物の作戦だった。
パステルオレンジからの圧倒的な攻撃を食らい、その場に倒れ込む化け物。そこへ追い打ちを掛けようとパステルオレンジが飛び込んだその時だった。
突如として化け物の顔がにやりと笑う。そして、
「モノォッ!!!」
パステルオレンジに向けて、至近距離からリーフショットを撃ち出したのだ。ほぼ距離の無い状態から撃てば、確実に風穴が開く。化け物は勝ったと思い、さらに醜く笑う。
ところが、化け物は次の瞬間、自分の目を疑った。なんと、パステルオレンジが忽然と姿を消していたのだ。
「モノ、モノォッ?!」
化け物は膝をついたまま辺りを見回す。いくら化け物からすれば体躯が小さいとはいえ、見逃すはずがない。ありえない状況に、化け物は混乱していた。
「姉さんと一緒に練習しておいてよかったわ」
どこからともなく声が聞こえる。
しかし、化け物はその姿を確認できなかった。次の瞬間、ズドンと化け物の体を何かが貫いた。
「モ、モノッ……?」
「悪いわね、パステルシアン。利用させてもらったわ」
その声の向いた先には、衝撃でうずくまるパステルシアンが居た。いくら何でもこれは酷いものだ。ただ、パステルシアンがバリアを張り直しているのを見ていたからこそ、パステルオレンジはそれを利用したのである。動けない的には当てやすいのだ。
「さあ、とどめよ」
化け物の目の前には、オレンジ色の狐が現れた。これこそがパステルオレンジの元の姿、秋を司る彩りの聖獣パシモなのである。
「モノォッッ!!」
化け物は立ち上がって殴りかかろうとするが、先程の反射で開けられた風穴のせいで、激痛が走って立ち上がれなかった。
パシモはパステルオレンジへと姿を戻し、パステルチューブを構える。
「これで終わりよ! 悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「モ、モノ、……モノトーンッ!!!」
動けない化け物は、為す術なくパステルオレンジの浄化技を食らい、そのまま消え去ってしまった。
「さて、すぐにあの二人を支援しなきゃ。パステルシアンは動けないものね」
パステルオレンジはすぐさま、パステルピンクとパステルシアンの援護へ向かった。
「モノォッ!」
「おりゃあっ!!」
パステルピンクと化け物が1対1で肉弾戦を繰り広げている。パステルシアンは先ほど負った傷もあり、少し離れた所でその戦いを見守っている。
「大丈夫? パステルシアン」
戦い終えたパステルオレンジがパステルシアンに駆け寄る。
「ええ、一応は。それにしても、化け物を倒すために利用しないでほしいわね。バリアを張ってなければ死んでたわよ」
「それは謝るわ。でも、張り直していたからこそ、利用させてもらったのよ。だから、お詫びに今はあたしが被害が及ばないように守るわ」
パステルオレンジの言い分に、パステルシアンは頬を膨らませていた。これにはパステルオレンジはさすがにやり過ぎたとさらに謝っていた。
それはさておき、パステルピンクと化け物の肉弾戦はまだ続いている。しかし、パステルピンクの攻撃の精度に、化け物はリーフショットが撃てずにイラついているようである。
そうこうしているうちに、化け物の攻撃は更に精度を低下させていく。
「さすがに隙が大きくなってきたな……。ここだあっ!」
渾身の蹴りが化け物に命中する。
「モ、ノッ!!」
化け物は勢いよく地面へと叩き落とされた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
それと同時に、パステルピンクは蔓を発生させて化け物を地面へと縛り付けてしまう。一撃必殺レベルのリーフショットを封じるためだ。
「反撃の隙は与えねえっ! スプリング・カラフル・ストーム!」
パステルピンク渾身の浄化技である。化け物は地面に縛り付けられてもごもごとしているだけで、とても反撃できる状態ではなかった。
「モモモ、モモモーンッ!」
ふがふがと言いながら、化け物は浄化されていった。
「ふぅ……、面倒なのが片付いたぜ」
パステルピンクは地面に降りて、パステルシアンのところへと歩いていく。そして、へたり込んで回復中のパステルシアンに向けてVサインを突き出し、にかっと白い歯を見せて笑っていた。
化け物がパステルオレンジに襲い掛かる。こっちもこっちで葉っぱの攻撃が通じないと見て、肉体言語に訴えかけてきた。拳を振り回して殴りかかってくる。
だが、こうなるとパステルオレンジには希望が見えてきた。
その実、伝説の戦士というのは、最初の頃は素手攻撃が中心だったのである。特殊攻撃が増えたのは、それでの限界を悟ったためだった。特に数を相手にする上では、どうしても複数を一度に攻撃できる手段が必要となってしまった。今あるパステル戦士の技はそうした中で編み出されてきた技なのである。
パステルオレンジは鞭をしまい、化け物と1対1で肉弾戦を繰り広げる。だが、そうした攻撃も、化け物の方が威力が数段も上だった。
それでもパステルオレンジは、自分の方に利があると踏んでいた。明らかに化け物の表情に焦りが見えるのだ。おそらくは生み出したシイロともども、圧倒的な戦いにして慣れていないのだろう。思わぬ苦戦を強いられて、化け物は屈辱のようなものを感じているのかも知れない。それがゆえに、どうしても攻撃が甘いのである。
こうなってくると落ち着きのあるパステルオレンジの方に少しずつ形勢が傾いていく。
(勝てる!)
そう思うのも無理はない。完全にパステルオレンジが押しているのだ。
しかし、これは化け物の作戦だった。
パステルオレンジからの圧倒的な攻撃を食らい、その場に倒れ込む化け物。そこへ追い打ちを掛けようとパステルオレンジが飛び込んだその時だった。
突如として化け物の顔がにやりと笑う。そして、
「モノォッ!!!」
パステルオレンジに向けて、至近距離からリーフショットを撃ち出したのだ。ほぼ距離の無い状態から撃てば、確実に風穴が開く。化け物は勝ったと思い、さらに醜く笑う。
ところが、化け物は次の瞬間、自分の目を疑った。なんと、パステルオレンジが忽然と姿を消していたのだ。
「モノ、モノォッ?!」
化け物は膝をついたまま辺りを見回す。いくら化け物からすれば体躯が小さいとはいえ、見逃すはずがない。ありえない状況に、化け物は混乱していた。
「姉さんと一緒に練習しておいてよかったわ」
どこからともなく声が聞こえる。
しかし、化け物はその姿を確認できなかった。次の瞬間、ズドンと化け物の体を何かが貫いた。
「モ、モノッ……?」
「悪いわね、パステルシアン。利用させてもらったわ」
その声の向いた先には、衝撃でうずくまるパステルシアンが居た。いくら何でもこれは酷いものだ。ただ、パステルシアンがバリアを張り直しているのを見ていたからこそ、パステルオレンジはそれを利用したのである。動けない的には当てやすいのだ。
「さあ、とどめよ」
化け物の目の前には、オレンジ色の狐が現れた。これこそがパステルオレンジの元の姿、秋を司る彩りの聖獣パシモなのである。
「モノォッッ!!」
化け物は立ち上がって殴りかかろうとするが、先程の反射で開けられた風穴のせいで、激痛が走って立ち上がれなかった。
パシモはパステルオレンジへと姿を戻し、パステルチューブを構える。
「これで終わりよ! 悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「モ、モノ、……モノトーンッ!!!」
動けない化け物は、為す術なくパステルオレンジの浄化技を食らい、そのまま消え去ってしまった。
「さて、すぐにあの二人を支援しなきゃ。パステルシアンは動けないものね」
パステルオレンジはすぐさま、パステルピンクとパステルシアンの援護へ向かった。
「モノォッ!」
「おりゃあっ!!」
パステルピンクと化け物が1対1で肉弾戦を繰り広げている。パステルシアンは先ほど負った傷もあり、少し離れた所でその戦いを見守っている。
「大丈夫? パステルシアン」
戦い終えたパステルオレンジがパステルシアンに駆け寄る。
「ええ、一応は。それにしても、化け物を倒すために利用しないでほしいわね。バリアを張ってなければ死んでたわよ」
「それは謝るわ。でも、張り直していたからこそ、利用させてもらったのよ。だから、お詫びに今はあたしが被害が及ばないように守るわ」
パステルオレンジの言い分に、パステルシアンは頬を膨らませていた。これにはパステルオレンジはさすがにやり過ぎたとさらに謝っていた。
それはさておき、パステルピンクと化け物の肉弾戦はまだ続いている。しかし、パステルピンクの攻撃の精度に、化け物はリーフショットが撃てずにイラついているようである。
そうこうしているうちに、化け物の攻撃は更に精度を低下させていく。
「さすがに隙が大きくなってきたな……。ここだあっ!」
渾身の蹴りが化け物に命中する。
「モ、ノッ!!」
化け物は勢いよく地面へと叩き落とされた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
それと同時に、パステルピンクは蔓を発生させて化け物を地面へと縛り付けてしまう。一撃必殺レベルのリーフショットを封じるためだ。
「反撃の隙は与えねえっ! スプリング・カラフル・ストーム!」
パステルピンク渾身の浄化技である。化け物は地面に縛り付けられてもごもごとしているだけで、とても反撃できる状態ではなかった。
「モモモ、モモモーンッ!」
ふがふがと言いながら、化け物は浄化されていった。
「ふぅ……、面倒なのが片付いたぜ」
パステルピンクは地面に降りて、パステルシアンのところへと歩いていく。そして、へたり込んで回復中のパステルシアンに向けてVサインを突き出し、にかっと白い歯を見せて笑っていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる