マジカル☆パステル

未羊

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第126話 三傑決戦・その9

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「モノォッ!!」
 化け物がパステルオレンジに襲い掛かる。こっちもこっちで葉っぱの攻撃が通じないと見て、肉体言語に訴えかけてきた。拳を振り回して殴りかかってくる。
 だが、こうなるとパステルオレンジには希望が見えてきた。
 その実、伝説の戦士というのは、最初の頃は素手攻撃ステゴロが中心だったのである。特殊攻撃が増えたのは、それでの限界を悟ったためだった。特に数を相手にする上では、どうしても複数を一度に攻撃できる手段が必要となってしまった。今あるパステル戦士の技はそうした中で編み出されてきた技なのである。
 パステルオレンジは鞭をしまい、化け物と1対1で肉弾戦を繰り広げる。だが、そうした攻撃も、化け物の方が威力が数段も上だった。
 それでもパステルオレンジは、自分の方に利があると踏んでいた。明らかに化け物の表情に焦りが見えるのだ。おそらくは生み出したシイロともども、圧倒的な戦いにして慣れていないのだろう。思わぬ苦戦を強いられて、化け物は屈辱のようなものを感じているのかも知れない。それがゆえに、どうしても攻撃が甘いのである。
 こうなってくると落ち着きのあるパステルオレンジの方に少しずつ形勢が傾いていく。
(勝てる!)
 そう思うのも無理はない。完全にパステルオレンジが押しているのだ。
 しかし、これは化け物の作戦だった。
 パステルオレンジからの圧倒的な攻撃を食らい、その場に倒れ込む化け物。そこへ追い打ちを掛けようとパステルオレンジが飛び込んだその時だった。
 突如として化け物の顔がにやりと笑う。そして、
「モノォッ!!!」
 パステルオレンジに向けて、至近距離からリーフショットを撃ち出したのだ。ほぼ距離の無い状態から撃てば、確実に風穴が開く。化け物は勝ったと思い、さらに醜く笑う。
 ところが、化け物は次の瞬間、自分の目を疑った。なんと、パステルオレンジが忽然と姿を消していたのだ。
「モノ、モノォッ?!」
 化け物は膝をついたまま辺りを見回す。いくら化け物からすれば体躯が小さいとはいえ、見逃すはずがない。ありえない状況に、化け物は混乱していた。
「姉さんと一緒に練習しておいてよかったわ」
 どこからともなく声が聞こえる。
 しかし、化け物はその姿を確認できなかった。次の瞬間、ズドンと化け物の体を何かが貫いた。
「モ、モノッ……?」
「悪いわね、パステルシアン。利用させてもらったわ」
 その声の向いた先には、衝撃でうずくまるパステルシアンが居た。いくら何でもこれは酷いものだ。ただ、パステルシアンがバリアを張り直しているのを見ていたからこそ、パステルオレンジはそれを利用したのである。動けない的には当てやすいのだ。
「さあ、とどめよ」
 化け物の目の前には、オレンジ色の狐が現れた。これこそがパステルオレンジの元の姿、秋を司る彩りの聖獣パシモなのである。
「モノォッッ!!」
 化け物は立ち上がって殴りかかろうとするが、先程の反射で開けられた風穴のせいで、激痛が走って立ち上がれなかった。
 パシモはパステルオレンジへと姿を戻し、パステルチューブを構える。
「これで終わりよ! 悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「モ、モノ、……モノトーンッ!!!」
 動けない化け物は、為す術なくパステルオレンジの浄化技を食らい、そのまま消え去ってしまった。
「さて、すぐにあの二人を支援しなきゃ。パステルシアンは動けないものね」
 パステルオレンジはすぐさま、パステルピンクとパステルシアンの援護へ向かった。

「モノォッ!」
「おりゃあっ!!」
 パステルピンクと化け物が1対1で肉弾戦を繰り広げている。パステルシアンは先ほど負った傷もあり、少し離れた所でその戦いを見守っている。
「大丈夫? パステルシアン」
 戦い終えたパステルオレンジがパステルシアンに駆け寄る。
「ええ、一応は。それにしても、化け物を倒すために利用しないでほしいわね。バリアを張ってなければ死んでたわよ」
「それは謝るわ。でも、張り直していたからこそ、利用させてもらったのよ。だから、お詫びに今はあたしが被害が及ばないように守るわ」
 パステルオレンジの言い分に、パステルシアンは頬を膨らませていた。これにはパステルオレンジはさすがにやり過ぎたとさらに謝っていた。
 それはさておき、パステルピンクと化け物の肉弾戦はまだ続いている。しかし、パステルピンクの攻撃の精度に、化け物はリーフショットが撃てずにイラついているようである。
 そうこうしているうちに、化け物の攻撃は更に精度を低下させていく。
「さすがに隙が大きくなってきたな……。ここだあっ!」
 渾身の蹴りが化け物に命中する。
「モ、ノッ!!」
 化け物は勢いよく地面へと叩き落とされた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
 それと同時に、パステルピンクは蔓を発生させて化け物を地面へと縛り付けてしまう。一撃必殺レベルのリーフショットを封じるためだ。
「反撃の隙は与えねえっ! スプリング・カラフル・ストーム!」
 パステルピンク渾身の浄化技である。化け物は地面に縛り付けられてもごもごとしているだけで、とても反撃できる状態ではなかった。
「モモモ、モモモーンッ!」
 ふがふがと言いながら、化け物は浄化されていった。
「ふぅ……、面倒なのが片付いたぜ」
 パステルピンクは地面に降りて、パステルシアンのところへと歩いていく。そして、へたり込んで回復中のパステルシアンに向けてVサインを突き出し、にかっと白い歯を見せて笑っていた。
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