116 / 197
第116話 雪路の特技
しおりを挟む
楓のダンスが終わり、結果が表示される。
「あらら、S+ですわね。悔しいですけれども、今回の対決はMRPさんの勝利という事になりましたわ」
雪路が対決結果を報告する。その顔はとても残念そうにも悔しそうにも見えなかった。むしろすっきりした顔である。
「観客の皆様も、静かに見守って頂きありがとうございますわ。今回は新曲初見プレイ対決をお送り致しました。またこれからも楽しめる動画をお送りして参りますので、応援して頂けるのでしたら、ぜひともチャンネル登録や高評価をお願い致しますわね。それでは、また次回お会い致しましょう」
動画の締めとなる挨拶を終えると、録画が停止される。これで動画の撮影が終わったのである。
「ふぅ、これで後は編集して字幕などを入れればオッケーですわ。楓さん、今日はありがとうございましたわ」
雪路は楓に頭を下げてお礼を言う。
「い、いや。あたいの方こそ、今日は楽しめたし、お礼を言いたいわよ。ここのところ思い詰めてばかりだったから、いい気分転換になったわ」
楓は両手を振りながら、雪路に言葉を返している。
この二人には踊りが好きという共通点があるせいか、どうにもこうやって気の合うところがあるのである。
とりあえず撮影が終わったので、雪路と楓はまずは観客に頭を下げて、それからゲーセンの店長や従業員たちにもお礼を言って回った。アフターケアもばっちりである。
「あっ、そうですわ。これもやっていきましょう」
そう言って雪路がやって来たのはクレーンゲームである。そこにあったのは可愛らしい動物のぬいぐるみが大量に詰め込まれたクレーンゲームである。人の頭くらいの大きさのぬいぐるみだ。
ちゃりんちゃりんと硬貨を投入してクレーンゲームを始める雪路。その様子をただ黙って見つめる楓。
「あっ、姉さん、ここに居たのね」
後ろから杏がやって来た。ようやく撮影機材の片付けが終わったのである。
その瞬間、取り出し口からぬいぐるみを取り出した雪路が、それをずいっと二人の前に突き出す。その手に握られていたのは、キツネのぬいぐるみだった。
「お二人の聖獣の姿はこういう感じだったそうですわね。色はいいのがなかったので、ピンクで申し訳ございませんわ」
ぬいぐるみを顔の横まで引いて、にかっと笑いながら言う雪路。そして、再び手を伸ばして楓にそのぬいぐるみを押し付けると、再びクレーンゲームを始めた。
2回ほど失敗したものの、すぐさままたキツネのぬいぐるみをゲットしてくる雪路。4プレイで2個ゲットとか恐ろしい腕前である。
「うーん、今度は黄色でしたわ。こちらは杏さんに差し上げますわね」
雪路はまたそんな事を言いながら、杏にキツネのぬいぐるみを押し付けた。唐突な事に、杏と楓は訳も分からず顔を見合わせていた。
そんな二人に構わず、すぐさままたぬいぐるみをゲットする雪路。今度は羊のぬいぐるみである。なんでそんなに欲しいのをあっさり引き当てるのか、雪路はどうやらゲーマーのようである。
「おいおい、それは俺っちのつもりかよ。俺っちはこう格好いい感じなんだ。それじゃただの可愛いだけの羊じゃねえかよ」
雪路のゲットしたぬいぐるみを見ながら、ワイスは不満を口にしている。しかし、既製品であるぬいぐるみにそんな事を言われても困るというやつだ。
「にしても、こんなにほいほいぬいぐるみを取られちゃ、店の方は上がったりだろうなぁ。恐ろしい才能の持ち主だぜ、雪路はよ」
ワイスは楓の頭に乗りながら、ぬいぐるみを凝視していた。
「あーら、雪路様? 撤収準備が整いましたわよ~」
そこへイエーロがやって来る。後ろを見ると、機材を抱えた使用人たちが店の外へとあたふたと駆けて行っていた。
「ええ、分かりましたわ。ここのお店は気に入りましたので、定期的に遊ばせて頂きますわね」
雪路は近くに居た従業員にぺこりと挨拶をすると、杏と楓を連れて店の外へと移動していった。
「まったく、楓さんのダンスは相変わらず惚れ惚れしますわ」
雪路は頬に手を当ててうっとりとしながら言う。
「いやまぁ、これをダンスと言っていいのか分からないけどね。あたいの踊りの概念からするととても踊りとは思えないんだよね」
「リズムよく足を動かしているだけですから、人によってはそうかも知れませんわね」
「踊れないあたしからしたら、十分すごいと思うわよ」
三者三様の反応である。
楓はメルプとして、豊穣を感謝する舞を踊っていたので、体全体を使って表現するものだと思っている。
雪路はリズムよく体を動かすものはすべて踊りだと考えている。
杏はそもそも踊れないから、リズムよく体を動かしているだけで尊敬する。
とまあ、こんな感じである。
それにしても、雪路と楓はずいぶんと仲良くなったものである。やはり共通項があるというのは仲良くなる上では重要なのだろう。杏も巻き込まれるような形ではあるが、パステル戦士としての件がなくても、雪路対してはかなり心を許しているようだ。
ゲーセンを立ち去った後の雪路は、楓と杏の買い物に付き合って、そのまま色鮮寺まで送り届けていったのだった。
「あらら、S+ですわね。悔しいですけれども、今回の対決はMRPさんの勝利という事になりましたわ」
雪路が対決結果を報告する。その顔はとても残念そうにも悔しそうにも見えなかった。むしろすっきりした顔である。
「観客の皆様も、静かに見守って頂きありがとうございますわ。今回は新曲初見プレイ対決をお送り致しました。またこれからも楽しめる動画をお送りして参りますので、応援して頂けるのでしたら、ぜひともチャンネル登録や高評価をお願い致しますわね。それでは、また次回お会い致しましょう」
動画の締めとなる挨拶を終えると、録画が停止される。これで動画の撮影が終わったのである。
「ふぅ、これで後は編集して字幕などを入れればオッケーですわ。楓さん、今日はありがとうございましたわ」
雪路は楓に頭を下げてお礼を言う。
「い、いや。あたいの方こそ、今日は楽しめたし、お礼を言いたいわよ。ここのところ思い詰めてばかりだったから、いい気分転換になったわ」
楓は両手を振りながら、雪路に言葉を返している。
この二人には踊りが好きという共通点があるせいか、どうにもこうやって気の合うところがあるのである。
とりあえず撮影が終わったので、雪路と楓はまずは観客に頭を下げて、それからゲーセンの店長や従業員たちにもお礼を言って回った。アフターケアもばっちりである。
「あっ、そうですわ。これもやっていきましょう」
そう言って雪路がやって来たのはクレーンゲームである。そこにあったのは可愛らしい動物のぬいぐるみが大量に詰め込まれたクレーンゲームである。人の頭くらいの大きさのぬいぐるみだ。
ちゃりんちゃりんと硬貨を投入してクレーンゲームを始める雪路。その様子をただ黙って見つめる楓。
「あっ、姉さん、ここに居たのね」
後ろから杏がやって来た。ようやく撮影機材の片付けが終わったのである。
その瞬間、取り出し口からぬいぐるみを取り出した雪路が、それをずいっと二人の前に突き出す。その手に握られていたのは、キツネのぬいぐるみだった。
「お二人の聖獣の姿はこういう感じだったそうですわね。色はいいのがなかったので、ピンクで申し訳ございませんわ」
ぬいぐるみを顔の横まで引いて、にかっと笑いながら言う雪路。そして、再び手を伸ばして楓にそのぬいぐるみを押し付けると、再びクレーンゲームを始めた。
2回ほど失敗したものの、すぐさままたキツネのぬいぐるみをゲットしてくる雪路。4プレイで2個ゲットとか恐ろしい腕前である。
「うーん、今度は黄色でしたわ。こちらは杏さんに差し上げますわね」
雪路はまたそんな事を言いながら、杏にキツネのぬいぐるみを押し付けた。唐突な事に、杏と楓は訳も分からず顔を見合わせていた。
そんな二人に構わず、すぐさままたぬいぐるみをゲットする雪路。今度は羊のぬいぐるみである。なんでそんなに欲しいのをあっさり引き当てるのか、雪路はどうやらゲーマーのようである。
「おいおい、それは俺っちのつもりかよ。俺っちはこう格好いい感じなんだ。それじゃただの可愛いだけの羊じゃねえかよ」
雪路のゲットしたぬいぐるみを見ながら、ワイスは不満を口にしている。しかし、既製品であるぬいぐるみにそんな事を言われても困るというやつだ。
「にしても、こんなにほいほいぬいぐるみを取られちゃ、店の方は上がったりだろうなぁ。恐ろしい才能の持ち主だぜ、雪路はよ」
ワイスは楓の頭に乗りながら、ぬいぐるみを凝視していた。
「あーら、雪路様? 撤収準備が整いましたわよ~」
そこへイエーロがやって来る。後ろを見ると、機材を抱えた使用人たちが店の外へとあたふたと駆けて行っていた。
「ええ、分かりましたわ。ここのお店は気に入りましたので、定期的に遊ばせて頂きますわね」
雪路は近くに居た従業員にぺこりと挨拶をすると、杏と楓を連れて店の外へと移動していった。
「まったく、楓さんのダンスは相変わらず惚れ惚れしますわ」
雪路は頬に手を当ててうっとりとしながら言う。
「いやまぁ、これをダンスと言っていいのか分からないけどね。あたいの踊りの概念からするととても踊りとは思えないんだよね」
「リズムよく足を動かしているだけですから、人によってはそうかも知れませんわね」
「踊れないあたしからしたら、十分すごいと思うわよ」
三者三様の反応である。
楓はメルプとして、豊穣を感謝する舞を踊っていたので、体全体を使って表現するものだと思っている。
雪路はリズムよく体を動かすものはすべて踊りだと考えている。
杏はそもそも踊れないから、リズムよく体を動かしているだけで尊敬する。
とまあ、こんな感じである。
それにしても、雪路と楓はずいぶんと仲良くなったものである。やはり共通項があるというのは仲良くなる上では重要なのだろう。杏も巻き込まれるような形ではあるが、パステル戦士としての件がなくても、雪路対してはかなり心を許しているようだ。
ゲーセンを立ち去った後の雪路は、楓と杏の買い物に付き合って、そのまま色鮮寺まで送り届けていったのだった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる