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第116話 雪路の特技
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楓のダンスが終わり、結果が表示される。
「あらら、S+ですわね。悔しいですけれども、今回の対決はMRPさんの勝利という事になりましたわ」
雪路が対決結果を報告する。その顔はとても残念そうにも悔しそうにも見えなかった。むしろすっきりした顔である。
「観客の皆様も、静かに見守って頂きありがとうございますわ。今回は新曲初見プレイ対決をお送り致しました。またこれからも楽しめる動画をお送りして参りますので、応援して頂けるのでしたら、ぜひともチャンネル登録や高評価をお願い致しますわね。それでは、また次回お会い致しましょう」
動画の締めとなる挨拶を終えると、録画が停止される。これで動画の撮影が終わったのである。
「ふぅ、これで後は編集して字幕などを入れればオッケーですわ。楓さん、今日はありがとうございましたわ」
雪路は楓に頭を下げてお礼を言う。
「い、いや。あたいの方こそ、今日は楽しめたし、お礼を言いたいわよ。ここのところ思い詰めてばかりだったから、いい気分転換になったわ」
楓は両手を振りながら、雪路に言葉を返している。
この二人には踊りが好きという共通点があるせいか、どうにもこうやって気の合うところがあるのである。
とりあえず撮影が終わったので、雪路と楓はまずは観客に頭を下げて、それからゲーセンの店長や従業員たちにもお礼を言って回った。アフターケアもばっちりである。
「あっ、そうですわ。これもやっていきましょう」
そう言って雪路がやって来たのはクレーンゲームである。そこにあったのは可愛らしい動物のぬいぐるみが大量に詰め込まれたクレーンゲームである。人の頭くらいの大きさのぬいぐるみだ。
ちゃりんちゃりんと硬貨を投入してクレーンゲームを始める雪路。その様子をただ黙って見つめる楓。
「あっ、姉さん、ここに居たのね」
後ろから杏がやって来た。ようやく撮影機材の片付けが終わったのである。
その瞬間、取り出し口からぬいぐるみを取り出した雪路が、それをずいっと二人の前に突き出す。その手に握られていたのは、キツネのぬいぐるみだった。
「お二人の聖獣の姿はこういう感じだったそうですわね。色はいいのがなかったので、ピンクで申し訳ございませんわ」
ぬいぐるみを顔の横まで引いて、にかっと笑いながら言う雪路。そして、再び手を伸ばして楓にそのぬいぐるみを押し付けると、再びクレーンゲームを始めた。
2回ほど失敗したものの、すぐさままたキツネのぬいぐるみをゲットしてくる雪路。4プレイで2個ゲットとか恐ろしい腕前である。
「うーん、今度は黄色でしたわ。こちらは杏さんに差し上げますわね」
雪路はまたそんな事を言いながら、杏にキツネのぬいぐるみを押し付けた。唐突な事に、杏と楓は訳も分からず顔を見合わせていた。
そんな二人に構わず、すぐさままたぬいぐるみをゲットする雪路。今度は羊のぬいぐるみである。なんでそんなに欲しいのをあっさり引き当てるのか、雪路はどうやらゲーマーのようである。
「おいおい、それは俺っちのつもりかよ。俺っちはこう格好いい感じなんだ。それじゃただの可愛いだけの羊じゃねえかよ」
雪路のゲットしたぬいぐるみを見ながら、ワイスは不満を口にしている。しかし、既製品であるぬいぐるみにそんな事を言われても困るというやつだ。
「にしても、こんなにほいほいぬいぐるみを取られちゃ、店の方は上がったりだろうなぁ。恐ろしい才能の持ち主だぜ、雪路はよ」
ワイスは楓の頭に乗りながら、ぬいぐるみを凝視していた。
「あーら、雪路様? 撤収準備が整いましたわよ~」
そこへイエーロがやって来る。後ろを見ると、機材を抱えた使用人たちが店の外へとあたふたと駆けて行っていた。
「ええ、分かりましたわ。ここのお店は気に入りましたので、定期的に遊ばせて頂きますわね」
雪路は近くに居た従業員にぺこりと挨拶をすると、杏と楓を連れて店の外へと移動していった。
「まったく、楓さんのダンスは相変わらず惚れ惚れしますわ」
雪路は頬に手を当ててうっとりとしながら言う。
「いやまぁ、これをダンスと言っていいのか分からないけどね。あたいの踊りの概念からするととても踊りとは思えないんだよね」
「リズムよく足を動かしているだけですから、人によってはそうかも知れませんわね」
「踊れないあたしからしたら、十分すごいと思うわよ」
三者三様の反応である。
楓はメルプとして、豊穣を感謝する舞を踊っていたので、体全体を使って表現するものだと思っている。
雪路はリズムよく体を動かすものはすべて踊りだと考えている。
杏はそもそも踊れないから、リズムよく体を動かしているだけで尊敬する。
とまあ、こんな感じである。
それにしても、雪路と楓はずいぶんと仲良くなったものである。やはり共通項があるというのは仲良くなる上では重要なのだろう。杏も巻き込まれるような形ではあるが、パステル戦士としての件がなくても、雪路対してはかなり心を許しているようだ。
ゲーセンを立ち去った後の雪路は、楓と杏の買い物に付き合って、そのまま色鮮寺まで送り届けていったのだった。
「あらら、S+ですわね。悔しいですけれども、今回の対決はMRPさんの勝利という事になりましたわ」
雪路が対決結果を報告する。その顔はとても残念そうにも悔しそうにも見えなかった。むしろすっきりした顔である。
「観客の皆様も、静かに見守って頂きありがとうございますわ。今回は新曲初見プレイ対決をお送り致しました。またこれからも楽しめる動画をお送りして参りますので、応援して頂けるのでしたら、ぜひともチャンネル登録や高評価をお願い致しますわね。それでは、また次回お会い致しましょう」
動画の締めとなる挨拶を終えると、録画が停止される。これで動画の撮影が終わったのである。
「ふぅ、これで後は編集して字幕などを入れればオッケーですわ。楓さん、今日はありがとうございましたわ」
雪路は楓に頭を下げてお礼を言う。
「い、いや。あたいの方こそ、今日は楽しめたし、お礼を言いたいわよ。ここのところ思い詰めてばかりだったから、いい気分転換になったわ」
楓は両手を振りながら、雪路に言葉を返している。
この二人には踊りが好きという共通点があるせいか、どうにもこうやって気の合うところがあるのである。
とりあえず撮影が終わったので、雪路と楓はまずは観客に頭を下げて、それからゲーセンの店長や従業員たちにもお礼を言って回った。アフターケアもばっちりである。
「あっ、そうですわ。これもやっていきましょう」
そう言って雪路がやって来たのはクレーンゲームである。そこにあったのは可愛らしい動物のぬいぐるみが大量に詰め込まれたクレーンゲームである。人の頭くらいの大きさのぬいぐるみだ。
ちゃりんちゃりんと硬貨を投入してクレーンゲームを始める雪路。その様子をただ黙って見つめる楓。
「あっ、姉さん、ここに居たのね」
後ろから杏がやって来た。ようやく撮影機材の片付けが終わったのである。
その瞬間、取り出し口からぬいぐるみを取り出した雪路が、それをずいっと二人の前に突き出す。その手に握られていたのは、キツネのぬいぐるみだった。
「お二人の聖獣の姿はこういう感じだったそうですわね。色はいいのがなかったので、ピンクで申し訳ございませんわ」
ぬいぐるみを顔の横まで引いて、にかっと笑いながら言う雪路。そして、再び手を伸ばして楓にそのぬいぐるみを押し付けると、再びクレーンゲームを始めた。
2回ほど失敗したものの、すぐさままたキツネのぬいぐるみをゲットしてくる雪路。4プレイで2個ゲットとか恐ろしい腕前である。
「うーん、今度は黄色でしたわ。こちらは杏さんに差し上げますわね」
雪路はまたそんな事を言いながら、杏にキツネのぬいぐるみを押し付けた。唐突な事に、杏と楓は訳も分からず顔を見合わせていた。
そんな二人に構わず、すぐさままたぬいぐるみをゲットする雪路。今度は羊のぬいぐるみである。なんでそんなに欲しいのをあっさり引き当てるのか、雪路はどうやらゲーマーのようである。
「おいおい、それは俺っちのつもりかよ。俺っちはこう格好いい感じなんだ。それじゃただの可愛いだけの羊じゃねえかよ」
雪路のゲットしたぬいぐるみを見ながら、ワイスは不満を口にしている。しかし、既製品であるぬいぐるみにそんな事を言われても困るというやつだ。
「にしても、こんなにほいほいぬいぐるみを取られちゃ、店の方は上がったりだろうなぁ。恐ろしい才能の持ち主だぜ、雪路はよ」
ワイスは楓の頭に乗りながら、ぬいぐるみを凝視していた。
「あーら、雪路様? 撤収準備が整いましたわよ~」
そこへイエーロがやって来る。後ろを見ると、機材を抱えた使用人たちが店の外へとあたふたと駆けて行っていた。
「ええ、分かりましたわ。ここのお店は気に入りましたので、定期的に遊ばせて頂きますわね」
雪路は近くに居た従業員にぺこりと挨拶をすると、杏と楓を連れて店の外へと移動していった。
「まったく、楓さんのダンスは相変わらず惚れ惚れしますわ」
雪路は頬に手を当ててうっとりとしながら言う。
「いやまぁ、これをダンスと言っていいのか分からないけどね。あたいの踊りの概念からするととても踊りとは思えないんだよね」
「リズムよく足を動かしているだけですから、人によってはそうかも知れませんわね」
「踊れないあたしからしたら、十分すごいと思うわよ」
三者三様の反応である。
楓はメルプとして、豊穣を感謝する舞を踊っていたので、体全体を使って表現するものだと思っている。
雪路はリズムよく体を動かすものはすべて踊りだと考えている。
杏はそもそも踊れないから、リズムよく体を動かしているだけで尊敬する。
とまあ、こんな感じである。
それにしても、雪路と楓はずいぶんと仲良くなったものである。やはり共通項があるというのは仲良くなる上では重要なのだろう。杏も巻き込まれるような形ではあるが、パステル戦士としての件がなくても、雪路対してはかなり心を許しているようだ。
ゲーセンを立ち去った後の雪路は、楓と杏の買い物に付き合って、そのまま色鮮寺まで送り届けていったのだった。
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