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第102話 あついなつ
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「はあっ!」
パステルピンクが勢いよく剣を振りかざす。
どうやら今日も、冬柴家の敷地で稽古に励んでいるようだ。
「モノォッ!」
化け物はそれを躱す。パステルピンクの剣はまだ大振りでうまく扱えておらず、まだまだ隙が大きいようだ。サイドステップで躱した化け物が、パステルピンクにすぐさま反撃を入れようとしている。
「させない! パステル・シュトローム・アロー!」
そこへパステルシアンが矢を放つ。さすがにこれには化け物も対応できず、
「モノォッ!!」
もろに食らって浄化されてしまった。
それを見て、弓を握って跳び上がるパステルシアンだったが、イエーロはまだまだ渋い顔をしていた。
「うーん、連携は取れているんだけれど、二人とも個々だとまだ動きが甘いわねぇ。三傑はまだ一人ずつやって来ているから、まだこっちが優勢だけれど~、二人以上でやって来たら、相手にならないわよ~?」
イエーロの評価は厳しかった。とはいえども、イエーロの生み出す化け物相手ならば、だいぶ楽に倒せるようになってきたので、二人とも成長はしているようである。
「それは確かにそうかもな。お前らの生み出す化け物は、お前らの能力に比例するんだよな?」
「ええ、そうよ~。だから~、私のモノトーンちゃんは~、三傑には遠く及ばないわよぉ」
パステルピンクが確認するように問い掛けると、イエーロからは思った通りの答えが返ってきた。それゆえに、パステルピンクの表情は厳しかった。
「やっぱ、そっかー。さすがに俺は剣なんて扱った事がないからな。このパステルブラシのおかげでなんとか振れているだけであって、扱えてるというよりは扱われてるって感じなんだよ」
パステルピンクは自分の感じていた違和感をしっかり認識できているようだった。これを見るに、だいぶ成長はしている事は分かる。
「それが認識できているなら~、私たち四天王と戦った時より成長しているって事ね~。伝説の戦士としての覚悟が出てきたってところね~」
イエーロは元々は敵ながらにも、その成長を喜んでいるようだった。さすがは一番の関心事が自分の筋肉だけな事はある。
「ここまで成長してくると~、モノトーンちゃんじゃ、ちょっと荷が重くなってきたわねぇ」
「いや、俺たちは二人だし、そもそも幼馴染みで、ある程度考えが分かるから連携が取れてるんだ」
そして、パステルピンクはパステルシアンを見る。それに対して、パステルシアンはドキッとした表情をしていた。少し赤くなっている気もするが、単純に急に顔を向けられて驚いているだけのようだ。
「だから、次は俺たち一人ずつで戦ってみたい」
再びイエーロに顔を向けたパステルピンクは、強くそう言い切った。
「ふふっ、殊勝な心掛けねぇ。いいわよぉ~、お姉さんがとことん付き合ってあげるわあん」
そして、イエーロは笑みを浮かべながら再び化け物を召喚した。
「モノ、トーンッ!」
「さあ、どちらから行くのぉん?」
「言い出しっぺの俺からだ」
パステルピンクは剣を構える。
「あらあらぁ、お姫様を護るナイト気取りかしらぁ? いいわねぇ、もっとそういうのちょうだ~い♪」
イエーロもノリノリである。
「それじゃ行くわよぉん。モノトーンちゃん、やっちゃいなさぁい!」
「モノ、トーン!」
化け物とパステルピンクの1対1の戦いが始まる。その間、パステルシアンはイエーロの隣までやって来た。
「ふふっ、いい彼氏じゃないの」
「そ、そんな。千春はただの幼馴染みですよ」
パステルピンクと化け物の戦いを見守りながら、イエーロはパステルシアンに話し掛ける。
「あらあらぁ、照れちゃって可愛いわねぇん。お互いがお互いのために強くなるっていうのは、悪くはないわぁ。お姉さんも、そういうの好きよぉ」
イエーロがあまりに真顔で言うものだから、パステルシアンは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。本当に油断のならないオネエである。
二人がそんな話をしている最中も、パステルピンクは化け物と1対1の戦いを繰り広げている。パステルピンクの持つ剣と化け物の拳が激しくぶつかり合い、どういうわけか比喩ではない火花が散っていた。
「くっ、ソロだとまだまだ互角程度までしかいけないか。強えなぁ」
「モノォッ!」
パステルピンクが険しい表情をしていると、化け物は嬉しそうな声で叫んでいた。化け物にも感情があったのか。
「モノトーンちゃんと互角って事は、長引くほどに不利って事ねぇ。モノトーンちゃんって体力底知らずだものぉ」
イエーロがこう言うが、実にその通りである。パステルピンクの方は徐々に疲労が溜まり始め、動きが悪くなってきている。連戦というのもあるから、なおさら疲れが見えていた。
「うーん、ここまでってところねぇ。モノトーンちゃん、もういいわよぉん」
イエーロが声を掛けると、パステルピンクに振るわれた拳が、命中する前にピタリと止まった。イエーロの命令には背かないのだ。
「くそぅ、なかなか思うようにはいかねえなぁ!」
「そんな事はないわよぉ。私の力の持てる限りのモノトーンちゃん相手でここまで粘れるんだもの。最初を思えば強くなったわよ」
ぶすっとした顔で地面に座るパステルピンクだったが、イエーロはちゃんと評価している。本当にイエーロは先生向きなところがあるようだ。
「それじゃ、交代してパステルシアン、あなたもやってみましょうか」
「はいっ!」
パステルシアンも1対1の戦いを行うが、曲撃ちで翻弄するも身体能力は五人中最も低いので、あえなくすぐに捕まってしまっていた。
「あらあらぁ、パステルシアンは後方支援型ねぇ。技を使いつつ、姿を隠しながら戦う方がいいんじゃないかしらね」
イエーロはパステルシアンにもアドバイスをしていた。水を放つ技があるのだから、それで敵の視界遮りながらのトリッキーな戦い方がいいのではないかと提案していた。
「な、なるほど。参考にしてみます」
パステルシアンは納得がいったようで、すぐに受け入れていた。
「それじゃ、今日はこのくらいにしておきましょう。雪路様がお昼を用意して下さっているようだから、一緒に食べましょうね~」
というわけで、この日の訓練はこれで切り上げる事となったのだった。
イエーロ、味方になるとこの上なく心強い奴だった。
パステルピンクが勢いよく剣を振りかざす。
どうやら今日も、冬柴家の敷地で稽古に励んでいるようだ。
「モノォッ!」
化け物はそれを躱す。パステルピンクの剣はまだ大振りでうまく扱えておらず、まだまだ隙が大きいようだ。サイドステップで躱した化け物が、パステルピンクにすぐさま反撃を入れようとしている。
「させない! パステル・シュトローム・アロー!」
そこへパステルシアンが矢を放つ。さすがにこれには化け物も対応できず、
「モノォッ!!」
もろに食らって浄化されてしまった。
それを見て、弓を握って跳び上がるパステルシアンだったが、イエーロはまだまだ渋い顔をしていた。
「うーん、連携は取れているんだけれど、二人とも個々だとまだ動きが甘いわねぇ。三傑はまだ一人ずつやって来ているから、まだこっちが優勢だけれど~、二人以上でやって来たら、相手にならないわよ~?」
イエーロの評価は厳しかった。とはいえども、イエーロの生み出す化け物相手ならば、だいぶ楽に倒せるようになってきたので、二人とも成長はしているようである。
「それは確かにそうかもな。お前らの生み出す化け物は、お前らの能力に比例するんだよな?」
「ええ、そうよ~。だから~、私のモノトーンちゃんは~、三傑には遠く及ばないわよぉ」
パステルピンクが確認するように問い掛けると、イエーロからは思った通りの答えが返ってきた。それゆえに、パステルピンクの表情は厳しかった。
「やっぱ、そっかー。さすがに俺は剣なんて扱った事がないからな。このパステルブラシのおかげでなんとか振れているだけであって、扱えてるというよりは扱われてるって感じなんだよ」
パステルピンクは自分の感じていた違和感をしっかり認識できているようだった。これを見るに、だいぶ成長はしている事は分かる。
「それが認識できているなら~、私たち四天王と戦った時より成長しているって事ね~。伝説の戦士としての覚悟が出てきたってところね~」
イエーロは元々は敵ながらにも、その成長を喜んでいるようだった。さすがは一番の関心事が自分の筋肉だけな事はある。
「ここまで成長してくると~、モノトーンちゃんじゃ、ちょっと荷が重くなってきたわねぇ」
「いや、俺たちは二人だし、そもそも幼馴染みで、ある程度考えが分かるから連携が取れてるんだ」
そして、パステルピンクはパステルシアンを見る。それに対して、パステルシアンはドキッとした表情をしていた。少し赤くなっている気もするが、単純に急に顔を向けられて驚いているだけのようだ。
「だから、次は俺たち一人ずつで戦ってみたい」
再びイエーロに顔を向けたパステルピンクは、強くそう言い切った。
「ふふっ、殊勝な心掛けねぇ。いいわよぉ~、お姉さんがとことん付き合ってあげるわあん」
そして、イエーロは笑みを浮かべながら再び化け物を召喚した。
「モノ、トーンッ!」
「さあ、どちらから行くのぉん?」
「言い出しっぺの俺からだ」
パステルピンクは剣を構える。
「あらあらぁ、お姫様を護るナイト気取りかしらぁ? いいわねぇ、もっとそういうのちょうだ~い♪」
イエーロもノリノリである。
「それじゃ行くわよぉん。モノトーンちゃん、やっちゃいなさぁい!」
「モノ、トーン!」
化け物とパステルピンクの1対1の戦いが始まる。その間、パステルシアンはイエーロの隣までやって来た。
「ふふっ、いい彼氏じゃないの」
「そ、そんな。千春はただの幼馴染みですよ」
パステルピンクと化け物の戦いを見守りながら、イエーロはパステルシアンに話し掛ける。
「あらあらぁ、照れちゃって可愛いわねぇん。お互いがお互いのために強くなるっていうのは、悪くはないわぁ。お姉さんも、そういうの好きよぉ」
イエーロがあまりに真顔で言うものだから、パステルシアンは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。本当に油断のならないオネエである。
二人がそんな話をしている最中も、パステルピンクは化け物と1対1の戦いを繰り広げている。パステルピンクの持つ剣と化け物の拳が激しくぶつかり合い、どういうわけか比喩ではない火花が散っていた。
「くっ、ソロだとまだまだ互角程度までしかいけないか。強えなぁ」
「モノォッ!」
パステルピンクが険しい表情をしていると、化け物は嬉しそうな声で叫んでいた。化け物にも感情があったのか。
「モノトーンちゃんと互角って事は、長引くほどに不利って事ねぇ。モノトーンちゃんって体力底知らずだものぉ」
イエーロがこう言うが、実にその通りである。パステルピンクの方は徐々に疲労が溜まり始め、動きが悪くなってきている。連戦というのもあるから、なおさら疲れが見えていた。
「うーん、ここまでってところねぇ。モノトーンちゃん、もういいわよぉん」
イエーロが声を掛けると、パステルピンクに振るわれた拳が、命中する前にピタリと止まった。イエーロの命令には背かないのだ。
「くそぅ、なかなか思うようにはいかねえなぁ!」
「そんな事はないわよぉ。私の力の持てる限りのモノトーンちゃん相手でここまで粘れるんだもの。最初を思えば強くなったわよ」
ぶすっとした顔で地面に座るパステルピンクだったが、イエーロはちゃんと評価している。本当にイエーロは先生向きなところがあるようだ。
「それじゃ、交代してパステルシアン、あなたもやってみましょうか」
「はいっ!」
パステルシアンも1対1の戦いを行うが、曲撃ちで翻弄するも身体能力は五人中最も低いので、あえなくすぐに捕まってしまっていた。
「あらあらぁ、パステルシアンは後方支援型ねぇ。技を使いつつ、姿を隠しながら戦う方がいいんじゃないかしらね」
イエーロはパステルシアンにもアドバイスをしていた。水を放つ技があるのだから、それで敵の視界遮りながらのトリッキーな戦い方がいいのではないかと提案していた。
「な、なるほど。参考にしてみます」
パステルシアンは納得がいったようで、すぐに受け入れていた。
「それじゃ、今日はこのくらいにしておきましょう。雪路様がお昼を用意して下さっているようだから、一緒に食べましょうね~」
というわけで、この日の訓練はこれで切り上げる事となったのだった。
イエーロ、味方になるとこの上なく心強い奴だった。
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