マジカル☆パステル

未羊

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第101話 四天王とは違うのだよ

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 モノトーンのアジト。
「くっ……、この程度で退却など、不覚っ!」
 ブラークは悔しさに顔を歪ませていた。だが、膝に矢を受けたダメージは思ったよりも深刻である。これではこれまでと同じように動けるようになるかは不透明だった。
「ブラーク、無理をするな。今はとにかく傷を治せ。無理をしてやられてしまえば、それこそダクネース様の怒りを買うぞ」
「ぐぅ……」
 シイロに強く言われてしまえば、ブラークはやむなく黙り込んでしまった。今はシイロに肩を貸してもらってなんとか歩いている状態である。表面上は大した怪我ではないのだが、膝に傷を負うという事は、程度にもよるが歩行などに支障が出てしまうものなのである。
「ややっ、どうされたのだブラーク」
 戻ってきたブラークとシイロに気が付いたグーレイ。ブラークの異常にすぐに気が付いたグーレイが、心配して駆け寄ってきた。
「パステル王国の連中とやり合って、膝に矢を受けてしまったのだ。ただの矢ならまだ軽かっただろうが、パステル王国のの連中の矢だ。私たちには絶大なダメージを与えたようだ」
「すまぬな、当分は治療にあたらねばならぬ。おぬしらに迷惑を掛けてしまうようで、実に申し訳ない」
 ブラークは本気で落ち込んでいた。
「ぬぬぬ、ブラークほどの者にそのような怪我を負わせるなど、パステル王国め、許せぬな」
「まぁそうだね。相手は五人、いや、六人だったからな。いくらブラークとはいえど、分が悪すぎた」
「六?! 一体どういう事なのだ?」
 シイロの証言に、グーレイは非常に驚いている。伝説の戦士は五人のはずである。それが六人だというのだから、驚くのも無理はなかった。
「どうやら、パステル王国の関連の者があの場所にはすでに居たらしい。そいつが加わった事で、ブラークは苦戦を強いられたのだ」
「なんと、それは面妖な事よな」
 シイロの証言に、グーレイは腕を組んで悩み始めた。
「なるほど、その関係者のせいで、あの世界にパステル王国の連中が現れたという事か。本当に面倒な連中よな……」
 グーレイの表情が苦々しさを浮かべている。本当に面倒だと感じているようだった。
「まったくその通りだ。奴らは新たな力すら身に付けおったからな。このまま放っておくとさらに面倒になる。早いうちに叩き潰さねば、最悪我々の手にも負えなくなってしまいかねん」
 シイロも苦虫を噛み潰したような、嫌そうな顔をしている。そのくらいには、パステル戦士たちが力をつけ始めているのである。本当にこのままでは自分たち三傑ですら敵わなくなってしまうのではないかという焦りが、シイロの中に生まれ始めていたのだ。
「だが、ここでブラークが戦線離脱だ。できるだけ黒の濃い場所で休んでももらわねば、傷も癒えはしまい」
「うむ、そうだな。我ら三傑は四天王とは違う。お前の傷が癒えるまで、我らに任せておけ」
「すまぬな。我が驕ったばかりにこのような事になってしまってな……」
 ブラークは他の二人の気遣いに、本当に申し訳なさそうに力なく言った。
「そう言うな。我ら三傑の付き合いではないか」
「そうだな。ブラークが戻ってくるまで、できる限り私たちで奴らの力を削いでおこう」
「かたじけない」
 ブラークは頭を下げると、そのままシイロに肩を借りたまま、治療のための部屋へと向かっていった。
「ふん、ブラークにあれほどまでの傷を負わせるとは、お前たちを侮り過ぎていたようだな。だが、1対5であろうが6であろうが、我ら三傑の本気には適うまいて」
 ブラークとシイロを見送ったグーレイは、上空を眺めながら呟いている。
「ブラークに傷を負わせたくらいで浮かれているのならば、我の黒炭の餌食にしてくれようぞ。待っておれ、パステル王国の連中よ!」
 グーレイはそのまま、その場を歩いて立ち去っていった。

 一方、シイロはブラークを連れて、三傑用の特殊な部屋にやって来た。
「すまぬな、シイロ。お前の手を煩わせてしまって」
「気にするな。私たち三傑の仲ではないか」
 シイロはブラークを部屋の中に座らせると、部屋の状態を真っ黒に設定する。さすがにここで真っ白に設定するような腹黒い性格はしていない。シイロはあくまでも真っ白なのだ。
「ううむ、実に心地よい黒だ」
 ブラークは本当に気持ちよさそうな声を上げている。
「時にシイロよ」
「なんだ、ブラーク」
 何かが気になったブラークは、シイロに質問をしてみる事にした。
「シイロはなぜ、あの場に居合わせたのだ?」
「たまたまだ。妙な胸騒ぎがしたのでな、慌てて駆けつけたら、そなたが危険な目に遭っていたといわけだ。深い意味はない」
「……なるほどな。だが、それで実際に助かったわけだからな、礼を言わせてもらう」
 まだ少々引っ掛かりが残るブラークだが、命の恩人であるシイロをこれ以上疑うのはよくないと考えたので、素直に礼を述べておく。
「ふっ、礼というのなら、さっさとその傷を治す事だな。私たちは別に構わぬが、ダクネース様がどう思われるかは別問題だ。ダクネース様の機嫌を損ねれば、それこそ私たちは終わるのだからな」
「……肝に銘じておく」
 神妙な面持ちのシイロの横顔に、ブラークは血の気が引いたように頷いていた。ダクネースというのは、それだけ雲の上の存在なのだ。
 結局その後のブラークは傷の治療をしながら、歩いて去っていくシイロを見送る事しかできなかったのだった。
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