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第90話 不思議な現象
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「すまぬ、不覚を取った」
グーレイがアジトに戻るなり、ブラークとシイロに謝っている。
「どうした、グーレイ。お前らしくもないな」
「まったくだ。しかし、そういうって事は、あんたをも負かしたって事なのか。これは予想外だな」
シイロに指摘されて、グーレイは拳を強く握りしめる。
「まったくその通りだ。しかもブラークとは違う相手だ。最初こそちぐはぐだったが、二人の息が揃うと思いの外手強くてな。それとだが、眠りを誘う攻撃があった。これが意外に厄介だったな。我のモノトーンをあっという間に無効化されてしまったからな」
グーレイはパステルピンクとパステルシアンと戦った状況を説明していた。
「ふむ、それは確かに我とは別の相手だな。こちらは三人組ではあったが、そのような小細工はなかったな」
「うむ、我の相手した方はパステルピンクとパステルシアンと名乗っておった」
「我の方はパステルオレンジ、パステルパープル、パステルブラウンだったな。ブラウンの奴は例の混ざりものだったやつだ」
「なんと、混ざりものはやはりパステル王国の伝説の戦士だったのか」
ブラークとグーレイの話を聞いていたシイロが大声で反応する。
「だが、奇妙な事もある」
「なんだ?」
グーレイの言葉に他の二人が反応する。
「パステル王国の聖獣が2体足りぬ。我の戦った方にはピンクとブルーの聖獣が居った。だが、ブラークの方は1体だけだったのよな?」
「うむ、羊の1体だけだったな。不思議な事に我らの力を秘めておったのでモノトーンに変えてやったがな。それが仇となったな」
「となると、他の聖獣2体はどこに?」
グーレイとブラークの証言に、シイロが考え込む。
「分からん。だが、あのやり取り見る限りは全員揃っているような感じだな」
実際に目の前で見たブラークが推測する。
その言葉にしばらく考え込んでいたシイロだったが、
「もう面倒だな。私が直々に確認してあげようじゃないか」
と、打って出る事にしたのだった。
「本気か、シイロ」
「本気だ。あれこれ考えるよりは実際見てみた方が早い」
シイロはブラークとグーレイに向けて、真剣な表情をしていた。その決意の固い表情に、二人ももう止める事は諦めた。
「分かった。できれば潰しておく方がいいだろうが、油断はするなよ」
ブラークの呼び掛けに、シイロは黙って頷いた。そして、そのまますっと姿を消したのだった。
二人は少し心配そうにその姿を見送った。
シイロがやって来たのは、なんと色鮮寺だった。
「ふぅ、本当に面倒な世界だ。これほどまでにいろいろな色にあふれているとは、本当に目障りだな」
お寺の中を歩くシイロ。だが、目障りだとか言いながらも、お寺の中をじっくり見て回っている。
「ふむ、何かの信仰の場所か。あの建物から不思議な力を感じる」
シイロは引き寄せられるように、お寺の本堂へ近付いて行く。すると、急に後ろから誰かに声を掛けられる。
「誰だ!」
シイロが振り向いた先に居たのは、この色鮮寺の住職だった。
「おや、驚かせてしまいましたか。申し訳ありませんね」
「だ、誰だ、貴様は」
謝罪する住職に対して、シイロは問い掛ける。
「私はこの色鮮寺の住職でございます。名を名乗るほどの者でもございません」
住職はにこにこしながら答えている。シイロからすればどうにも胡散臭い男である。正直これ以上関わりたくはないと思ったのだが、どういうわけか、この場所ではシイロの能力が発動できなかった。
(なっ、なんだこれは。モノトーンの力が阻害されている?)
予想だにしない状況に、シイロは落ち着きを無くす。その様子に住職は気になって声を掛ける。
「どうかされたのですかな?」
「い、いや、なんでもない。ここにはたまたま寄っただけだ。すぐに帰らせてもらう」
不思議そうに見てくる住職。シイロは相手にしたくないのか、迷い込んだ風に装って出ていこうとする。すると住職は、
「そうですか。このお寺の出入口はあちら側です。お気を付けて」
と特に気に留める事もなく、出口を手で示して立ち去っていった。
(な、なんだったのだ、あの人間は……)
シイロはしばらくの間、妙な威圧感に立ち尽くしていた。
少し経ってからシイロは、この気持ち悪い空間から出るために、住職が指し示した出口の方へと歩いていく。そこには確かに門があった。
(ふぅ、これでようやく気持ち悪い空間から出られるな。この場所へは出ぬように、ブラークとグーレイにも伝えてかねばなるまい。モノトーンの力が使えぬと、私たちも他のモノトーンどもとそう変わらぬからな)
何とも意外な事だった。どうやら、想いの力で強化されるのはモノトーンの力だけのようである。素の力はイエーロたちとも大差が無いらしい。
門を出ると、シイロは自分の力を確認してみる。手に力が集まってくるので、どうやら門の外なら能力が阻害される事はないようだ。という事は、どうやら色鮮寺の中だけで特殊な事が起きているようである。
(何なのだ、この場所は。モノトーンの力を封じるとは一体……)
シイロが振り返ってお寺の中を見ていると、一台の車が走ってきてお寺の前に止まった。
「さあ、無事に戻って来れましたわよ」
車の中から真っ先に降りてきたのは雪路だった。どうやら海から帰ってきたようだ。
「やれやれ、車の中ってのは窮屈で仕方ねえ」
「まったく、ワイスはもこもこのせいで体積が大きいからよ。全然狭くなんてないんだから」
ワイスに、楓も車から降りてくる。そして、二人が何かに気が付いてお寺の門の方を見る。
「てめえ、モノトーンの奴だな?!」
入口に立つシイロにいきなり因縁をつけるワイス。それに対して、楓は警戒のために構え、シイロはにやりと笑っている。
「ふむ、パステル王国の生き残りか。こんな所で会うとはな」
ワイスの声を聞いた面々が、次々と車から降りてくる。
「ほお、これはお揃いで。……これは好都合。全員まとめて白く染め上げてやる!」
偶然ばったりと出会ってしまったワイスたちとシイロ。予想外の炎天下の戦いが始まろうとしていた。
グーレイがアジトに戻るなり、ブラークとシイロに謝っている。
「どうした、グーレイ。お前らしくもないな」
「まったくだ。しかし、そういうって事は、あんたをも負かしたって事なのか。これは予想外だな」
シイロに指摘されて、グーレイは拳を強く握りしめる。
「まったくその通りだ。しかもブラークとは違う相手だ。最初こそちぐはぐだったが、二人の息が揃うと思いの外手強くてな。それとだが、眠りを誘う攻撃があった。これが意外に厄介だったな。我のモノトーンをあっという間に無効化されてしまったからな」
グーレイはパステルピンクとパステルシアンと戦った状況を説明していた。
「ふむ、それは確かに我とは別の相手だな。こちらは三人組ではあったが、そのような小細工はなかったな」
「うむ、我の相手した方はパステルピンクとパステルシアンと名乗っておった」
「我の方はパステルオレンジ、パステルパープル、パステルブラウンだったな。ブラウンの奴は例の混ざりものだったやつだ」
「なんと、混ざりものはやはりパステル王国の伝説の戦士だったのか」
ブラークとグーレイの話を聞いていたシイロが大声で反応する。
「だが、奇妙な事もある」
「なんだ?」
グーレイの言葉に他の二人が反応する。
「パステル王国の聖獣が2体足りぬ。我の戦った方にはピンクとブルーの聖獣が居った。だが、ブラークの方は1体だけだったのよな?」
「うむ、羊の1体だけだったな。不思議な事に我らの力を秘めておったのでモノトーンに変えてやったがな。それが仇となったな」
「となると、他の聖獣2体はどこに?」
グーレイとブラークの証言に、シイロが考え込む。
「分からん。だが、あのやり取り見る限りは全員揃っているような感じだな」
実際に目の前で見たブラークが推測する。
その言葉にしばらく考え込んでいたシイロだったが、
「もう面倒だな。私が直々に確認してあげようじゃないか」
と、打って出る事にしたのだった。
「本気か、シイロ」
「本気だ。あれこれ考えるよりは実際見てみた方が早い」
シイロはブラークとグーレイに向けて、真剣な表情をしていた。その決意の固い表情に、二人ももう止める事は諦めた。
「分かった。できれば潰しておく方がいいだろうが、油断はするなよ」
ブラークの呼び掛けに、シイロは黙って頷いた。そして、そのまますっと姿を消したのだった。
二人は少し心配そうにその姿を見送った。
シイロがやって来たのは、なんと色鮮寺だった。
「ふぅ、本当に面倒な世界だ。これほどまでにいろいろな色にあふれているとは、本当に目障りだな」
お寺の中を歩くシイロ。だが、目障りだとか言いながらも、お寺の中をじっくり見て回っている。
「ふむ、何かの信仰の場所か。あの建物から不思議な力を感じる」
シイロは引き寄せられるように、お寺の本堂へ近付いて行く。すると、急に後ろから誰かに声を掛けられる。
「誰だ!」
シイロが振り向いた先に居たのは、この色鮮寺の住職だった。
「おや、驚かせてしまいましたか。申し訳ありませんね」
「だ、誰だ、貴様は」
謝罪する住職に対して、シイロは問い掛ける。
「私はこの色鮮寺の住職でございます。名を名乗るほどの者でもございません」
住職はにこにこしながら答えている。シイロからすればどうにも胡散臭い男である。正直これ以上関わりたくはないと思ったのだが、どういうわけか、この場所ではシイロの能力が発動できなかった。
(なっ、なんだこれは。モノトーンの力が阻害されている?)
予想だにしない状況に、シイロは落ち着きを無くす。その様子に住職は気になって声を掛ける。
「どうかされたのですかな?」
「い、いや、なんでもない。ここにはたまたま寄っただけだ。すぐに帰らせてもらう」
不思議そうに見てくる住職。シイロは相手にしたくないのか、迷い込んだ風に装って出ていこうとする。すると住職は、
「そうですか。このお寺の出入口はあちら側です。お気を付けて」
と特に気に留める事もなく、出口を手で示して立ち去っていった。
(な、なんだったのだ、あの人間は……)
シイロはしばらくの間、妙な威圧感に立ち尽くしていた。
少し経ってからシイロは、この気持ち悪い空間から出るために、住職が指し示した出口の方へと歩いていく。そこには確かに門があった。
(ふぅ、これでようやく気持ち悪い空間から出られるな。この場所へは出ぬように、ブラークとグーレイにも伝えてかねばなるまい。モノトーンの力が使えぬと、私たちも他のモノトーンどもとそう変わらぬからな)
何とも意外な事だった。どうやら、想いの力で強化されるのはモノトーンの力だけのようである。素の力はイエーロたちとも大差が無いらしい。
門を出ると、シイロは自分の力を確認してみる。手に力が集まってくるので、どうやら門の外なら能力が阻害される事はないようだ。という事は、どうやら色鮮寺の中だけで特殊な事が起きているようである。
(何なのだ、この場所は。モノトーンの力を封じるとは一体……)
シイロが振り返ってお寺の中を見ていると、一台の車が走ってきてお寺の前に止まった。
「さあ、無事に戻って来れましたわよ」
車の中から真っ先に降りてきたのは雪路だった。どうやら海から帰ってきたようだ。
「やれやれ、車の中ってのは窮屈で仕方ねえ」
「まったく、ワイスはもこもこのせいで体積が大きいからよ。全然狭くなんてないんだから」
ワイスに、楓も車から降りてくる。そして、二人が何かに気が付いてお寺の門の方を見る。
「てめえ、モノトーンの奴だな?!」
入口に立つシイロにいきなり因縁をつけるワイス。それに対して、楓は警戒のために構え、シイロはにやりと笑っている。
「ふむ、パステル王国の生き残りか。こんな所で会うとはな」
ワイスの声を聞いた面々が、次々と車から降りてくる。
「ほお、これはお揃いで。……これは好都合。全員まとめて白く染め上げてやる!」
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