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第82話 強くなるヒントは?
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急激に体が光り出したパステルピンクだったが、それにはまったく構わず、化け物に向かっていく。
「モノォッ!」
次の瞬間、化け物は吹っ飛んでいた。何が起きたのかチェリーにも分からない。ただ分かるのは、光輝いたパステルピンクがもの凄い形相で立っているという事だけだった。女性の主人公がしちゃいけない顔だが、パステルピンクは本来は少年だからセーフである。
だが、化け物だって負けてはいない。何とか立ち上がり、再びパステルピンクへと襲い掛かる。
「モノ、モノォッ!」
その足は思いの外速く、あっという間にパステルピンクとの距離を詰めてくる。しかし、今のパステルピンクはとても落ち着いていた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
パステルブラシを取り出すと、植物の蔓を発生させて化け物の足を絡めとってしまった。さらには腕まであっという間に蔓を絡ませ、がんじがらめにして動きを止めてしまう。
「モノッ、モノッ、モノォッ!」
足掻く化け物だが、どういうわけかまったくびくともしない。今までのパステルピンクの力なら、あっという間に抜け出されてしまっていたはずなのに、今回はまるですべてが違っていた。
「はああっ!」
パステルピンクが力を込めると、跳び上がって化け物へと殴りかかる。
「おらぁっ!」
また一発、また一発と、渾身の力の込められた拳や蹴りを化け物へと浴びせていった。
「モ、モ、モノォ……」
化け物はすでに戦意喪失状態になったのか、とても弱々しく呟いた。
「パステルピンク、今だよ!」
「おうっ!」
チェリーの声で、再びパステルブラシを構える。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
パステルピンクの浄化技が放たれる。
「モ、モ、モノトーンッ!」
あえなく化け物は浄化されてヘリコプターへと、その姿を戻していったのだった。
この戦いを横目に見ていたイエーロは、安心したように笑う。
「まったくぅ、ちょっとはやるようになったじゃないの」
「よそ見とは、余裕ね!」
「おっとぉ!」
その瞬間の隙を突いて、パステルシアンが攻撃を仕掛けるが、さすがに肉弾戦ではイエーロに対して分が悪かった。パステルシアンの拳は、簡単に片手でいなされてしまう。
「パステルシアンは肉弾戦向きじゃあ、ないわねぇ」
イエーロはパステルシアンをそう評価した。拳の一発も弱いし、何よりも他の四人に比べれば明らかに動きが鈍いのだ。
「強力な一撃にはまだ貫通されちゃうけど、その泡の反射をもう少し有効活用すべきね」
パステルシアンに対して横向きになりながら、顔を抱え込むようなポーズを取りながら説明口調で言うイエーロ。思ったよりも脳筋というわけではないようだ。
「私たちを倒したように、たとえ弱くても作戦次第ではいくらでも勝ち目をつかみ取る事は可能よぉ。ただ、三傑はそれを全部力業で粉砕してくるけどねぇ」
イエーロはけらけらと笑っている。
「そ、それじゃあどうしたらいいのよ」
笑うイエーロに、怒ったように声を掛けるパステルシアン。
「でもねぇ、あいつらにも弱点はあるの。あいつらはエリートで自信家なのよ。だから、ちょっとでも意外な事をされると、そこから地味に崩れてくれるわ。先日のブラークも、ワイスの頑張りでかなり動揺してたもの~」
「な、なるほど」
イエーロの解説で、パステルシアンは分かったような分からないような、何とも不思議な感覚に陥った。
「だ、か、らっ、あなたは目くらましとその反射の泡で、あいつらの動揺を誘えばいいのよ。一度でも効けば、それだけで勝機は生まれるわよ」
イエーロはパステルシアンの方へと完全に向き直ると、人差し指を左右に揺らしながら作戦を伝授している。
「ただ、あいつらはモノトーン最強の戦士たちよ。二度目はないと思う事ね。それこそ、あなたたちが純粋に強くならなければいけないわよ~」
言い終わると、イエーロは今度は両腰に手を当てる。
「パステルピンクには伝えたけれど、あなたたち伝説の戦士と同様に、私たちモノトーンもその思いの強さが力の強さになるわ。要は、あなたたちがどういった気持ちでどれだけ真剣かというのが試されていると言っても過言ではないわね」
イエーロの言葉に、パステルシアンはすごく驚いている。
「だからっ!」
「なっ!」
「こんな感じに純粋に力に差が出ちゃうのよ~」
イエーロは笑顔で、パステルピンクの背中にエルボーを叩き込んでいた。
「くっそーっ! 完全に不意を打ったと思ったのによぉ!」
「甘いわねぇ。さっきまでの集中状態が切れちゃってて、簡単に目で追えたわよ~?」
地面に叩きつけられて喚くパステルピンクに、イエーロは呆れて首を左右に振っていた。
「とりあえず、私のモノトーンちゃんは倒されちゃったから、及第点ってところかしら~。雪路様と同じこの世界の人間なのに、どうしてここまで差がついているのかしらねぇ」
イエーロにとって、実のところは雪路の強さの方が謎である。だが、あえてここは二人の事を考えて雪路の方を立てているのである。
それはそれとして、この日のイエーロによる特訓は終わりを告げた。この特訓であちこちにできた痕跡は、チェリーとグローリによって修復され、何事もなかったようにきれいなヘリポートと森林へと戻ったのだった。
千春と美空は、こうしたイエーロとの特訓の中で、強くなるヒントを掴む事ができるのだろうか。そして、モノトーンの野望を阻止する事はできるのだろうか。まだ戦いは続くのだった。
「モノォッ!」
次の瞬間、化け物は吹っ飛んでいた。何が起きたのかチェリーにも分からない。ただ分かるのは、光輝いたパステルピンクがもの凄い形相で立っているという事だけだった。女性の主人公がしちゃいけない顔だが、パステルピンクは本来は少年だからセーフである。
だが、化け物だって負けてはいない。何とか立ち上がり、再びパステルピンクへと襲い掛かる。
「モノ、モノォッ!」
その足は思いの外速く、あっという間にパステルピンクとの距離を詰めてくる。しかし、今のパステルピンクはとても落ち着いていた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
パステルブラシを取り出すと、植物の蔓を発生させて化け物の足を絡めとってしまった。さらには腕まであっという間に蔓を絡ませ、がんじがらめにして動きを止めてしまう。
「モノッ、モノッ、モノォッ!」
足掻く化け物だが、どういうわけかまったくびくともしない。今までのパステルピンクの力なら、あっという間に抜け出されてしまっていたはずなのに、今回はまるですべてが違っていた。
「はああっ!」
パステルピンクが力を込めると、跳び上がって化け物へと殴りかかる。
「おらぁっ!」
また一発、また一発と、渾身の力の込められた拳や蹴りを化け物へと浴びせていった。
「モ、モ、モノォ……」
化け物はすでに戦意喪失状態になったのか、とても弱々しく呟いた。
「パステルピンク、今だよ!」
「おうっ!」
チェリーの声で、再びパステルブラシを構える。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
パステルピンクの浄化技が放たれる。
「モ、モ、モノトーンッ!」
あえなく化け物は浄化されてヘリコプターへと、その姿を戻していったのだった。
この戦いを横目に見ていたイエーロは、安心したように笑う。
「まったくぅ、ちょっとはやるようになったじゃないの」
「よそ見とは、余裕ね!」
「おっとぉ!」
その瞬間の隙を突いて、パステルシアンが攻撃を仕掛けるが、さすがに肉弾戦ではイエーロに対して分が悪かった。パステルシアンの拳は、簡単に片手でいなされてしまう。
「パステルシアンは肉弾戦向きじゃあ、ないわねぇ」
イエーロはパステルシアンをそう評価した。拳の一発も弱いし、何よりも他の四人に比べれば明らかに動きが鈍いのだ。
「強力な一撃にはまだ貫通されちゃうけど、その泡の反射をもう少し有効活用すべきね」
パステルシアンに対して横向きになりながら、顔を抱え込むようなポーズを取りながら説明口調で言うイエーロ。思ったよりも脳筋というわけではないようだ。
「私たちを倒したように、たとえ弱くても作戦次第ではいくらでも勝ち目をつかみ取る事は可能よぉ。ただ、三傑はそれを全部力業で粉砕してくるけどねぇ」
イエーロはけらけらと笑っている。
「そ、それじゃあどうしたらいいのよ」
笑うイエーロに、怒ったように声を掛けるパステルシアン。
「でもねぇ、あいつらにも弱点はあるの。あいつらはエリートで自信家なのよ。だから、ちょっとでも意外な事をされると、そこから地味に崩れてくれるわ。先日のブラークも、ワイスの頑張りでかなり動揺してたもの~」
「な、なるほど」
イエーロの解説で、パステルシアンは分かったような分からないような、何とも不思議な感覚に陥った。
「だ、か、らっ、あなたは目くらましとその反射の泡で、あいつらの動揺を誘えばいいのよ。一度でも効けば、それだけで勝機は生まれるわよ」
イエーロはパステルシアンの方へと完全に向き直ると、人差し指を左右に揺らしながら作戦を伝授している。
「ただ、あいつらはモノトーン最強の戦士たちよ。二度目はないと思う事ね。それこそ、あなたたちが純粋に強くならなければいけないわよ~」
言い終わると、イエーロは今度は両腰に手を当てる。
「パステルピンクには伝えたけれど、あなたたち伝説の戦士と同様に、私たちモノトーンもその思いの強さが力の強さになるわ。要は、あなたたちがどういった気持ちでどれだけ真剣かというのが試されていると言っても過言ではないわね」
イエーロの言葉に、パステルシアンはすごく驚いている。
「だからっ!」
「なっ!」
「こんな感じに純粋に力に差が出ちゃうのよ~」
イエーロは笑顔で、パステルピンクの背中にエルボーを叩き込んでいた。
「くっそーっ! 完全に不意を打ったと思ったのによぉ!」
「甘いわねぇ。さっきまでの集中状態が切れちゃってて、簡単に目で追えたわよ~?」
地面に叩きつけられて喚くパステルピンクに、イエーロは呆れて首を左右に振っていた。
「とりあえず、私のモノトーンちゃんは倒されちゃったから、及第点ってところかしら~。雪路様と同じこの世界の人間なのに、どうしてここまで差がついているのかしらねぇ」
イエーロにとって、実のところは雪路の強さの方が謎である。だが、あえてここは二人の事を考えて雪路の方を立てているのである。
それはそれとして、この日のイエーロによる特訓は終わりを告げた。この特訓であちこちにできた痕跡は、チェリーとグローリによって修復され、何事もなかったようにきれいなヘリポートと森林へと戻ったのだった。
千春と美空は、こうしたイエーロとの特訓の中で、強くなるヒントを掴む事ができるのだろうか。そして、モノトーンの野望を阻止する事はできるのだろうか。まだ戦いは続くのだった。
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