マジカル☆パステル

未羊

文字の大きさ
上 下
82 / 197

第82話 強くなるヒントは?

しおりを挟む
 急激に体が光り出したパステルピンクだったが、それにはまったく構わず、化け物に向かっていく。
「モノォッ!」
 次の瞬間、化け物は吹っ飛んでいた。何が起きたのかチェリーにも分からない。ただ分かるのは、光輝いたパステルピンクがもの凄い形相で立っているという事だけだった。女性の主人公がしちゃいけない顔だが、パステルピンクは本来は少年だからセーフである。
 だが、化け物だって負けてはいない。何とか立ち上がり、再びパステルピンクへと襲い掛かる。
「モノ、モノォッ!」
 その足は思いの外速く、あっという間にパステルピンクとの距離を詰めてくる。しかし、今のパステルピンクはとても落ち着いていた。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
 パステルブラシを取り出すと、植物の蔓を発生させて化け物の足を絡めとってしまった。さらには腕まであっという間に蔓を絡ませ、がんじがらめにして動きを止めてしまう。
「モノッ、モノッ、モノォッ!」
 足掻く化け物だが、どういうわけかまったくびくともしない。今までのパステルピンクの力なら、あっという間に抜け出されてしまっていたはずなのに、今回はまるですべてが違っていた。
「はああっ!」
 パステルピンクが力を込めると、跳び上がって化け物へと殴りかかる。
「おらぁっ!」
 また一発、また一発と、渾身の力の込められた拳や蹴りを化け物へと浴びせていった。
「モ、モ、モノォ……」
 化け物はすでに戦意喪失状態になったのか、とても弱々しく呟いた。
「パステルピンク、今だよ!」
「おうっ!」
 チェリーの声で、再びパステルブラシを構える。
 「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
 パステルピンクの浄化技が放たれる。
「モ、モ、モノトーンッ!」
 あえなく化け物は浄化されてヘリコプターへと、その姿を戻していったのだった。

 この戦いを横目に見ていたイエーロは、安心したように笑う。
「まったくぅ、ちょっとはやるようになったじゃないの」
「よそ見とは、余裕ね!」
「おっとぉ!」
 その瞬間の隙を突いて、パステルシアンが攻撃を仕掛けるが、さすがに肉弾戦ではイエーロに対して分が悪かった。パステルシアンの拳は、簡単に片手でいなされてしまう。
「パステルシアンは肉弾戦向きじゃあ、ないわねぇ」
 イエーロはパステルシアンをそう評価した。拳の一発も弱いし、何よりも他の四人に比べれば明らかに動きが鈍いのだ。
「強力な一撃にはまだ貫通されちゃうけど、その泡の反射をもう少し有効活用すべきね」
 パステルシアンに対して横向きになりながら、顔を抱え込むようなポーズを取りながら説明口調で言うイエーロ。思ったよりも脳筋というわけではないようだ。
「私たちを倒したように、たとえ弱くても作戦次第ではいくらでも勝ち目をつかみ取る事は可能よぉ。ただ、三傑はそれを全部力業で粉砕してくるけどねぇ」
 イエーロはけらけらと笑っている。
「そ、それじゃあどうしたらいいのよ」
 笑うイエーロに、怒ったように声を掛けるパステルシアン。
「でもねぇ、あいつらにも弱点はあるの。あいつらはエリートで自信家なのよ。だから、ちょっとでも意外な事をされると、そこから地味に崩れてくれるわ。先日のブラークも、ワイスの頑張りでかなり動揺してたもの~」
「な、なるほど」
 イエーロの解説で、パステルシアンは分かったような分からないような、何とも不思議な感覚に陥った。
「だ、か、らっ、あなたは目くらましとその反射の泡で、あいつらの動揺を誘えばいいのよ。一度でも効けば、それだけで勝機は生まれるわよ」
 イエーロはパステルシアンの方へと完全に向き直ると、人差し指を左右に揺らしながら作戦を伝授している。
「ただ、あいつらはモノトーン最強の戦士たちよ。二度目はないと思う事ね。それこそ、あなたたちが純粋に強くならなければいけないわよ~」
 言い終わると、イエーロは今度は両腰に手を当てる。
「パステルピンクには伝えたけれど、あなたたち伝説の戦士と同様に、私たちモノトーンもその思いの強さが力の強さになるわ。要は、あなたたちがどういった気持ちでどれだけ真剣かというのが試されていると言っても過言ではないわね」
 イエーロの言葉に、パステルシアンはすごく驚いている。
「だからっ!」
「なっ!」
「こんな感じに純粋に力に差が出ちゃうのよ~」
 イエーロは笑顔で、パステルピンクの背中にエルボーを叩き込んでいた。
「くっそーっ! 完全に不意を打ったと思ったのによぉ!」
「甘いわねぇ。さっきまでの集中状態が切れちゃってて、簡単に目で追えたわよ~?」
 地面に叩きつけられて喚くパステルピンクに、イエーロは呆れて首を左右に振っていた。
「とりあえず、私のモノトーンちゃんは倒されちゃったから、及第点ってところかしら~。雪路様と同じこの世界の人間なのに、どうしてここまで差がついているのかしらねぇ」
 イエーロにとって、実のところは雪路の強さの方が謎である。だが、あえてここは二人の事を考えて雪路の方を立てているのである。
 それはそれとして、この日のイエーロによる特訓は終わりを告げた。この特訓であちこちにできた痕跡は、チェリーとグローリによって修復され、何事もなかったようにきれいなヘリポートと森林へと戻ったのだった。
 千春と美空は、こうしたイエーロとの特訓の中で、強くなるヒントを掴む事ができるのだろうか。そして、モノトーンの野望を阻止する事はできるのだろうか。まだ戦いは続くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

黒髪の聖女は薬師を装う

暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。

新しい自分(女体化しても生きていく)

雪城朝香
ファンタジー
明日から大学生となる節目に突如女性になってしまった少年の話です♪♪ 男では絶対にありえない痛みから始まり、最後には・・・。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...