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第74話 ダンス対決、開始!
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それから数日後の事、雪路は杏と楓を連れて商店街へとやって来ていた。何を隠そう、かねてから約束していたダンスゲームの直接対決を実現させるためである。学校帰りという事もあり、居るのはこの三人とワイスだけである。千春と美空はどうしても部活に出なければならなかったので不在である。
「さぁて、いよいとMRPと対決ですわね」
雪路はとても意気込んでいる。
ダンスゲームを嗜む界隈では、突如として現れたMRPの存在に驚愕したものである。あっという間に高ランクを連発して、各種ダンスゲームの記録を塗り替えてしまったのだから。あまりの衝撃に、ネットであっという間にその容姿の情報は拡散されたのだが、いささか神出鬼没だったがために都市伝説レベルの扱いをされていたのだという。
その噂のMRPが今まさに目の前に居る。しかも今はクラスメイトとして仲良く過ごしている。これだけで雪路の興奮は最高潮に達していた。
「で、今日は何で対決するつもり?」
楓はいつもの通りに淡々とした感じで雪路に尋ねてくる。
「そうですわね。RADDはいかがかしら?」
「ああ、RADDね。あのゲーセンでは一番稼働してる筐体ね。まぁ、難易度的にもそんなに高くないし、いいんじゃないかしら」
雪路と楓は話をしながら、なぜか杏を見る。その視線に杏はたじろいだ。
「ちょっと、なんであたしを見るわけ?」
杏が逃げ腰になりながら理由を尋ねると、
「単純な話ですわ」
「あんたもプレイするからよ、杏」
二人が揃ってそんな事を答える。杏は逃げようとするが、あえなく二人とワイスに捕まってしまい、そのままずるずるとゲーセンへと引き摺られていった。
RADD……、『Revolution a Dancing Dance』は踊り系のゲームの中ではかなり人気のゲームである。踊れる楽曲はとにかく随一で、それに加えて超初心者から超上級者まで対応できる幅広い難易度設定で人気を博しているのだ。
ちなみにこのRADDの現在のトップはMRPこと楓で、評価点は現在唯一のSSSである。ちなみに雪路もYKJとしてSS+としてすぐ下に続いている。どんだけ二人がこれをやり込んで得意にしているかが分かる。
「ちょっと待って。化け物みたいな成績の二人の前座として、あたしが踊るわけ? 無理無理、ただの笑いものじゃないのよっ!」
杏が二人の成績を知ってごねている。そりゃまぁ、踊りに関しては素晴らしくど素人な杏なのだから、逃げたくなるのも分かる。
ところが、完全に楓と雪路の圧力が凄すぎて、杏の退路はすでになかった。
やむなくトップバッターとして杏がゲームをプレイする。だが、楓から多少の手ほどきを受けていたにもかかわらず、そのちぐはぐな踊りっぷりに雪路は困った顔をして、楓は頭を抱えていた。それでも評価点は最低のEではなくDだった。奇跡的に何度かタイミングが合っていたのは大きかった。
「だ、だから言ったのにーっ!」
杏は大声で叫んでいた。周りの観客も非常に温かい目を向けており、杏はますます顔を赤くしていた。
「さて、それではわたくしが先攻ですわね」
杏を慰める楓を横目に、雪路が筐体の上に立つ。ちゃりんちゃりんと小銭を投入し、足元のパネルで操作をして楽曲を選択する。その選んだ楽曲に、周りからはどよめきが上がった。
「すげえ、あの最高難易度の曲に挑戦するとは、このお嬢様何者なんだ……っ!」
いざゲームがスタートすると、その華麗な足捌きに観客たちは魅了される。激しい動きのはずなのに、まるでバレエとか見るような優雅さや繊細さまで感じてしまっていた。これが雪路のスタイルなのだ。
そして、あっという間にプレイが終わる。
「やっぱり、あそこが難しいですわね。またミスってしまいましたわ」
そう話す雪路が叩き出したスコアは、貫禄のSS+である。これに対して観客からは歓声が上がる。だが、数値上の記録は新記録を達成しており、名前入力に移行する。そこで名前を見た観客たちは更なる驚愕に叩き落とされた。
「こ、この少女がYKJだと?!」
「まじかよ。このゲームのトップクラスが二人もこの街に居るのかよ!」
それはもう店の人まで巻き込んでの大騒ぎだった。この盛り上がり様には、しょっぼいスコアを記録してしまった杏がますますしょげ返ってしまっていた。
「安心しなさい。妹の仇は姉が取ってあげるから」
楓はこう言って、雪路と交代して筐体に上がった。
「……姉さんは仇じゃなくてとどめを刺してくるんです」
杏は交代で隣に来た雪路にそんな事をぼやいていた。
「まあまあ、そう言わずに楓さんのプレイを見守ろうじゃありませんの。あなたの自慢のお姉様なんでしょう?」
雪路が杏を宥めるように話し掛けるが、杏はかえって頬を膨らませて不機嫌そうにしていた。
それにしても、筐体に上がった楓からは何とも言えない雰囲気が漂っていた。楓が登場しただけで息を飲むような空気が場を支配する。
その静まり返る空気の中、楓は同じように小銭を投入して楽曲を選択する。選んだのは雪路と同じ最高難易度の曲。そして、楽曲が流れ始めてゲームがスタートする。
さあ、現在のトップたるMRPの踊りをその目に焼き付けるがよい。
「さぁて、いよいとMRPと対決ですわね」
雪路はとても意気込んでいる。
ダンスゲームを嗜む界隈では、突如として現れたMRPの存在に驚愕したものである。あっという間に高ランクを連発して、各種ダンスゲームの記録を塗り替えてしまったのだから。あまりの衝撃に、ネットであっという間にその容姿の情報は拡散されたのだが、いささか神出鬼没だったがために都市伝説レベルの扱いをされていたのだという。
その噂のMRPが今まさに目の前に居る。しかも今はクラスメイトとして仲良く過ごしている。これだけで雪路の興奮は最高潮に達していた。
「で、今日は何で対決するつもり?」
楓はいつもの通りに淡々とした感じで雪路に尋ねてくる。
「そうですわね。RADDはいかがかしら?」
「ああ、RADDね。あのゲーセンでは一番稼働してる筐体ね。まぁ、難易度的にもそんなに高くないし、いいんじゃないかしら」
雪路と楓は話をしながら、なぜか杏を見る。その視線に杏はたじろいだ。
「ちょっと、なんであたしを見るわけ?」
杏が逃げ腰になりながら理由を尋ねると、
「単純な話ですわ」
「あんたもプレイするからよ、杏」
二人が揃ってそんな事を答える。杏は逃げようとするが、あえなく二人とワイスに捕まってしまい、そのままずるずるとゲーセンへと引き摺られていった。
RADD……、『Revolution a Dancing Dance』は踊り系のゲームの中ではかなり人気のゲームである。踊れる楽曲はとにかく随一で、それに加えて超初心者から超上級者まで対応できる幅広い難易度設定で人気を博しているのだ。
ちなみにこのRADDの現在のトップはMRPこと楓で、評価点は現在唯一のSSSである。ちなみに雪路もYKJとしてSS+としてすぐ下に続いている。どんだけ二人がこれをやり込んで得意にしているかが分かる。
「ちょっと待って。化け物みたいな成績の二人の前座として、あたしが踊るわけ? 無理無理、ただの笑いものじゃないのよっ!」
杏が二人の成績を知ってごねている。そりゃまぁ、踊りに関しては素晴らしくど素人な杏なのだから、逃げたくなるのも分かる。
ところが、完全に楓と雪路の圧力が凄すぎて、杏の退路はすでになかった。
やむなくトップバッターとして杏がゲームをプレイする。だが、楓から多少の手ほどきを受けていたにもかかわらず、そのちぐはぐな踊りっぷりに雪路は困った顔をして、楓は頭を抱えていた。それでも評価点は最低のEではなくDだった。奇跡的に何度かタイミングが合っていたのは大きかった。
「だ、だから言ったのにーっ!」
杏は大声で叫んでいた。周りの観客も非常に温かい目を向けており、杏はますます顔を赤くしていた。
「さて、それではわたくしが先攻ですわね」
杏を慰める楓を横目に、雪路が筐体の上に立つ。ちゃりんちゃりんと小銭を投入し、足元のパネルで操作をして楽曲を選択する。その選んだ楽曲に、周りからはどよめきが上がった。
「すげえ、あの最高難易度の曲に挑戦するとは、このお嬢様何者なんだ……っ!」
いざゲームがスタートすると、その華麗な足捌きに観客たちは魅了される。激しい動きのはずなのに、まるでバレエとか見るような優雅さや繊細さまで感じてしまっていた。これが雪路のスタイルなのだ。
そして、あっという間にプレイが終わる。
「やっぱり、あそこが難しいですわね。またミスってしまいましたわ」
そう話す雪路が叩き出したスコアは、貫禄のSS+である。これに対して観客からは歓声が上がる。だが、数値上の記録は新記録を達成しており、名前入力に移行する。そこで名前を見た観客たちは更なる驚愕に叩き落とされた。
「こ、この少女がYKJだと?!」
「まじかよ。このゲームのトップクラスが二人もこの街に居るのかよ!」
それはもう店の人まで巻き込んでの大騒ぎだった。この盛り上がり様には、しょっぼいスコアを記録してしまった杏がますますしょげ返ってしまっていた。
「安心しなさい。妹の仇は姉が取ってあげるから」
楓はこう言って、雪路と交代して筐体に上がった。
「……姉さんは仇じゃなくてとどめを刺してくるんです」
杏は交代で隣に来た雪路にそんな事をぼやいていた。
「まあまあ、そう言わずに楓さんのプレイを見守ろうじゃありませんの。あなたの自慢のお姉様なんでしょう?」
雪路が杏を宥めるように話し掛けるが、杏はかえって頬を膨らませて不機嫌そうにしていた。
それにしても、筐体に上がった楓からは何とも言えない雰囲気が漂っていた。楓が登場しただけで息を飲むような空気が場を支配する。
その静まり返る空気の中、楓は同じように小銭を投入して楽曲を選択する。選んだのは雪路と同じ最高難易度の曲。そして、楽曲が流れ始めてゲームがスタートする。
さあ、現在のトップたるMRPの踊りをその目に焼き付けるがよい。
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