マジカル☆パステル

未羊

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第64話 終わりにしようじゃないの

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 楓がやって来たのは、先日戦った山道の見晴らし台の辺りだった。
「正直、あたいがモノトーンの内部にすんなり入れたのは僥倖だったわ。あたいがモノトーンに飛び込んだ目的は、いずれ誕生する伝説の戦士を敵として鍛え、それと同時に奴らを内部から切り崩す事だったんだから」
 楓は自分の目的をはっきりと口にした。どうやら、敵の手に落ちたのではなく、自ら飛び込んだという経緯らしい。
 楓はそれを伝えると、キリっと表情を引き締めて千春たちに向き合う。
「さあ、あんたたちの覚悟を見せてもらおうじゃないの。これが、マジェとしての最終決戦よ!」
 楓はマジェの姿となり、山道の柵を化け物へと変えた。
「今回のモノトーンはイエーロより強いくらいの設定よ。それと……」
 マジェは色鉛筆を召喚する。
「今回はあたいも攻撃に加わるわ。疑似的とはいえ、これでイエーロとグーリのコンビを相手にしていると思ってちょうだい」
 巨大な色鉛筆を浮かべて、マジェは構えを取る。一方の千春たちは少し戸惑っているようだ。
「ほらほらどうしたの。分かってるんでしょうね? あんたたちがやられたら、この地球は奴らの手に落ちるっていう状況が!」
 マジェの気迫はすさまじかった。だが、その表情はどこかつらそうだった。それに気が付いた千春が、全員に呼び掛ける。そして、
「パステル・カラーチェンジ!」
 四人揃って変身するのだった。
 変身が終わるや否や、マジェは化け物と一緒に攻撃を仕掛けてくる。数として4対2でパステルピンクたちが優勢のはずである。しかし、
「モノォッ!」
「う、ぐぉっ!」
 化け物の攻撃でパステルピンクが軽く吹き飛んだ。だが、飛ばす方向を考慮してくれているようで、崖下へ飛ばされる事はなかった。あくまで訓練だからなのだろう。マジェはきちんと配慮してくれていた。
「ふふっ、まさかこんな形でMRPとの対戦が行われるとは思ってもみませんでしたわ」
 パステルパープルは笑っている。そして、1対1ながらも、マジェと互角に肉弾戦を行っている。お嬢様なのに、どこにそんな力があるというのだろうか。
「そうね、まったく意外ね」
 息もつかせぬ肉弾戦。このままでは埒が明かないと見たマジェは一度距離を取る。
「マゼンダ・ペンシル・ロケット!」
 距離を取ると間髪入れずに、展開した色鉛筆を放つ。
「パステル・アイシクル・イレーサー!」
 負けじと、パステルパープルはマジェの色鉛筆ロケットを真似て、つららミサイルを生み出した。この発想はなかった。色鉛筆とつららが次々と相殺し合う。しかし、パステルパープルのつららの方が本数が少なかったために、撃ち漏らしが3本ほどパステルパープルに襲い掛かる。
「負けませんわよ!」
 色鉛筆を躱しつつ、パステルパープルが新たに別の技を放つ。
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
 色鉛筆を猛吹雪が包み込む。そして、凍てつかせてそのまま粉砕してしまった。
「やるわね、パステルパープル」
「ええ、そちらも。さすがはマジェさんですわ」
 お互いに称え合い、笑みを浮かべる二人。そして、再び肉弾戦へと移っていった。
 パステルパープルとマジェが1対1でレベルの高い戦いをしている中、パステルオレンジは化け物相手に苦戦をしていた。パステルピンクとパステルシアンも加わってはいるが、この化け物は異様に器用なのである。そういえば、イエーロも意外に器用だったので、これはちょうどいい相手と確かに言えるのである。
 だが、真横で行われているパステルパープルとマジェの戦いと比べてしまうと、三人にはどうしても焦りというものが生じてしまうのだ。
「モノトーンッ!」
 その隙を突いて化け物が、イエーロのマジックに見立てた木の棒を取り出す。そして、その木の棒を振り回し始めたのだ。ちなみにこれは柵の柱の一本だ。
「モノォッ!」
 木の棒を払って三人まとめて攻撃する。パステルピンクとパステルオレンジは攻撃を躱すが、パステルシアンはどうにも動きが鈍かった。反応できずに木の棒に当たってしまうが、ここでトラップ発動だ。化け物へその攻撃の威力が跳ね返される。
「モノッ!?」
 訳も分からず化け物は少し吹っ飛ばされた。パステルシアンの新技の反射技である。相手の攻撃を数回威力そのままに跳ね返す技だ。
「おっりゃあっ!!」
 そこへすかさずパステルピンクが肉弾戦を仕掛ける。さすがに体勢が崩れた化け物はすぐには対処ができず、しばらく殴られっぱなしだった。だが、
「モノォッ!!」
 かろうじて手から離さなかった木の棒を振りかざして反撃をする。
「っと、危ねえっ!」
 パステルピンクの反応はよく、木の棒を躱していた。
「オータム・リーフ・フラッド!」
「パステル・サマー・スコール!」
 だが、化け物の勢いはここまでだった。パステルシアンとパステルオレンジの攻撃を立て続けに受け、さすがに動きが鈍ってしまった。そこへすかさず、
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
 パステルピンクの必殺技が飛び込んできた。化け物にはもう躱す余力はなかった。
「モ、モ、モノトーンッ!」
 あえなく浄化され、元の山道の手すりへと戻っていった。
 三人は化け物を倒すと、すかさずパステルパープルとマジェの戦いの方を向く。そこではまだ二人が肉弾戦を繰り広げていた。あのマジェにまったく劣らないパステルパープルが恐ろし過ぎる。
「この気配は……」
 この戦いを観戦していたチェリーが何かを感じ取る。
「やべえ、この気配は奴らが来た!」
 ワイスも叫ぶ。
「みんな、気を付けて! モノトーンが出てくるわっ!」
 グローリが注意を呼び掛ける。それと同時に、パステルパープルとマジェに向けて、攻撃が放たれたのだった。
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