マジカル☆パステル

未羊

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第63話 全員、お寺に集合

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 動画撮影のあった日から数日後、千春たちは全員杏の家に呼び出された。
「まったくなんだってんだよな。たまの部活の無い日なんだからのんびりしたかったのによ」
「まぁ、そう言わないの。全員揃ったって事もあるんだから、お話くらいしたいんじゃないの?」
「そうだよ。ボクたちの間には積もる話があるんだよ」
「そうよそうよ」
 千春が文句を言っていると、美空たちから総ツッコミを受ける。慌てる千春の姿に雪路はついおかしくて笑っていた。
「ふふっ、たまにはこうやって歩くのも悪くはありませんわね」
「そうだぜ、雪路。たまには歩かねえと、体がなまっちまうからな」
 雪路とワイスは、実にマイペースだった。
 そうこう話しているうちに、色鮮寺に到着した。
 寺に到着すると、杏と楓の姉妹が迎えに出てきていた。
「いらっしゃい、待ってたわよ」
「悪いわね、急に呼び出して」
 杏と楓がそれぞれに挨拶をする。門で立ち止まっていても邪魔なので、とりあえずみんなを中に案内する二人。中へ入ると、杏は飲み物とお菓子を用意しに台所へ向かい、客間には楓が案内する。
 机を囲んでしばらく待っていると、杏がお菓子をもってやって来た。
「ごめん、飲み物持てなかったからこれから持ってくるね」
 と思いきや、そのまままた出ていった。
「はぁ、あたいも手伝ってくるわ。適当にくつろいでて」
 楓も後を追って出ていく。しばらくすると、緑茶とスポーツドリンクのペットボトルとグラスを持った二人が戻ってきた。
「悪いわね。ここはお寺だからこういうのしかないのよ」
 楓が断りを入れてくるが、特に誰も気にはしなかった。
「で、とりあえず話ってのは?」
 千春が耐えきれなかったのか単刀直入に聞いてくる。
「今後のモノトーンの動向についてよ」
 楓もストレートに話題を口に出した。
「姉さんが言うには、イエーロとグーリは背水の陣で襲ってくるかもって話なのよ」
「どういう事だ?」
 杏の話に、千春が意味を尋ねる。
「あいつらのモノトーン四天王の上には、ボスであるダクネースから信頼を置かれているモノトーン三傑っていう奴らが居るのよ」
 楓の発言に、美空たちは言葉が出なかった。四天王でも結構苦戦していたというのに、さらに上が、それも三人も居るとなると正直恐怖でしかないのだ。
「なるほど、今は出払って居ないその三傑とやらが戻って来る。それでその二人は焦っているっていうわけですのね」
「ええ、その通りよ」
 察しのいい雪路がそう答えると、楓はそれを肯定した。
「ただ、こっちの時間とモノトーン空間の時間は流れがずれているから、これだけ日数が経っていても奴らは出てきていないわ。ただ、本当にいつ動くか分からないから、あたいたちは一刻も早くその対策が必要ってわけなのよ」
 楓がこう続けると、場はしんと静まり返る。
「でも、対策とはいってもどうするんだい、メルプ」
「あたいにはまだモノトーンの力が残っている。それを利用するしかないわね。とはいっても、聖獣としての力を取り戻そうとしている今は、その力が徐々に弱まってきているのから、正直あたいが一番足を引っ張りそうで怖いわね」
 チェリーの問い掛けに、楓はその方法を話す。だが、楓には不安があるようだった。
「でも、それを利用するってんなら、そうするしかねえな。正直、俺は完全に足手まといだろうし、男としてそんな情けない状況にいつまでも居るわけにはいかねえぜ!」
 千春はパンッと両手を叩いて気合いを入れている。
「ふっ、気合いだけは十分か。だが、あんたに足りないのは気持ちだ。あたいら聖獣の力は、その思いを力に変えるものだ。あんたのその漠然とした気持ちじゃ、力は真に発揮できない。……そっちの美空だったか、あんたは分かるだろう?」
 急に楓から話を振られた美空だったが、思い当たる節があるのか、無言で小さく頷いた。
「そうなると、あたしも正直気持ちが足りないかなとは思うわ。姉さんの事ばかり考えてたから、こうやって会えちゃったら、正直……」
「バカね。あたいらにはレイン様を救ってパステル王国を取り戻すって目的があるんだ。あんたはそんな事も忘れたっていうの?」
「!!」
 思い悩む杏に、楓はバシッと言い聞かせる。すると、杏はなぜか驚いていた。
「……あんた、女王様の事を忘れてたとか言わないでしょうね?」
「そそそ、そんな、そんな事ないわよ」
 楓に迫られた杏は、思わず目を逸らしてしまっている。本当に忘れていたようである。
「はーっはっはっ、パシモ。本当にお前は昔からメルプ一筋だな!」
 その光景を見たワイスが大声で笑っている。
「う、うるさいわね、ワイス!」
「はあ、ここまでお姉ちゃんっ子だったなんて……。私、だいぶショックよ」
 グローリが額を押さえてくらくらしていた。予想外なパシモの一面に、相当に衝撃を受けたようである。
「正直、パステル王国の事は、あんたたちはほとんど知らないでしょうね。でも、あたいらにとっては大事な故郷なんだ。そういう気持ちは分かるだろう?」
 楓にこう問われた千春たちは、お互いに顔を見合わせた後で、こくりと頷く。
「でもまぁ、それに関係なく、モノトーンにこの地球は狙われている。それを食い止められるのはあたいらだけなんだ。しっかりそこを自覚してもらわないと困るわ」
 楓はすくりと立ち上がる。
「さぁ、特訓を始めるわよ。正直、こうやって話している時間ももったいないわ。黙ってついて来てちょうだい」
 そう話す楓の目は本気だった。ここで動かなければ、楓の気持ちを踏みにじると感じた千春たちは、立ち上がってついて行ったのだった。
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