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第55話 今少し時間があれば
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千春たちの目の前に立つマジェ。その彼女がまさか探していた最後の聖獣だとは思わなかった。チェリーたちのショックは大きい。
「警戒なんてしなくていいわよ。あたいはもうモノトーンからは抜けてきたんだ。もうあんたらと敵対する事はないのさ」
マジェはその場に立ったまま語っている。
「あたいは聖獣としての力取り戻すのに必死なんだ。悪いが、けんかを売られている暇はないんだ」
マジェはしっかりと千春たちを見据えて牽制する。今は戦う理由がないのだ。
「いや、メルプ。そうでもないぜ」
「ワイス? どういう事よ」
急に発言したワイスに、マジェは意図を質した。
「イエーロとグーリの次の狙いさ。あいつらだって馬鹿じゃねえ。となりゃあ、次に狙ってくるのは間違いなくって話だ」
「ああ、そういう事ね。分かったわ」
ワイスとマジェの話に、千春たちは意味が分からなかった。さすがにその様子に、マジェは呆れてしまった。
「はぁ、四天王どもに狙われてるってのに、危機感のない奴らね」
「なんだと?!」
マジェが小ばかにした言い方をしたので、千春は怒っている。
「だってそうでしょ。今の会話の意味が分からないんだったら、あんたらにはこれから戦う資格はないわ。レドやブルーエ並みの雑魚なんだから」
マジェにはっきりと言われて、思い当たる節があるのか千春は言い返せなかった。レドやブルーエが相手だった時でさえ苦戦していたのだ。それよりも強いイエーロたちの相手が務まるわけがないのである。
「だから、あんたらが弱いうちにあいつらは叩きに来るってわけよ。このままならあんたたちは瞬殺よ。一確されちゃうでしょうね」
少し黙っていた千春だったが、少しして口を開いた。
「だったら、どうしたらいい」
その問いに、マジェは不気味な笑みを浮かべる。いやまぁ、聖獣に戻れそうにないくらいの悪い笑みである。
「簡単な話よ。あたいと戦いなさい。特に千春、あんたは二度もあたいとやり合ってるんだ。分かるよね?」
その問いに、千春は言葉ではなく態度で答える。
「パステル・カラーチェンジ!」
千春はパステルピンクへと変身する。
「……そうこなくっちゃ」
マジェは嬉しそうだ。
「さあ、あんたはどうなんだい、美空!」
マジェは続けて美空に問い掛ける。すると美空はパステルピンクを見て、無言で頷き合った。……どうやら覚悟は決まったようだ。
「パステル・カラーチェンジ!」
美空はパステルシアンに変身する。それと同時に杏もパステルオレンジへと変身した。
「よーし、三人まとめて面倒を見てやろうじゃないの。あたいを少しでも楽しませておくれ!」
マジェはそう言うと、化け物を生み出す。
「モノ、トーンッ!」
「さぁ、こいつが相手だ。ブルーエくらいの強さはあるから頑張るんだね!」
マジェは化け物をけしかける。パステルピンクたちはそれに応戦する。結局は20分くらいは戦っていたのだが、無事にマジェの出した化け物を撃退できたパステルピンクだった。
「とりあえず、まずまずってところかな。パステルオレンジはさすがに動けてるんだが、パステルピンクとパステルシアンは、まだ戦いに躊躇が見られるわね。この日本育ちじゃ分からなくはないが、そんな遠慮してたら死んじまうだけだ。なにせ相手は話が通じないからね」
マジェは、今回の戦いをそう評価していた。どうやらパステルピンクとパステルオレンジには、まだ覚悟が足りないようである。
「正直、まだ特訓をしたいところだけど、そろそろ戻らないと和尚に怒られるわ。少し生活してみて分かったけれど、時間には厳しい人みたいだからね」
「以前に門限を守れなかったら、座禅しながら説教だったものね……」
以前帰るのが遅くなった時の事を話すパステルオレンジ。その顔が青ざめていた事から、相当に厳しい事が窺える。
「というわけだから、変身を解いて戻りましょう。その頃にはちょうどお風呂が沸いているわ」
マジェは変身を解いて楓の姿に戻る。それに続いて、杏たちも変身を解いていった。
「食事の後が自由時間のようだったら、あたいが手に入れたモノトーンの情報を話しておくわ。みんなに合流する前には、四天王くらいは潰しておきたかったわね」
寺に戻りながら、楓は腕を組んで唸っていた。グーリに早めにバレたのがやっぱり悔しいようである。
「ワイス、君は知ってたのかい?」
「何をだい?」
その帰り道最中、聖獣たちの間でも話がされていた。
「メルプの事だよ。ボクたちが気付けなかったのに、君は全部知っていたようだし、事情を説明してもらいたいね」
「ああ、その事かい? 話すと長くなるんだがな、悪いがそれはメルプから聞いてくれ。俺っちは雪路のとこに戻らなきゃいけねえ」
ワイスは答えをごまかすと、足早にチェリーたちの元を去っていった。
「あっ、待てよ、ワイス」
「……行っちゃったわね」
「くそぅ、今度会ったら吊るし上げてでも全部聞かせてもらうぞ」
チェリーははぐらかされてご立腹のようである。その姿にグローリはくすくすと笑っていた。
その後、なんとか時間までに戻れた千春たちは、無事に説教を受ける事なく済んだ。そして、就寝までの間が自由行動となったので、楓からモノトーンについていろいろと話を聞いたのだった。
その中でも衝撃だったのは、親玉のダクネースとレドたち四天王との間に、モノトーン三傑なる存在が居るという事だった。四天王相手でもあれだけ苦戦をするというのに、さらに強い存在が居るというのは絶望的な情報なのだ。
「だからこそ、あたいはあんたたちに稽古をつけさせてもらうわ。あたいはイエーロよりは強いから、四天王くらいなら倒せるくらいにはなるわよ」
楓がこう言うと、
「分かった、よろしく頼む」
千春が驚くほど素直に頭を下げていた。これにつられるようにして美空も楓にお願いしていた。
「じゃあ、決まったわね。しばらくあたいはここで聖獣の力を取り戻すべく修行してるから、この寺に来てもらえれば相手をするわ。それでいいわね?」
「ああ、それでいい」
こうして、意外とあっという間に楓との間にあったわだかまりは消えてしまったのだった。
「警戒なんてしなくていいわよ。あたいはもうモノトーンからは抜けてきたんだ。もうあんたらと敵対する事はないのさ」
マジェはその場に立ったまま語っている。
「あたいは聖獣としての力取り戻すのに必死なんだ。悪いが、けんかを売られている暇はないんだ」
マジェはしっかりと千春たちを見据えて牽制する。今は戦う理由がないのだ。
「いや、メルプ。そうでもないぜ」
「ワイス? どういう事よ」
急に発言したワイスに、マジェは意図を質した。
「イエーロとグーリの次の狙いさ。あいつらだって馬鹿じゃねえ。となりゃあ、次に狙ってくるのは間違いなくって話だ」
「ああ、そういう事ね。分かったわ」
ワイスとマジェの話に、千春たちは意味が分からなかった。さすがにその様子に、マジェは呆れてしまった。
「はぁ、四天王どもに狙われてるってのに、危機感のない奴らね」
「なんだと?!」
マジェが小ばかにした言い方をしたので、千春は怒っている。
「だってそうでしょ。今の会話の意味が分からないんだったら、あんたらにはこれから戦う資格はないわ。レドやブルーエ並みの雑魚なんだから」
マジェにはっきりと言われて、思い当たる節があるのか千春は言い返せなかった。レドやブルーエが相手だった時でさえ苦戦していたのだ。それよりも強いイエーロたちの相手が務まるわけがないのである。
「だから、あんたらが弱いうちにあいつらは叩きに来るってわけよ。このままならあんたたちは瞬殺よ。一確されちゃうでしょうね」
少し黙っていた千春だったが、少しして口を開いた。
「だったら、どうしたらいい」
その問いに、マジェは不気味な笑みを浮かべる。いやまぁ、聖獣に戻れそうにないくらいの悪い笑みである。
「簡単な話よ。あたいと戦いなさい。特に千春、あんたは二度もあたいとやり合ってるんだ。分かるよね?」
その問いに、千春は言葉ではなく態度で答える。
「パステル・カラーチェンジ!」
千春はパステルピンクへと変身する。
「……そうこなくっちゃ」
マジェは嬉しそうだ。
「さあ、あんたはどうなんだい、美空!」
マジェは続けて美空に問い掛ける。すると美空はパステルピンクを見て、無言で頷き合った。……どうやら覚悟は決まったようだ。
「パステル・カラーチェンジ!」
美空はパステルシアンに変身する。それと同時に杏もパステルオレンジへと変身した。
「よーし、三人まとめて面倒を見てやろうじゃないの。あたいを少しでも楽しませておくれ!」
マジェはそう言うと、化け物を生み出す。
「モノ、トーンッ!」
「さぁ、こいつが相手だ。ブルーエくらいの強さはあるから頑張るんだね!」
マジェは化け物をけしかける。パステルピンクたちはそれに応戦する。結局は20分くらいは戦っていたのだが、無事にマジェの出した化け物を撃退できたパステルピンクだった。
「とりあえず、まずまずってところかな。パステルオレンジはさすがに動けてるんだが、パステルピンクとパステルシアンは、まだ戦いに躊躇が見られるわね。この日本育ちじゃ分からなくはないが、そんな遠慮してたら死んじまうだけだ。なにせ相手は話が通じないからね」
マジェは、今回の戦いをそう評価していた。どうやらパステルピンクとパステルオレンジには、まだ覚悟が足りないようである。
「正直、まだ特訓をしたいところだけど、そろそろ戻らないと和尚に怒られるわ。少し生活してみて分かったけれど、時間には厳しい人みたいだからね」
「以前に門限を守れなかったら、座禅しながら説教だったものね……」
以前帰るのが遅くなった時の事を話すパステルオレンジ。その顔が青ざめていた事から、相当に厳しい事が窺える。
「というわけだから、変身を解いて戻りましょう。その頃にはちょうどお風呂が沸いているわ」
マジェは変身を解いて楓の姿に戻る。それに続いて、杏たちも変身を解いていった。
「食事の後が自由時間のようだったら、あたいが手に入れたモノトーンの情報を話しておくわ。みんなに合流する前には、四天王くらいは潰しておきたかったわね」
寺に戻りながら、楓は腕を組んで唸っていた。グーリに早めにバレたのがやっぱり悔しいようである。
「ワイス、君は知ってたのかい?」
「何をだい?」
その帰り道最中、聖獣たちの間でも話がされていた。
「メルプの事だよ。ボクたちが気付けなかったのに、君は全部知っていたようだし、事情を説明してもらいたいね」
「ああ、その事かい? 話すと長くなるんだがな、悪いがそれはメルプから聞いてくれ。俺っちは雪路のとこに戻らなきゃいけねえ」
ワイスは答えをごまかすと、足早にチェリーたちの元を去っていった。
「あっ、待てよ、ワイス」
「……行っちゃったわね」
「くそぅ、今度会ったら吊るし上げてでも全部聞かせてもらうぞ」
チェリーははぐらかされてご立腹のようである。その姿にグローリはくすくすと笑っていた。
その後、なんとか時間までに戻れた千春たちは、無事に説教を受ける事なく済んだ。そして、就寝までの間が自由行動となったので、楓からモノトーンについていろいろと話を聞いたのだった。
その中でも衝撃だったのは、親玉のダクネースとレドたち四天王との間に、モノトーン三傑なる存在が居るという事だった。四天王相手でもあれだけ苦戦をするというのに、さらに強い存在が居るというのは絶望的な情報なのだ。
「だからこそ、あたいはあんたたちに稽古をつけさせてもらうわ。あたいはイエーロよりは強いから、四天王くらいなら倒せるくらいにはなるわよ」
楓がこう言うと、
「分かった、よろしく頼む」
千春が驚くほど素直に頭を下げていた。これにつられるようにして美空も楓にお願いしていた。
「じゃあ、決まったわね。しばらくあたいはここで聖獣の力を取り戻すべく修行してるから、この寺に来てもらえれば相手をするわ。それでいいわね?」
「ああ、それでいい」
こうして、意外とあっという間に楓との間にあったわだかまりは消えてしまったのだった。
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