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第45話 美少女と野獣
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「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ!」
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル!」
二人が揃ってピシッとポーズを決める。
「あらあら~、やっぱりそうだったのねぇ。でも、変ね~。その死に損ない、な~んで一匹しか居ないのかしら~?」
ぐねぐね動きながら頬に人差し指を当てているイエーロ。これにはパステルオレンジがかなり嫌悪感を示している。どうもああいうぐねぐねした動きが嫌いなようである。すると、パステルオレンジは鋭く跳び蹴りを繰り出していた。
「おっと、そうはいかないわ~」
すっと最小限の動きで躱すイエーロ。このオネエ、できる!
「そんな事、あんたの知る事じゃないでしょ?」
イエーロを睨みつけるパステルオレンジだが、明らかにその顔は焦っている。不意を突いたはずなのに、簡単に躱されてしまったからだ。
さすがにイエーロはここまでの二人とは明らかに格が違ったのだ。化け物を生み出して、それと連携を取ってくる。この手法も使ってこなかったものだ。パステルオレンジはぎゅっと唇を噛みしめる。
「あらあら、なかなかたくましい肉体ではありませんこと?」
後ろで落ち着いていたパステルパープルが歩み出てくる。
「あら~、この肉体美が分かるの?」
「ええ分かりますわ。生半可な鍛え方では、とても手に入れられないボディ。よほど厳しい鍛錬を積まれてきたのですわね」
パステルパープルの発言に、パステルオレンジが驚きの表情を見せている。
「どうでしょう。ここはわたくしとひとつ、ダンスでも踊って頂けませんかしら」
「あらあら、それはいい申し出ねぇ」
パステルパープルの言葉を受けて、イエーロは近くに見えた道路標識から化け物を生み出す。
「モノ、トーンッ!」
「さあ、可愛いモノトーンちゃん。そっちの可愛げのないお嬢さんと遊んでおあげなさい」
「モノ、トーンッ!」
イエーロは化け物にパステルオレンジを襲わせる。どうやら、興味は完全にパステルパープルだけにあるようである。
「さあ、これで邪魔する者は居ないわ。遠慮なく熱烈なダンスにでも興じましょう?」
イエーロはパステルパープルに向けて一気に詰め寄る。だが、パステルパープルも冷静である。先程のイエーロにも負けない華麗なステップで突進を躱した。
「ほほほ、そうこなくっちゃねぇ」
イエーロは楽しそうな笑みを浮かべる。
「あらあら、ダメですわよ。殿方はちゃんとエスコート致しませんと。強引すぎては、嫌われてしまいますわ」
「あらあら、そうでしたわねぇ」
言葉では笑っているが、顔が笑っていないイエーロ。どうやら、さっきのパステルパープルの言葉に思わぬダメージを受けたようである。
「あら、嫌ですわ。せっかくのお顔が、醜く歪んでましてよ」
さらに煽りを入れていくパステルパープル。イエーロにとっての禁句を並べた事で、イエーロが本格的にキレた。
「こんの小娘がっ! 言わせておけば好き勝手抜かしおって!」
オネエ口調が取り払われ、荒々しい声で怒髪天を突いている。
(すごい、あのイエーロが手玉に取られている)
化け物の相手をしながら、パステルオレンジは二人の戦いを見ていた。
(あたしも、負けてられないわねっ!)
化け物の攻撃を躱しながら、パステルオレンジは反撃に出る。その時だった。
「うっ、何? 体が……」
パステルオレンジの動きが突然止まる。パステルオレンジが化け物の顔を見ると、その理由がよく分かった。
(うっ、なんか見た事のある三角形だと思ったら、『止まれ』の標識とはね)
そう、化け物の頭は一時停止を指示する標識だったのだ。ところが、化け物が放ったこの攻撃の効果は一瞬では終わらなかった。
動けないパステルオレンジに対して、化け物の拳が振り下ろされる。パステルオレンジがダメかと思った瞬間、
「モノォッ?!」
「おっと、俺っちを忘れてもらっちゃ困るぜ」
ワイスが割って入って、化け物の顔面に頭突きを食らわせた。すると、化け物の顔が変形してパステルオレンジの動作停止が解けた。
「ありがとう、ワイス」
「おう、いいって事よ!」
動けるようになったパステルオレンジは、パステルチューブを取り出す。
「悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「モノ……、モノトーンッ!」
パステルオレンジの必殺技が決まり、化け物は浄化されたのだった。
「そういえば、パステルパープルはっ!?」
「おう、ちょうどいいところなんだ、邪魔すんじゃねーぞ」
慌てて確認しようとするパステルオレンジに、ワイスは何ともずれた発言をしていた。
「ちょっとワイス。どういう事よ!」
「まぁ見てなって」
ワイスがにやりと笑って言うので、パステルオレンジは仕方なく見学する事になった。
目の前で繰り広げられるパステルパープルとイエーロの戦いは、なんとも変わった戦いである。イエーロは頭に来ているのか、マジックを握りしめてパステルパープルを攻撃している。だが、肝心の攻撃はするすると躱されてしまっていた。パステルパープルは華麗なステップを踏んで、その攻撃をすべて躱していたのである。
「うふふふ。どうやらあなたはダンスの経験がございませんのね。残念でしたわ」
「ふざけるじゃ、ないわよっ!」
イエーロの大振りの攻撃をパステルパープルは軽く跳んで躱す。そして、
「さて、フィナーレと参りましょう」
その手に何かを取り出した。それはなんとも大きな消しゴムだった。
「もう少し優雅なものが欲しかったのですが、致し方ありませんわね。いい筋肉でしたわ」
消しゴムを抱えたなんともシュールな格好で、パステルパープルはイエーロを凝視する。
「冬の静寂に安らかに眠れ、ウィンター・アメジスト・コフィン!」
間髪入れずに必殺技を放った。イエーロは最初は受けきるつもりで構えていたが、とっさに回避に切り替えた。何かを感じたようだ。
「きぃぃぃぃっ! 覚えてらっしゃい。次はこのようにはいかないわよーっ!」
いいように弄ばれたイエーロは、捨て台詞を残して姿を消したのだった。
「命安らぐ時、冬の妖精パステルパープル!」
二人が揃ってピシッとポーズを決める。
「あらあら~、やっぱりそうだったのねぇ。でも、変ね~。その死に損ない、な~んで一匹しか居ないのかしら~?」
ぐねぐね動きながら頬に人差し指を当てているイエーロ。これにはパステルオレンジがかなり嫌悪感を示している。どうもああいうぐねぐねした動きが嫌いなようである。すると、パステルオレンジは鋭く跳び蹴りを繰り出していた。
「おっと、そうはいかないわ~」
すっと最小限の動きで躱すイエーロ。このオネエ、できる!
「そんな事、あんたの知る事じゃないでしょ?」
イエーロを睨みつけるパステルオレンジだが、明らかにその顔は焦っている。不意を突いたはずなのに、簡単に躱されてしまったからだ。
さすがにイエーロはここまでの二人とは明らかに格が違ったのだ。化け物を生み出して、それと連携を取ってくる。この手法も使ってこなかったものだ。パステルオレンジはぎゅっと唇を噛みしめる。
「あらあら、なかなかたくましい肉体ではありませんこと?」
後ろで落ち着いていたパステルパープルが歩み出てくる。
「あら~、この肉体美が分かるの?」
「ええ分かりますわ。生半可な鍛え方では、とても手に入れられないボディ。よほど厳しい鍛錬を積まれてきたのですわね」
パステルパープルの発言に、パステルオレンジが驚きの表情を見せている。
「どうでしょう。ここはわたくしとひとつ、ダンスでも踊って頂けませんかしら」
「あらあら、それはいい申し出ねぇ」
パステルパープルの言葉を受けて、イエーロは近くに見えた道路標識から化け物を生み出す。
「モノ、トーンッ!」
「さあ、可愛いモノトーンちゃん。そっちの可愛げのないお嬢さんと遊んでおあげなさい」
「モノ、トーンッ!」
イエーロは化け物にパステルオレンジを襲わせる。どうやら、興味は完全にパステルパープルだけにあるようである。
「さあ、これで邪魔する者は居ないわ。遠慮なく熱烈なダンスにでも興じましょう?」
イエーロはパステルパープルに向けて一気に詰め寄る。だが、パステルパープルも冷静である。先程のイエーロにも負けない華麗なステップで突進を躱した。
「ほほほ、そうこなくっちゃねぇ」
イエーロは楽しそうな笑みを浮かべる。
「あらあら、ダメですわよ。殿方はちゃんとエスコート致しませんと。強引すぎては、嫌われてしまいますわ」
「あらあら、そうでしたわねぇ」
言葉では笑っているが、顔が笑っていないイエーロ。どうやら、さっきのパステルパープルの言葉に思わぬダメージを受けたようである。
「あら、嫌ですわ。せっかくのお顔が、醜く歪んでましてよ」
さらに煽りを入れていくパステルパープル。イエーロにとっての禁句を並べた事で、イエーロが本格的にキレた。
「こんの小娘がっ! 言わせておけば好き勝手抜かしおって!」
オネエ口調が取り払われ、荒々しい声で怒髪天を突いている。
(すごい、あのイエーロが手玉に取られている)
化け物の相手をしながら、パステルオレンジは二人の戦いを見ていた。
(あたしも、負けてられないわねっ!)
化け物の攻撃を躱しながら、パステルオレンジは反撃に出る。その時だった。
「うっ、何? 体が……」
パステルオレンジの動きが突然止まる。パステルオレンジが化け物の顔を見ると、その理由がよく分かった。
(うっ、なんか見た事のある三角形だと思ったら、『止まれ』の標識とはね)
そう、化け物の頭は一時停止を指示する標識だったのだ。ところが、化け物が放ったこの攻撃の効果は一瞬では終わらなかった。
動けないパステルオレンジに対して、化け物の拳が振り下ろされる。パステルオレンジがダメかと思った瞬間、
「モノォッ?!」
「おっと、俺っちを忘れてもらっちゃ困るぜ」
ワイスが割って入って、化け物の顔面に頭突きを食らわせた。すると、化け物の顔が変形してパステルオレンジの動作停止が解けた。
「ありがとう、ワイス」
「おう、いいって事よ!」
動けるようになったパステルオレンジは、パステルチューブを取り出す。
「悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
「モノ……、モノトーンッ!」
パステルオレンジの必殺技が決まり、化け物は浄化されたのだった。
「そういえば、パステルパープルはっ!?」
「おう、ちょうどいいところなんだ、邪魔すんじゃねーぞ」
慌てて確認しようとするパステルオレンジに、ワイスは何ともずれた発言をしていた。
「ちょっとワイス。どういう事よ!」
「まぁ見てなって」
ワイスがにやりと笑って言うので、パステルオレンジは仕方なく見学する事になった。
目の前で繰り広げられるパステルパープルとイエーロの戦いは、なんとも変わった戦いである。イエーロは頭に来ているのか、マジックを握りしめてパステルパープルを攻撃している。だが、肝心の攻撃はするすると躱されてしまっていた。パステルパープルは華麗なステップを踏んで、その攻撃をすべて躱していたのである。
「うふふふ。どうやらあなたはダンスの経験がございませんのね。残念でしたわ」
「ふざけるじゃ、ないわよっ!」
イエーロの大振りの攻撃をパステルパープルは軽く跳んで躱す。そして、
「さて、フィナーレと参りましょう」
その手に何かを取り出した。それはなんとも大きな消しゴムだった。
「もう少し優雅なものが欲しかったのですが、致し方ありませんわね。いい筋肉でしたわ」
消しゴムを抱えたなんともシュールな格好で、パステルパープルはイエーロを凝視する。
「冬の静寂に安らかに眠れ、ウィンター・アメジスト・コフィン!」
間髪入れずに必殺技を放った。イエーロは最初は受けきるつもりで構えていたが、とっさに回避に切り替えた。何かを感じたようだ。
「きぃぃぃぃっ! 覚えてらっしゃい。次はこのようにはいかないわよーっ!」
いいように弄ばれたイエーロは、捨て台詞を残して姿を消したのだった。
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