マジカル☆パステル

未羊

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第40話 黄色は注意

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「モノ、トーンッ!」
 化け物が奇声を上げる。今までの化け物と比べて声のトーンが高い。はっきり言って耳が痛いし不快でしかなかった。
「さぁ、私の可愛いモノトーンちゃん。あそこの死にぞこないたちを~、懲らしめちゃいなさ~い」
「モノ、トーンッ!」
 イエーロの呼び掛けに、もう一度化け物は奇声を上げた。どうやら化け物は召喚主の影響を受けるようである。
「うげぇ……、あの黄色いのは気持ち悪いし、化け物の声は耳が痛くなる。なんて戦いにくそうな奴なんだ……」
 千春が既に精神的に参っているようである。
「それでも、あいつとは戦わなきゃいけないよ」
 杏の声に、千春と美空は頷いた。
「パステル・カラーチェンジ!」
 千春たちは変身する。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク!」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン!」
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ!」
 三人で揃って決めポーズを取る。見事に決まったようでイエーロは拍手をしていた。
「あらあら、なかなかカッコいいじゃな~い。でも、お姉さん驚いたわ~。可愛い男の子だったと思ったのに、変身したら女の子になっちゃったのね~。これはショックだわ~」
 相変わらずくねくねと動きまくるイエーロ。その動きがまたなんとも気持ち悪い。もう露骨なくらい嫌な顔をしているパステルピンクたちである。
「な~によ、その顔っ! 私、そういうの顔をされるのが、大っっっっっ嫌いなのよ!」
 思いっきり額に血管が浮かんでいる。相当ご立腹のようである。
「さぁ、モノトーンちゃん。あの無礼な小娘たちを~、ギッタンギッタンにしておしまいっ!」
「モノォ、トーーンッ!!」
 イエーロの号令で、化け物が動き出す。石でできた体が軽快にドスンドスンと走り出す。
「げっ、思ったより動きが速い」
 石でできているから鈍いと思った動きだが、実に軽く動いている。あっという間にパステルピンクたちに詰め寄ると、その拳を振り下ろした。
 パステルピンクたちはチェリーたちを抱えてパンチを回避する。しかし、その攻撃に地面のコンクリートは抉れ、その破片がパステルピンクたちを襲った。
「グルーミング・フラワー・ガード!」
 とっさにパステルピンクが防御技を放ち、破片の飛び散りを防ぐ。パステルシアンとパステルオレンジもこれによって破片から守られた。
「ふふ~ん、この程度の小手調べに、何を慌ててるのかしら~ん?」
「なっ!」
 ほっとしたのも束の間。パステルピンクの後ろにイエーロが立っていた。間近で見るとますます目が痛い。
「レドやブルーエのように、私は甘くはないわよ~?」
 驚き戸惑っているパステルピンク目がけて、イエーロが攻撃を仕掛けようとしている。その瞬間だった。
「オータム・リーフ・フラッド!」
 間一髪、パステルオレンジの牽制技が放たれ、目眩ましを受けている間にパステルピンクはイエーロと距離を取った。
「あらあら~、拙い連携ね~。連携っていうのは、こういうのを言うのよっ!」
 イエーロがこう叫ぶと、水飲み場が変化した化け物が頭から水を飛ばしてきた。それを回避したと思ったら、そこへ回り込むようにイエーロが出現する。
「ほーら、イエーロマジックで真っ黄色に染まっちゃいなさ~い♪」
 イエーロの右手に大きなマジックが出現する。そして、化け物の攻撃を回避した三人に襲い掛かる。それを回避したかと思えば、そこへまた化け物の攻撃が飛んでくる。三人はいいようにイエーロたちに翻弄されてしまっていた。
「くそっ、次から次へと、キリがねぇっ!」
 化け物が攻撃をしてそれを回避すればイエーロの攻撃が、イエーロの攻撃を回避すれば化け物がまた攻撃をする。二人の息の合ったコンビネーションの前に、パステルピンクたちは徐々に体力を削られてしまっている。
「ほらほら~、どうしたのかしら~?」
 イエーロと化け物のコンビネーションはキレを増している。一番体力のないパステルシアンの息が上がり始めていた。
「ふふ~ん、伝説の戦士っていっても、所詮は小娘。体力はお子ちゃまなのね~」
 対するイエーロはまだまだ余裕がありまくりのようだ。
「あ、甘く見ないでよね。パステル・オーシャン・シャワー!」
 パステルシアンの補助技が放たれる。それによって、化け物とイエーロの視界が遮られる。
「あらら、小癪な真似をするわねぇ」
 だが、イエーロは今までの二人とは違い落ち着いている。前が見えない状態でも、混乱する化け物とは違って冷静にパステルシアンの位置を特定して攻撃を仕掛けてきた。
「えっ、嘘?!」
「さあ、まずは一人よ~ん」
 さすがに躱せる状態ではない。パステルシアンは思い切り身構える。
「させるかよ! グルーミング・フラワー・ガード!」
 だが、かばうようにパステルインクが蔓の壁を発生させ、更にはイエーロを蹴り飛ばした。サッカー部の脚力をなめてはいけない。蹴り飛ばされたイエーロは化け物と思い切りぶつかった。
「いったぁ~い。なかなかやるじゃないの……」
 イエーロのダメージは思ったより浅い。どうやら化け物がバックステップをして、イエーロを受け止めたようである。化け物の方も今までとは違って、かなり能力が上がっているようだ。とっさの判断力は格段に違っている。
 何にしても、イエーロと化け物による連携が途切れた。立て直すチャンスである。
「大丈夫か、パステルシアン」
「ええ、助かったわ。ありがとう、パステルピンク」
 パステルピンクに声を掛けられたパステルシアンは、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「ラブコメみたいなのは後にして。さすがイエーロ、あたしでも迂闊に手を出せなかったけど、ここまで強いだなんて……」
 二人にツッコミを入れつつ、悔しさを滲ませているパステルオレンジ。唯一イエーロと対峙した事があり、その時に感じた強者感が本物だったので、正直焦っているのだ。
(この間のマジェのあれが無ければ、さっさと全員やられてたわね。……本当にあいつは何を考えているの?)
 パステルオレンジは、先日のサッカーボールの一件を思い出していた。あれがあったからこそ、今回のイエーロの攻撃を回避し続けられたのである。パステルオレンジは敵に塩を送られた事に、強く唇を噛んだ。
「あらあら~、せっかくの隙にも何もしないなんてねぇ。この程度で疲れちゃうなんて、本当に情けないわねっ!」
 攻撃を仕掛けてこない三人に対して、イエーロが化け物とともに突進してくる。回復待ち状態だった三人は、反応が遅れてしまう。
「くそっ! 体力お化けがっ!」
 イエーロの突撃に、パステルピンクが叫んだその時だった。
「パステル・ヴァニッシング・ブリザード!」
 初夏の公園に猛吹雪が吹き荒れたのだった。
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