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第39話 目に痛い奴
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「はあ~、と~んだ無駄足だったわね~、グーリ」
「うむ、まったくじゃな。どこを探しても見つからん。忌まわしきパステル王国の聖獣どもめ。滅ぼされておきながら、今さらに抵抗をするのか」
モノトーン四天王の残りの二人であるイエーロとグーリが部屋に戻ってきていた。マジェに言われてパステル王国の生き残りである聖獣を探しに行ったのだが、何の成果もあげられずに戻ってきたようである。
「あらあら、その様子じゃ、何の成果もなかったようね。四天王って無能の集まりだったのかしら」
こつんこつんとヒールの音を響かせて現れたのはマジェだった。この声には、さすがにイエーロもグーリもマジェを睨んでいる。
「お言葉ですが、マジェ様。あなたはその聖獣とやらを見つけたのですかな?」
グーリが厳しい声でマジェに問う。
「聖獣探しはあたいのやる事じゃないのよ。口答えしてる暇があるなら、さっさと見つかってる奴だけでも始末しなさい、この無能ども」
マジェは答える事なく、グーリたちに吐き捨てた。さすがに二人の顔が怒りに歪む。
「はっ、あんたたち無能がいくら凄んだところで、あたいには通用しないのよ。文句があるならさっさと伝説の戦士どもを倒してくるんだね!」
マジェは焚きつけるだけ焚きつけると、四天王の部屋を出ていった。
「なーによ、あの小娘ぇっ!」
普段ふざけてばかりのイエーロも、さすがに怒り心頭である。
「まぁイエーロ。わしも同じ気持ちゆえにお前の怒りも分からん事はない。だが、今はマジェ様の言う通り、パステルピンクどもを葬り去るしかあるまいて」
グーリもイラつく気持ちを抑えながら、イエーロに言い聞かせている。その言葉に、少しずつだがイエーロもいつもの調子を取り戻しつつあった。
「そうねぇ……。だったら、早速あいつらの首を手土産にしてくるしかぁ、ないわねぇ~」
くるっと回ってポーズを決めるイエーロ。そのイエーロの目が黄色く血走っている。充血しても黄色いとか、本当に目に痛い限りだ。
「やれやれ、今回はお前に任せるぞ。わしはまだ調べ物があるからの」
「おっけ~、このイエーロ様にぃ、お任せあれ~」
そう言うと、イエーロはすっと部屋から姿を消した。それを見送ったグーリはため息を吐いていた。
「やれやれ、イエーロは癖があって扱いにくいわい。……それにしても、マジェ様とは一体何者かのう。気が付いた時にはダクネース様の娘として落ち着いておったが、いつから居るのかとんと分からん。今回の事といい、いろいろと怪しいわい」
ぶつぶつと呟きながら、グーリも部屋を後にする。モノトーンの陣営もいろいろな思惑が渦巻いているようだった。
この日の千春たちは、また一緒に下校をしていた。すっかり千春は美空と杏と一緒に居る事が増えたので、クラスからはリア充爆ぜろとか言われているらしい。千春にはまったくそんな気はないのだが、男子には両手に花の状態に見えるらしい。まぁ実際に男子一人に女子二人だから、そう見られても仕方がなかろう。
さて、その千春たちは、途中にある公園で話をしていた。
「なぁ、チェリー、グローリ。ワイスって奴は見つかったのか?」
「いや、まだなんだ」
「私たちにはお互い引き合うような力があるはずなんだけど、ワイスだけはどうしてもわからないのよね」
千春の質問に、あまりぱっとしない表情の2体はそう答えていた。
「それを言ったらあたしもよ。あたしもチェリーとグローリはどうにか感知できたけど、ワイスだけは本当に分からないの。もしかしたら向こうは見つけているかも知れないから、そっちに賭けるしかないわね」
パシモである杏もこう言っているので、本当にワイスの気配は誰にも捉えられていないようである。
「そもそもワイスは冬を司る安らぎの聖獣だからね。気配を消すのは結構得意なのよね。ただ、本人の性格は何とも言えないものなんだけど……」
杏の表情がすごく複雑になっていた。
「見た目がもこもこの羊っぽい姿なのよ。見た目だけなら本当に可愛いわよ、見た目だけならね」
杏はそう付け足していた。『見た目だけ』という言葉をやたらと強調していたのが気になるが、千春と美空はただ頷く事しかできなかった。なにせ、チェリーとグローリも同じような顔をしていたのだから、突っ込むのも野暮というやつなのだろう。触らぬ神に祟りなしである。
「とはいえ、あたしたちは互いに引き合うから、その内会えるでしょうね」
杏はそう結論付けた。元々は彩りの聖獣とはいえ、今では人間の姿での生活があるのだ。そのために、どうしても自由が利かないのである。チェリーとグローリもそれを理解しているので、杏に特に何も言う事はなかった。
するとそこに、しんみりとした空気をぶち壊す、なんとも気味の悪い声が響き渡る。
「あらあら~、そこに居るのは死にぞこないの聖獣たちじゃないの~」
「誰だっ?!」
その声に千春が叫ぶ。
「あら~、野蛮な子が居るわねぇ。それと一緒に居るって事は~、あんたたちが伝説の戦士ってわけねぇ?」
千春たちの視線の先には、全身黄色の気持ち悪くなりそうな奴が空中に立っていた。そのあまりの異様な姿に、千春たちは声を失って質問には答えられなかった。
「あらあら~、無視するっていうの~? つれないわねぇ」
ぐねぐねする黄色い人物。はっきり言って気持ちが悪かった。
「あんたたちも不運ね~。そいつらと一緒に居た事を~、不幸に思う事ねっ!!」
「モノ、トーンッ!!」
黄色い人物が腕を振るうと、千春たちの近くにあった水飲み場が化け物へと姿を変えたのであった。
「うむ、まったくじゃな。どこを探しても見つからん。忌まわしきパステル王国の聖獣どもめ。滅ぼされておきながら、今さらに抵抗をするのか」
モノトーン四天王の残りの二人であるイエーロとグーリが部屋に戻ってきていた。マジェに言われてパステル王国の生き残りである聖獣を探しに行ったのだが、何の成果もあげられずに戻ってきたようである。
「あらあら、その様子じゃ、何の成果もなかったようね。四天王って無能の集まりだったのかしら」
こつんこつんとヒールの音を響かせて現れたのはマジェだった。この声には、さすがにイエーロもグーリもマジェを睨んでいる。
「お言葉ですが、マジェ様。あなたはその聖獣とやらを見つけたのですかな?」
グーリが厳しい声でマジェに問う。
「聖獣探しはあたいのやる事じゃないのよ。口答えしてる暇があるなら、さっさと見つかってる奴だけでも始末しなさい、この無能ども」
マジェは答える事なく、グーリたちに吐き捨てた。さすがに二人の顔が怒りに歪む。
「はっ、あんたたち無能がいくら凄んだところで、あたいには通用しないのよ。文句があるならさっさと伝説の戦士どもを倒してくるんだね!」
マジェは焚きつけるだけ焚きつけると、四天王の部屋を出ていった。
「なーによ、あの小娘ぇっ!」
普段ふざけてばかりのイエーロも、さすがに怒り心頭である。
「まぁイエーロ。わしも同じ気持ちゆえにお前の怒りも分からん事はない。だが、今はマジェ様の言う通り、パステルピンクどもを葬り去るしかあるまいて」
グーリもイラつく気持ちを抑えながら、イエーロに言い聞かせている。その言葉に、少しずつだがイエーロもいつもの調子を取り戻しつつあった。
「そうねぇ……。だったら、早速あいつらの首を手土産にしてくるしかぁ、ないわねぇ~」
くるっと回ってポーズを決めるイエーロ。そのイエーロの目が黄色く血走っている。充血しても黄色いとか、本当に目に痛い限りだ。
「やれやれ、今回はお前に任せるぞ。わしはまだ調べ物があるからの」
「おっけ~、このイエーロ様にぃ、お任せあれ~」
そう言うと、イエーロはすっと部屋から姿を消した。それを見送ったグーリはため息を吐いていた。
「やれやれ、イエーロは癖があって扱いにくいわい。……それにしても、マジェ様とは一体何者かのう。気が付いた時にはダクネース様の娘として落ち着いておったが、いつから居るのかとんと分からん。今回の事といい、いろいろと怪しいわい」
ぶつぶつと呟きながら、グーリも部屋を後にする。モノトーンの陣営もいろいろな思惑が渦巻いているようだった。
この日の千春たちは、また一緒に下校をしていた。すっかり千春は美空と杏と一緒に居る事が増えたので、クラスからはリア充爆ぜろとか言われているらしい。千春にはまったくそんな気はないのだが、男子には両手に花の状態に見えるらしい。まぁ実際に男子一人に女子二人だから、そう見られても仕方がなかろう。
さて、その千春たちは、途中にある公園で話をしていた。
「なぁ、チェリー、グローリ。ワイスって奴は見つかったのか?」
「いや、まだなんだ」
「私たちにはお互い引き合うような力があるはずなんだけど、ワイスだけはどうしてもわからないのよね」
千春の質問に、あまりぱっとしない表情の2体はそう答えていた。
「それを言ったらあたしもよ。あたしもチェリーとグローリはどうにか感知できたけど、ワイスだけは本当に分からないの。もしかしたら向こうは見つけているかも知れないから、そっちに賭けるしかないわね」
パシモである杏もこう言っているので、本当にワイスの気配は誰にも捉えられていないようである。
「そもそもワイスは冬を司る安らぎの聖獣だからね。気配を消すのは結構得意なのよね。ただ、本人の性格は何とも言えないものなんだけど……」
杏の表情がすごく複雑になっていた。
「見た目がもこもこの羊っぽい姿なのよ。見た目だけなら本当に可愛いわよ、見た目だけならね」
杏はそう付け足していた。『見た目だけ』という言葉をやたらと強調していたのが気になるが、千春と美空はただ頷く事しかできなかった。なにせ、チェリーとグローリも同じような顔をしていたのだから、突っ込むのも野暮というやつなのだろう。触らぬ神に祟りなしである。
「とはいえ、あたしたちは互いに引き合うから、その内会えるでしょうね」
杏はそう結論付けた。元々は彩りの聖獣とはいえ、今では人間の姿での生活があるのだ。そのために、どうしても自由が利かないのである。チェリーとグローリもそれを理解しているので、杏に特に何も言う事はなかった。
するとそこに、しんみりとした空気をぶち壊す、なんとも気味の悪い声が響き渡る。
「あらあら~、そこに居るのは死にぞこないの聖獣たちじゃないの~」
「誰だっ?!」
その声に千春が叫ぶ。
「あら~、野蛮な子が居るわねぇ。それと一緒に居るって事は~、あんたたちが伝説の戦士ってわけねぇ?」
千春たちの視線の先には、全身黄色の気持ち悪くなりそうな奴が空中に立っていた。そのあまりの異様な姿に、千春たちは声を失って質問には答えられなかった。
「あらあら~、無視するっていうの~? つれないわねぇ」
ぐねぐねする黄色い人物。はっきり言って気持ちが悪かった。
「あんたたちも不運ね~。そいつらと一緒に居た事を~、不幸に思う事ねっ!!」
「モノ、トーンッ!!」
黄色い人物が腕を振るうと、千春たちの近くにあった水飲み場が化け物へと姿を変えたのであった。
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