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第30話 気まぐれ? それとも?
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「モノ、トーンッ!」
マジェから放たれた光が、公園に設置されたゴミ箱に当たる。すると、ごみ箱はあっという間に化け物へと変化していった。だが、化け物はすぐには襲ってこないで待機している。
「さぁ、あたいの暇つぶしに付き合ってもらうわよ。あたいと本気でやろうっていうのなら、もっと強くなってもらわないと困るからね」
マジェは化け物の足元に立って、何やらポーズを決めて言い放つ。千春たちは完全に舐められているのである。
「くそっ、こいつにはどうもごまかしは通じそうにないな。いくぞっ!」
「ええ」
千春と美空は向かい合って頷く。
「パステル・カラーチェンジ!」
二人は掛け声を発して変身する。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク、ここに参上!」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン、ここに参上!」
決めポーズをしっかりと決めて、二人はマジェと化け物に向き合った。
「へぇ、実際に目の前で見ると面白いものね。情報としては知ってたけど、男の子がそんなひらひらな服を、ねぇ……」
「何がおかしい!」
マジェがくすくすと笑うので、パステルピンクは怒って怒鳴る。
「いや、おかしくはないんだけど、固定概念っていうのかしらね、そのせいで違和感を覚えるだけ。気に障ったなら謝るわ」
マジェの意外な発言に、パステルピンクたちは驚いている。しかし、そうとしてばかりはいられなかった。
「さて、あたいは一切手出しはしない。あんたたちがそのモノトーンを倒せば、あたいはおとなしく退くわ。強さは調整してあるから、頑張ってちょうだい」
マジェはそう言って、化け物をけしかける。
「モノ、トーンッ!」
まるで試されているかのようなマジェの発言だが、二人には考える余裕はない。とにかく目の前の化け物を倒すだけである。
「何を考えているの、あなたは」
マジェのところにはチェリーとグローリが近付いていた。だが、マジェは二体にまったく攻撃する気配を見せない。
「さあてね。あんたたちに選ばれた伝説の戦士に興味があるだけよ。あんたたちを消す事は簡単だけど、それじゃあたいは楽しめないからね。一緒に見物しようじゃないの」
マジェの言葉に、チェリーとグローリは首を傾げている。明らかに今までのモノトーンの連中とは違う、それどころか、どこか懐かしい感じすらマジェから受けていた。
「君は一体……」
「おっと、あたいの事に対する質問は許さないよ。死にたくはないだろう?」
マジェが顔を向ければ、チェリーもグローリも黙るしかなかった。力の差は歴然なのだから。とにかく今は、パステルピンクとパステルシアンの戦いを見守る事しかできなかった。
「モノ、トーンッ!!」
「ちっ、汚ねえ物飛ばすんじゃねえっ!」
さすがごみ箱の化け物、空き缶やら弁当の空容器やら、様々なごみが飛んでくる。パステルピンクとパステルシアンはそれをどうにか躱している。しかし、反撃をしない事にはじり貧である。攪乱しようと二手に分かれても、この化け物はきちんと対処してくるので正直攻め手を欠いている状態だ。
「くそう、躱すだけで精一杯か」
「私じゃ本当にそれしか無理」
どうにか喋れてはいるが、技を放つ隙が無いのだ。そこで、いちかばちか、パステルピンクは動くのをやめる。
「パステルピンク?!」
パステルシアンが驚くが、パステルピンクは挑発している。
「モノォッ!」
動きが止まった事で、化け物の攻撃がパステルピンクに集中する。
ところが、サッカー部所属のパステルピンクはフットワークが軽い。その細やかな足捌きで化け物の攻撃を躱していく。動き回っていた方が作戦として失敗だったようである。
「ここだぁっ!」
自分の前に飛んできた空き缶を、アステルピンクは思い切り蹴り返す。
「モノォッ?!」
伝説の戦士の不思議なパワーが乗った空き缶シュートが化け物に炸裂すると、どういうわけか化け物がよろめいた。
「ふぅん、なるほどねぇ……」
動揺する素振りも見せず、あごに手を当てて頷くなど、妙に落ち着いた反応のマジェ。分析しているだけで、化け物に一切の指示も飛ばさない。チェリーたちはその姿に驚きを隠しきれなかった。
「パステルピンクはとにかく無駄な動きが多いわね。パステルシアンはどこかパステルピンクに頼りっきり。こんな弱いモノトーン相手にてこずっているし、本当に問題が多いわね……」
マジェが何かぶつぶつと言っている。その様子に、このマジェが敵か味方かという疑念すらチェリーとグローリの中に浮かぶほどであった。
「モ、モ……、モノトーンッ!!」
そんな中、どうやら二人は無事に化け物を倒せたようである。
息の上がった二人の姿を見て、マジェは大きくため息を吐いている。
「つ、次はお前の番だっ!」
どうにか体勢を整えて言い放つパステルピンク。ところが、マジェは安い挑発には乗らなかった。
「ばかじゃないの、あんた。その程度のモノトーンに息を上げているようじゃ、あたいには指一本触れられないわよ」
「何だと?!」
「そうよ、やってみないと分からないでしょ?」
パステルピンクとパステルシアンの反応に、マジェはどこまでも冷ややかだった。
「死に急ぎたいんなら止めないわよ。せっかくのおもちゃを壊したくないんだけどね、あたいはさ」
マジェから恐ろしいまでのオーラが吹き出す。そのオーラの前に、二人と二体はまったく動けなくなってしまった。そのくらいにははっきりとした力の差があるのである。
「まぁ、はっきり言ってお粗末な戦い方だったけど、用意したモノトーンを倒せた事は褒めてあげる。次は少し強くしたのを用意してあげるから、必死に頑張りなさい」
マジェはこう言い放つと、紅色に歪んだ空間の中へと姿を消していった。それと同時に、マジェの展開した領域は消え、真っ赤な夕焼けに包まれた公園の景色が広がっていた。
そこには、圧倒的な力の差に打ちひしがれる二人と二体の姿があった。
マジェから放たれた光が、公園に設置されたゴミ箱に当たる。すると、ごみ箱はあっという間に化け物へと変化していった。だが、化け物はすぐには襲ってこないで待機している。
「さぁ、あたいの暇つぶしに付き合ってもらうわよ。あたいと本気でやろうっていうのなら、もっと強くなってもらわないと困るからね」
マジェは化け物の足元に立って、何やらポーズを決めて言い放つ。千春たちは完全に舐められているのである。
「くそっ、こいつにはどうもごまかしは通じそうにないな。いくぞっ!」
「ええ」
千春と美空は向かい合って頷く。
「パステル・カラーチェンジ!」
二人は掛け声を発して変身する。
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク、ここに参上!」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン、ここに参上!」
決めポーズをしっかりと決めて、二人はマジェと化け物に向き合った。
「へぇ、実際に目の前で見ると面白いものね。情報としては知ってたけど、男の子がそんなひらひらな服を、ねぇ……」
「何がおかしい!」
マジェがくすくすと笑うので、パステルピンクは怒って怒鳴る。
「いや、おかしくはないんだけど、固定概念っていうのかしらね、そのせいで違和感を覚えるだけ。気に障ったなら謝るわ」
マジェの意外な発言に、パステルピンクたちは驚いている。しかし、そうとしてばかりはいられなかった。
「さて、あたいは一切手出しはしない。あんたたちがそのモノトーンを倒せば、あたいはおとなしく退くわ。強さは調整してあるから、頑張ってちょうだい」
マジェはそう言って、化け物をけしかける。
「モノ、トーンッ!」
まるで試されているかのようなマジェの発言だが、二人には考える余裕はない。とにかく目の前の化け物を倒すだけである。
「何を考えているの、あなたは」
マジェのところにはチェリーとグローリが近付いていた。だが、マジェは二体にまったく攻撃する気配を見せない。
「さあてね。あんたたちに選ばれた伝説の戦士に興味があるだけよ。あんたたちを消す事は簡単だけど、それじゃあたいは楽しめないからね。一緒に見物しようじゃないの」
マジェの言葉に、チェリーとグローリは首を傾げている。明らかに今までのモノトーンの連中とは違う、それどころか、どこか懐かしい感じすらマジェから受けていた。
「君は一体……」
「おっと、あたいの事に対する質問は許さないよ。死にたくはないだろう?」
マジェが顔を向ければ、チェリーもグローリも黙るしかなかった。力の差は歴然なのだから。とにかく今は、パステルピンクとパステルシアンの戦いを見守る事しかできなかった。
「モノ、トーンッ!!」
「ちっ、汚ねえ物飛ばすんじゃねえっ!」
さすがごみ箱の化け物、空き缶やら弁当の空容器やら、様々なごみが飛んでくる。パステルピンクとパステルシアンはそれをどうにか躱している。しかし、反撃をしない事にはじり貧である。攪乱しようと二手に分かれても、この化け物はきちんと対処してくるので正直攻め手を欠いている状態だ。
「くそう、躱すだけで精一杯か」
「私じゃ本当にそれしか無理」
どうにか喋れてはいるが、技を放つ隙が無いのだ。そこで、いちかばちか、パステルピンクは動くのをやめる。
「パステルピンク?!」
パステルシアンが驚くが、パステルピンクは挑発している。
「モノォッ!」
動きが止まった事で、化け物の攻撃がパステルピンクに集中する。
ところが、サッカー部所属のパステルピンクはフットワークが軽い。その細やかな足捌きで化け物の攻撃を躱していく。動き回っていた方が作戦として失敗だったようである。
「ここだぁっ!」
自分の前に飛んできた空き缶を、アステルピンクは思い切り蹴り返す。
「モノォッ?!」
伝説の戦士の不思議なパワーが乗った空き缶シュートが化け物に炸裂すると、どういうわけか化け物がよろめいた。
「ふぅん、なるほどねぇ……」
動揺する素振りも見せず、あごに手を当てて頷くなど、妙に落ち着いた反応のマジェ。分析しているだけで、化け物に一切の指示も飛ばさない。チェリーたちはその姿に驚きを隠しきれなかった。
「パステルピンクはとにかく無駄な動きが多いわね。パステルシアンはどこかパステルピンクに頼りっきり。こんな弱いモノトーン相手にてこずっているし、本当に問題が多いわね……」
マジェが何かぶつぶつと言っている。その様子に、このマジェが敵か味方かという疑念すらチェリーとグローリの中に浮かぶほどであった。
「モ、モ……、モノトーンッ!!」
そんな中、どうやら二人は無事に化け物を倒せたようである。
息の上がった二人の姿を見て、マジェは大きくため息を吐いている。
「つ、次はお前の番だっ!」
どうにか体勢を整えて言い放つパステルピンク。ところが、マジェは安い挑発には乗らなかった。
「ばかじゃないの、あんた。その程度のモノトーンに息を上げているようじゃ、あたいには指一本触れられないわよ」
「何だと?!」
「そうよ、やってみないと分からないでしょ?」
パステルピンクとパステルシアンの反応に、マジェはどこまでも冷ややかだった。
「死に急ぎたいんなら止めないわよ。せっかくのおもちゃを壊したくないんだけどね、あたいはさ」
マジェから恐ろしいまでのオーラが吹き出す。そのオーラの前に、二人と二体はまったく動けなくなってしまった。そのくらいにははっきりとした力の差があるのである。
「まぁ、はっきり言ってお粗末な戦い方だったけど、用意したモノトーンを倒せた事は褒めてあげる。次は少し強くしたのを用意してあげるから、必死に頑張りなさい」
マジェはこう言い放つと、紅色に歪んだ空間の中へと姿を消していった。それと同時に、マジェの展開した領域は消え、真っ赤な夕焼けに包まれた公園の景色が広がっていた。
そこには、圧倒的な力の差に打ちひしがれる二人と二体の姿があった。
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