マジカル☆パステル

未羊

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第24話 カット&ペースト

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 突如の化け物の出現によって阿鼻叫喚となった通りでは、モノトーン四天王のブルーエがパステルピンクとパステルシアンの二人と対峙している。よく見るとチェリーとグローリもついて来ていた。
「なんだい、あのモノトーンは。今までに見たのと比べても、なんか変な奴だよ」
「頭とか見たら、あれはデスクトップパソコンだな。顔が真っ青とか見る奴によっちゃ恐怖だよなぁ。実際、おじさんとか怖がってたからな」
 チェリーの言葉にパステルピンクが反応する。
「なるほど、ブルースクリーンってやつね。急に動作が止まって画面が青くなるからなかなか心臓に悪いとか聞いた事あるわ」
 パステルシアンも続けて反応していた。
「何をごちゃごちゃと。やっておしまい、モノトーン!」
「モノ、トーンッ!」
 ブルーエの号令に化け物が雄たけびを上げる。そして、ガシャンガシャンと音を立てながら走ってきた。
「うわぁ、この間の車みたいに変形ロボット物っぽくてやりづれえなぁ……」
「何言ってるのよ、パステルピンク。ぼーっとしてたら町を破壊しつくされるわよ」
「しょうがねえな、それだけは勘弁だしな」
 苦笑いをするパステルピンクに、パステルシアンがツッコミを入れる。気合いを入れ直した二人は、改めて化け物に対峙する。
「モノ、トーンッ!」
 化け物がCtrl+V貼り付けで何かを取り出した。
「げっ、あれ拳銃かよ」
 そう、さっき警官から強奪した拳銃である。しかし、化け物の手が大きすぎて扱えていない。パソコンの割には頭が悪そうである。
「うりゃっ!」
 化け物がまごついているうちに、パステルピンクがキックで拳銃を叩き落とした。そして、そのまま蹴り飛ばして建物の隙間に放り込んだ。
「ふぅ、危ねえなぁ。何だってこんな物騒なものを持ってんだよ」
 安心してほっとしたのも束の間、化け物は二丁めをすでに手に持っていた。
「げっ、まだあんのかよ」
 今度はしっかり手に収まっており、しかも撃ってきた。さっきのミスにはしっかりもう対応していたのだ。
「うりゃ!」
 パステルピンクはさっき同様に拳銃を蹴り落とす。すると、化け物はもう一度と言わんばかりに左手を右手に伸ばしている。
「そうはさせないわっ!」
 パステルシアンはパステルミストを取り出して構える。
「弾ける海の息吹、注げ! パステル・オーシャン・シャワー!」
 いつもより強力な水流が化け物を襲う。化け物の右腕はその水流に巻かれてバチバチとショートしてしまった。
「モノッ?!」
 化け物にとっては予想外だったのか、慌てふためいている。そして、バチバチと音を上げていた右手が、ボンと爆発音を上げて壊れてしまった。
「モノォッ!!」
「今だわ!」
 化け物が完全に動揺している。倒すなら今だ。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
 パステルピンクがパステルブラシを取り出して必殺技を放つ。
「まだよ、モノトーン!」
「モノ、トーンッ!」
 ブルーエの声に冷静さを取り戻した化け物は、左手のマウスを操作している。カチカチっと動かしてクリックすると、驚いた事にパステルピンクの必殺技が消えてしまったではないか。
「な、なんだと?!」
「ホーッホッホッホッ! ざまあないわね、パステルピンク!」
 消えた理由はまったく理解できないが、パステルピンクが驚く顔に満足して高笑いをするブルーエである。
「なるほど、マウス操作でカット操作をしたってわけね」
「カット操作?」
 パステルシアンの言葉に、グローリが首を傾げる。
「マウスの右クリックをして出てくるメニューから切り取りを選択したのよ。何かしらの方法で対象を指定して、それによってパステルピンクの技を消したってわけね」
「化け物のくせに、妙な小技を使うな」
 パステルシアンの説明を聞いたパステルピンクは、必殺技を消されて機嫌が悪そうである。
「ホーッホッホホッ! 万策尽きたかしらね、パステルピンク、パステルシアン!」
 見学しているブルーエが調子に乗っている。妙にイラっとくるものだ。
「本当にうるさいおばさんだな!」
「誰が、おばさんですって!? モノトーン、さっさとやっておしまい!」
 イラついたパステルピンクがおばさん発言をすると、またブルーエはブチ切れている。よっぽど禁句のようである。
「モノトーンッ!」
 化け物は呼応するように雄たけびを上げると、左手になっているマウスを操作する。すると、さっき取り込んだパステルピンクの技を解放しようとするが、そこで予期せぬ事が起きた。
「モ、モノッ?!」
 左手のマウスが、取り出そうとした技に飲み込まれてしまったのである。
「なっ、何が起きているの?」
「伝説の戦士の技がそんな簡単に扱えるわけがないんだよ」
「そうよ。取り込めたからって安心したのが大間違いね」
 驚くブルーエだが、チェリーとグローリはドヤ顔をしながら口撃している。
 ブルーエも化け物も混乱している。
「今だよ、二人とも!」
「おうっ!」
 チェリーの声に反応する。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
「降り注げ、浄化の雨! パステル・サマー・スコール!」
 パステルピンクとパステルシアンの必殺技が同時に炸裂する。混乱のあまり、化け物は抵抗すらできずに、まともにその攻撃を浴びてしまった。
「モ、モ、モノトーンッ!!」
 化け物は浄化され、化け物によって壊されていった街の風景が修復されていく。
「さて、後はお前だけだぞ、おばさん」
「ぐぐぐ……、この小娘がぁっ!」
 ブルーエは怒りで震えている。
「だが、この程度の挑発に乗るあたしではないわ。次こそ覚えていなさい。完璧な作戦であんたたちを地獄に叩き落としてやるわ!」
 ブルーエは必死に堪えてそのまま退散していった。二人と二体はその様子を呆れたように眺めていたのだった。

「ん? なんだ?」
 社畜の男性が目を覚ます。目の前のモニターは正常な画面を映し出しており、男性は首を傾げている。
「……なんだったんだろうか。変な夢を見た気がするんだが?」
 しばらく首を捻り続けた男性だったが、結局埒が明かずに仕事に戻る事にする。
「まぁなんだ。気持ちも頭もすっきりしている。今ならできそうな気がするぞ!」
 たった一人休日出勤していた男性は、それからひたすらパソコンに向かって仕事をしていた。
 そのかいあってか、後日、この企画は高評価を受ける事になるのだが、それはまた別のお話である。
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