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第22話 静かなる焦り
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千春たちがゴールデンウィークを謳歌している頃、モノトーンのアジトでは……。
「くそっ! 誰がおばさんよぉっ!」
ブルーエが荒れていた。
というのも、パステルピンクにおばさん呼ばわりされたのが相当に頭に来ているようである。ブルーエ本人は若いつもりだからだ。
「ぷくくっ……。そのパステルピンクって子、なかなかやるじゃなぁ~い。ざんね~ん、その現場を直に見てみたかったものだわぁ~」
荒れるブルーエとは対照的に、イエーロには大うけしているようである。お腹を抱えて笑い転げていた。その様子に、ブルーエの青筋の数が増えていく。怒り狂うブルーエと大声で笑うイエーロ。その様子にまったく動じる事なく、グーリは淡々とお茶をすすっている。
この様子を見る限り、モノトーン四天王はひとつの目的を共有しているが、決して仲が良いというわけではなさそうだ。
「お前たちはいつまでそうやっているつもりだ。のんびりしている暇はあるというのか?」
低く重い声が四天王の居る部屋に響く。
「……これはマジェ様。ご機嫌麗しゅうございます」
ブルーエが意外と最初にマジェの登場に対処する。続いて、イエーロも笑うのをやめて跪いた。
「無様なものよな、ブルーエ」
ギラリとマジェの瞳が光る。
「コケにされた上に、あっさりとモノトーンを撃破されるなど、お前は自分の立場が分かっているのか?」
マジェは鋭い視線を向けて見下している。その視線の鋭さに、ブルーエたちは震え上がっており、言葉を発する事ができなかった。
「お前たちの目的は聖獣どもを葬り、あの地球とかいう世界を我らが支配下におさめる事だ。悠長に遊んでいる暇はないぞ」
これだけ伝えると、マジェは立ち去ろうとする。だが、
「お待ち下さい、マジェ様」
ブルーエが声を発した。
「なんだ、あたいに意見するつもりか? ……面白い、言ってみろ」
それに対してマジェは、不快感を露わにしてより強く睨みつけた。その視線にブルーエは恐ろしくて言葉を詰まらせてしまった。
「……なんだ。呼び止めただけとは愚かなものだな。……あたいらモノトーンに無能は要らぬ。さっさと奴らを抹殺して来い!」
マジェが声を張り上げて叫ぶと、部屋の中に恐ろしい衝撃波が走る。イエーロとグーリはいいとばっちりである。
「……仰せのままに」
ブルーエはぎゅっと唇を噛みしめた。その後は、マジェが立ち去るのをただ見送る事しかできなかった。
「マジェ様ったら、本当に怖~い。誰かさんのおかげで~、私たちまで怒られちゃったじゃないの~。どうしてくれるの~?」
マジェが立ち去って完全に空気が落ち着いたところで、イエーロがブルーエにウザ絡みをする。なんというか、空気がとんでもなく重かった。
「……分かったわよ。何としてでもパステルピンクとパステルシアンの二人だけでも仕留めるわ」
ブルーエは拳を握った。
「……パステルオレンジはどうするつもりじゃ?」
「パステルオレンジは、マジェ様が対応なさるらしいわ。だから、あたしはあの腹立たしい小娘どもを葬り去らなきゃ気が済まないのよ!」
グーリから指摘されると、ブルーエは最初こそ冷静だったが、どんどんとパステルピンクのおばさん発言を思い出して腹が立ってきたようだ。最後は床を思い切り強く踏みつけていた。
「あらやだ~。ブルーエのその表情、と~っても~、醜いわね」
「お黙り、イエーロ!」
イエーロが突けば、ブルーエはブチ切れて怒鳴りつける。本当に、この組織どうやって成り立ってるんだというくらい、壊滅的な仲だった。
「マジェ様とパステルオレンジの間には、ただならぬ因縁があるって感じだったわ。やけにこだわっている感じだったもの」
ブルーエは両腕を組みながら、ようやく冷静さを取り戻しながら話している。
「しかし、マジェ様の事は、わしらもよく知らぬ」
「そうね~、気が付いたら、幹部に居座っていたものね~。本当、何者なのかしら~」
どうやら、モノトーン四天王はマジェの事はよく知らないらしい。それでも四天王がこれだけ圧倒されるという事は、四天王よりも実力は上という事である。よくは知らないが実力では負けているので、四天王はマジェに逆らえないのである。
「とにかくあたしは、パステルピンクとパステルシアンを潰す。二人は残りの二匹をさっさと探して潰すのよ!」
「ブルーエに命令されるのは、癪だわね~。でも~、残りの連中を潰すのは賛成ね」
「わしも同意じゃな」
苛立つブルーエの言葉に、イエーロとグーリはやれやれといった感じで同意する。
「だが、ブルーエよ」
「なによ」
「おぬしももう数度の失敗を繰り返しておる。あと何度失敗が許されるか分からぬゆえ、本気で掛かるのだぞ」
太い眉で見えなかったグーリの目がきらりと光って、ブルーエを凝視する。
「……分かっているわよ。今までは様子見だったのよ。次こそは葬ってやるわ」
ブルーエはギリギリと歯を食いしばっている。
「一人ではどうともならんと思ったら、いつでも声を掛けろ。プライドが許さぬかも知れんが、レドを失っておる以上、あまり形振りに構うな」
「ええ、心遣いはありがたく受け取っておくわ」
グーリの予想外の申し出に、ブルーエは一応感謝を言っておく。
「でも、これはあくまでもあたしの問題よ。必ずあたしだけで成し遂げてみせるわ」
ブルーエは表情を引き締めて、グーリにそう言い切った。そしたらば、グーリは何も言う事なく、そのままブルーエを送り出したのだった。
「あら、グーリ。いいの? あのままあの女を送り出して」
「構わん。奴の決意が固い以上、わしらがどうこういう話でもなかろう」
グーリはくるりと振り返る。
「さて、わしらは残りの聖獣を探しに行くぞ」
「は~い。待っててね、聖獣ちゅあ~ん!」
モノトーン四天王たちは、それぞれの思惑を秘めてパステル王国の残党潰しへと赴いたのだった。
「くそっ! 誰がおばさんよぉっ!」
ブルーエが荒れていた。
というのも、パステルピンクにおばさん呼ばわりされたのが相当に頭に来ているようである。ブルーエ本人は若いつもりだからだ。
「ぷくくっ……。そのパステルピンクって子、なかなかやるじゃなぁ~い。ざんね~ん、その現場を直に見てみたかったものだわぁ~」
荒れるブルーエとは対照的に、イエーロには大うけしているようである。お腹を抱えて笑い転げていた。その様子に、ブルーエの青筋の数が増えていく。怒り狂うブルーエと大声で笑うイエーロ。その様子にまったく動じる事なく、グーリは淡々とお茶をすすっている。
この様子を見る限り、モノトーン四天王はひとつの目的を共有しているが、決して仲が良いというわけではなさそうだ。
「お前たちはいつまでそうやっているつもりだ。のんびりしている暇はあるというのか?」
低く重い声が四天王の居る部屋に響く。
「……これはマジェ様。ご機嫌麗しゅうございます」
ブルーエが意外と最初にマジェの登場に対処する。続いて、イエーロも笑うのをやめて跪いた。
「無様なものよな、ブルーエ」
ギラリとマジェの瞳が光る。
「コケにされた上に、あっさりとモノトーンを撃破されるなど、お前は自分の立場が分かっているのか?」
マジェは鋭い視線を向けて見下している。その視線の鋭さに、ブルーエたちは震え上がっており、言葉を発する事ができなかった。
「お前たちの目的は聖獣どもを葬り、あの地球とかいう世界を我らが支配下におさめる事だ。悠長に遊んでいる暇はないぞ」
これだけ伝えると、マジェは立ち去ろうとする。だが、
「お待ち下さい、マジェ様」
ブルーエが声を発した。
「なんだ、あたいに意見するつもりか? ……面白い、言ってみろ」
それに対してマジェは、不快感を露わにしてより強く睨みつけた。その視線にブルーエは恐ろしくて言葉を詰まらせてしまった。
「……なんだ。呼び止めただけとは愚かなものだな。……あたいらモノトーンに無能は要らぬ。さっさと奴らを抹殺して来い!」
マジェが声を張り上げて叫ぶと、部屋の中に恐ろしい衝撃波が走る。イエーロとグーリはいいとばっちりである。
「……仰せのままに」
ブルーエはぎゅっと唇を噛みしめた。その後は、マジェが立ち去るのをただ見送る事しかできなかった。
「マジェ様ったら、本当に怖~い。誰かさんのおかげで~、私たちまで怒られちゃったじゃないの~。どうしてくれるの~?」
マジェが立ち去って完全に空気が落ち着いたところで、イエーロがブルーエにウザ絡みをする。なんというか、空気がとんでもなく重かった。
「……分かったわよ。何としてでもパステルピンクとパステルシアンの二人だけでも仕留めるわ」
ブルーエは拳を握った。
「……パステルオレンジはどうするつもりじゃ?」
「パステルオレンジは、マジェ様が対応なさるらしいわ。だから、あたしはあの腹立たしい小娘どもを葬り去らなきゃ気が済まないのよ!」
グーリから指摘されると、ブルーエは最初こそ冷静だったが、どんどんとパステルピンクのおばさん発言を思い出して腹が立ってきたようだ。最後は床を思い切り強く踏みつけていた。
「あらやだ~。ブルーエのその表情、と~っても~、醜いわね」
「お黙り、イエーロ!」
イエーロが突けば、ブルーエはブチ切れて怒鳴りつける。本当に、この組織どうやって成り立ってるんだというくらい、壊滅的な仲だった。
「マジェ様とパステルオレンジの間には、ただならぬ因縁があるって感じだったわ。やけにこだわっている感じだったもの」
ブルーエは両腕を組みながら、ようやく冷静さを取り戻しながら話している。
「しかし、マジェ様の事は、わしらもよく知らぬ」
「そうね~、気が付いたら、幹部に居座っていたものね~。本当、何者なのかしら~」
どうやら、モノトーン四天王はマジェの事はよく知らないらしい。それでも四天王がこれだけ圧倒されるという事は、四天王よりも実力は上という事である。よくは知らないが実力では負けているので、四天王はマジェに逆らえないのである。
「とにかくあたしは、パステルピンクとパステルシアンを潰す。二人は残りの二匹をさっさと探して潰すのよ!」
「ブルーエに命令されるのは、癪だわね~。でも~、残りの連中を潰すのは賛成ね」
「わしも同意じゃな」
苛立つブルーエの言葉に、イエーロとグーリはやれやれといった感じで同意する。
「だが、ブルーエよ」
「なによ」
「おぬしももう数度の失敗を繰り返しておる。あと何度失敗が許されるか分からぬゆえ、本気で掛かるのだぞ」
太い眉で見えなかったグーリの目がきらりと光って、ブルーエを凝視する。
「……分かっているわよ。今までは様子見だったのよ。次こそは葬ってやるわ」
ブルーエはギリギリと歯を食いしばっている。
「一人ではどうともならんと思ったら、いつでも声を掛けろ。プライドが許さぬかも知れんが、レドを失っておる以上、あまり形振りに構うな」
「ええ、心遣いはありがたく受け取っておくわ」
グーリの予想外の申し出に、ブルーエは一応感謝を言っておく。
「でも、これはあくまでもあたしの問題よ。必ずあたしだけで成し遂げてみせるわ」
ブルーエは表情を引き締めて、グーリにそう言い切った。そしたらば、グーリは何も言う事なく、そのままブルーエを送り出したのだった。
「あら、グーリ。いいの? あのままあの女を送り出して」
「構わん。奴の決意が固い以上、わしらがどうこういう話でもなかろう」
グーリはくるりと振り返る。
「さて、わしらは残りの聖獣を探しに行くぞ」
「は~い。待っててね、聖獣ちゅあ~ん!」
モノトーン四天王たちは、それぞれの思惑を秘めてパステル王国の残党潰しへと赴いたのだった。
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