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第19話 練習試合
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ゴールデンウィークに無事に突入し、この日はサッカー部の練習試合の日である。千春と美空は朝早くから学校に集合して、学校が用意したバスに乗り込んだ。
この日行われる練習試合は隣町で行われるので、部員が勢ぞろいしてバスでの移動となったのだ。それくらいには遠い。しかも他にももう1校集まり、3校による練習試合なので移動だけで体力を使うわけにもいかなかったのだ。これは仕方のない判断である。
千春はというと、春休み以来の試合とあって、とても気合いが入っていた。練習試合とはいえ、相手もそこそこ強い学校だ。相手にとって不足なしなのである。
ちなみに千春のポジションはMFだ。中盤で動く攻守の要だ。性格的にはFWかと思ったらそうでもなかった。だが、状況次第で攻撃にも防御にも参加するので、冷静な判断力と走り回れるだけの体力も求められるなんともタフなポジションなので、意外と千春には向いていた。
よくよく思えば、千春が試合をするところを初めて見る美空である。スコアブック片手にとてもわくわくしているようで落ち着きがなかった。
「友人が活躍するところが楽しみなのは分かりますが、私たちはとにかく落ち着いて記録をするのよ。それに集中していないと、いつボールが飛んでくるか分かりませんからね?」
目を輝かせている美空に、風祭先輩が優しく諭してくる。しかし、実際そうなのだ。試合をちゃんと見ていないと記録は取れないし、ミスキックとかがベンチに飛んでくる事もしばしばある。何かと危険なのだから当然の話である。その話を聞いた美空は、ふんと気合いを一発入れていた。それを見た風祭先輩に笑われる美空である。
簡単に練習をした後、20分間の練習試合が行われる。あくまでも練習試合なので時間はかなり短く設定されていた。
3校の集まりなので、1校だけが何もしない時間が出てしまう事も時間が短く設定された理由である。
練習試合の順番はコイントスで決められ、千春たちの学校は1試合目は見学となって残りが連戦である。
「ちぇっ、さっさと済ませたかったのに、後回しかよ」
千春は口を尖らせて非常に残念がっていた。
今回の練習試合の相手の試合を眺めている千春たち。さすがは県大会ではいつもいいところまで行く強豪校同士の対決なので、攻防の移り変わりが激しかった。その動きには、さっきまで愚痴っていた千春も打って変わって興奮して見入っていた。こういうところはサッカー少年というべきところなのだろうか。
さて、2校の対戦が終わる。実力が拮抗しているのがよく分かる、1-1のドローだった。
「さあて、俺たちの出番だな」
両手を打ち合って千春は気合い十分だ。
さっき戦っていた2校の片方がコートから退場し、代わりに千春たちが入っていく。普段の練習の成果を見せてやるぜと言わんばかりに気迫がこもっている。
だが、さすが相手は強豪である。たった20分の試合とはいえ、0-4での大敗だった。これがフルタイムの試合ならどれだけ点差がついていたのか分からない。少なくともバレーボールくらいにはなったかも知れなかった。
しかし、そこはもう1校控えているので何とか気持ちを切り替えようとする千春たち。
だが、現実は非情に残酷だった。
さっきの学校よりは善戦したのだが、こちらも0-3といいところはなかった。パス回しが読まれ切っていたのは痛いが、それでも失点3に抑えられたのはディフェンスが頑張ったからだろう。試合が終わった後の千春たちは、あまりの実力の違いにがっくり肩を落としていた。
「反省点は多いようだな。さすがに俺もここまでやられるとは思っていなかった。これは俺も含めて反省だな」
顧問の教師はとりあえず生徒たちを労いながらも反省しっぱなしだった。ここまでの実力差とは思ってもみなかったようだ。
練習試合が終わると後は帰るだけなのだが、時間的にはもうお昼である。というわけで、帰る前に腹ごしらえをするという事になった。事前に買い込んでおいた弁当とお茶を配ると、顧問が広げたブルーシートに座って反省会を兼ねた食事会となった。 ちなみに他の2校はさっさと引き上げの準備をしている。
だが、これから楽しい食事タイムだというのに、それを打ち壊すような声が響き渡る。
「あらぁ~、いい感じに人が集まってるわね。こいつらの色を抜いて献上すれば、とても喜ばれるかしら」
この女性の声には聞き覚えがある。
千春たちが見上げれば、そこには青色の女性が浮かんでいる。宙に浮かぶ女性の姿を見て、周りの部員たちが騒ぎ始めた。
「あらあら、雑音は排除しなきゃね」
女性の手には何やら噴射装置のようなものが見える。
「ほらほら、みんな青く染まっちゃいなさい!」
千春たちを含め、練習試合の相手である他校の部員たちも巻き込むように、青色の雨が降り注ぐ。
「千春!」
「美空!」
どこからともなく、チェリーとグローリが現れ、千春と美空は敵の攻撃を免れた。しかし、部員たちはほぼ全員が逃げ遅れてしまい、色を抜かれて青く染まってその場に倒れ込んでいた。
楽しい食事タイムを邪魔された千春は、すごく頭に来ている。
「まったく、飯の時間を邪魔しやがって。いくぞ、美空」
「えっ、うん!」
千春が鬼のような形相で言うので、美空は戸惑いながらも返事をする。
「パステル・カラーチェンジ!」
場が混乱を極める中、千春と美空はそれぞれ変身をするのだった。
この日行われる練習試合は隣町で行われるので、部員が勢ぞろいしてバスでの移動となったのだ。それくらいには遠い。しかも他にももう1校集まり、3校による練習試合なので移動だけで体力を使うわけにもいかなかったのだ。これは仕方のない判断である。
千春はというと、春休み以来の試合とあって、とても気合いが入っていた。練習試合とはいえ、相手もそこそこ強い学校だ。相手にとって不足なしなのである。
ちなみに千春のポジションはMFだ。中盤で動く攻守の要だ。性格的にはFWかと思ったらそうでもなかった。だが、状況次第で攻撃にも防御にも参加するので、冷静な判断力と走り回れるだけの体力も求められるなんともタフなポジションなので、意外と千春には向いていた。
よくよく思えば、千春が試合をするところを初めて見る美空である。スコアブック片手にとてもわくわくしているようで落ち着きがなかった。
「友人が活躍するところが楽しみなのは分かりますが、私たちはとにかく落ち着いて記録をするのよ。それに集中していないと、いつボールが飛んでくるか分かりませんからね?」
目を輝かせている美空に、風祭先輩が優しく諭してくる。しかし、実際そうなのだ。試合をちゃんと見ていないと記録は取れないし、ミスキックとかがベンチに飛んでくる事もしばしばある。何かと危険なのだから当然の話である。その話を聞いた美空は、ふんと気合いを一発入れていた。それを見た風祭先輩に笑われる美空である。
簡単に練習をした後、20分間の練習試合が行われる。あくまでも練習試合なので時間はかなり短く設定されていた。
3校の集まりなので、1校だけが何もしない時間が出てしまう事も時間が短く設定された理由である。
練習試合の順番はコイントスで決められ、千春たちの学校は1試合目は見学となって残りが連戦である。
「ちぇっ、さっさと済ませたかったのに、後回しかよ」
千春は口を尖らせて非常に残念がっていた。
今回の練習試合の相手の試合を眺めている千春たち。さすがは県大会ではいつもいいところまで行く強豪校同士の対決なので、攻防の移り変わりが激しかった。その動きには、さっきまで愚痴っていた千春も打って変わって興奮して見入っていた。こういうところはサッカー少年というべきところなのだろうか。
さて、2校の対戦が終わる。実力が拮抗しているのがよく分かる、1-1のドローだった。
「さあて、俺たちの出番だな」
両手を打ち合って千春は気合い十分だ。
さっき戦っていた2校の片方がコートから退場し、代わりに千春たちが入っていく。普段の練習の成果を見せてやるぜと言わんばかりに気迫がこもっている。
だが、さすが相手は強豪である。たった20分の試合とはいえ、0-4での大敗だった。これがフルタイムの試合ならどれだけ点差がついていたのか分からない。少なくともバレーボールくらいにはなったかも知れなかった。
しかし、そこはもう1校控えているので何とか気持ちを切り替えようとする千春たち。
だが、現実は非情に残酷だった。
さっきの学校よりは善戦したのだが、こちらも0-3といいところはなかった。パス回しが読まれ切っていたのは痛いが、それでも失点3に抑えられたのはディフェンスが頑張ったからだろう。試合が終わった後の千春たちは、あまりの実力の違いにがっくり肩を落としていた。
「反省点は多いようだな。さすがに俺もここまでやられるとは思っていなかった。これは俺も含めて反省だな」
顧問の教師はとりあえず生徒たちを労いながらも反省しっぱなしだった。ここまでの実力差とは思ってもみなかったようだ。
練習試合が終わると後は帰るだけなのだが、時間的にはもうお昼である。というわけで、帰る前に腹ごしらえをするという事になった。事前に買い込んでおいた弁当とお茶を配ると、顧問が広げたブルーシートに座って反省会を兼ねた食事会となった。 ちなみに他の2校はさっさと引き上げの準備をしている。
だが、これから楽しい食事タイムだというのに、それを打ち壊すような声が響き渡る。
「あらぁ~、いい感じに人が集まってるわね。こいつらの色を抜いて献上すれば、とても喜ばれるかしら」
この女性の声には聞き覚えがある。
千春たちが見上げれば、そこには青色の女性が浮かんでいる。宙に浮かぶ女性の姿を見て、周りの部員たちが騒ぎ始めた。
「あらあら、雑音は排除しなきゃね」
女性の手には何やら噴射装置のようなものが見える。
「ほらほら、みんな青く染まっちゃいなさい!」
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「千春!」
「美空!」
どこからともなく、チェリーとグローリが現れ、千春と美空は敵の攻撃を免れた。しかし、部員たちはほぼ全員が逃げ遅れてしまい、色を抜かれて青く染まってその場に倒れ込んでいた。
楽しい食事タイムを邪魔された千春は、すごく頭に来ている。
「まったく、飯の時間を邪魔しやがって。いくぞ、美空」
「えっ、うん!」
千春が鬼のような形相で言うので、美空は戸惑いながらも返事をする。
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