マジカル☆パステル

未羊

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第17話 襲い来る謎の声

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 チェリーたちが化け物と対峙するちょうどその頃……。
「これは、モノトーンの気配?」
 同じように化け物の気配を感じ取っていた人物が居た。
「本当に次から次へと……。懲りない人たちね」
 ため息混じりに歯を食いしばるその人物は、すっと構えて右手を高く掲げた。
「パステル・カラーチェンジ!」
 千春たちと同じ変身の掛け声である。
 その人物が変身を終えると、
「命彩る時、秋の妖精パステルオレンジ!」
 そこに現れたのはパステルオレンジだった。
 変身して現場に向かおうとするパステルオレンジだったが、そこで思わぬ事態が起こる。
「行かせないわ……」
 重い声が響いたかと思うと、何かが飛んできた。パステルオレンジが躱すとズドンと大きな音が響いて、その何かは地面にめり込んだ。よく見ると、それは何かの蓋のような物だった。
「躱すとは、さすがね」
「誰よ、姿を見せなさい!」
 誰とも分からない攻撃に、パステルオレンジは声を上げる。しかし、相手はその声に応える事はなかった。
「この程度で慌てるなんてね。やっぱり伝説の戦士なんて、そんなもの……」
 期待外れと言わんばかりの言葉が響く。パステルオレンジは声のする方向を特定しようとして集中するが、それはなかなか叶わない。
「その程度であたいたちに歯向かうなんて……、本当に愚かね」
「あたい……?」
 謎の声の一人称に、どういうわけか反応するパステルオレンジ。しかし、考える暇を相手は与えてくれなかった。
「行くといいわ、モノトーン。この程度の相手、お前でも十分でしょう?」
「モノ、トーンッ!」
 謎の声に応じるように、化け物が現れた。よく見るとそれは公園のベンチのようだ。色は深紅、レドよりも暗い赤色の化け物だった。
「ちょっと待ちなさい! あなた、もしかして……!」
 パステルオレンジが謎の声に呼び掛けるが、
「モノトーンッ!」
 それを許さないように化け物が襲い掛かってきた。動揺が隠し切れないパステルオレンジは、その一撃をまともに食らってしまった。
「ぐっ!!」
 だが、とっさではあるが体を捻ってダメージを軽減するパステルオレンジ。回転するようにしてうまく着地を決めた。だが、軽減できたとはいえ少し攻撃が重すぎた。
「モノ、トーーンッ!」
 間髪入れずに化け物が襲い掛かってくる。ダメージのせいでうまく動けないが、パステルオレンジはどうにか攻撃を凌ごうを試みる。
「オータム・リーフ・フラッド!」
 召喚したチューブから絵の具が溢れ、紅葉した葉っぱの波が化け物を襲う。だが、これでも化け物の勢いをある程度削ぐだけで、完全には止められない。それでも攻撃の速度が遅くなった事で、パステルオレンジは化け物の攻撃を余裕を持って躱す事ができた。
(なに、こいつ。今までのモノトーンとは明らかに違うわ)
 予想外の化け物の強さに、パステルオレンジに焦りの表情が浮かぶ。
 それも無理はない。同じ攻撃を当てたなら、今までのモノトーンなら身動き一つ取れなくなって、簡単に無力化できたからだ。だが、目の前の化け物は勢いは衰えるものの、構わず突っ込んできている。これだけで異常な話なのだ。
(だけど、こんな所で負けるわけにはいかないのよ!)
 パステルオレンジは奮い立つ。そこへ再び化け物が襲い掛かってくる。
「モノ、トーンッ!!」
 化け物が右腕を振るって殴りかかってくる。パステルオレンジはふらふらしている体に力を入れて、化け物の攻撃を躱す。だが、化け物は勢いを利用して回転、左腕による裏拳を繰り出そうとしている。
「オータム・リーフ・フラッド!」
 再びパステルオレンジは紅葉の津波を起こす。
 だが、それは化け物の足元を狙っていた。
「モノッ?!」
 無茶な姿勢から回転していたせいか、化け物の足元は非常に不安定になっていた。そのため、紅葉が起こした波が化け物の足元をすくったのだ。化け物はバランスを崩して倒れ込んでいく。
「モ、モノトーン!」
 それでも化け物は、執拗にパステルオレンジへ攻撃を命中させようと必死に腕を振るう。そして、その攻撃は命中する。化け物はにやりと顔を緩ませる。
 だが、次の瞬間、攻撃を当てたパステルオレンジは、たくさんの葉っぱとなって散り散りになってしまった。
「所詮、モノトーンなんて知能の低い化け物なのよ」
 化け物の下の方から声がする。そう、パステルオレンジだ。彼女は足元を滑らせた時点で、その場にダミーを作って入れ替わっていたのだ。
「悪しき心を塗り替える! パステル・オータム・ペイントレイ!」
 化け物の体勢は崩れている。この状態では回避は不可能である。
「モ、モノトーンッ!」
 化け物はあえなくパステルオレンジの必殺技を全身に浴びてしまい、元の場所でただのベンチへと姿を変えていった。
 なんとか化け物を倒したパステルオレンジは、その場で大きく肩で息をしている。さすがに今回の戦いは厳しかったようである。もろではないにしろ、一撃を食らってしまったのは正直屈辱だったのだ。
 だが、パステルオレンジにはそれ以上に気になる事があった。
(あの声、聞いた事はない感じの声だったけど、あの一人称は……。いや、まさかね。そんなわけがないわ)
 あの謎の声の事だった。
 自分の事を『あたい』と称する者は、そう多くはない。使えばかなり目立つ一人称だろう。それがゆえに、パステルオレンジの中に思い当たる存在があるようだった。
 パステルオレンジが必死に否定する中、街中にもう一つの化け物のなんとも情けない断末魔が響き渡った。
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