マジカル☆パステル

未羊

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第16話 青色の襲撃

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 その日の放課後、部活を終えて帰る千春たちの前にチェリーたちが慌てて駆け寄ってきた。
「大変だ、千春、美空! 奴らだ!」
 チェリーのこの声が聞こえると同時に、
「モノ、トーンッ!」
 化け物が立ち上がって叫んでいる姿が目に入る。
 ところが、化け物の様子が今までとは違う。レドが生み出した化け物は真っ赤だったのだが、今回の化け物は真っ青。つまりはレド以外の誰かが出てきたという事なのだろう。
「ちっ、仕方ねえな。美空!」
「うん、分かったわ」
 千春と美空は構えて変身をする。
「パステル・カラーチェンジ!」
 千春はピンク、美空は空色に包まれて徐々に変身していく。そして、変身が終わると、
「命目覚める時、春の妖精パステルピンク、ここに参上!」
「命輝く時、夏の妖精パステルシアン、ここに参上!」
 ポーズを決めて変身口上を述べる。何気にパステルピンクがパステルシアンの口上を聞くのは初めてである。
 白い縦のラインが数本入ったホルターネックワンピースに、波をイメージしたシースルーのショール。くるくると緩い縦ロールのサイドテールを白いリボンで結び、ひまわりのリボン留め、足元もさわやかな水色のショートブーツ。実にさわやかな感じのパステルシアンの衣装だ。
 変身を終えた二人は、強く踏み切って化け物の居る場所まで跳んで移動していく。
 現場に到着すると、化け物は口元から水を吐きながら通行人を青く染め上げていっている。どうやらベースになっているのは、地上に顔を出した消火栓のようだ。
「モノ、トーンッ!」
 化け物は叫ぶと、再び水を勢いよく吐く。水に打たれて真っ青に染まった通行人たちが倒れている、本当に地獄絵図のような状態だ。
「やめなさいっ!」
 パステルシアンが叫ぶ。
「来たか、伝説の戦士ども」
 全身が青色の妖麗な女性が姿を見せる。
「あらやだ。ずいぶんとお子ちゃまなのね、伝説の戦士って」
 青色の女性はくすくすと笑っている。
「何がおかしい!」
 パステルピンクは右手の拳を握って怒鳴っている。それをパステルシアンが落ち着けようとしている。
「ふふっ、乱暴な言葉遣いのお子ちゃまじゃあ、あたしの敵じゃないわね。モノトーン、お任せするわ」
「モノトーンッ!」
 青色の女性は化け物に任せると、くるりと振り返る。すると、その隣の空間がぐにゃりと歪んだ。
「待てっ!」
「待てと言われて誰が待つというのかしら。あたしと戦いたければ、その子を倒す事ね。じゃあね、お子ちゃまたち」
 青色の女性はそうとだけ言い残すと、空間の歪みへと消えていった。
「くそっ、逃げられたか」
「パステルピンク。とりあえず、あの化け物をどうにかしましょう」
 パステルシアンに宥められて、パステルピンクは化け物を見る。
「そうだな。これ以上被害を広げられる前に倒しちまわないと」
 パステルピンクがぎりっと化け物を凝視すると、化け物が両手を合わせて、二人の方へと向けてきた。
「くるぞっ!」
「モノ、トーーンッ!!」
 化け物の両手から一斉に、水が強い勢いで飛び出してくる。いくら伝説の戦士といえど、あれをまともに食らえばひとたまりもない。というわけで、パステルピンクとパステルシアンは攻撃を避ける。化け物の攻撃はそのまままっすぐに通り抜けていき、そのまま霧散した。どうやら地上へは落下しないようである。
「モ、モノ……」
 一気に決めようとして出した大技を躱されて、化け物が動揺している。ならばと、二人は更に化け物の動揺を誘おうと動き回る事にした。
 パステルピンクとパステルシアンは、化け物の周りをぐるぐると回り始める。しかも、二人が重なるタイミングは狙いを絞らせないように、地上付近と空中との二か所に分かれる徹底ぶりである。
「モ、モ、モノーッ?!」
 思わぬ二人の行動に、化け物が混乱してきている。水の噴出口が3つもあるのだから、落ち着けば二人程度簡単に対処できるのに、この化け物の頭は思ったより悪いようだった。二人に振り回された挙句、目を回して化け物は、ズズーンという大きな音を立ててその場に倒れ込んだ。
「モ、モノ……」
 化け物から、力ない声が漏れた。
 だが、二人はまだ油断できないと、さらに追い打ちをかける。
「彩れ、春の息吹よ。咲き誇れ、命のつぼみ! グルーミング・フラワー・ガード!」
「弾ける海の息吹、注げ! パステル・オーシャン・シャワー!」
 パステルピンクは植物を生やして、化け物の手足を固定していく。
 パステルシアンは水を浴びせて、化け物の目を塞ぐ。
「おっと、まだ口が自由だったな」
 パステルピンクは追加で植物で口を塞いだ。
 これでもう化け物は攻撃どころか身動きは取れない。
「輝け、ぬくもりの色よ! 舞え、春風に乗せて! スプリング・カラフル・ストーム!」
「降り注げ、浄化の雨! パステル・サマー・スコール!」
 二人は落ち着いて必殺技を化け物に浴びせる。まったくもって容赦はなかった。
「モ、モ、モモモーンッ!!」
 口を塞がれた化け物は、なんとも情けない断末魔を上げて浄化されたのであった。
 こうして、化け物は浄化されて元の消火栓へと戻り、青く染め上げられた人たちも元の姿に戻り、何事もなかったように普段の生活へと戻ったのだった。
 しかし、今回現れた青色の女性は一体何だったのだろうか。パステルピンクたちの中には消化しきれない疑問が残ったのだった。
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