ひみつ探偵しおりちゃん

未羊

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第168話 クリスマスパーティー

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 2学期の終業式も終わり、いよいよ調部長主催によるクリスマスパーティーが行わる事となった。バーディアの財力が惜しげもなく投入されたわけではないものの、かなりいい会場が押さえられていたので、会場にやって来た栞たちは驚いていた。
「うわぁ……、予約の様子は後ろで見ていましたけど、こんないい会場押さえられたなんてすごいわね」
 やって来たのは、浦見市駅前にあるホテルにある会場だった。その中でもそこそこの広さがあるパーティールームだったので、口をあんぐりとさせているというわけである。
「ふふふっ、これでこそ世界規模の企業の娘の力を示せるというものです」
 調部長はにっこりと微笑んでいた。
「さあ、まずはドレスに着替えてしまいましょう。レンタルドレスも確保ができましたのでね」
「ふぇぇ……。ど、ドレスなんて初めて……」
 ぐいぐいと背中を押してくる調部長。さすがに庶民である栞たちには躊躇しかなかった。
「私もドレスを着るのは、実に3年ぶりなんですよ。最後に着たのは、まだアメリカに居た頃ですからね」
 当時を思い出しながら、おかしく笑う調部長である。
「カルディ、そちらは頼みましたよ」
「畏まりました、メロディ様」
 調部長に言われて、軽部副部長と勝の二人を連れて行くカルディ。それを見送ると、栞も調部長たちとドレスルームへと向かった。
 しばらくすると、しっかりとドレスに着替えた栞たちが出てくる。ちなみに着替えた制服は鍵付きのロッカーにしまってある。
「うふふ、久しぶりのドレスは緊張しますね」
 こうは言うものの、調部長はかなり余裕のある口ぶりである。さすがはバーディア一家の娘である。
 ところが、同じバーディア一家の詩音ことリリックの方は恥ずかしそうにしていた。
「あーはっはっはっはっ。どうだ、しおりん。全然似合ってないだろう?」
「いや、それを堂々と自分で言っちゃうの?」
 その後ろではわっけーが自信たっぷりに似合わないと言ってのけていた。
 わっけーは活発なイメージがどうしても先行するので、ドレスは似合わないという先入観があるのだろう。本人もそれを自覚しているという感じだった。しかし、オフショルダーのフレアミニというのは、意外と似合っていたものだから答えに困るというものだった。
「似合ってるよ、わっけー」
「うん、すごく似合ってる」
「はーっはっはっ、お世辞などいいぞ、まぁ、りぃ」
 真彩と理恵の褒め言葉を本気にしないわっけーである。どんな時もマイペースである。
 こんなやり取りを目の前で見せられた詩音は、ちょっと緊張がほぐれたようだった。
「本日は身内だけの小さなパーティーですから、緊張なんてしなくていいですよ。さあ、会場へ参りましょう」
「はい!」
 調部長が声を掛ければ、栞たちは元気に返事をしていたのだった。

 今回のクリスマスパーティーはホテルのパーティールームを一室貸し切りだったとはいえ、実質新聞部に保護者代わりのカルディを加えた打ち上げパーティーのようなものだった。
 最初こそ会場が会場ゆえに構えてしまった栞たちも、わいわいとしている間に完全に緊張はほぐれてしまっていた。
「くぅ、さすがはホテルの料理だ、うまいぞ!」
「ちょっと、わっけー。急いで食べすぎ。おいしいって言うのなら、もう少しゆっくり味わおうよ」
 緊張していようとほぐれていようと、わっけーはまったく変わらない模様。せっかくの高級料理と、まるでリスのように頬を膨らませながら料理を次々と口に放り込んでいた。その様子があまりにもおかしくて、真彩と一緒に居る詩音も楽しそうに笑っている。
 その光景が目に入った栞と調部長は、ついおかしくてつられて笑ってしまう。
 ちょっと離れたところでは、男三人が黙々としながら料理を味わっていた。
「くっ、俺はああいう雰囲気が苦手なんだよな」
「……分かる」
 どうにもわいわいとした女子の空間に飛び込んでいけないのであった。
「やれやれ、我が弟ながら情けないものだ」
「なんだよ、兄貴。なら、あの中に飛び込んでいけるというのか?」
「……私の仕事はメロディお嬢様を見守る事だ。余計な事はするものではないと思う」
 軽部副部長の質問に、カルディは淡々と答えていた。ただ、その言葉に軽部副部長と勝は何とも言えずに黙り込んでしまった。
「ただ、メロディ様についてきて正解だったな。すっかり、日本という国に対する認識が変わった気がする」
 カルディはそうとだけ呟くと、黙々と料理を食べていた。その姿を見ながら、勝と軽部副部長も料理を味わっていた。
 パーティールームの貸し切りは時間の許す限り、料理を食べたり歌を歌ったりと、思い思いに楽しんだようだった。

 2学期が終わった事により、このメンバーで確実に勢ぞろいできるのは残りは2か月半程度となった。
 このクリスマスパーティーでは、その間に築いてきたものを確認するかのように、栞たちは精一杯楽しんでいたのである。
 ほとんど着る事のないだろうドレスを身にまとって楽しんだこの日は、おそらく栞たちの記憶には深く刻まれた事だろう。
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