ひみつ探偵しおりちゃん

未羊

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第156話 今後の行方

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 悶々とした気持ちのまま、栞は学校へと登校していく。少し寝不足ではあったものの、登校中に事故るような愚かな事はしない栞である。
 学校へ着いて上履きに履き替えると、教室へと向かう。中に入ると真彩たちが居たので栞はいつも通りに挨拶を交わした。
「おはよう、みんな」
「おはよう、栞ちゃん」
「おはようだぞ、しおりん」
「おはようございます、栞ちゃん」
「……おはよう」
 それぞれから挨拶が返ってきた。当然ながらわっけーが一番うるさかった。
 一度学校にやってくれば、いつもの通りに元気になれた栞である。特にうるさいわっけーとのやり取りは、ずいぶんと気持ちが楽になったものである。
 普段はうるさくて煙たい存在であるわっけーだが、こういう気分の落ち込んだ時だと元気になれるのだ。
 給食を終えると、栞たちは示し合わせたかのように新聞部の部室へと向かった。
「失礼します」
 いつも通りノックをして中に入ると、そこにはやはり調部長と軽部副部長の二人が座っていた。
「ああ、高石さん。それとみなさんもご一緒で」
 調部長はいつも通りに気さくに迎えていた。軽部副部長は奥で相変わらずスマホを弄っている。ゲームをしていない姿はまず見た事がないくらいである。
 とりあえず、いつも通りゲームをし続ける軽部副部長は置いておいて、栞たちは部室の中の椅子に腰を掛ける。
 本来ならば部員ではないわっけーと理恵は追い出されるところだが、バリバリの関係者である以上、部室には無事に迎え入れられていた。
「それで、今日のお話は何でしょうか」
 調部長が切り出した。すると、それを受けてどういうわけか栞に視線が集中する。代表して話をしてというアピール他ならなかった。
 これには栞も仕方ないなとため息を吐き、調部長と向き合った。
「はっきり申しますと、今後の事についてですね」
「今後……ですか」
 栞の言葉に、腕を組む調部長である。
「まずは調部長たちですね。今年度末には中学を卒業してしまうのですから、今後をどうするかというのは常に頭にあるはずです」
 これには、調部長は少し首を捻っていた。これを見た栞は、まだ結論が出ていないのだろうと感じた。
 ところが、その直後に調部長はにっこりと微笑んだ。これには栞たちは驚いた。
「詩音、妹のリリックがせっかくこっちに来たのです。高校を卒業するまでは日本で過ごしますよ。これは私の両親にも報告済みです。ただ、その後はまだ具体的には決めていませんが、私はお父様の事業を引き継ぐ予定でいます」
 調部長ははっきりと言い切った。これには詩音が表情を明るくしていた。
「レオンを取り逃してしまいましたからね。捕まるまでは解決とは言えません。おめおめと帰るわけにはいかないのですよ」
 詩音の事もあるが、レオンの事もある。いろいろと苦慮した上での判断のようだった。
「私からも、高石さんにお聞きします。あなたは今後どうするおつもりなのですか?」
 調部長から逆に聞き返される栞である。
 これには栞は言葉を詰まらせてしまう。
 無理もない話だ。栞は本来は10個も年上なのだ。中学生をしている事自体がおかしな話である。
「あー、そっか。栞ちゃんって元々……」
「うむ、市役所の職員なのだ」
 ごまかそうとした真彩に対して、わっけーがドストレートにばらしてしまう。
「えっ、栞ちゃんって大人だったの?!」
 詳しく知らなかった理恵がもの凄く驚いていた。
「ごめんね、理恵ちゃん。私、本当は23歳なのよ。この通りにね」
 栞は常に持ち歩いている運転免許証を取り出して、理恵に見せた。そこの生年月日を確認する限り、確かに理恵たちよりはるかに年上であった。
「だますつもりはなかったのよ。全部うちの課長が悪いんだから」
 しかめっ面で言い放つ栞である。
 子どもに見えるからという理由だけで調査員に選ばれたのだから、そりゃまあ文句の一つや二つはあるわけである。なんといっても、この年で中学生の中に紛れるというのは恥ずかしいとしか言いようがないのだ。
 今でこそ慣れてしまってはいるが、最初のうちはただのコスプレとしか思っていなかったし、同僚の千夏には大笑いをされたくらいなのだから。ここにきて積もり積もった感情が爆発しているといっても過言ではない。
「しかし、どうなさるのです?」
「そうですね。市の方と相談して、早ければ年末には転校という形で出て行く事になりますね」
 調部長が確認すると、栞は今後の考えられる予定を全部話した。
 一つは最初に答えた通り、年末の時点で終了するパターン。
 別の一つは年度末、つまり3月末の時点で終了するパターン。
「まだあるという事は、つまり……」
「ええ、このまま中学を卒業してしまうパターンですね。調査を打ち切りにするなら、居る意味がないとは思いますし、何より学歴に中学校卒業が2回出てくる事になるので面倒なんですよ」
 栞はため息を吐きながら、最後のパターンを説明した。
「そうだよね。私たち調査員の元々の目的は、草利中学校の噂の真相を解き明かす事だもの。今回の事で解決してしまえば、解散というのが普通の考え方よね」
 真彩も調査員であるがために、すぐにそれを理解したのだった。
 ひとまずは解決しそうになっている草利中学校の噂ではあるものの、それはまた別の問題を発生させていたのだった。
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