151 / 182
第151話 月曜日の学校にて
しおりを挟む
週が明けて月曜日になる。栞たちはいつも通りに学校へと登校する。
学校までは無事に到着できたので、レオンたちに動きはないようだった。
「おはようだぞ、しおりん」
「おはよう、栞ちゃん」
学校に到着すると、わっけーと理恵が挨拶をしてくる。
「おはよう、わっけー、理恵ちゃん」
とりあえずはこっちも影響なしの模様。その姿に栞は安心していた。
「おはよう、栞ちゃん。……どうしたの?」
真彩も現れるが、栞たちの様子を見て、不思議そうな顔をして見ている。どうやら真彩の目には、ちょっと変わった様子に見えたようだった。
栞たちはなるべく普段通りにしていたはずなのだが、こうやって勘付いてしまうあたり、さすがは警察官の娘といったところである。
「どうしたって、どこか変だった?」
栞はきょとんとして真彩に尋ね返す。栞の尋ね返しが意外だったのか、真彩はおろおろとし出してしまった。予想外の行動に戸惑う姿がおかしかったのか、栞とわっけーがついつい笑い出してしまった。
「もう、何よ二人とも!」
あまりに笑ってくるものだから、真彩は不機嫌そうに怒っている。
「はは、ごめんごめん」
「まぁ、そう怒るななのだ」
笑いながら真彩を宥めようとする栞とわっけー。だが、しばらくの間、真彩の不機嫌は治まらなかったのだった。
昼休み、栞たちは全員揃って新聞部の部室へと向かう。理恵に関しては置いていこうかとも考えたのだったが、さすがに一人仲間外れにするわけにはいかないし、ここまでの状況になった以上は知っておいてもらった方がいいだろうという判断になったのだった。なにせ理恵も被害者なのだから。
新聞部の部室に顔を出すと、いつも通り調部長と軽部副部長の姿があった。
「あら、みなさん。お揃いですのね」
調部長がにこやかに挨拶をしてくる。しかし、今回は理恵が加わっていた姿を見て、ちょっと表情を曇らせる調部長である。
「そうですか、彼女がレオン・アトゥールの娘ですか」
話を聞いた調部長が、理恵を見ながら話をしている。調部長から何かを感じ取っているのか、理恵は縮こまった状態で椅子に座っている。
「さて、それはさておき、何の話でしょうかね、高石さん」
調部長は栞に対して話を振ってくる。昼休みは短いので、栞は手短に話を済ませようと、頭の中で整理しながら調部長に話をし始める。
さすがに自分が別の方向からの対策を考えている最中に、そんな捕り物劇が繰り広げられているとは知らなかったために、調部長の驚きはすさまじいものだった。
だが、それと同時に頭を抱えてもいた。
一番の原因は、レオンを取り逃がした事だった。執念深いレオンなのだから、たとえ海外に行ったとしても執拗に報復を仕掛けてくる可能性だって考えられたのだ。そうなってしまえば、今までの比にならないくらいにその身に危険が及んでしまう。まったく望ましくない事態なのである。
考え込む調部長だったが、その空気を変えたのはわっけーだった。
「心配要らないぞ。あたしがそこまで間抜けな事をやらかすわけがないのだ」
やけに自信たっぷりである。
「どういう事なのですか?」
当然の事ながら、調部長はわっけーを問い質すように声を掛ける。
「おとといは確かに逃げられたのだけど、あたしはちゃんと対策を立てておいたのだ。逃げられる事も最初から考えておいたのだから、当然なのだ」
話が見えてこない。一体わっけーは何を言っているのだろうか。
「この場で見せられないのは残念だけど、警察の方では今も追跡していると思うのだ」
「追跡?」
わっけーの言葉に首を傾げる栞たち。
「そうなのだ。あの時、あたしがこっそりと発信機を仕掛けておいたのだ。突っ込んできたトラックと、りぃぱぱ、レオンの靴の2か所にな」
栞や調部長たちが驚いている。特に現場に居た栞は驚きがひとしおだ。いつの間にそんな事をしていたのか、まったく気が付かなかったのである。
「うそでしょ? いつの間にそんな事をしていたのよ」
「はっはっはっ。このわっけー様を甘く見るでないぞ」
両手を腰に当てて笑うわっけーである。自慢げだというのに、この時ばかりは驚きの感情しか出てこない面々である。
「レオンの顔に関しては全国の空港に出回ったと思うし、簡単に逃がしてなるものか、なのだ。わーっはっはっはっ!」
まったく、わっけーの執念はすさまじいものだった。
「わっけー、ごめんね。お父さんのせいで……」
「りぃは悪くないのだから、謝る必要はないぞ。りぃは親友だからな、あたしは許す」
「わっけー……」
わっけーの態度に、理恵はつい泣き出してしまう。ただただ嬉しいのである。
だが、いきなり理恵が泣き出した事にわっけーが取り乱していた。他人の感情に関しては、いまいち鈍いわっけーなのである。
「脇田さん、その発信機に関して、見せて頂く事はできますか?」
「もちろん大丈夫だぞ。放課後、家に来てくれたら見せるのだ」
「分かりました。軽部副部長、カルディに連絡を」
「分かったよ」
調部長に言われて、渋々従う軽部副部長。
こうして、放課後にわっけーの家を訪れる事になった新聞部の面々なのであった。
学校までは無事に到着できたので、レオンたちに動きはないようだった。
「おはようだぞ、しおりん」
「おはよう、栞ちゃん」
学校に到着すると、わっけーと理恵が挨拶をしてくる。
「おはよう、わっけー、理恵ちゃん」
とりあえずはこっちも影響なしの模様。その姿に栞は安心していた。
「おはよう、栞ちゃん。……どうしたの?」
真彩も現れるが、栞たちの様子を見て、不思議そうな顔をして見ている。どうやら真彩の目には、ちょっと変わった様子に見えたようだった。
栞たちはなるべく普段通りにしていたはずなのだが、こうやって勘付いてしまうあたり、さすがは警察官の娘といったところである。
「どうしたって、どこか変だった?」
栞はきょとんとして真彩に尋ね返す。栞の尋ね返しが意外だったのか、真彩はおろおろとし出してしまった。予想外の行動に戸惑う姿がおかしかったのか、栞とわっけーがついつい笑い出してしまった。
「もう、何よ二人とも!」
あまりに笑ってくるものだから、真彩は不機嫌そうに怒っている。
「はは、ごめんごめん」
「まぁ、そう怒るななのだ」
笑いながら真彩を宥めようとする栞とわっけー。だが、しばらくの間、真彩の不機嫌は治まらなかったのだった。
昼休み、栞たちは全員揃って新聞部の部室へと向かう。理恵に関しては置いていこうかとも考えたのだったが、さすがに一人仲間外れにするわけにはいかないし、ここまでの状況になった以上は知っておいてもらった方がいいだろうという判断になったのだった。なにせ理恵も被害者なのだから。
新聞部の部室に顔を出すと、いつも通り調部長と軽部副部長の姿があった。
「あら、みなさん。お揃いですのね」
調部長がにこやかに挨拶をしてくる。しかし、今回は理恵が加わっていた姿を見て、ちょっと表情を曇らせる調部長である。
「そうですか、彼女がレオン・アトゥールの娘ですか」
話を聞いた調部長が、理恵を見ながら話をしている。調部長から何かを感じ取っているのか、理恵は縮こまった状態で椅子に座っている。
「さて、それはさておき、何の話でしょうかね、高石さん」
調部長は栞に対して話を振ってくる。昼休みは短いので、栞は手短に話を済ませようと、頭の中で整理しながら調部長に話をし始める。
さすがに自分が別の方向からの対策を考えている最中に、そんな捕り物劇が繰り広げられているとは知らなかったために、調部長の驚きはすさまじいものだった。
だが、それと同時に頭を抱えてもいた。
一番の原因は、レオンを取り逃がした事だった。執念深いレオンなのだから、たとえ海外に行ったとしても執拗に報復を仕掛けてくる可能性だって考えられたのだ。そうなってしまえば、今までの比にならないくらいにその身に危険が及んでしまう。まったく望ましくない事態なのである。
考え込む調部長だったが、その空気を変えたのはわっけーだった。
「心配要らないぞ。あたしがそこまで間抜けな事をやらかすわけがないのだ」
やけに自信たっぷりである。
「どういう事なのですか?」
当然の事ながら、調部長はわっけーを問い質すように声を掛ける。
「おとといは確かに逃げられたのだけど、あたしはちゃんと対策を立てておいたのだ。逃げられる事も最初から考えておいたのだから、当然なのだ」
話が見えてこない。一体わっけーは何を言っているのだろうか。
「この場で見せられないのは残念だけど、警察の方では今も追跡していると思うのだ」
「追跡?」
わっけーの言葉に首を傾げる栞たち。
「そうなのだ。あの時、あたしがこっそりと発信機を仕掛けておいたのだ。突っ込んできたトラックと、りぃぱぱ、レオンの靴の2か所にな」
栞や調部長たちが驚いている。特に現場に居た栞は驚きがひとしおだ。いつの間にそんな事をしていたのか、まったく気が付かなかったのである。
「うそでしょ? いつの間にそんな事をしていたのよ」
「はっはっはっ。このわっけー様を甘く見るでないぞ」
両手を腰に当てて笑うわっけーである。自慢げだというのに、この時ばかりは驚きの感情しか出てこない面々である。
「レオンの顔に関しては全国の空港に出回ったと思うし、簡単に逃がしてなるものか、なのだ。わーっはっはっはっ!」
まったく、わっけーの執念はすさまじいものだった。
「わっけー、ごめんね。お父さんのせいで……」
「りぃは悪くないのだから、謝る必要はないぞ。りぃは親友だからな、あたしは許す」
「わっけー……」
わっけーの態度に、理恵はつい泣き出してしまう。ただただ嬉しいのである。
だが、いきなり理恵が泣き出した事にわっけーが取り乱していた。他人の感情に関しては、いまいち鈍いわっけーなのである。
「脇田さん、その発信機に関して、見せて頂く事はできますか?」
「もちろん大丈夫だぞ。放課後、家に来てくれたら見せるのだ」
「分かりました。軽部副部長、カルディに連絡を」
「分かったよ」
調部長に言われて、渋々従う軽部副部長。
こうして、放課後にわっけーの家を訪れる事になった新聞部の面々なのであった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
閻魔様のほっこりご飯~冥土で癒しの料理を作ります~
小花はな
キャラ文芸
――ここは冥土。天国と地獄の間。
気がついたらそこで閻魔様の裁判を受けていていた桃花は、急速に感じた空腹に耐えかね、あろうことか閻魔様のご飯を食べてしまう!
けれど怒られるどころか、美形の閻魔様に気に入られた上に、なぜか彼の宮殿で暮らすことになって……?
〝わたしは昔、あなたに会ったことがあるんですか?〟
これは記憶のない少女が過去を思い出しつつ、ご飯が食べられないワーカーホリックな閻魔様や家来の小鬼たちを餌付けしていく、ほのぼのグルメラブストーリー。
お品書きは全九品+デザート一品、是非ご賞味ください。
※本作はキャラ文芸大賞に参加しております。どうぞよろしくお願いします!
太陽と月の終わらない恋の歌
泉野ジュール
キャラ文芸
ルザーンの街には怪盗がいる──
『黒の怪盗』と呼ばれる義賊は、商業都市ルザーンにはびこる悪人を狙うことで有名だった。
夜な夜な悪を狩り、盗んだ財産を貧しい家に届けるといわれる黒の怪盗は、ルザーンの光であり、影だ。しかし彼の正体を知るものはどこにもいない。
ただひとり、若き富豪ダヴィッド・サイデンに拾われた少女・マノンをのぞいては……。
夜を駆ける義賊と、彼に拾われた少女の、禁断の年の差純愛活劇!
"わたし"が死んで、"私"が生まれた日。
青花美来
ライト文芸
目が覚めたら、病院のベッドの上だった。
大怪我を負っていた私は、その時全ての記憶を失っていた。
私はどうしてこんな怪我をしているのだろう。
私は一体、どんな人生を歩んできたのだろう。
忘れたままなんて、怖いから。
それがどんなに辛い記憶だったとしても、全てを思い出したい。
第5回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。
魔法通りの魔法を使わない時計屋さん
新城かいり
キャラ文芸
魔法通り商店街の一角に、その小さな時計屋はあった。
『リリカ・ウェルガー時計店』
通称「魔法通りの魔法を使わない時計屋さん」。
店主の魔女《リリカ・ウェルガー》は使い魔のハチワレ猫《ピゲ》とその時計屋を静かに営んでいた。
そんな変わった時計屋にある日訪れた美形の男性客。
「是非君に修理を頼みたいんだ。その時計には魔法が掛かっているみたいでね」
「お引き取りください」
《変わり者の魔女》と《謎の金髪美青年》の、運命の出逢いの物語。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
宝石ランチを召し上がれ~子犬のマスターは、今日も素敵な時間を振る舞う~
櫛田こころ
キャラ文芸
久乃木柘榴(くのぎ ざくろ)の手元には、少し変わった形見がある。
小学六年のときに、病死した母の実家に伝わるおとぎ話。しゃべる犬と変わった人形が『宝石のご飯』を作って、お客さんのお悩みを解決していく喫茶店のお話。代々伝わるという、そのおとぎ話をもとに。柘榴は母と最後の自由研究で『絵本』を作成した。それが、少し変わった母の形見だ。
それを大切にしながら過ごし、高校生まで進級はしたが。母の喪失感をずっと抱えながら生きていくのがどこか辛かった。
父との関係も、交友も希薄になりがち。改善しようと思うと、母との思い出をきっかけに『終わる関係』へと行き着いてしまう。
それでも前を向こうと思ったのか、育った地元に赴き、母と過ごした病院に向かってみたのだが。
建物は病院どころかこじんまりとした喫茶店。中に居たのは、中年男性の声で話すトイプードルが柘榴を優しく出迎えてくれた。
さらに、柘榴がいつのまにか持っていた変わった形の石の正体のせいで。柘榴自身が『死人』であることが判明。
本の中の世界ではなく、現在とずれた空間にあるお悩み相談も兼ねた喫茶店の存在。
死人から生き返れるかを依頼した主人公・柘榴が人外と人間との絆を紡いでいくほっこりストーリー。
あやかし観光専属絵師
紺青くじら
キャラ文芸
アルバイトで生計を立てるタカヒロは、公園で出会った美しい男ヤイに技量を認められ、彼の元で絵師として働く事となる。ヤイの営む店は、妖怪相手の旅行会社。彼らは写真にうつれない為、タカヒロが描くことで思い出を残す。
はじめは戸惑うタカヒロだが、妖怪との交流を通して、自分がしたい事に向き合っていく。だが事態は、思わぬ方向に進んでいきー…!
物語は序盤はヤイたちとのあやかし観光での仕事と、バイト先のイタリアンレストランを舞台にした物語それぞれ別に進行していきます。新しく来たアルバイトの女の子ツバキは何者なのかー…!?
楽しんで頂けたら幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる