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第146話 決戦は土曜日?!
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翌日の朝、校長の元に電話がかかってきた。
「ずいぶん朝からだな。で、どうなったんだ、水崎」
『あまりゆっくりしてられないと思ってな。もう今夜にでも仕掛けてやりたいと思う』
電話の主は水崎警部だった。だが、内容はあまりにもいいものではなかった。どうやら、いよいよ仕掛けるつもりという事らしい。
「それは急な話だな。人員は用意できるのか?」
『相手の規模は分からないが、あの狭い部屋だ。あちらさんだってそう多くは用意できないだろう?』
「まあ、そうだな。だが、相手にはレオンが居る。10人くらいなら楽に突破してくるぞ?」
水崎警部の少し楽観的な見通しに、校長は淡々と返す。すると、水崎警部はしばらく黙ってしまった。
「お前が黙り込むのはよく分かる。こっちだって義人を送り込むんだ。うまく戦力的には相殺できるさ」
校長がこのように声を掛けると、水崎警部はちょっと安心したかのような様子だった。電話越しに息づかいが丸分かりである。
「義人から連絡を入れさせれば、あいつは必ず現れる。短時間だが私もちゃんと準備をしておこう。言い出しっぺだ、ぬかるなよ?」
『分かった。できる限り装備を充実させて乗り込ませてもらうよ』
水崎警部はそう言うと、ぷつりと電話を切った。
電話を終えた校長は、椅子に座り込んで天井を見上げながらため息を吐く。
「いよいよか……。こいつが片付けば、やっと四方津組の幻影から、逃げ切れる……はずだ」
視線を落とした校長は、部屋の一角に視線を向ける。
「あれから10年。すべてが片付いたら、迎えに行くべきだな……」
そう呟いた校長の視界には、1枚の写真が収められた写真立てが置かれていたのだった。そこには、若かりし頃の校長と女性と小さな子どもが写っていた。
そして、一度目を閉じた校長。再びを目を開けると、立ち上がって学校に出勤する準備を始めたのだった。
午前中は学校の授業が行われて、普段通りに時間が過ぎていく。土曜日だったがために、午前中が終われば下校なのだが、その時、栞は真彩に声を掛けていた。
「ねえ、まあちゃん。どうしたの、なんか変だけど」
栞は真彩の様子に異変を感じていた。だけど、真彩は、
「何でもないよ。一体どうしたっていうの、栞ちゃん」
笑ってごまかしていた。
「まぁ、嘘はよくないぞ」
「うん、正直に話してほしい」
ところが、わっけーと詩音も真彩に詰め寄っていた。これについていけないのは理恵だけだった。みんなの予想外な反応に、真彩も困惑を隠しきれなかった。
「うぅ、一体どうしたのよみんな……」
一歩退く真彩を、栞ががっしりと両肩を掴んで逃がさない。
「何か心配そうな顔をしてたから、気になるのよ。話してくれる?」
あまりに栞が真剣な表情で見てくるものだから、真彩は観念したようだった。
「うん、お父さんの様子が、今日はおかしかったなって。でも、それだけだよ」
「そっか、水崎警部の様子が……ね。……わっけー」
「おう、任せろしおりん」
何を任せろか分からないが、危険な感じがした栞はわっけーを止める。
「なんでだよ、しおりん!」
「違う、そうじゃない。あとで警察署行くわよ」
「お、おう」
怒鳴るわっけーに、栞はぼそぼそと話し掛けた。だが、わっけーも何かに勘付いたらしく、これにはおとなしく従ったようだった。
「それじゃ、今日は下校しましょう。部活は休むわ」
栞がこう言って教室を出ていくので、真彩たちはその後ろ姿を黙って見送っていた。
約2時間後、栞とわっけーは揃って浦見市警察署にやって来ていた。ちゃんとお昼ごはんを済ませてきてからなので、こんな時間になったのである。
わっけーは相変わらずのスポーティーな服装なのだが、栞もまたアクティブな服装になっていた。
「しおりんのそういう格好、珍しいな!」
わっけーが驚くくらいだった。
「今回の件を考えたらね、さすがにスカートはまずいでしょ」
「あー、それは分かる」
栞の言い分にあっさり納得がいってしまうわっけーである。
ちなみに今の栞の服装はウィッグを外してハンチング、ピッタリめの長袖にキャミソール、ハーフパンツにタイツとブーツという組み合わせである。ひらひらはほとんどなく、体にフィットした服装になっていた。
……ちなみに栞は23歳である。
「しおりんって、実は髪の毛短かったんだな」
「まあね。潜入捜査って事もあって、私と分かっちゃいけないからね。髪色も長さも違うから、簡単には分かんないでしょ」
「そっかなー? あたしはすぐに分かったぞ」
栞のごちゃごちゃした理由を一蹴してみせるわっけーである。これには、栞も絶句するばかりだった。
「こほん、とりあえず、水崎警部に掛け合うわよ。私たちも作戦に参加よ」
「おーっ!」
意気込んで警察署の中へと入っていく栞とわっけー。
話の内容からすると、水崎警部が立てている作戦に参加するような雰囲気である。
もちろん、この二人はそんな作戦の事も決行日時も知らない。ただ、娘である真彩の様子がおかしいというだけで、当たりをつけに行ったのだ。
はてさて、水崎警部と校長が仕掛けようとしている対レオン最終決戦。栞とわっけーはこれに絡むつもりだが、はたしてそううまくいくものだろうか。
「ずいぶん朝からだな。で、どうなったんだ、水崎」
『あまりゆっくりしてられないと思ってな。もう今夜にでも仕掛けてやりたいと思う』
電話の主は水崎警部だった。だが、内容はあまりにもいいものではなかった。どうやら、いよいよ仕掛けるつもりという事らしい。
「それは急な話だな。人員は用意できるのか?」
『相手の規模は分からないが、あの狭い部屋だ。あちらさんだってそう多くは用意できないだろう?』
「まあ、そうだな。だが、相手にはレオンが居る。10人くらいなら楽に突破してくるぞ?」
水崎警部の少し楽観的な見通しに、校長は淡々と返す。すると、水崎警部はしばらく黙ってしまった。
「お前が黙り込むのはよく分かる。こっちだって義人を送り込むんだ。うまく戦力的には相殺できるさ」
校長がこのように声を掛けると、水崎警部はちょっと安心したかのような様子だった。電話越しに息づかいが丸分かりである。
「義人から連絡を入れさせれば、あいつは必ず現れる。短時間だが私もちゃんと準備をしておこう。言い出しっぺだ、ぬかるなよ?」
『分かった。できる限り装備を充実させて乗り込ませてもらうよ』
水崎警部はそう言うと、ぷつりと電話を切った。
電話を終えた校長は、椅子に座り込んで天井を見上げながらため息を吐く。
「いよいよか……。こいつが片付けば、やっと四方津組の幻影から、逃げ切れる……はずだ」
視線を落とした校長は、部屋の一角に視線を向ける。
「あれから10年。すべてが片付いたら、迎えに行くべきだな……」
そう呟いた校長の視界には、1枚の写真が収められた写真立てが置かれていたのだった。そこには、若かりし頃の校長と女性と小さな子どもが写っていた。
そして、一度目を閉じた校長。再びを目を開けると、立ち上がって学校に出勤する準備を始めたのだった。
午前中は学校の授業が行われて、普段通りに時間が過ぎていく。土曜日だったがために、午前中が終われば下校なのだが、その時、栞は真彩に声を掛けていた。
「ねえ、まあちゃん。どうしたの、なんか変だけど」
栞は真彩の様子に異変を感じていた。だけど、真彩は、
「何でもないよ。一体どうしたっていうの、栞ちゃん」
笑ってごまかしていた。
「まぁ、嘘はよくないぞ」
「うん、正直に話してほしい」
ところが、わっけーと詩音も真彩に詰め寄っていた。これについていけないのは理恵だけだった。みんなの予想外な反応に、真彩も困惑を隠しきれなかった。
「うぅ、一体どうしたのよみんな……」
一歩退く真彩を、栞ががっしりと両肩を掴んで逃がさない。
「何か心配そうな顔をしてたから、気になるのよ。話してくれる?」
あまりに栞が真剣な表情で見てくるものだから、真彩は観念したようだった。
「うん、お父さんの様子が、今日はおかしかったなって。でも、それだけだよ」
「そっか、水崎警部の様子が……ね。……わっけー」
「おう、任せろしおりん」
何を任せろか分からないが、危険な感じがした栞はわっけーを止める。
「なんでだよ、しおりん!」
「違う、そうじゃない。あとで警察署行くわよ」
「お、おう」
怒鳴るわっけーに、栞はぼそぼそと話し掛けた。だが、わっけーも何かに勘付いたらしく、これにはおとなしく従ったようだった。
「それじゃ、今日は下校しましょう。部活は休むわ」
栞がこう言って教室を出ていくので、真彩たちはその後ろ姿を黙って見送っていた。
約2時間後、栞とわっけーは揃って浦見市警察署にやって来ていた。ちゃんとお昼ごはんを済ませてきてからなので、こんな時間になったのである。
わっけーは相変わらずのスポーティーな服装なのだが、栞もまたアクティブな服装になっていた。
「しおりんのそういう格好、珍しいな!」
わっけーが驚くくらいだった。
「今回の件を考えたらね、さすがにスカートはまずいでしょ」
「あー、それは分かる」
栞の言い分にあっさり納得がいってしまうわっけーである。
ちなみに今の栞の服装はウィッグを外してハンチング、ピッタリめの長袖にキャミソール、ハーフパンツにタイツとブーツという組み合わせである。ひらひらはほとんどなく、体にフィットした服装になっていた。
……ちなみに栞は23歳である。
「しおりんって、実は髪の毛短かったんだな」
「まあね。潜入捜査って事もあって、私と分かっちゃいけないからね。髪色も長さも違うから、簡単には分かんないでしょ」
「そっかなー? あたしはすぐに分かったぞ」
栞のごちゃごちゃした理由を一蹴してみせるわっけーである。これには、栞も絶句するばかりだった。
「こほん、とりあえず、水崎警部に掛け合うわよ。私たちも作戦に参加よ」
「おーっ!」
意気込んで警察署の中へと入っていく栞とわっけー。
話の内容からすると、水崎警部が立てている作戦に参加するような雰囲気である。
もちろん、この二人はそんな作戦の事も決行日時も知らない。ただ、娘である真彩の様子がおかしいというだけで、当たりをつけに行ったのだ。
はてさて、水崎警部と校長が仕掛けようとしている対レオン最終決戦。栞とわっけーはこれに絡むつもりだが、はたしてそううまくいくものだろうか。
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