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第135話 時間との戦い
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レオンが次なる行動へと出ようとしている頃、栞たちは最終決戦の準備を次々と進めていた。
そんな中、校長は水崎警部と一緒に教頭の様子を確認しに、教頭が入院している病院へとやって来ていた。
麻薬中毒の症状が出ているためにベッドに括りつけられている教頭の姿は、なんとも痛々しいものである。こうでもしておかないと幻覚症状によって暴れまわるのだから仕方がない。縛り付けておかないと点滴を打つ事も出来ないのである。
いかんせん、この教頭は草利中学校にまつわる噂を解決する上で重要人物である以上、死なせるわけにはいかないのだ。なので、この有り様になっているというわけである。
「まったく、これでも組の中では真面目な奴だったんだけどね。組を解体した事で、それまであった精神的支えを失ってしまったのかも知れないな」
教頭の見るに堪えない姿に、校長はため息まじりに呟いていた。
「それにしても、こんなになるまで麻薬に溺れていたとはな……。いつになったら話が聞けるんだ」
水崎警部はもう諦めがついたような口調だった。
「まあそうだな、水崎。だが、そう悠長な事を言っていられる事態ではなくなってきたようだ」
「と言いますと?」
落ち込む水崎警部に校長が話し掛ける。
「レオンに動きがあるような感じだな。このままなら高飛びが考えられる。危険を察知する能力は高いからな。国外に逃げれば時効のカウントが止まるとはいえ、逃げられればいろいろな事が闇に葬り去られる。それはできれば阻止したい」
水崎警部は驚いていた。一体校長はどこからそんな情報を仕入れてくるのだろうか。
だが、こういう情報があるとはいえ、明確が疑義がない。これでは逮捕状はもちろんだが、家宅捜索に乗り出すのも無理がある。だからこそ、レオン本人をどうにか押さえたいところだった。
もし、校長の言う通りに海外に飛び出してしまえば、その間は手出しができなくなってしまいかねない。水崎警部をは焦りを感じた。
「こうなったら弟を思ったが、あいつの事だ、きっと弟を消しに来るだろうな。こうなるといよいよ手立てが無くなる」
校長の顔が曇る。
「うーむ、これはもう時間の問題といったところか。恵子くんからの依頼も進めてはいるが、雲を掴むような状態で困ったものだ……」
「うん? なんだその依頼というのは」
水崎警部のこぼした言葉に校長が反応する。
「ああ、人探しを頼まれたんですよ」
「ちょっと詳しく聞かせてもらおうか」
「ええ、まあ。あなたが相手でしたら……」
校長の圧に、水崎警部はたじたじである。やむなく、水崎警部は教頭の耳に入らない位置で校長にその事を話した。
「……遅かったか。犠牲者が出ているとはな。これは本気で急いだ方がいいな」
「こ、校長?」
爪を噛むような仕草をする校長の姿に、水崎警部は戸惑いが隠せなかった。
「悪いな、今日はこれで失礼する。詳しい日程が決まったらまた連絡するよ」
「は、はい。分かりました」
水崎警部は押されるような形で校長が病室を出ていく姿を見守る事しかできなかった。一体校長はどうしたというのだろうか。考えても分からなかった水崎警部は、少し遅れて病室を出ていった。
同じ頃、わっけーは自分の部屋で何やら作業をしていた。
「ふんふんふーん~♪」
鼻歌を歌いながら手元でしている作業は、何かを組み立てる作業のようだった。
「よし、できたのだ」
そう叫んだわっけーの手元には何やら機械のようなものが置かれていた。完成させた機械にはプロペラのようなものがついている。
「市販品とはいえ、改造するのは楽しいのだ。これであそこに近付かなくても調査ができるぞ」
わっけーが弄っていたのは、どうやら遠隔操作の飛行機械のようだ。それにカメラなどを取り付けたようである。
「パソコンで制御できるように改造するのは大変だったけど、その分操作距離が伸びたのだ。WIFI様様なのだ」
なんとまあ、とんでもない改造を施したものである。
「とりあえずは稼働実験をしなければならないのだ。ちゃんと不具合なく動くかどうかが問題なのだ」
わっけーはそう言って、むんと気合いを入れていた。
そして、その日の夜中にわっけーは実験を試みる。こっそりと部屋の窓を開け、そこから飛行機械をパソコンで操作して飛ばすのだ。プロペラを回す以上は多少の騒音は仕方がない。
普通、この手のものは室内での使用はしないものだ。だが、今回はこっそりと実験という事で室内で稼働させている。操作用の自作ソフトを起動させて操作を始めるわっけー。真剣な表情で細やかな操作を行っている。何と言っても部屋の中で起動させているので、壁やら天井やらぶつけてしまっては大変だからだ。
マウスとキーボードで慎重に操作する。上昇に下降、前進に後退、右旋回に左旋回、すべてがうまくいっている。そして、窓から外へ出し、モニタに映るカメラの画像から操作を続けるわっけー。この試験飛行は実に2時間にも及んだのだった。
「ほぼ1日即興で組んだプログラムだったけど、無事に動いて安心したのだ。バッテリーの消耗も思ったより少ないし、これならいけそうなのだ」
確かな手応えを感じたわっけーである。
そんな中、校長は水崎警部と一緒に教頭の様子を確認しに、教頭が入院している病院へとやって来ていた。
麻薬中毒の症状が出ているためにベッドに括りつけられている教頭の姿は、なんとも痛々しいものである。こうでもしておかないと幻覚症状によって暴れまわるのだから仕方がない。縛り付けておかないと点滴を打つ事も出来ないのである。
いかんせん、この教頭は草利中学校にまつわる噂を解決する上で重要人物である以上、死なせるわけにはいかないのだ。なので、この有り様になっているというわけである。
「まったく、これでも組の中では真面目な奴だったんだけどね。組を解体した事で、それまであった精神的支えを失ってしまったのかも知れないな」
教頭の見るに堪えない姿に、校長はため息まじりに呟いていた。
「それにしても、こんなになるまで麻薬に溺れていたとはな……。いつになったら話が聞けるんだ」
水崎警部はもう諦めがついたような口調だった。
「まあそうだな、水崎。だが、そう悠長な事を言っていられる事態ではなくなってきたようだ」
「と言いますと?」
落ち込む水崎警部に校長が話し掛ける。
「レオンに動きがあるような感じだな。このままなら高飛びが考えられる。危険を察知する能力は高いからな。国外に逃げれば時効のカウントが止まるとはいえ、逃げられればいろいろな事が闇に葬り去られる。それはできれば阻止したい」
水崎警部は驚いていた。一体校長はどこからそんな情報を仕入れてくるのだろうか。
だが、こういう情報があるとはいえ、明確が疑義がない。これでは逮捕状はもちろんだが、家宅捜索に乗り出すのも無理がある。だからこそ、レオン本人をどうにか押さえたいところだった。
もし、校長の言う通りに海外に飛び出してしまえば、その間は手出しができなくなってしまいかねない。水崎警部をは焦りを感じた。
「こうなったら弟を思ったが、あいつの事だ、きっと弟を消しに来るだろうな。こうなるといよいよ手立てが無くなる」
校長の顔が曇る。
「うーむ、これはもう時間の問題といったところか。恵子くんからの依頼も進めてはいるが、雲を掴むような状態で困ったものだ……」
「うん? なんだその依頼というのは」
水崎警部のこぼした言葉に校長が反応する。
「ああ、人探しを頼まれたんですよ」
「ちょっと詳しく聞かせてもらおうか」
「ええ、まあ。あなたが相手でしたら……」
校長の圧に、水崎警部はたじたじである。やむなく、水崎警部は教頭の耳に入らない位置で校長にその事を話した。
「……遅かったか。犠牲者が出ているとはな。これは本気で急いだ方がいいな」
「こ、校長?」
爪を噛むような仕草をする校長の姿に、水崎警部は戸惑いが隠せなかった。
「悪いな、今日はこれで失礼する。詳しい日程が決まったらまた連絡するよ」
「は、はい。分かりました」
水崎警部は押されるような形で校長が病室を出ていく姿を見守る事しかできなかった。一体校長はどうしたというのだろうか。考えても分からなかった水崎警部は、少し遅れて病室を出ていった。
同じ頃、わっけーは自分の部屋で何やら作業をしていた。
「ふんふんふーん~♪」
鼻歌を歌いながら手元でしている作業は、何かを組み立てる作業のようだった。
「よし、できたのだ」
そう叫んだわっけーの手元には何やら機械のようなものが置かれていた。完成させた機械にはプロペラのようなものがついている。
「市販品とはいえ、改造するのは楽しいのだ。これであそこに近付かなくても調査ができるぞ」
わっけーが弄っていたのは、どうやら遠隔操作の飛行機械のようだ。それにカメラなどを取り付けたようである。
「パソコンで制御できるように改造するのは大変だったけど、その分操作距離が伸びたのだ。WIFI様様なのだ」
なんとまあ、とんでもない改造を施したものである。
「とりあえずは稼働実験をしなければならないのだ。ちゃんと不具合なく動くかどうかが問題なのだ」
わっけーはそう言って、むんと気合いを入れていた。
そして、その日の夜中にわっけーは実験を試みる。こっそりと部屋の窓を開け、そこから飛行機械をパソコンで操作して飛ばすのだ。プロペラを回す以上は多少の騒音は仕方がない。
普通、この手のものは室内での使用はしないものだ。だが、今回はこっそりと実験という事で室内で稼働させている。操作用の自作ソフトを起動させて操作を始めるわっけー。真剣な表情で細やかな操作を行っている。何と言っても部屋の中で起動させているので、壁やら天井やらぶつけてしまっては大変だからだ。
マウスとキーボードで慎重に操作する。上昇に下降、前進に後退、右旋回に左旋回、すべてがうまくいっている。そして、窓から外へ出し、モニタに映るカメラの画像から操作を続けるわっけー。この試験飛行は実に2時間にも及んだのだった。
「ほぼ1日即興で組んだプログラムだったけど、無事に動いて安心したのだ。バッテリーの消耗も思ったより少ないし、これならいけそうなのだ」
確かな手応えを感じたわっけーである。
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