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第133話 廃工場への対応は
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わっけーの活躍で判明した郊外の廃工場。どうやら会長の話によると、そこは会長の親戚が経営していた工場だったらしい。表向きは板金工場だったらしいが、その裏では四方津組向けの裏家業をしていたとの事だった。隠し倉庫などを備えており、四方津組の武器庫として稼働していたらしいのだ。
これには栞とわっけーは驚いていた。自分の生まれ育った町に、そんな恐ろしい場所があったのだから。わっけーには生まれる前の話だが、栞にとっては幼少期の頃はまだ稼働していたのだから驚きは強かった。
「四方津組解散の5年前に倒産という事は、一体何があったのですか?」
ただ一人関係の薄い調部長は、淡々と会長にさらに話を聞いていく。これには会長はあまりいい顔をしていなかった。不快感というよりは、あまり思い出したくもない話なのだろう。
「ちょうどあの頃は四方津組をたたもうという話が出始めた頃でもあるんだ。その中で真っ先に出たのが火力放棄ってわけさ。あそこは四方津組の武器庫が最大の収入源で、板金の仕事はおまけみたいなものだった。だから、大きな収入の柱を失って倒産しちまったってわけだよ」
なんともな話だった。しかし、板金の仕事の方がおまけとは、よっぽど四方津組に恩があって仕事をしていたようなものだったのだろう。だが、その四方津組からいわば絶縁状を叩きつけられたのだから、その時のショックは計り知れないものだったに違いない。これには栞も黙って話を聞いていた。
しかし、四方津組だって何もしなかったわけではない。ひいきにしていた工場が廃業したと聞いて、しっかりフォローはしておいたそうだ。今ではよその土地で元気にしている事だろうとの事。会長とはそれ以降疎遠であるがために、会長もその親戚の現状は分からないのだそうだ。
話を聞き終わったところで、栞たちは沈黙していた。そこまで話の内容としては重くはなかったのだが、やはり何かを変えようとすると、しわ寄せを受ける人間は居るのである。バーディア一家の場合、それにあたるのがレオンというわけだろう。だが、レオンのやっている事にはとても同意できるものではない。あくまでもこの場合とは話が違うのだ。
「あそこの事を知っているの四方津組の連中だけだ。となると、レオンに協力している連中の中に四方津組の連中が居るって事だよな。……まったく、俺の持ち物で好き勝手してくれやがって……」
レオンたちに自分が所有する廃工場を好きに使われていると知って、会長は怒りを露わにしていた。
「お気持ちは分からなくはないのですが、相手はレオンです。自棄を起こしてはいけません」
調部長が会長を落ち着かせる。
「……そうだな。俺もレオンには直に会った事があるが、あいつの放つ殺気は半端じゃねえ……。確かに、気を抜いた瞬間に魂持ってかれそうな感じだったぜ」
どうにか冷静になった会長だったが、その額からは異様なレベルの冷や汗が流れていた。夏祭りの際にレオンに会った時の事を思い出していたのである。その時全身から放たれていたオーラは、それは猛獣のようなものだった。
「会長さん、レオンと会ったのですか?」
「ああ、夏祭りの時だ。ひょろっと現れて少し話をした程度だが、それはもう死んだなと思わされるようなオーラだったぜ」
調部長の質問に答える会長の顔は、完全に青ざめていた。
「確かに、私も異様なまでの冷たい雰囲気を感じましたね」
「高石さんも、そんな事があったのですね」
「ええ、夏休み中の事ですけれどね。配送に来た業者に探りを入れようと差し入れをしたら、その時に会ったのがレオンだったんですよ」
「……よくご無事で」
栞の証言に、調部長もさすがに肝を冷やしたようである。
「それにしても、あそこの所有者が分かったのなら、次はどうするのがいいんだ?」
話に入れなかったわっけーが声を掛けている。さすがのわっけーもこれに関しては次の手立てが思い浮かばなかったようだ。
「所有者がはっきりとしているのなら、あそこに誰かが居れば不法侵入と電気の窃盗で、警察が踏み込むには十分の理由ができるわ」
「なるほどなのだ」
栞がそう言えば、わっけーは納得したようだった。
「あたしは機械には詳しいけど、法律はまったくダメだからな。あっはっはっ」
そして、そんな事を言いながら笑っていた。
「必要なら六法貸すけど?」
「いや、あたしはちゃうで十分じゃー!」
栞に対するわっけーの反応で、その場は少し和んだようだった。
「では、この情報は市と警察に共有しておいた方がよろしいですね。高石さん、連絡をお願いできますか?」
「分かりました。私の方で連絡を入れておきます」
というわけで、今回の浦見市駅前商店街の会長との話の内容を、市役所と水崎警部とで共有する事になったのである。
「しかし、あのままあそこを放置していれば、レオンだけではなくいろいろな犯罪の温床になりそうですね。最悪手放す事も考えておいた方がよろしいと思われますよ」
「ああ、そうだな。考えておこう……」
最後に調部長が会長にそう提案して話は終わったのだった。
レオンを取り巻く包囲網は少しずつ狭まりつつある。決戦の日はもう近いようだった。
これには栞とわっけーは驚いていた。自分の生まれ育った町に、そんな恐ろしい場所があったのだから。わっけーには生まれる前の話だが、栞にとっては幼少期の頃はまだ稼働していたのだから驚きは強かった。
「四方津組解散の5年前に倒産という事は、一体何があったのですか?」
ただ一人関係の薄い調部長は、淡々と会長にさらに話を聞いていく。これには会長はあまりいい顔をしていなかった。不快感というよりは、あまり思い出したくもない話なのだろう。
「ちょうどあの頃は四方津組をたたもうという話が出始めた頃でもあるんだ。その中で真っ先に出たのが火力放棄ってわけさ。あそこは四方津組の武器庫が最大の収入源で、板金の仕事はおまけみたいなものだった。だから、大きな収入の柱を失って倒産しちまったってわけだよ」
なんともな話だった。しかし、板金の仕事の方がおまけとは、よっぽど四方津組に恩があって仕事をしていたようなものだったのだろう。だが、その四方津組からいわば絶縁状を叩きつけられたのだから、その時のショックは計り知れないものだったに違いない。これには栞も黙って話を聞いていた。
しかし、四方津組だって何もしなかったわけではない。ひいきにしていた工場が廃業したと聞いて、しっかりフォローはしておいたそうだ。今ではよその土地で元気にしている事だろうとの事。会長とはそれ以降疎遠であるがために、会長もその親戚の現状は分からないのだそうだ。
話を聞き終わったところで、栞たちは沈黙していた。そこまで話の内容としては重くはなかったのだが、やはり何かを変えようとすると、しわ寄せを受ける人間は居るのである。バーディア一家の場合、それにあたるのがレオンというわけだろう。だが、レオンのやっている事にはとても同意できるものではない。あくまでもこの場合とは話が違うのだ。
「あそこの事を知っているの四方津組の連中だけだ。となると、レオンに協力している連中の中に四方津組の連中が居るって事だよな。……まったく、俺の持ち物で好き勝手してくれやがって……」
レオンたちに自分が所有する廃工場を好きに使われていると知って、会長は怒りを露わにしていた。
「お気持ちは分からなくはないのですが、相手はレオンです。自棄を起こしてはいけません」
調部長が会長を落ち着かせる。
「……そうだな。俺もレオンには直に会った事があるが、あいつの放つ殺気は半端じゃねえ……。確かに、気を抜いた瞬間に魂持ってかれそうな感じだったぜ」
どうにか冷静になった会長だったが、その額からは異様なレベルの冷や汗が流れていた。夏祭りの際にレオンに会った時の事を思い出していたのである。その時全身から放たれていたオーラは、それは猛獣のようなものだった。
「会長さん、レオンと会ったのですか?」
「ああ、夏祭りの時だ。ひょろっと現れて少し話をした程度だが、それはもう死んだなと思わされるようなオーラだったぜ」
調部長の質問に答える会長の顔は、完全に青ざめていた。
「確かに、私も異様なまでの冷たい雰囲気を感じましたね」
「高石さんも、そんな事があったのですね」
「ええ、夏休み中の事ですけれどね。配送に来た業者に探りを入れようと差し入れをしたら、その時に会ったのがレオンだったんですよ」
「……よくご無事で」
栞の証言に、調部長もさすがに肝を冷やしたようである。
「それにしても、あそこの所有者が分かったのなら、次はどうするのがいいんだ?」
話に入れなかったわっけーが声を掛けている。さすがのわっけーもこれに関しては次の手立てが思い浮かばなかったようだ。
「所有者がはっきりとしているのなら、あそこに誰かが居れば不法侵入と電気の窃盗で、警察が踏み込むには十分の理由ができるわ」
「なるほどなのだ」
栞がそう言えば、わっけーは納得したようだった。
「あたしは機械には詳しいけど、法律はまったくダメだからな。あっはっはっ」
そして、そんな事を言いながら笑っていた。
「必要なら六法貸すけど?」
「いや、あたしはちゃうで十分じゃー!」
栞に対するわっけーの反応で、その場は少し和んだようだった。
「では、この情報は市と警察に共有しておいた方がよろしいですね。高石さん、連絡をお願いできますか?」
「分かりました。私の方で連絡を入れておきます」
というわけで、今回の浦見市駅前商店街の会長との話の内容を、市役所と水崎警部とで共有する事になったのである。
「しかし、あのままあそこを放置していれば、レオンだけではなくいろいろな犯罪の温床になりそうですね。最悪手放す事も考えておいた方がよろしいと思われますよ」
「ああ、そうだな。考えておこう……」
最後に調部長が会長にそう提案して話は終わったのだった。
レオンを取り巻く包囲網は少しずつ狭まりつつある。決戦の日はもう近いようだった。
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