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第119話 3度目のテストが終わって
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無事に2学期の中間テストも終わり、ようやく一息つく栞。テスト期間中はわっけーが思ったより突撃してこなかったので、かなりゆったりと勉強できたものだった。
2日後、全教科の成績表がホームルームで配られた。
「わははははーっ! しおりん、勝負だ!」
わっけーが しょうぶを しかけてきた!
うん、いつもの事である。
「はいはい。私はいつもの通り満点よ。さて、わっけーはどうだったのかしら?」
5教科とも100と書かれた紙をちらつかせながら、呆れたように話す栞。
「な、なんだとーっ!?」
栞の返答に大声で驚くわっけー。どうやら想定外だったようである。
「くっそー、まさか3回連続で満点だなんて。このあたしでも想像できなかったぞーっ!」
大声で悔しがるわっけー。その様子を見ていたクラスメイトたちは、いつもの事かと特に気にもしてない様子である。
「それはそうと、わっけー、あんたのも見せなさいよ。人のは見たがるくせに、自分のは見せるのを渋ってるのはどうかと思うわよ」
「うぎぎぎ……、確かにそうなのだ。仕方ない、とくと見るのだ!」
栞に言われてやむなくといった感じで、わっけーは自分の成績表を栞たちに見せる。わっけーも見事に100ばかりが並ぶ成績表だった。この二人にはミスとかいうものはないのだろうか。
「なによ、全然渋る必要ないじゃないのよ。訳分かんないわね」
「わーはーはーっ! このわっけー様の成績を簡単に見せるわけにはいかぬのだーっ!」
あまりのわっけーの成績と態度に、栞は理不尽だと怒り出していた。
「うう、あの二人すごすぎるよ……」
詩音は自分の成績表を見ながら、ため息を吐いていた。本当に次元が違い過ぎるのだった。
「私でも、大体80点平均だもんね。今回のは難しかったと思うんだけどね」
「私もダメだったよ。わっけーってばあの調子なのに、頭がすごくいいのよね。人は見かけによらないって本当だよね」
真彩と理恵も呆れてしまうくらいである。そのくらいには、栞もわっけーもぶっ飛んでいるのだ。
そんな周りの状況を知ってか知らないでか、栞とわっけーは睨み合っている。この二人のライバル関係は、まだしばらく続きそうだ。
「うぬぬぬ、次は負けないのだ、しおりん!」
「いいわよ。何度仕掛けられてきたって返り討ちにしてやるんだからね!」
「うがー、負けられないのだ!」
結局この二人は、次の授業が始まるまでずっとにらみ合い続けたのだった。本当に飽きない二人である。
その頃、3年生の教室では……。
「ふむ、こんなものですかね」
調部長は中間テストの結果を見て、小さくため息を吐いた。
(正直、こうやって学生をしている余裕などもないのですけれどね。レオンが本格的に動いているのなら、こんな調子で過ごしているなんてできませんものね)
成績表をプリント用のクリアファイルにしまい込んだ調部長は、肘をついて今度は大きくため息を吐いた。
「鳥子、どうしたのですか、ため息なんか吐いて」
「誰かと思えば、球子ですか」
誰が声を掛けてきたのかと思えば、テニス部部長の丹羽球子だった。驚く事に調部長と同じクラスだったのである。
「私たち3年生もいよいよ部活から退いて、あとは受験を残すのみですよ。ため息なんて吐いてられませんよ」
普通の友人のようににこにことしながら調部長に話し掛けている球子。調部長はそれを邪険にしていないようなので、球子とはそれなりに親しい友人関係を築けているようである。
「……やはり、普通に日本の高校に進学かしらね」
「そうか、鳥子ってばそういう事だったわね……」
「まあ、アメリカに戻っても友だちが居るってわけでもないですからね。日本の方がそういう意味では恵まれていますから」
調部長はそう言いながら笑顔を見せていた。しかし、この会話の様子からすると、球子も何かしら調部長の事情を知っているように思える。
「まあ、なんにしても年内には結論を出しますよ」
調部長は球子を見ながらそう言い切っていた。
「そう、最善の判断ができるといいですね」
球子の方も、そう言ってにこやかに微笑んだ。
「それよりも、何の用なのですか。久しぶりに話し掛けてきて……」
「そうね、実は……」
球子が何かを言いかけようとするが、ここで授業開始のチャイムが鳴り響いてしまった。
「ああ、残念。続きは昼休みにでもしましょうか、鳥子」
「え、ええ……。そうね、球子」
そう言って、球子は自分の席へと戻っていった。
一体球子は何と言おうとしていたのか、調部長は気になってしょうがなかった。ところが、授業が始まってしまえばそうも言っていられなかった。なにせ高校受験を控えた時期なのだから、教師たちの方も授業に力が入ってしまっている。少しでも気を逸らそうものなら怒られてしまうのである。
(仕方ありません。昼休みまで我慢しますか)
もやもやする気持ちをぐっとこらえながら、調部長は授業に集中する。
何にしても残りは卒業式までの4ヶ月。調部長は解決の見えない事態に焦りを覚えつつも、なんとかしてその糸口を掴もうと必死に足掻くのだった。
2日後、全教科の成績表がホームルームで配られた。
「わははははーっ! しおりん、勝負だ!」
わっけーが しょうぶを しかけてきた!
うん、いつもの事である。
「はいはい。私はいつもの通り満点よ。さて、わっけーはどうだったのかしら?」
5教科とも100と書かれた紙をちらつかせながら、呆れたように話す栞。
「な、なんだとーっ!?」
栞の返答に大声で驚くわっけー。どうやら想定外だったようである。
「くっそー、まさか3回連続で満点だなんて。このあたしでも想像できなかったぞーっ!」
大声で悔しがるわっけー。その様子を見ていたクラスメイトたちは、いつもの事かと特に気にもしてない様子である。
「それはそうと、わっけー、あんたのも見せなさいよ。人のは見たがるくせに、自分のは見せるのを渋ってるのはどうかと思うわよ」
「うぎぎぎ……、確かにそうなのだ。仕方ない、とくと見るのだ!」
栞に言われてやむなくといった感じで、わっけーは自分の成績表を栞たちに見せる。わっけーも見事に100ばかりが並ぶ成績表だった。この二人にはミスとかいうものはないのだろうか。
「なによ、全然渋る必要ないじゃないのよ。訳分かんないわね」
「わーはーはーっ! このわっけー様の成績を簡単に見せるわけにはいかぬのだーっ!」
あまりのわっけーの成績と態度に、栞は理不尽だと怒り出していた。
「うう、あの二人すごすぎるよ……」
詩音は自分の成績表を見ながら、ため息を吐いていた。本当に次元が違い過ぎるのだった。
「私でも、大体80点平均だもんね。今回のは難しかったと思うんだけどね」
「私もダメだったよ。わっけーってばあの調子なのに、頭がすごくいいのよね。人は見かけによらないって本当だよね」
真彩と理恵も呆れてしまうくらいである。そのくらいには、栞もわっけーもぶっ飛んでいるのだ。
そんな周りの状況を知ってか知らないでか、栞とわっけーは睨み合っている。この二人のライバル関係は、まだしばらく続きそうだ。
「うぬぬぬ、次は負けないのだ、しおりん!」
「いいわよ。何度仕掛けられてきたって返り討ちにしてやるんだからね!」
「うがー、負けられないのだ!」
結局この二人は、次の授業が始まるまでずっとにらみ合い続けたのだった。本当に飽きない二人である。
その頃、3年生の教室では……。
「ふむ、こんなものですかね」
調部長は中間テストの結果を見て、小さくため息を吐いた。
(正直、こうやって学生をしている余裕などもないのですけれどね。レオンが本格的に動いているのなら、こんな調子で過ごしているなんてできませんものね)
成績表をプリント用のクリアファイルにしまい込んだ調部長は、肘をついて今度は大きくため息を吐いた。
「鳥子、どうしたのですか、ため息なんか吐いて」
「誰かと思えば、球子ですか」
誰が声を掛けてきたのかと思えば、テニス部部長の丹羽球子だった。驚く事に調部長と同じクラスだったのである。
「私たち3年生もいよいよ部活から退いて、あとは受験を残すのみですよ。ため息なんて吐いてられませんよ」
普通の友人のようににこにことしながら調部長に話し掛けている球子。調部長はそれを邪険にしていないようなので、球子とはそれなりに親しい友人関係を築けているようである。
「……やはり、普通に日本の高校に進学かしらね」
「そうか、鳥子ってばそういう事だったわね……」
「まあ、アメリカに戻っても友だちが居るってわけでもないですからね。日本の方がそういう意味では恵まれていますから」
調部長はそう言いながら笑顔を見せていた。しかし、この会話の様子からすると、球子も何かしら調部長の事情を知っているように思える。
「まあ、なんにしても年内には結論を出しますよ」
調部長は球子を見ながらそう言い切っていた。
「そう、最善の判断ができるといいですね」
球子の方も、そう言ってにこやかに微笑んだ。
「それよりも、何の用なのですか。久しぶりに話し掛けてきて……」
「そうね、実は……」
球子が何かを言いかけようとするが、ここで授業開始のチャイムが鳴り響いてしまった。
「ああ、残念。続きは昼休みにでもしましょうか、鳥子」
「え、ええ……。そうね、球子」
そう言って、球子は自分の席へと戻っていった。
一体球子は何と言おうとしていたのか、調部長は気になってしょうがなかった。ところが、授業が始まってしまえばそうも言っていられなかった。なにせ高校受験を控えた時期なのだから、教師たちの方も授業に力が入ってしまっている。少しでも気を逸らそうものなら怒られてしまうのである。
(仕方ありません。昼休みまで我慢しますか)
もやもやする気持ちをぐっとこらえながら、調部長は授業に集中する。
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