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第102話 謎めくものたち
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千夏から連絡を受けた栞だったが、わっけーにしつこく絡まれていて動けない。
「さあ、しおりん。中間テストも勝負をするのじゃーっ!」
本当にしつこい。どうしてわっけーはここまで栞に絡むのか。まったくもって分からない。ただはっきり分かるのは、わっけーがしつこいという事だけだった。
「だから、なんで私がそんな事に付き合わされなきゃいけないのよ。毎回毎回うるさいわよ、わっけー!」
さすがにブチ切れる栞である。
その様子を真彩と理恵が呆れたように見ている。いつもの事とはいえども、本当にわっけーがここまで栞を気に入っている理由は、親友二人にもまったく理解できなかった。
「わっけー、とりあえずそのくらいにしとこう。栞ちゃん、本当に怒ってるから」
「ぐぬぬぬぬ……、なら仕方ない。だが、勝負は受けるのだーっ!」
どこがどう仕方ないのだろうか。往生際が悪い。
さすがにここまで来ると、栞は相手をする気をなくした。
「あのね、私も忙しいのよ。秋の大会への練習だってあるし、家の手伝いだってある。わっけーに付き合うのも限界があるのよ。付き合わせるなとは言わない。節度だけ持ってくれたらいいから」
栞は頭を抱えながらわっけーを諭そうとする。しかし、わっけーは聞く耳を持っていなかった。仕方なく、真彩と理恵が引き摺って引き離す形で、ようやく栞は自由になったのだった。
「……訳が分からないわ」
栞はそうだけ呟くと、自分の用事を消化する事にするのだった。
放課後もわっけーに絡まれそうになるが、ここでも真彩と理恵が取り押さえてくれたので、栞は詩音と一緒に新聞部の部室に向かう事ができた。
そして、新聞部の部室に入った栞と詩音。そこにはいつもの通り、調部長と軽部副部長が居た。
「おはようございます、調部長」
「あら、おはようございます、高石さん」
挨拶を交わす栞と調部長。しかし、軽部副部長はこっちに顔を向ける事なくスマホを持ったまま何かに熱中していた。本当に自由奔放である。
「あら、高石さん。なんだか様子がおかしいですけれど、どうかされたのですか?」
調部長は、ほとんどいつも通りに振舞っている栞をひと目見て、すぐに何かを察したらしい。さすがはギャングのボスの娘である。大物というのは、こういう能力がないとなれないのだろう。
「あ、……さすがは調部長ですね。実はなんですけれど、耳を貸して頂いてよろしいですか?」
栞の申し出に、首を傾げる調部長。しかし、その雰囲気を感じ取って、すぐに了承してくれた。こういう察する能力が高いのは、本当にリーダー向きな調部長である。
調部長に近付いて、栞は千夏から回ってきた事を調部長に耳打ちをする。それに対して、調部長はものすごく驚いていた。
「それは、本当なのですか?」
「ええ、職員に紛れ込んでいる友人からの証言です。間違いないでしょう」
調部長と栞がそんな事を話していると、ガチャリと新聞部の部室の鍵が開けられ、扉が開く。突然の事に栞と調部長は慌てて入口を見た。
「おやおや、ずいぶんといい反応をしてくれますね」
入口から入ってきた男性は、扉と鍵を閉めながら、栞たちに話し掛ける。
「さて、みなさん初めましてでいいかな。私がこの新聞部の顧問である、四方津正人だ。この草利中学校の校長先生といった方がいいかな?」
「あ、あなたが、お父様の友人である草利中学校の校長先生?!」
校長先生の自己紹介に、調部長が目を見開いて驚いている。
ここまで驚くのも無理はない。校長先生なんていったら、還暦が近いような人が多い中、この男性はどう見ても40代程度にしか見えないのだ。
「まあそうだね。バロックは元気にしているかな?」
「は、はい。元気に社長業に精を出しております」
「そうかそうか。さすがはバロックだな」
調部長は父親の話題を振られて、素直にそれに答えている。それを聞いた校長は、顎に手を置きながらうんうんと頷いていた。
「私もだが、バロックも面倒な部下を抱えて、ずいぶんと苦労しているようだな。私の方も私の方で、面倒な連中が居るから学校になかなか顔を出せなくてね。弟からの連絡を受けて戻ってきてみたら、まあ好き放題をしてくれていたわけだ」
校長が淡々と語っているが、栞たちには何の事かよく分からない。
「君たちも知っているだろう? わざわざ隠しカメラを仕掛けていたくらいなんだからね」
「……そこにまで気が付いているとは、さすがですね」
校長の言葉に、調部長は冷や汗を流しながら言葉を返す。
「昨日、久々に来てみたらすぐに気が付いたんだよ。まったく、その中であの男ときたら、本当に情けない限りだよ」
「あの男?」
独り言のように語る校長の言葉に、栞たちが反応する。
「うむ、教頭は昨日の時点で病院に送られたよ。理由は麻薬中毒だ。そんなわけだから、私が職務に復帰せざるを得なくなってね。せっかくだからと、ここに顔を出したというわけだよ」
学校に戻って来た理由を、校長は調部長たちに全部明かしていた。もう驚く事ばかりである。その反応を見ながら、校長は静かに椅子に腰を掛けると、調部長を見ながら語り出した。
「せっかく私が出向いたんだ。ちょっとくらい話をしようではないか」
その校長の微笑みに、栞と調部長、そして詩音の三人は背筋を凍らせていた。
「さあ、しおりん。中間テストも勝負をするのじゃーっ!」
本当にしつこい。どうしてわっけーはここまで栞に絡むのか。まったくもって分からない。ただはっきり分かるのは、わっけーがしつこいという事だけだった。
「だから、なんで私がそんな事に付き合わされなきゃいけないのよ。毎回毎回うるさいわよ、わっけー!」
さすがにブチ切れる栞である。
その様子を真彩と理恵が呆れたように見ている。いつもの事とはいえども、本当にわっけーがここまで栞を気に入っている理由は、親友二人にもまったく理解できなかった。
「わっけー、とりあえずそのくらいにしとこう。栞ちゃん、本当に怒ってるから」
「ぐぬぬぬぬ……、なら仕方ない。だが、勝負は受けるのだーっ!」
どこがどう仕方ないのだろうか。往生際が悪い。
さすがにここまで来ると、栞は相手をする気をなくした。
「あのね、私も忙しいのよ。秋の大会への練習だってあるし、家の手伝いだってある。わっけーに付き合うのも限界があるのよ。付き合わせるなとは言わない。節度だけ持ってくれたらいいから」
栞は頭を抱えながらわっけーを諭そうとする。しかし、わっけーは聞く耳を持っていなかった。仕方なく、真彩と理恵が引き摺って引き離す形で、ようやく栞は自由になったのだった。
「……訳が分からないわ」
栞はそうだけ呟くと、自分の用事を消化する事にするのだった。
放課後もわっけーに絡まれそうになるが、ここでも真彩と理恵が取り押さえてくれたので、栞は詩音と一緒に新聞部の部室に向かう事ができた。
そして、新聞部の部室に入った栞と詩音。そこにはいつもの通り、調部長と軽部副部長が居た。
「おはようございます、調部長」
「あら、おはようございます、高石さん」
挨拶を交わす栞と調部長。しかし、軽部副部長はこっちに顔を向ける事なくスマホを持ったまま何かに熱中していた。本当に自由奔放である。
「あら、高石さん。なんだか様子がおかしいですけれど、どうかされたのですか?」
調部長は、ほとんどいつも通りに振舞っている栞をひと目見て、すぐに何かを察したらしい。さすがはギャングのボスの娘である。大物というのは、こういう能力がないとなれないのだろう。
「あ、……さすがは調部長ですね。実はなんですけれど、耳を貸して頂いてよろしいですか?」
栞の申し出に、首を傾げる調部長。しかし、その雰囲気を感じ取って、すぐに了承してくれた。こういう察する能力が高いのは、本当にリーダー向きな調部長である。
調部長に近付いて、栞は千夏から回ってきた事を調部長に耳打ちをする。それに対して、調部長はものすごく驚いていた。
「それは、本当なのですか?」
「ええ、職員に紛れ込んでいる友人からの証言です。間違いないでしょう」
調部長と栞がそんな事を話していると、ガチャリと新聞部の部室の鍵が開けられ、扉が開く。突然の事に栞と調部長は慌てて入口を見た。
「おやおや、ずいぶんといい反応をしてくれますね」
入口から入ってきた男性は、扉と鍵を閉めながら、栞たちに話し掛ける。
「さて、みなさん初めましてでいいかな。私がこの新聞部の顧問である、四方津正人だ。この草利中学校の校長先生といった方がいいかな?」
「あ、あなたが、お父様の友人である草利中学校の校長先生?!」
校長先生の自己紹介に、調部長が目を見開いて驚いている。
ここまで驚くのも無理はない。校長先生なんていったら、還暦が近いような人が多い中、この男性はどう見ても40代程度にしか見えないのだ。
「まあそうだね。バロックは元気にしているかな?」
「は、はい。元気に社長業に精を出しております」
「そうかそうか。さすがはバロックだな」
調部長は父親の話題を振られて、素直にそれに答えている。それを聞いた校長は、顎に手を置きながらうんうんと頷いていた。
「私もだが、バロックも面倒な部下を抱えて、ずいぶんと苦労しているようだな。私の方も私の方で、面倒な連中が居るから学校になかなか顔を出せなくてね。弟からの連絡を受けて戻ってきてみたら、まあ好き放題をしてくれていたわけだ」
校長が淡々と語っているが、栞たちには何の事かよく分からない。
「君たちも知っているだろう? わざわざ隠しカメラを仕掛けていたくらいなんだからね」
「……そこにまで気が付いているとは、さすがですね」
校長の言葉に、調部長は冷や汗を流しながら言葉を返す。
「昨日、久々に来てみたらすぐに気が付いたんだよ。まったく、その中であの男ときたら、本当に情けない限りだよ」
「あの男?」
独り言のように語る校長の言葉に、栞たちが反応する。
「うむ、教頭は昨日の時点で病院に送られたよ。理由は麻薬中毒だ。そんなわけだから、私が職務に復帰せざるを得なくなってね。せっかくだからと、ここに顔を出したというわけだよ」
学校に戻って来た理由を、校長は調部長たちに全部明かしていた。もう驚く事ばかりである。その反応を見ながら、校長は静かに椅子に腰を掛けると、調部長を見ながら語り出した。
「せっかく私が出向いたんだ。ちょっとくらい話をしようではないか」
その校長の微笑みに、栞と調部長、そして詩音の三人は背筋を凍らせていた。
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