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第50話 期末テスト前の事
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6月は雨が降り続いた上に、これといった事件もなく、調査の方も収穫はほとんどなく過ぎて行ってしまった。
結果としては芳しくなかったのだが、平和が一番と気持ちを切り替えて、栞は学生生活を過ごしていた。ただ、何かと絡んでくるわっけーが鬱陶しかったのだが、さすがに3か月目ともなれば少しずつ慣れてきてしまっていた。
(いやいやいや、慣れちゃいけないと思うんだけどねっ!)
ふと思いながら自分でツッコミを入れる栞。そう思いつつも、勝負を仕掛けてきては返り討ちにされて悔しがるわっけーの姿が、なんとも面白く感じるようになってきていた。あーどえすですか。
そうしているうちに6月も終わり、7月に入る。そうなればすぐに期末テストが待っている。
中間テスト後からいろいろとごたついていた関係で、実に授業は遅れ気味である。それでもテストは日程通りに実施される。ただ期末テストは中間テストの5教科に加えて実技系科目の筆記試験が入ってくる。美術、音楽、保健体育、生活の4教科を加えた全部で9教科が、3日間で3教科ずつ行われるのである。
そして、テスト期間に入るや否や、案の定のイベントが待ち受けていた。
「おしっ、しおりん! 今回もどっちが点数がいいか勝負じゃーっ!」
わっけーが勝負を仕掛けてきた。
しかしまぁ、予想はしていたものの今回も勝負を仕掛けてきたという事は、今後、卒業までこれが繰り返される可能性が高いという事である。しかも、別のクラスになっても仕掛けてきそうだ。ずいぶんと先が長いだけに、栞は頭が痛くなってきた。
「栞ちゃん、大丈夫? 本当にわっけーがまた、……ごめんね」
「……うん、まーちゃん、大丈夫だから」
真彩が心配してきたが、栞はとりあえず強がっておいた。
わっけーが真彩に怒られてる最中、栞が一人反応が無かった理恵の方を見る。すると、理恵の様子がなんだかおかしかった。こっちを見ているものの、どうも目が合っている気がしない。
「どうしたの、理恵ちゃん」
気になるあまり、栞は理恵に声を掛ける。すると、理恵は慌てたように反応して、机に置いていた筆箱を床に落としてしまった。
「どうしたんだ、りぃ」
わっけーですら心配そうに見ている。その様子に、栞は再び理恵に声を掛ける。どうしても違和感が拭えない。
「もしかして、体調が悪い? そうだったら保健室に行った方がいいよ」
栞は理恵に近付きながら提案する。
「えっ、大丈夫だから。うん、ほら」
そうやって笑っている理恵だが、栞はその乱れを見逃さなかった。
「嘘おっしゃい」
栞は強引に理恵の額を触る。うん、熱い。
「37.7度ってとこかしら。風邪かしらね。というわけで理恵ちゃん、保健室に行きなさい。無理は良くないわ」
栞がずずいっと笑顔で迫ってくるので、理恵はおとなしくそれに従った。
「というわけだから、ちょっと保健室行ってくるわね」
「うん、分かったわ。無理しちゃだめだよ、理恵ちゃん」
「そうだぞ、りぃ」
真彩とわっけーに見送られる中、栞は理恵を抱えて保健室へと向かった。
「37.6度。阿藤さん、よくこの状態で学校に出て来れましたね。普通なら意識障害起こしてますよ。とにかくこのまま横になっていなさい」
やっぱり37度後半だった。この検温の結果と保健の先生の言葉で、理恵はそのまま保健室のベッドに横になっている。
「おうちの方は、どなたがいらっしゃいますか?」
保健の先生は、保護者を呼ぶために理恵に尋ねる。ところが理恵は黙ったまま何も話そうとはしなかった。もしかしたら、この時間は誰も家に居ないのかも知れない。あまりに話したがらない理恵を見かねたのか、栞は保健の先生にこう提案した。
「熱が高いこの状態で無理に聞くのも可哀想ですし、このまま寝かせてあげた方がいいと思います。放課後に私が責任を持って家まで送り届けますので、それでいいではないでしょうか」
友人である自分が送り届けるというのだ。保健の先生は少し考えたもののそれで了承してくれた。
「あと、少々熱は高いですが、時期的に夏風邪でしょうね。薬を飲んでこのまま安静にさせておけば大丈夫だと思います」
栞の言葉に保健の先生は驚いていた。
栞は医師免許を持ってはいないものの、この手の知識が豊富だったのだ。というのも、陸上選手として活動していた時期に医学書も結構読み漁っていたのだ。それが今回こうやって活きているわけなのだ。
栞は理恵の額に濡れタオルを置くと、ゆっくり休むように言い聞かせて、教室へ戻ろうとする。
「し、栞ちゃん!」
突然、理恵が栞を呼び止める。ただ急に声を出したので咳き込んではいるし、声も少ししゃがれていた。
「ほらほら、無理しない、ね?」
「う、うん、ごめんなさい。それと、ありがとう」
理恵がそう言うと、栞はにこりと微笑んで、理恵の髪を軽く撫でていた。そして、保健の先生に頭を下げると保健室を出ていった。
そのまま放課後まで寝ていた理恵。その彼女を迎えに現れたのはわっけーで、背中に背負うとそのまま保健室を後にする。
「わっけー……」
「おう、しおりんから事情は聞いたぞ。まったく無茶は良くないぞ、りぃ」
「……うん、ごめん……」
友人らしい会話をしながら、わっけーは理恵を家まで送り届けたのだった。
結果としては芳しくなかったのだが、平和が一番と気持ちを切り替えて、栞は学生生活を過ごしていた。ただ、何かと絡んでくるわっけーが鬱陶しかったのだが、さすがに3か月目ともなれば少しずつ慣れてきてしまっていた。
(いやいやいや、慣れちゃいけないと思うんだけどねっ!)
ふと思いながら自分でツッコミを入れる栞。そう思いつつも、勝負を仕掛けてきては返り討ちにされて悔しがるわっけーの姿が、なんとも面白く感じるようになってきていた。あーどえすですか。
そうしているうちに6月も終わり、7月に入る。そうなればすぐに期末テストが待っている。
中間テスト後からいろいろとごたついていた関係で、実に授業は遅れ気味である。それでもテストは日程通りに実施される。ただ期末テストは中間テストの5教科に加えて実技系科目の筆記試験が入ってくる。美術、音楽、保健体育、生活の4教科を加えた全部で9教科が、3日間で3教科ずつ行われるのである。
そして、テスト期間に入るや否や、案の定のイベントが待ち受けていた。
「おしっ、しおりん! 今回もどっちが点数がいいか勝負じゃーっ!」
わっけーが勝負を仕掛けてきた。
しかしまぁ、予想はしていたものの今回も勝負を仕掛けてきたという事は、今後、卒業までこれが繰り返される可能性が高いという事である。しかも、別のクラスになっても仕掛けてきそうだ。ずいぶんと先が長いだけに、栞は頭が痛くなってきた。
「栞ちゃん、大丈夫? 本当にわっけーがまた、……ごめんね」
「……うん、まーちゃん、大丈夫だから」
真彩が心配してきたが、栞はとりあえず強がっておいた。
わっけーが真彩に怒られてる最中、栞が一人反応が無かった理恵の方を見る。すると、理恵の様子がなんだかおかしかった。こっちを見ているものの、どうも目が合っている気がしない。
「どうしたの、理恵ちゃん」
気になるあまり、栞は理恵に声を掛ける。すると、理恵は慌てたように反応して、机に置いていた筆箱を床に落としてしまった。
「どうしたんだ、りぃ」
わっけーですら心配そうに見ている。その様子に、栞は再び理恵に声を掛ける。どうしても違和感が拭えない。
「もしかして、体調が悪い? そうだったら保健室に行った方がいいよ」
栞は理恵に近付きながら提案する。
「えっ、大丈夫だから。うん、ほら」
そうやって笑っている理恵だが、栞はその乱れを見逃さなかった。
「嘘おっしゃい」
栞は強引に理恵の額を触る。うん、熱い。
「37.7度ってとこかしら。風邪かしらね。というわけで理恵ちゃん、保健室に行きなさい。無理は良くないわ」
栞がずずいっと笑顔で迫ってくるので、理恵はおとなしくそれに従った。
「というわけだから、ちょっと保健室行ってくるわね」
「うん、分かったわ。無理しちゃだめだよ、理恵ちゃん」
「そうだぞ、りぃ」
真彩とわっけーに見送られる中、栞は理恵を抱えて保健室へと向かった。
「37.6度。阿藤さん、よくこの状態で学校に出て来れましたね。普通なら意識障害起こしてますよ。とにかくこのまま横になっていなさい」
やっぱり37度後半だった。この検温の結果と保健の先生の言葉で、理恵はそのまま保健室のベッドに横になっている。
「おうちの方は、どなたがいらっしゃいますか?」
保健の先生は、保護者を呼ぶために理恵に尋ねる。ところが理恵は黙ったまま何も話そうとはしなかった。もしかしたら、この時間は誰も家に居ないのかも知れない。あまりに話したがらない理恵を見かねたのか、栞は保健の先生にこう提案した。
「熱が高いこの状態で無理に聞くのも可哀想ですし、このまま寝かせてあげた方がいいと思います。放課後に私が責任を持って家まで送り届けますので、それでいいではないでしょうか」
友人である自分が送り届けるというのだ。保健の先生は少し考えたもののそれで了承してくれた。
「あと、少々熱は高いですが、時期的に夏風邪でしょうね。薬を飲んでこのまま安静にさせておけば大丈夫だと思います」
栞の言葉に保健の先生は驚いていた。
栞は医師免許を持ってはいないものの、この手の知識が豊富だったのだ。というのも、陸上選手として活動していた時期に医学書も結構読み漁っていたのだ。それが今回こうやって活きているわけなのだ。
栞は理恵の額に濡れタオルを置くと、ゆっくり休むように言い聞かせて、教室へ戻ろうとする。
「し、栞ちゃん!」
突然、理恵が栞を呼び止める。ただ急に声を出したので咳き込んではいるし、声も少ししゃがれていた。
「ほらほら、無理しない、ね?」
「う、うん、ごめんなさい。それと、ありがとう」
理恵がそう言うと、栞はにこりと微笑んで、理恵の髪を軽く撫でていた。そして、保健の先生に頭を下げると保健室を出ていった。
そのまま放課後まで寝ていた理恵。その彼女を迎えに現れたのはわっけーで、背中に背負うとそのまま保健室を後にする。
「わっけー……」
「おう、しおりんから事情は聞いたぞ。まったく無茶は良くないぞ、りぃ」
「……うん、ごめん……」
友人らしい会話をしながら、わっけーは理恵を家まで送り届けたのだった。
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