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第九章 拡張版ミズーナ編
最終話
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アンマリア編、拡張版ミズーナ王女編、ジャンル替え魔王討伐編。そのすべてのシナリオが終わり、サーロイン王国、ミール王国、ベジタリウス王国のすべては平和な時を過ごしている。
まずはミール王国。
アーサリーとメチルは、ミズーナとエスカが卒業した後半年もしない間に結婚をし、その後、男児をもうけていた。
なんだかんだと嫌がっていたアーサリーとメチルだったが、結婚後はかなり仲の良い姿を見せており、城で働く兵士や使用人たちはその様子を微笑ましく見守っているらしい。
メチルが結婚したとはいえ、アルーは相変わらずメチルとは一緒である。アーサリーが公務で席を外している間には、二人で仲良く過ごしている姿が目撃されている。
見た目こそ魔族ではあるものの、絶えない笑顔と優しい性格から聖女と呼ばれているらしい。まぁ、実際にベジタリウス王国では聖女とまで呼ばれていたので、メチルは否定することはなかった。
暴走しがちなアーサリーのうまく扱っているらしく、この分であるならミール王国はしばらく安泰だろう。
アーサリーの妹であり転生者であるエスカは、ベジタリウス王国のコール子爵領で魔王と一緒に過ごしている。相変わらず魔王が何かをやらかそうものなら、闇魔法の重力操作でお仕置きするという恐妻っぷりを発揮しているそうな。
なんでも魔王は魔族の復活を目論んでいるようだが、エスカはどちらかというと容認している様子。このまま放っておくと、魔王を裏から操る真のラスボスとなりそうな雰囲気である。
とはいえ、そんなエスカも魔王との子を身ごもっているらしく、そこまで無茶はしていないそうな。はてさて、どんな子が生まれてくるのやら……。
ベジタリウス王国の諜報部にいたイスンセとクガリは、今では結婚して夫婦になっているらしい。
イスンセは鈍いところがあったので、結婚に至るまでクガリはかなり苦戦したらしい。それでもなんとかその想いは成就させたようだった。
イスンセはレッタス王子専属の諜報員として活躍中。クガリは身重な体でイスンセのことを支えている。
魔族の暗躍でいろいろと苦労してきたので、幸せになってもらいたいものである。
ベジタリウス王国といえば、問題だったレッタス王子の婚約者問題も解決。結局は王国内の侯爵令嬢に決まったようだった。
ただ、決まったのが遅かったということもあり、今は王妃教育を受けながら時折レッタス王子と交流をするという状況。それでも、お互いの印象は悪くはないようで、このままなら無事に国王と王妃に慣れそうな雰囲気のようだった。
そのベジタリウス王国と接するバッサーシ辺境伯領。
ここにはサクラとその婚約者であるタンが戻ってきており、今日もまた領内で魔物相手に無双をしている。
「だっりゃあっ!」
「せい!」
今日もバッサーシ辺境伯領には、脳筋二人の元気な声がこだましているのであった。
「どうだ。俺の方が数が多いぞ」
「でも、傷が多いでしょうか。それでは使い物になりませんよ」
「ぐ、ぬぅ……」
サクラに指摘されて、タンは黙り込んでしまった。
「私たちはサーロイン王国の剣であり盾でもあるの。とはいえ、ただ倒すだけでは芸がないというものです」
「くそっ、もうひと勝負だ」
今日も領地のどこかで魔物が吹き飛んでいる。
そして、2年の月日が流れたサーロイン王国の王城。
いよいよこの日、乙女ゲームの真のエンディングともいえる瞬間を迎えていた。
「まあ、お姉様。素敵ですわ」
「本当、普段のアンマリアを思えばきれいすぎるわね」
モモとミズーナの二人が、アンマリアの姿を見て感想を漏らしている。
それもそうだろう。今日はアンマリアとフィレン王子、そして、サキとリブロ王子の結婚式である。
モモとミズーナはアンマリアの身内であるので、こうやって見に来ているというわけだ。
ミズーナがなぜアンマリアの身内になっているかというと、既にタミールと結婚しているからだった。既に子どもも一人生まれており、その子どもはフトラシアとミムクの二人が面倒を見ている。
「お嬢様、仕上げを致しますので、こちらを向いて下さい」
「ああ、ごめんなさい、スーラ」
アンマリアはモモとミズーナに手を振って、くるりと鏡へと向き合う。その様子を見て、モモとミズーナは邪魔をしてはいけないと、アンマリアから離れていった。
「それにしても、卒業から結婚式までずいぶんと時間がかかりましたね」
「仕方ないですよ。王妃教育が大変でしたから」
「ああ、そうですね……」
モモの言葉に、まだ自分が学生だった頃のアンマリアの生活状況を思い出して、同情するかのように納得するミズーナであった。まだ自由に動いていたようには思うのだが、日によっては朝から晩まで拘束されていた。自分だったら耐え切れないと思うミズーナなのである。
そんな困難を乗り越えて、アンマリアはこの日、ついに王太子妃という立場となるのである。
思えば、アンマリアが自分の転生に気が付いてから早10年である。
まん丸と太ることが約束された子豚令嬢から、よくここまでやってこれたものである。
一歩間違えば断罪ルートもあったし、幾度となく命の危険すらもあった。本当によくここまで無事にやってこれたものだった。
様々な困難を乗り越えて、今一つのゴールを迎える。
準備を終えたアンマリアは、サキと一緒に会場へと向かう。
会場へと足を踏み入れると、中央の通路を挟んで、様々な人物が祝福に駆けつけていた。攻略対象、ライバル令嬢など、みんな勢ぞろいである。
この光景には、ついうるっときてしまうアンマリアである。同じように泣きそうになっているサキと支え合いながら、アンマリアとサキは王子たちの元へと歩いていく。
(できれば、この幸せが続きますように)
アンマリアの祈りとともに、ため込んだ祝福がサーロインの国を優しく包み込んだのだった。
―― 完 ――
まずはミール王国。
アーサリーとメチルは、ミズーナとエスカが卒業した後半年もしない間に結婚をし、その後、男児をもうけていた。
なんだかんだと嫌がっていたアーサリーとメチルだったが、結婚後はかなり仲の良い姿を見せており、城で働く兵士や使用人たちはその様子を微笑ましく見守っているらしい。
メチルが結婚したとはいえ、アルーは相変わらずメチルとは一緒である。アーサリーが公務で席を外している間には、二人で仲良く過ごしている姿が目撃されている。
見た目こそ魔族ではあるものの、絶えない笑顔と優しい性格から聖女と呼ばれているらしい。まぁ、実際にベジタリウス王国では聖女とまで呼ばれていたので、メチルは否定することはなかった。
暴走しがちなアーサリーのうまく扱っているらしく、この分であるならミール王国はしばらく安泰だろう。
アーサリーの妹であり転生者であるエスカは、ベジタリウス王国のコール子爵領で魔王と一緒に過ごしている。相変わらず魔王が何かをやらかそうものなら、闇魔法の重力操作でお仕置きするという恐妻っぷりを発揮しているそうな。
なんでも魔王は魔族の復活を目論んでいるようだが、エスカはどちらかというと容認している様子。このまま放っておくと、魔王を裏から操る真のラスボスとなりそうな雰囲気である。
とはいえ、そんなエスカも魔王との子を身ごもっているらしく、そこまで無茶はしていないそうな。はてさて、どんな子が生まれてくるのやら……。
ベジタリウス王国の諜報部にいたイスンセとクガリは、今では結婚して夫婦になっているらしい。
イスンセは鈍いところがあったので、結婚に至るまでクガリはかなり苦戦したらしい。それでもなんとかその想いは成就させたようだった。
イスンセはレッタス王子専属の諜報員として活躍中。クガリは身重な体でイスンセのことを支えている。
魔族の暗躍でいろいろと苦労してきたので、幸せになってもらいたいものである。
ベジタリウス王国といえば、問題だったレッタス王子の婚約者問題も解決。結局は王国内の侯爵令嬢に決まったようだった。
ただ、決まったのが遅かったということもあり、今は王妃教育を受けながら時折レッタス王子と交流をするという状況。それでも、お互いの印象は悪くはないようで、このままなら無事に国王と王妃に慣れそうな雰囲気のようだった。
そのベジタリウス王国と接するバッサーシ辺境伯領。
ここにはサクラとその婚約者であるタンが戻ってきており、今日もまた領内で魔物相手に無双をしている。
「だっりゃあっ!」
「せい!」
今日もバッサーシ辺境伯領には、脳筋二人の元気な声がこだましているのであった。
「どうだ。俺の方が数が多いぞ」
「でも、傷が多いでしょうか。それでは使い物になりませんよ」
「ぐ、ぬぅ……」
サクラに指摘されて、タンは黙り込んでしまった。
「私たちはサーロイン王国の剣であり盾でもあるの。とはいえ、ただ倒すだけでは芸がないというものです」
「くそっ、もうひと勝負だ」
今日も領地のどこかで魔物が吹き飛んでいる。
そして、2年の月日が流れたサーロイン王国の王城。
いよいよこの日、乙女ゲームの真のエンディングともいえる瞬間を迎えていた。
「まあ、お姉様。素敵ですわ」
「本当、普段のアンマリアを思えばきれいすぎるわね」
モモとミズーナの二人が、アンマリアの姿を見て感想を漏らしている。
それもそうだろう。今日はアンマリアとフィレン王子、そして、サキとリブロ王子の結婚式である。
モモとミズーナはアンマリアの身内であるので、こうやって見に来ているというわけだ。
ミズーナがなぜアンマリアの身内になっているかというと、既にタミールと結婚しているからだった。既に子どもも一人生まれており、その子どもはフトラシアとミムクの二人が面倒を見ている。
「お嬢様、仕上げを致しますので、こちらを向いて下さい」
「ああ、ごめんなさい、スーラ」
アンマリアはモモとミズーナに手を振って、くるりと鏡へと向き合う。その様子を見て、モモとミズーナは邪魔をしてはいけないと、アンマリアから離れていった。
「それにしても、卒業から結婚式までずいぶんと時間がかかりましたね」
「仕方ないですよ。王妃教育が大変でしたから」
「ああ、そうですね……」
モモの言葉に、まだ自分が学生だった頃のアンマリアの生活状況を思い出して、同情するかのように納得するミズーナであった。まだ自由に動いていたようには思うのだが、日によっては朝から晩まで拘束されていた。自分だったら耐え切れないと思うミズーナなのである。
そんな困難を乗り越えて、アンマリアはこの日、ついに王太子妃という立場となるのである。
思えば、アンマリアが自分の転生に気が付いてから早10年である。
まん丸と太ることが約束された子豚令嬢から、よくここまでやってこれたものである。
一歩間違えば断罪ルートもあったし、幾度となく命の危険すらもあった。本当によくここまで無事にやってこれたものだった。
様々な困難を乗り越えて、今一つのゴールを迎える。
準備を終えたアンマリアは、サキと一緒に会場へと向かう。
会場へと足を踏み入れると、中央の通路を挟んで、様々な人物が祝福に駆けつけていた。攻略対象、ライバル令嬢など、みんな勢ぞろいである。
この光景には、ついうるっときてしまうアンマリアである。同じように泣きそうになっているサキと支え合いながら、アンマリアとサキは王子たちの元へと歩いていく。
(できれば、この幸せが続きますように)
アンマリアの祈りとともに、ため込んだ祝福がサーロインの国を優しく包み込んだのだった。
―― 完 ――
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