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第九章 拡張版ミズーナ編
第494話 とんでもない置き土産
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エスカを見送った日の午後、城にアンマリアを訪ねてモモとタミールの二人がやって来た。
モモとタカーの婚約が決まってからというもの、実に初めての登城なのである。
「あら、二人ともどうしたのかしら」
部屋までやって来た二人を出迎え、アンマリアはにこやかに用事を確認していた。
アンマリアの様子もそうだが、部屋の中にいた人物を見てモモとタミールは驚きを隠せなかった。
「えっと、お姉様」
「何かしら、モモ」
気になって仕方のないモモは、戸惑いつつもアンマリアに質問をぶつける。
「あの、どうしてミズーナ王女殿下はいらっしゃるのでしょうか」
そう、アンマリアのいる部屋の奥で、ミズーナ王女がくつろいでいたのだ。
「本当ですね。卒業パーティーが終われば国に帰られるのではなかったのですか?」
タミールもこの驚きようである。
本来いないはずの人物が部屋にいれば、そりゃ驚くというものだ。
二人の驚きの声を聞いて、ミズーナ王女がゆっくりと振り返る。
「いたら悪いみたいに言わないで下さいな。大体、私がこうやって残っている原因はそこのアンマリアなんですからね」
「お姉様が?」
驚きを隠せないモモが、くるりとアンマリアへと視線を向けている。モモに視線を向けられてもまったく動じないアンマリア。
「一体何があったのですか、姉上」
タミールもたまらず尋ねてしまう。その反応を見て、アンマリアはにやりと笑っている。その表情に、思わずタミールは警戒をしてしまう。
「なにって、ミズーナ王女殿下の婚約者候補として、タミールを推しただけですよ」
「姉上?!」
アンマリアから告げられた現実に、タミールは思い切り驚いていた。どうやらタミールとしてはまったく予想していなかったようだ。
それも無理はない。アンマリアという共通項があるものの、交流自体はたかが知れていたのだから。寝耳に水にもなるものである。
「ぼ、ボクがミズーナ王女殿下と婚約ですって? お、おそれ多すぎますよ」
タミールとしては辞退したいようだ。だが、そんなタミールに対してアンマリアは追撃を繰り出し始める。
「私はいとことしてタミールの将来を案じているのよ。タミールはどことなく引っ込み思案だし、おじ様もおば様もどことなく動きが遅そうなんですから。となったら、私がやるしかないでしょう?」
「どういう理論なんですか、姉上」
アンマリアの言い分が理解できないと、タミールは珍しく大声で反抗の姿勢を見せている。
だが、そんなタミールの反抗も、実に虚しく終わってしまう。
「あらあら、これは確かにいい候補かもしれませんね」
「えっ?!」
アンマリアでもないミズーナ王女でもない声が部屋に響き渡り、タミールが思いきり固まっている。
陰に隠れるようにして座っていた人物が立ち上がり、アンマリアたちの前に姿を見せる。
姿を見せたのは、なんとベジタリウス王妃だった。最初から罠にかける気満々で待機してもらっていたのである。
「血縁関係としてはちょっと遠いですけれど、サーロイン王家とつながりが持てるのは、悪くはありませんね」
「あ、あわわわわわ……」
思わぬ王族の登場に、タミールは完全に震え上がっている。モモの方はまだ耐性があるらしく、どうにか耐えていた。大体はエスカのせいである。
「おじ様たちには改めて確認をしなければなりませんが、私たちのお父様とお母様は喜んで受け入れて下さりましたよ」
「おじ様、おば様……」
アンマリアが笑顔で告げると、タミールは完全に顔を青ざめさせていた。
「陛下に嬉しい報告ができて、実に喜ばしい限りです。タミール、一応はまだ候補者の一人に過ぎませんのでご安心なさい。決まりましたら、こちらから使者を送って報告しますのでね」
「は、はい……」
なんとも気の抜けた返事になるタミールである。驚きすぎて、意識が半分飛んでしまっているのだ。致し方ないのだ。
「ミズーナが決まれば、残すはレッタスだけです。こちらは国内で探しますゆえ、これ以上はご遠慮頂きますよ」
「承知致しました、ベジタリウス王妃殿下」
アンマリアは王妃に向けて頭を下げていた。
「では、もしもの時はよろしくお願いしますね、タミール」
「はい……」
にこりと微笑むミズーナ王女だが、なんとも気の抜けた返事しかできないタミールなのであった。
こうして、ミズーナ王女の婚約者騒ぎに巻き込まれてしまったタミール。
普通であれば隣国とはいえど王女の婚約者となれば大変名誉なことである。
ところが、今回最初に告げてきたのが自分のいとこであるアンマリアであった上に、当人とその母親からもお願いをされるというとんでも展開だったのだ。そのために、タミールの理解がまったく追いつかなかったわけなのだ。
モモからも祝福はされたものの、タミールの心境は複雑である。
はたして、ミズーナ王女の婚約者は誰になるのだろうか。
最後の最後に波乱を巻き起こされつつ、この翌日にベジタリウス王国に向けて戻ることとなったミズーナ王女たちなのであった。
モモとタカーの婚約が決まってからというもの、実に初めての登城なのである。
「あら、二人ともどうしたのかしら」
部屋までやって来た二人を出迎え、アンマリアはにこやかに用事を確認していた。
アンマリアの様子もそうだが、部屋の中にいた人物を見てモモとタミールは驚きを隠せなかった。
「えっと、お姉様」
「何かしら、モモ」
気になって仕方のないモモは、戸惑いつつもアンマリアに質問をぶつける。
「あの、どうしてミズーナ王女殿下はいらっしゃるのでしょうか」
そう、アンマリアのいる部屋の奥で、ミズーナ王女がくつろいでいたのだ。
「本当ですね。卒業パーティーが終われば国に帰られるのではなかったのですか?」
タミールもこの驚きようである。
本来いないはずの人物が部屋にいれば、そりゃ驚くというものだ。
二人の驚きの声を聞いて、ミズーナ王女がゆっくりと振り返る。
「いたら悪いみたいに言わないで下さいな。大体、私がこうやって残っている原因はそこのアンマリアなんですからね」
「お姉様が?」
驚きを隠せないモモが、くるりとアンマリアへと視線を向けている。モモに視線を向けられてもまったく動じないアンマリア。
「一体何があったのですか、姉上」
タミールもたまらず尋ねてしまう。その反応を見て、アンマリアはにやりと笑っている。その表情に、思わずタミールは警戒をしてしまう。
「なにって、ミズーナ王女殿下の婚約者候補として、タミールを推しただけですよ」
「姉上?!」
アンマリアから告げられた現実に、タミールは思い切り驚いていた。どうやらタミールとしてはまったく予想していなかったようだ。
それも無理はない。アンマリアという共通項があるものの、交流自体はたかが知れていたのだから。寝耳に水にもなるものである。
「ぼ、ボクがミズーナ王女殿下と婚約ですって? お、おそれ多すぎますよ」
タミールとしては辞退したいようだ。だが、そんなタミールに対してアンマリアは追撃を繰り出し始める。
「私はいとことしてタミールの将来を案じているのよ。タミールはどことなく引っ込み思案だし、おじ様もおば様もどことなく動きが遅そうなんですから。となったら、私がやるしかないでしょう?」
「どういう理論なんですか、姉上」
アンマリアの言い分が理解できないと、タミールは珍しく大声で反抗の姿勢を見せている。
だが、そんなタミールの反抗も、実に虚しく終わってしまう。
「あらあら、これは確かにいい候補かもしれませんね」
「えっ?!」
アンマリアでもないミズーナ王女でもない声が部屋に響き渡り、タミールが思いきり固まっている。
陰に隠れるようにして座っていた人物が立ち上がり、アンマリアたちの前に姿を見せる。
姿を見せたのは、なんとベジタリウス王妃だった。最初から罠にかける気満々で待機してもらっていたのである。
「血縁関係としてはちょっと遠いですけれど、サーロイン王家とつながりが持てるのは、悪くはありませんね」
「あ、あわわわわわ……」
思わぬ王族の登場に、タミールは完全に震え上がっている。モモの方はまだ耐性があるらしく、どうにか耐えていた。大体はエスカのせいである。
「おじ様たちには改めて確認をしなければなりませんが、私たちのお父様とお母様は喜んで受け入れて下さりましたよ」
「おじ様、おば様……」
アンマリアが笑顔で告げると、タミールは完全に顔を青ざめさせていた。
「陛下に嬉しい報告ができて、実に喜ばしい限りです。タミール、一応はまだ候補者の一人に過ぎませんのでご安心なさい。決まりましたら、こちらから使者を送って報告しますのでね」
「は、はい……」
なんとも気の抜けた返事になるタミールである。驚きすぎて、意識が半分飛んでしまっているのだ。致し方ないのだ。
「ミズーナが決まれば、残すはレッタスだけです。こちらは国内で探しますゆえ、これ以上はご遠慮頂きますよ」
「承知致しました、ベジタリウス王妃殿下」
アンマリアは王妃に向けて頭を下げていた。
「では、もしもの時はよろしくお願いしますね、タミール」
「はい……」
にこりと微笑むミズーナ王女だが、なんとも気の抜けた返事しかできないタミールなのであった。
こうして、ミズーナ王女の婚約者騒ぎに巻き込まれてしまったタミール。
普通であれば隣国とはいえど王女の婚約者となれば大変名誉なことである。
ところが、今回最初に告げてきたのが自分のいとこであるアンマリアであった上に、当人とその母親からもお願いをされるというとんでも展開だったのだ。そのために、タミールの理解がまったく追いつかなかったわけなのだ。
モモからも祝福はされたものの、タミールの心境は複雑である。
はたして、ミズーナ王女の婚約者は誰になるのだろうか。
最後の最後に波乱を巻き起こされつつ、この翌日にベジタリウス王国に向けて戻ることとなったミズーナ王女たちなのであった。
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