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第九章 拡張版ミズーナ編
第484話 卒業目前の大きな壁
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結局、冬の季節に入ってもいつもの光景が繰り広げられていた。
15歳にもなってぐずるエスカに、遠慮なくミズーナ王女だけではなくアンマリアやサキもやってきて勉強を見ている。いい年をした王女がぐずるって、一体どんだけ勉強が嫌いなのだろうか。これで商才があったり、発想力があったりするのだから、エスカ王女は本当によく分からない人物である。
同じ学年であるリブロ王子やレッタス王子にも来てもらって勉強をさせているものの、やっぱりあまり捗っているようではなかった。ただ、これで最後だという状況だけが、エスカをやる気を絞り出させていた。
「まったく、私たちヒロインや聖女たちも抑え込めなかったもやを一人だけ単独で捕まえられたのに、勉強は私たちよりもできないんですからね。ドヤ顔で自慢していたお返しをさせてもらいますよ」
「鬼、悪魔」
勉強を教えているミズーナ王女の言い分に、本気で不機嫌を露わにするエスカである。本当に困ったものだ。
「エスカ王女殿下、そこは公式間違っていますよ」
「えっ」
メチルに声を掛けられ驚くエスカ。指摘するのだから解かせてみたら、メチルは何の迷いもなくすらすらと解いてしまっていた。これには完全に言葉を失ってしまうエスカである。
なにせ、学園に通っていないメチルにあっさり問題を解かれてしまったのだから。三年間学園に通っていたエスカの立場がまったくないのだ。
「ほら、落ち込んでないで現実問題と向き合いなさい。ミール王国ってそんな程度なのねって思われたいの?」
「うう、分かった。分かったわよう!」
王国そのものの名誉を背負っていると言われたら、エスカもやる気にならざるを得なかった。
ミズーナ王女としては毎回これをやり続けてきたのだからたまったものじゃない。結局最後の最後までエスカに発破をかけ切ったのだ。まったくもってお疲れ様というものである。なにせ自分の勉強も普通にこなしながらである。
エスカに対してやるだけやり切ったミズーナ王女は、一抹の不安を抱えながらも日々過ごすのだった。
そうやって迎えた迎えた後期末試験の日。
「私はやれる、私はやれる、私はやれる……」
まるで呪文のように繰り返しながらぶつぶつと喋っているエスカ。同じ馬車に乗るミズーナ王女とメチルは困惑を隠せない。
「まったく、エスカってば試験の前っていっつもこうなの?」
「ええ、座学が苦手みたいでね。でも、今回は最後とあっていつもより酷いわ」
どういうわけか同じ馬車に乗り込んでいるアンマリアである。そのアンマリアが隣のエスカを眺めながらミズーナ王女に問えば、困った表情をしながら答えが返ってきた。言葉を聞く限り恒例行事のようである。
「それにしても、どうしてアンマリア様が乗っていらっしゃるのですか」
アンマリアがいる状況を不思議がるメチルに、アンマリアは笑顔で答える。
「魔法試験の担当を押し付けられたのよ。卒業と進級を掛けた最後の試験だからって、未来の王妃の手で試験を作って欲しいと懇願されたわ」
「そんなのでいいんですかね」
「いいと思うわ。なにせ武術型の方はサクラ様が出向いてますもの。それなりに難易度をそろえなければ不公平でしょとか言われたわ」
「人の心とかないんですかね……」
アンマリアの答えに、メチルが呆れた様子を見せていた。
それも当然だと思われる。なにせ剣術大会三年連続優勝という女傑が武術型の試験に出てくるのだ。模擬戦となったら誰も勝てるわけがないというものだ。いくらなんでもめちゃくちゃである。
「サクラに試験官をやらせるって本気なの?!」
ミズーナ王女もこの反応である。アンマリアが頷くとあんぐりと口を開けていた。
「ま、まあ、武術型の方々はご愁傷さまということで……。とりあえず今日の座学の試験よ」
さすがはミズーナ王女。あっさりと気持ちを切り替えている。
学園に到着すると、アンマリアと一緒に歩き始めるミズーナ王女とエスカ。しばらく進むと、アンマリアが立ち止まって二人に話し掛ける。
「それでは、私は明日の魔法試験の支度をして参りますので、お二人は座学試験を頑張って下さいませ」
「任せておいてよ。同じ転生者としてアンマリアには負けられませんからね」
「あ、赤点だけは絶対回避……」
自信たっぷりのミズーナ王女と震えるエスカ王女を見送ったアンマリアは、一人魔法試験の行われる訓練場へと向かった。
アンマリアが訓練場に到着すると、そこには思ってもみなかった人物が待っていた。
「やあ、アンマリア様。明日の試験の準備ですか」
「これはサクラ様。サクラ様もで?」
「ええ、その通りでございますよ」
学園を卒業したサクラは、腕を買われて騎士団へとタンと一緒に入団していた。本来ならば訓練の真っ最中のはずなのだが、試験の準備のために学園に出向いてきているようだった。
「どうですか、アンマリア様。試験の準備の前に準備運動でも」
「冗談はおやめ下さい。タン様が勝てなかった相手に、私が勝てるわけがないんです」
「ははっ、軽く打ち合うだけですよ。久しぶりに魔法試験の担当をするんですから、少し体を動かしておいた方がいいですよ」
「……それもそうですね」
そんなわけで、アンマリアはサクラと少し手合わせをする事になってしまった。
結果はいわずもがな、サクラの勝利である。
「よかった、アンマリア様の腕は鈍っておりませんね」
「そっちはさらに磨きがかかっているんですけど?!」
お互いに感想を言い合ってしばらく黙り込む二人。そして、大笑いをしたかと思えば、試験の準備をさっさと始めることにしたのだった。
この二人の関係性は変わっていなかったのである。
さて、こんな二人が行う翌日の実技試験。はたしてまともに試験が行えるのか、不安になってくる学園の教官たちなのだった。
15歳にもなってぐずるエスカに、遠慮なくミズーナ王女だけではなくアンマリアやサキもやってきて勉強を見ている。いい年をした王女がぐずるって、一体どんだけ勉強が嫌いなのだろうか。これで商才があったり、発想力があったりするのだから、エスカ王女は本当によく分からない人物である。
同じ学年であるリブロ王子やレッタス王子にも来てもらって勉強をさせているものの、やっぱりあまり捗っているようではなかった。ただ、これで最後だという状況だけが、エスカをやる気を絞り出させていた。
「まったく、私たちヒロインや聖女たちも抑え込めなかったもやを一人だけ単独で捕まえられたのに、勉強は私たちよりもできないんですからね。ドヤ顔で自慢していたお返しをさせてもらいますよ」
「鬼、悪魔」
勉強を教えているミズーナ王女の言い分に、本気で不機嫌を露わにするエスカである。本当に困ったものだ。
「エスカ王女殿下、そこは公式間違っていますよ」
「えっ」
メチルに声を掛けられ驚くエスカ。指摘するのだから解かせてみたら、メチルは何の迷いもなくすらすらと解いてしまっていた。これには完全に言葉を失ってしまうエスカである。
なにせ、学園に通っていないメチルにあっさり問題を解かれてしまったのだから。三年間学園に通っていたエスカの立場がまったくないのだ。
「ほら、落ち込んでないで現実問題と向き合いなさい。ミール王国ってそんな程度なのねって思われたいの?」
「うう、分かった。分かったわよう!」
王国そのものの名誉を背負っていると言われたら、エスカもやる気にならざるを得なかった。
ミズーナ王女としては毎回これをやり続けてきたのだからたまったものじゃない。結局最後の最後までエスカに発破をかけ切ったのだ。まったくもってお疲れ様というものである。なにせ自分の勉強も普通にこなしながらである。
エスカに対してやるだけやり切ったミズーナ王女は、一抹の不安を抱えながらも日々過ごすのだった。
そうやって迎えた迎えた後期末試験の日。
「私はやれる、私はやれる、私はやれる……」
まるで呪文のように繰り返しながらぶつぶつと喋っているエスカ。同じ馬車に乗るミズーナ王女とメチルは困惑を隠せない。
「まったく、エスカってば試験の前っていっつもこうなの?」
「ええ、座学が苦手みたいでね。でも、今回は最後とあっていつもより酷いわ」
どういうわけか同じ馬車に乗り込んでいるアンマリアである。そのアンマリアが隣のエスカを眺めながらミズーナ王女に問えば、困った表情をしながら答えが返ってきた。言葉を聞く限り恒例行事のようである。
「それにしても、どうしてアンマリア様が乗っていらっしゃるのですか」
アンマリアがいる状況を不思議がるメチルに、アンマリアは笑顔で答える。
「魔法試験の担当を押し付けられたのよ。卒業と進級を掛けた最後の試験だからって、未来の王妃の手で試験を作って欲しいと懇願されたわ」
「そんなのでいいんですかね」
「いいと思うわ。なにせ武術型の方はサクラ様が出向いてますもの。それなりに難易度をそろえなければ不公平でしょとか言われたわ」
「人の心とかないんですかね……」
アンマリアの答えに、メチルが呆れた様子を見せていた。
それも当然だと思われる。なにせ剣術大会三年連続優勝という女傑が武術型の試験に出てくるのだ。模擬戦となったら誰も勝てるわけがないというものだ。いくらなんでもめちゃくちゃである。
「サクラに試験官をやらせるって本気なの?!」
ミズーナ王女もこの反応である。アンマリアが頷くとあんぐりと口を開けていた。
「ま、まあ、武術型の方々はご愁傷さまということで……。とりあえず今日の座学の試験よ」
さすがはミズーナ王女。あっさりと気持ちを切り替えている。
学園に到着すると、アンマリアと一緒に歩き始めるミズーナ王女とエスカ。しばらく進むと、アンマリアが立ち止まって二人に話し掛ける。
「それでは、私は明日の魔法試験の支度をして参りますので、お二人は座学試験を頑張って下さいませ」
「任せておいてよ。同じ転生者としてアンマリアには負けられませんからね」
「あ、赤点だけは絶対回避……」
自信たっぷりのミズーナ王女と震えるエスカ王女を見送ったアンマリアは、一人魔法試験の行われる訓練場へと向かった。
アンマリアが訓練場に到着すると、そこには思ってもみなかった人物が待っていた。
「やあ、アンマリア様。明日の試験の準備ですか」
「これはサクラ様。サクラ様もで?」
「ええ、その通りでございますよ」
学園を卒業したサクラは、腕を買われて騎士団へとタンと一緒に入団していた。本来ならば訓練の真っ最中のはずなのだが、試験の準備のために学園に出向いてきているようだった。
「どうですか、アンマリア様。試験の準備の前に準備運動でも」
「冗談はおやめ下さい。タン様が勝てなかった相手に、私が勝てるわけがないんです」
「ははっ、軽く打ち合うだけですよ。久しぶりに魔法試験の担当をするんですから、少し体を動かしておいた方がいいですよ」
「……それもそうですね」
そんなわけで、アンマリアはサクラと少し手合わせをする事になってしまった。
結果はいわずもがな、サクラの勝利である。
「よかった、アンマリア様の腕は鈍っておりませんね」
「そっちはさらに磨きがかかっているんですけど?!」
お互いに感想を言い合ってしばらく黙り込む二人。そして、大笑いをしたかと思えば、試験の準備をさっさと始めることにしたのだった。
この二人の関係性は変わっていなかったのである。
さて、こんな二人が行う翌日の実技試験。はたしてまともに試験が行えるのか、不安になってくる学園の教官たちなのだった。
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