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第九章 拡張版ミズーナ編
第482話 あとはすっきりと
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「おおおーんっ!」
大きな声を上げて浄化されていく怨念のもや。大した脅威ではなかったものの、そのしぶとさに疲れ果ててしまったミズーナ王女たちである。
「よ、ようやく浄化できましたね……」
「うう、私ってばまだまだ未熟ですね」
浄化魔法の使える四人が揃いも揃ってその場にへたり込んでいた。そのくらいにあの怨念のもやは強敵だったのである。
魔法に関しては、その想いの強さが影響するというのをまざまざと見せつけられた感じである。
「あのもやは私の闇の魔力にも反応をしていたようですし、この世界への執着が相当に強かったんでしょうね。ま、私の敵ではなかったですけれど」
もやを寄せ付けずに重力魔法で翻弄してみせたエスカはドヤ顔を決めている。悔しいものだがその通りなのでミズーナ王女たちは何も言えずに座り込んでいた。
「でも、よくエスカも対応できたわね。あのもや、エスカの体を乗っ取る気満々だったみたいだけど」
「重力魔法様々ね」
何気に笑顔でピースを決めるエスカである。
だが、同時にエスカのお腹から大きな音が鳴り響く。魔法の使い過ぎでお腹が減ったようだ。
「……せっかくの収穫祭だから、また何か食べましょう」
顔を真っ赤にしながら、エスカはミズーナ王女たちに提案する。
すると、ミズーナ王女たちは顔を見合わせた後、エスカの提案を受け入れたのだった。
アンマリアたちが去った怨念のもやが発生した場所に、魔王が再びやって来る。
「まったく、この我の感知すらも潜り抜けるとは、大した人間がいたものだな」
魔王は自分の立つ場所の足元を見る。そこには呪具のかけらのようなものが落ちていた。
「ふむ、壊れた呪具のかけらか。どうやら首飾り系の一部を切り離していたようだな。まったくこざかしい真似を……」
ギリッと歯を食いしばったかと思うと、魔王はその呪具のかけらを思い切り握り潰していた。
「念のためにあの小屋の跡地を調べておくか。これだけこざかしいのであれば、隠蔽のもうひとつやふたつはあるやもしれぬからな」
魔王は魔法を使いながら、小屋のがれきを排除し始めた。どけるのも面倒なので、浮かせては砕き、浮かせては砕きを繰り返していく。呪具と怨念の痕跡を微塵たりとも消し去るためである。
「それにしても、この辺りにはまだ魔力の影響が残っていて人が近付けなくなっているのは実に都合がよい。おかげで人目を気にせずに後始末ができる」
ミズーナ王女たちが浄化したもやの置き土産である人を遠ざける魔法。浄化されたにもかかわらず、蓄積された魔力の影響かまだまだ解けずに残っているようだ。
そんな状況下で、魔王は不本意ながら今回の事案の後片付けを続けている。元はといえば自分が呪具の管理を怠ったのが原因なので、本当に渋々といった感じである。
「よし、こんなものでいいだろう。隅々までチェックはしたし、これでもう面倒は起こらぬはずだ」
しっかりと最終確認をした魔王は、ほっとした様子で立ち尽くしている。
「しかし、なぜ我が人間たちのことを心配せねばならぬのだ。くそっ、あのエスカとかいう王女のせいで調子が狂いっぱなしだ」
そう吐き捨てる魔王。そして、自分の治める領地へと人知れず戻っていく。
魔王が去ったその場所には、砂粒のごとく完全に潰された小屋の残骸だけが残されていたのだった。
「へっくしょん!」
魔王が去った同時刻、大きなエスカのくしゃみが辺りに響き渡る。
「エスカ様、お寒いのでしたらこれを羽織られますか?」
護衛が自分の羽織っているマントを差し出している。
「あ、ありがとうございます。多分、誰かが噂をしていただけなので大丈夫ですよ」
いい感じに焼けた肉串を手にしたまま、エスカは護衛の申し出を断っていた。人の好意を断る割には、食い意地だけはしっかり張っているようである。
たくさん頬張るエスカを見ながら、アンマリアたちも微笑ましくその様子を見守っていた。
ただ、楽しいばかりではいられなかった。
なにせ今回の事案では、自分たちだけではとても歯が立たなかったのだから。光属性を持っていることで慢心してしまったのだろう。四人もいながらなめてかかった結果があの様である。収穫祭を楽しみながらも、反省しきりのミズーナ王女たちである。
エスカと魔王の助力がなければ、一体どうなっていたやら。終わった事とはいえ、ミズーナ王女たちの心に影を落とすのだった。
「さて、十分楽しんだから、城に戻りましょうか」
白い歯を見せて笑うエスカだが、あちこちに食べた後が見受けられる。その姿に、ミズーナ王女たちは耐えられずに笑ってしまう。
「ちょっと、何を笑っているのよ」
「恐れ入ります、エスカ王女殿下」
メチルがそっと近づいてハンカチで口周りを拭う。べっとりとついた汚れに、エスカは恥ずかしくなっているようだった。
「そ、そういうことね。まぁそれなら仕方ないわ」
真っ赤になりながら顔を背けるエスカ。これにはすっかり鬱屈とした気分が飛んでしまう。
いろいろと課題は浮き彫りになったものの、エスカのおかげで明るく城に戻れそうなミズーナ王女たちなのであった。
大きな声を上げて浄化されていく怨念のもや。大した脅威ではなかったものの、そのしぶとさに疲れ果ててしまったミズーナ王女たちである。
「よ、ようやく浄化できましたね……」
「うう、私ってばまだまだ未熟ですね」
浄化魔法の使える四人が揃いも揃ってその場にへたり込んでいた。そのくらいにあの怨念のもやは強敵だったのである。
魔法に関しては、その想いの強さが影響するというのをまざまざと見せつけられた感じである。
「あのもやは私の闇の魔力にも反応をしていたようですし、この世界への執着が相当に強かったんでしょうね。ま、私の敵ではなかったですけれど」
もやを寄せ付けずに重力魔法で翻弄してみせたエスカはドヤ顔を決めている。悔しいものだがその通りなのでミズーナ王女たちは何も言えずに座り込んでいた。
「でも、よくエスカも対応できたわね。あのもや、エスカの体を乗っ取る気満々だったみたいだけど」
「重力魔法様々ね」
何気に笑顔でピースを決めるエスカである。
だが、同時にエスカのお腹から大きな音が鳴り響く。魔法の使い過ぎでお腹が減ったようだ。
「……せっかくの収穫祭だから、また何か食べましょう」
顔を真っ赤にしながら、エスカはミズーナ王女たちに提案する。
すると、ミズーナ王女たちは顔を見合わせた後、エスカの提案を受け入れたのだった。
アンマリアたちが去った怨念のもやが発生した場所に、魔王が再びやって来る。
「まったく、この我の感知すらも潜り抜けるとは、大した人間がいたものだな」
魔王は自分の立つ場所の足元を見る。そこには呪具のかけらのようなものが落ちていた。
「ふむ、壊れた呪具のかけらか。どうやら首飾り系の一部を切り離していたようだな。まったくこざかしい真似を……」
ギリッと歯を食いしばったかと思うと、魔王はその呪具のかけらを思い切り握り潰していた。
「念のためにあの小屋の跡地を調べておくか。これだけこざかしいのであれば、隠蔽のもうひとつやふたつはあるやもしれぬからな」
魔王は魔法を使いながら、小屋のがれきを排除し始めた。どけるのも面倒なので、浮かせては砕き、浮かせては砕きを繰り返していく。呪具と怨念の痕跡を微塵たりとも消し去るためである。
「それにしても、この辺りにはまだ魔力の影響が残っていて人が近付けなくなっているのは実に都合がよい。おかげで人目を気にせずに後始末ができる」
ミズーナ王女たちが浄化したもやの置き土産である人を遠ざける魔法。浄化されたにもかかわらず、蓄積された魔力の影響かまだまだ解けずに残っているようだ。
そんな状況下で、魔王は不本意ながら今回の事案の後片付けを続けている。元はといえば自分が呪具の管理を怠ったのが原因なので、本当に渋々といった感じである。
「よし、こんなものでいいだろう。隅々までチェックはしたし、これでもう面倒は起こらぬはずだ」
しっかりと最終確認をした魔王は、ほっとした様子で立ち尽くしている。
「しかし、なぜ我が人間たちのことを心配せねばならぬのだ。くそっ、あのエスカとかいう王女のせいで調子が狂いっぱなしだ」
そう吐き捨てる魔王。そして、自分の治める領地へと人知れず戻っていく。
魔王が去ったその場所には、砂粒のごとく完全に潰された小屋の残骸だけが残されていたのだった。
「へっくしょん!」
魔王が去った同時刻、大きなエスカのくしゃみが辺りに響き渡る。
「エスカ様、お寒いのでしたらこれを羽織られますか?」
護衛が自分の羽織っているマントを差し出している。
「あ、ありがとうございます。多分、誰かが噂をしていただけなので大丈夫ですよ」
いい感じに焼けた肉串を手にしたまま、エスカは護衛の申し出を断っていた。人の好意を断る割には、食い意地だけはしっかり張っているようである。
たくさん頬張るエスカを見ながら、アンマリアたちも微笑ましくその様子を見守っていた。
ただ、楽しいばかりではいられなかった。
なにせ今回の事案では、自分たちだけではとても歯が立たなかったのだから。光属性を持っていることで慢心してしまったのだろう。四人もいながらなめてかかった結果があの様である。収穫祭を楽しみながらも、反省しきりのミズーナ王女たちである。
エスカと魔王の助力がなければ、一体どうなっていたやら。終わった事とはいえ、ミズーナ王女たちの心に影を落とすのだった。
「さて、十分楽しんだから、城に戻りましょうか」
白い歯を見せて笑うエスカだが、あちこちに食べた後が見受けられる。その姿に、ミズーナ王女たちは耐えられずに笑ってしまう。
「ちょっと、何を笑っているのよ」
「恐れ入ります、エスカ王女殿下」
メチルがそっと近づいてハンカチで口周りを拭う。べっとりとついた汚れに、エスカは恥ずかしくなっているようだった。
「そ、そういうことね。まぁそれなら仕方ないわ」
真っ赤になりながら顔を背けるエスカ。これにはすっかり鬱屈とした気分が飛んでしまう。
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