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第九章 拡張版ミズーナ編
第473話 フリーな3日目
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学園祭3日目は、剣術大会はお休みである。こうでもしないと剣術大会参加者が学園祭を楽しめないためだ。
この日ばかりは、リブロ王子とレッタス王子も、ミズーナ王女たちと一緒に行動をしている。
ただ、このグループに入ればもれなくエスカが暴走する。なので、メチルには悪いと思いながらも、ミズーナ王女はエスカをメチルに押し付けて商会の手伝いをさせていた。
「よかったのですか、あれで?」
リブロ王子から真剣な表情で尋ねられるミズーナ王女。
「いいんです。エスカがいては落ち着いて回れませんから」
すました顔で淡々とと答えるミズーナ王女である。エスカに対してはまったく遠慮がない。
エスカに対してはアンマリアもあまり遠慮がないので、むしろエスカの性格によるところによる結果かもしれない。実際、学園祭巡りから外されたというのに、当のエスカは「こっちは任せておいて」と親指を立てて言い放つくらいだった。ポジティブというかなんというか、ちょっと変わり者なのである。
そうやって、ミズーナ王女はリブロ王子とレッタス王子と一緒に学園祭を巡っている。
しばらく歩いていると、目の前に見知った人物がいたのでリブロ王子が声を掛けている。
「これはリブロ殿下。お会いするとは思ってもみませんでした」
「お久しぶりでございます、リブロ殿下、レッタス殿下、ミズーナ王女殿下」
そこに居たのは、モモとタミールだった。試合がない日ということで、久しぶりに家族で一緒に巡っているようだった。それが証拠に、少し離れた場所にはファッティ夫妻の姿も見える。
「ミズーナ王女殿下はボンジール商会の出店場所にいるはずではなかったのでしょうか」
モモに尋ねられるミズーナ王女。すると、笑いながらミズーナ王女は答えている。
「エスカが行けってうるさいものですから、メチルを預けて二人に任せていますよ。それに……」
何かを言いかけて、一度リブロ王子とレッタス王子の方を見るミズーナ王女。その視線に、二人はどうしたかなというような表情を見せている。
「王子二人だけで歩いていると、令嬢たちに囲まれて大変でしょうからね。牽制のために私が同行しているのです」
頬に手を当てて大きくため息を吐くミズーナ王女だった。
実際、レッタス王子とリブロ王子は顔立ちが整っている。こういう創作世界のキャラクターというのは、本当に反則的なくらい美形なのだ。そのせいで、虎視眈々と声を掛けるタイミングを見計らう令嬢たちの姿があちこちにあったのだ。
フリーであるレッタス王子はもちろんのこと、サキという婚約者がいるリブロ王子に対してもだ。王族と話ができるというのは、それだけで一種のステータスなのだから、それはもう必死といってもいいくらいなのだ。そんなわけで、ミズーナ王女は虫除けとして同行しているわけなのである。
「とはいえ、今日もエスカをメチルに押し付けてしまいましたから、戻ったら怒られるでしょうね」
再びため息を吐くミズーナ王女なのであった。
「まあまあ、学生として楽しめるのは今年が最後ですから、細かいことは抜きにして楽しみましょう」
「そうですね、モモ」
焦ったように取り繕うとするモモの言葉に、ミズーナ王女は素直に頷いていた。
「お父様、お母様、私たちは殿下たちと一緒に見て回っていますね」
「おお、これは殿下方。気が付かずに申し訳ございません」
「ファッティ卿、気にしなくてもよいですよ。モモたちとご一緒させてもらうけれど、構わないかな?」
「はい、もちろんですとも。娘たちをよろしくお頼み申します」
ファッティ伯爵と夫人は、リブロ王子たちに頭を下げていた。これで問題なく五人で見て回れるというわけである。
剣術大会参加者は敗退しない限りはほぼ拘束されるために、この唯一の自由な見学時間は貴重なものだった。まあ、アンマリアのように自由にうろつく学生もいないことはないのだが。
ミズーナ王女たちは、王子たちのクラスメイトたちの出し物を見に行ったり、他の商会の店を見に行ったりと、かなり気ままに学園祭を楽しんだようである。
「いやまぁ、こんな楽しいものがあって、サーロイン王国が羨ましい限りというものだよ」
「それでしたら、ベジタリウス王国も学園を作ればよいのでは?」
レッタス王子が笑いながら言うものだから、リブロ王子が冷静に意見を述べている。
「それはそうですけれど、ベジタリウス王国にそのような余裕があるかと言われたら、それまでですね」
ミズーナ王女も苦笑いである。
「そんなに経済事情がよろしくなかったでしたっけ?」
つい、口を挟んでしまうモモである。
「どちらかといえば、国内事情かな。内陸で寒いということもあってか、あまり領地以外への移動というのを好みませんからね」
「なるほどねぇ……」
レッタス王子の言い分に、一定の理解を示すリブロ王子たちである。
「ですが、この留学を経て私たちの考えも変わりましたから、国に戻れば提案をしてみようと思います」
「それはいいですね。設立するとなれば、サーロイン王国としても援助は惜しまないと思います」
笑い合う王子を見ながら、ミズーナ王女は満足そうに笑顔を見せている。
「ミズーナもそう思うだろ?」
「ええ、もちろんですよ」
急に話を振られても、慌てることなく同意するミズーナ王女。意外と冷静だったのである。
明日は一気に剣術大会の決勝までが消化される。
たった一日の楽しめる日を、精一杯楽しんだリブロ王子たち。その姿に、ミズーナ王女も満足な表情を見せていたのだった。
この日ばかりは、リブロ王子とレッタス王子も、ミズーナ王女たちと一緒に行動をしている。
ただ、このグループに入ればもれなくエスカが暴走する。なので、メチルには悪いと思いながらも、ミズーナ王女はエスカをメチルに押し付けて商会の手伝いをさせていた。
「よかったのですか、あれで?」
リブロ王子から真剣な表情で尋ねられるミズーナ王女。
「いいんです。エスカがいては落ち着いて回れませんから」
すました顔で淡々とと答えるミズーナ王女である。エスカに対してはまったく遠慮がない。
エスカに対してはアンマリアもあまり遠慮がないので、むしろエスカの性格によるところによる結果かもしれない。実際、学園祭巡りから外されたというのに、当のエスカは「こっちは任せておいて」と親指を立てて言い放つくらいだった。ポジティブというかなんというか、ちょっと変わり者なのである。
そうやって、ミズーナ王女はリブロ王子とレッタス王子と一緒に学園祭を巡っている。
しばらく歩いていると、目の前に見知った人物がいたのでリブロ王子が声を掛けている。
「これはリブロ殿下。お会いするとは思ってもみませんでした」
「お久しぶりでございます、リブロ殿下、レッタス殿下、ミズーナ王女殿下」
そこに居たのは、モモとタミールだった。試合がない日ということで、久しぶりに家族で一緒に巡っているようだった。それが証拠に、少し離れた場所にはファッティ夫妻の姿も見える。
「ミズーナ王女殿下はボンジール商会の出店場所にいるはずではなかったのでしょうか」
モモに尋ねられるミズーナ王女。すると、笑いながらミズーナ王女は答えている。
「エスカが行けってうるさいものですから、メチルを預けて二人に任せていますよ。それに……」
何かを言いかけて、一度リブロ王子とレッタス王子の方を見るミズーナ王女。その視線に、二人はどうしたかなというような表情を見せている。
「王子二人だけで歩いていると、令嬢たちに囲まれて大変でしょうからね。牽制のために私が同行しているのです」
頬に手を当てて大きくため息を吐くミズーナ王女だった。
実際、レッタス王子とリブロ王子は顔立ちが整っている。こういう創作世界のキャラクターというのは、本当に反則的なくらい美形なのだ。そのせいで、虎視眈々と声を掛けるタイミングを見計らう令嬢たちの姿があちこちにあったのだ。
フリーであるレッタス王子はもちろんのこと、サキという婚約者がいるリブロ王子に対してもだ。王族と話ができるというのは、それだけで一種のステータスなのだから、それはもう必死といってもいいくらいなのだ。そんなわけで、ミズーナ王女は虫除けとして同行しているわけなのである。
「とはいえ、今日もエスカをメチルに押し付けてしまいましたから、戻ったら怒られるでしょうね」
再びため息を吐くミズーナ王女なのであった。
「まあまあ、学生として楽しめるのは今年が最後ですから、細かいことは抜きにして楽しみましょう」
「そうですね、モモ」
焦ったように取り繕うとするモモの言葉に、ミズーナ王女は素直に頷いていた。
「お父様、お母様、私たちは殿下たちと一緒に見て回っていますね」
「おお、これは殿下方。気が付かずに申し訳ございません」
「ファッティ卿、気にしなくてもよいですよ。モモたちとご一緒させてもらうけれど、構わないかな?」
「はい、もちろんですとも。娘たちをよろしくお頼み申します」
ファッティ伯爵と夫人は、リブロ王子たちに頭を下げていた。これで問題なく五人で見て回れるというわけである。
剣術大会参加者は敗退しない限りはほぼ拘束されるために、この唯一の自由な見学時間は貴重なものだった。まあ、アンマリアのように自由にうろつく学生もいないことはないのだが。
ミズーナ王女たちは、王子たちのクラスメイトたちの出し物を見に行ったり、他の商会の店を見に行ったりと、かなり気ままに学園祭を楽しんだようである。
「いやまぁ、こんな楽しいものがあって、サーロイン王国が羨ましい限りというものだよ」
「それでしたら、ベジタリウス王国も学園を作ればよいのでは?」
レッタス王子が笑いながら言うものだから、リブロ王子が冷静に意見を述べている。
「それはそうですけれど、ベジタリウス王国にそのような余裕があるかと言われたら、それまでですね」
ミズーナ王女も苦笑いである。
「そんなに経済事情がよろしくなかったでしたっけ?」
つい、口を挟んでしまうモモである。
「どちらかといえば、国内事情かな。内陸で寒いということもあってか、あまり領地以外への移動というのを好みませんからね」
「なるほどねぇ……」
レッタス王子の言い分に、一定の理解を示すリブロ王子たちである。
「ですが、この留学を経て私たちの考えも変わりましたから、国に戻れば提案をしてみようと思います」
「それはいいですね。設立するとなれば、サーロイン王国としても援助は惜しまないと思います」
笑い合う王子を見ながら、ミズーナ王女は満足そうに笑顔を見せている。
「ミズーナもそう思うだろ?」
「ええ、もちろんですよ」
急に話を振られても、慌てることなく同意するミズーナ王女。意外と冷静だったのである。
明日は一気に剣術大会の決勝までが消化される。
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