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第九章 拡張版ミズーナ編
第455話 現実で無双は難しいようです
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恐ろしいまでの魔物の咆哮が聞こえてくる。本当に魔物たちがクッケン湖に集まってきているのだ。
「ほほう、これはなかなかな数じゃないか」
ミスミ教官は剣を構えている。
「だが、この程度の魔物の数、私にとっては不足だな!」
ミスミ教官が単身で魔物の群れに突っ込んでいく。バッサーシの血筋はこれだから困るというものだ。
いきなり突撃していくものだから、ミズーナ王女たちはあんぐりと口を開けている。だが、すぐに我に返って魔物へと目を向ける。
「さすがにアンマリアのように剣技は行えないけれど、ミスミ教官を支援するわよ」
「あったり前でしょ」
「任せて下さい」
ミズーナ王女にエスカとメチルも続く。
「さあ、魔物どもよ。この私の剣の錆となれ!」
襲い来る魔物たちをばっさばっさと切り捨てていくミスミ教官。まるで無双系ゲームの主人公のように気持ちいいくらいに魔物を蹴散らしていっている。
「ふわぁ~、さすがはバッサーシ辺境伯の血筋だわ……」
ばこーんばこーんと吹き飛んでいく魔物を見ながら、エスカが呆れたように呟いている。
「それにしても、魔物氾濫と言っていた割には、魔物が少ないくないかしらね」
「私も、そんな気がします」
ミズーナ王女とメチルの二人が嫌な予感がしたらしく、そんな風に話している。
なんといっても今回の魔物氾濫は魔王が見つけて手を加えている。もしかしたら、その影響が出た可能性があるではないかとミズーナ王女たちは見たのだ。
「濡れ衣を着せるのをやめろ。魔物ごときにそんな能力があるか」
「魔王?!」
警戒するミズーナ王女たちは、突然の声に驚いている。
「単純に魔物たちが急に怯えだしただけだ。魔物氾濫は魔物の種類が様々だ。特に今回のような急な発生の場合はランクがばらつく」
ミズーナ王女たちの思考を呼んだ上で、魔王は説明している。そして、前線に向けて指を差す。
「おそらくはあの女のせいで魔物の多くがびびっているのだろう。強い魔物は慎重だし、そのせいで今のところは緩いという感じだ。行き場のない魔物どもは最終的にはこちらに押しかけてくるだろう」
魔王は言い切ると頭を勢いよくかき始める。
「ああ、くそっ。人間にいいように使われるなどあってなるものか。我は静観に徹する。あとはお前たちで適当にやっておれ」
「分かりました。エスカの頼みを聞いて下さってありがとうございます」
「礼などいい。さらばだ」
言うだけ言うと、魔王はその場から姿を消した。
ミズーナ王女が再び魔物たちの方へと視線を向けると、エスカが加わって魔物が吹き飛ぶ勢いが増していた。その様子はまるで波が岸壁や防波堤にぶつかるよう感じである。
「私たち、要りますかね?」
「今のところは必要ないかもだけど、魔王が話していた内容が気になるから警戒は続けましょう」
「分かりました」
魔物はそのほとんどがミスミ教官とエスカの二人でほとんど倒されているが、時々漏れてくる魔物をミズーナ王女とメチルで捌いている。リブロ王子たちは後方でただその状況を見守るばかりである。
バッサーシ辺境伯の兵士たちも加わって戦っているが、魔物の数が一向に減らない。
さすがにこの状況はおかしいと、後方で支援するミズーナ王女とメチルが感じ始めていた。
さらには前方で暴れるミスミ教官も、数の多さに徐々に疲労の色を見せ始めていた。
「ええい、さすがにここまで長い時間を戦い続けたことはない。雑魚とはいえ、さすがに厳しくなってきたな」
歴戦の騎士たるミスミ教官であっても、さすがの持久戦ともなると消耗しているようだった。
消耗が激しくなり、雑魚にも少してこずり出した頃、ミズーナ王女たちは急激な魔力の圧を感じる。
「な、なんなの、この魔力は?!」
「わ、分かりません。でも、不思議と危険そうではないのです」
驚くミズーナ王女に、戸惑うメチル。一体何が起きているというのだろうか。
「と、とにかくできてたら対処します。今はミスミ教官とエスカの援護ですよ」
「はいっ!」
「任せておいて」
知らない間にアルーも参戦していた。というのも、前線の二人の疲弊が見えてきたからだ。なので、攻撃の手を増やしたというわけである。
今は精霊とはいえ、元々はメチル・コール子爵令嬢という人間だ。その感覚は今もちゃんと残っている。人間まで巻き込んで魔法をぶっ放すような真似はしないのである。
しばらくしてようやく魔物の勢いが落ちてきた。
「はあはあ、ようやく終わりか。これだけ戦ったのは、一体何年ぶりだかな……」
さすがのミスミ教官からも限界が来ているような声が漏れ出ている。
だが、そこへ狙いすましたかのように何かが飛んできた。
「危ない!」
エスカが叫んで助けに入るが、このままでは二人に飛んできた何かが命中してしまう。突然のことに反応が遅れたミズーナ王女たちでは間に合わない。
ダメかと思ったその時だった。
その飛んできた何かが、突然消滅したのである。
何が起きたのか分からず、呆然とするミズーナ王女たち。
ところが、しばらくすると予想だにしなかったものがそこに姿を現したのだった。
「ほほう、これはなかなかな数じゃないか」
ミスミ教官は剣を構えている。
「だが、この程度の魔物の数、私にとっては不足だな!」
ミスミ教官が単身で魔物の群れに突っ込んでいく。バッサーシの血筋はこれだから困るというものだ。
いきなり突撃していくものだから、ミズーナ王女たちはあんぐりと口を開けている。だが、すぐに我に返って魔物へと目を向ける。
「さすがにアンマリアのように剣技は行えないけれど、ミスミ教官を支援するわよ」
「あったり前でしょ」
「任せて下さい」
ミズーナ王女にエスカとメチルも続く。
「さあ、魔物どもよ。この私の剣の錆となれ!」
襲い来る魔物たちをばっさばっさと切り捨てていくミスミ教官。まるで無双系ゲームの主人公のように気持ちいいくらいに魔物を蹴散らしていっている。
「ふわぁ~、さすがはバッサーシ辺境伯の血筋だわ……」
ばこーんばこーんと吹き飛んでいく魔物を見ながら、エスカが呆れたように呟いている。
「それにしても、魔物氾濫と言っていた割には、魔物が少ないくないかしらね」
「私も、そんな気がします」
ミズーナ王女とメチルの二人が嫌な予感がしたらしく、そんな風に話している。
なんといっても今回の魔物氾濫は魔王が見つけて手を加えている。もしかしたら、その影響が出た可能性があるではないかとミズーナ王女たちは見たのだ。
「濡れ衣を着せるのをやめろ。魔物ごときにそんな能力があるか」
「魔王?!」
警戒するミズーナ王女たちは、突然の声に驚いている。
「単純に魔物たちが急に怯えだしただけだ。魔物氾濫は魔物の種類が様々だ。特に今回のような急な発生の場合はランクがばらつく」
ミズーナ王女たちの思考を呼んだ上で、魔王は説明している。そして、前線に向けて指を差す。
「おそらくはあの女のせいで魔物の多くがびびっているのだろう。強い魔物は慎重だし、そのせいで今のところは緩いという感じだ。行き場のない魔物どもは最終的にはこちらに押しかけてくるだろう」
魔王は言い切ると頭を勢いよくかき始める。
「ああ、くそっ。人間にいいように使われるなどあってなるものか。我は静観に徹する。あとはお前たちで適当にやっておれ」
「分かりました。エスカの頼みを聞いて下さってありがとうございます」
「礼などいい。さらばだ」
言うだけ言うと、魔王はその場から姿を消した。
ミズーナ王女が再び魔物たちの方へと視線を向けると、エスカが加わって魔物が吹き飛ぶ勢いが増していた。その様子はまるで波が岸壁や防波堤にぶつかるよう感じである。
「私たち、要りますかね?」
「今のところは必要ないかもだけど、魔王が話していた内容が気になるから警戒は続けましょう」
「分かりました」
魔物はそのほとんどがミスミ教官とエスカの二人でほとんど倒されているが、時々漏れてくる魔物をミズーナ王女とメチルで捌いている。リブロ王子たちは後方でただその状況を見守るばかりである。
バッサーシ辺境伯の兵士たちも加わって戦っているが、魔物の数が一向に減らない。
さすがにこの状況はおかしいと、後方で支援するミズーナ王女とメチルが感じ始めていた。
さらには前方で暴れるミスミ教官も、数の多さに徐々に疲労の色を見せ始めていた。
「ええい、さすがにここまで長い時間を戦い続けたことはない。雑魚とはいえ、さすがに厳しくなってきたな」
歴戦の騎士たるミスミ教官であっても、さすがの持久戦ともなると消耗しているようだった。
消耗が激しくなり、雑魚にも少してこずり出した頃、ミズーナ王女たちは急激な魔力の圧を感じる。
「な、なんなの、この魔力は?!」
「わ、分かりません。でも、不思議と危険そうではないのです」
驚くミズーナ王女に、戸惑うメチル。一体何が起きているというのだろうか。
「と、とにかくできてたら対処します。今はミスミ教官とエスカの援護ですよ」
「はいっ!」
「任せておいて」
知らない間にアルーも参戦していた。というのも、前線の二人の疲弊が見えてきたからだ。なので、攻撃の手を増やしたというわけである。
今は精霊とはいえ、元々はメチル・コール子爵令嬢という人間だ。その感覚は今もちゃんと残っている。人間まで巻き込んで魔法をぶっ放すような真似はしないのである。
しばらくしてようやく魔物の勢いが落ちてきた。
「はあはあ、ようやく終わりか。これだけ戦ったのは、一体何年ぶりだかな……」
さすがのミスミ教官からも限界が来ているような声が漏れ出ている。
だが、そこへ狙いすましたかのように何かが飛んできた。
「危ない!」
エスカが叫んで助けに入るが、このままでは二人に飛んできた何かが命中してしまう。突然のことに反応が遅れたミズーナ王女たちでは間に合わない。
ダメかと思ったその時だった。
その飛んできた何かが、突然消滅したのである。
何が起きたのか分からず、呆然とするミズーナ王女たち。
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