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第九章 拡張版ミズーナ編
第444話 闇夜を切り裂く王女
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風魔法で上空に滞在するミズーナ王女。まずは建国祭の儀式から見えないようにするために光魔法で壁を作る。
「何をしているの?」
「クルスの街からこっちを見えないようにしたのよ。盛大にぶっ放すから、気付かれちゃうだろうからね」
邪気を防ぐと同時に光と音も漏らさない壁を展開するミズーナ王女は、今度こそと魔物たちを睨み付ける。
「光の壁に反射して、あなたたちの姿がよく見えるわ」
いつになく怖い顔をしているミズーナ王女。その両手には、バチバチと電気がほとばしっている。
「海の藻屑となりなさい! ついでに邪気もね」
ミズーナ王女は両手を掲げて魔法を放つ。
「サンダーストーム!」
凄まじい電撃の嵐が、夜の海に荒れ狂う。
魔物たちは悲鳴を上げながら、次々と痺れて海へと叩きつけられていく。追い打ちをかけるように、ミズーナ王女はもう一発サンダーストームをお見舞いする。
「あー……、吐きそう」
瘴気にまでは至らないまでも濃度の濃い邪気に満たされた空間だ。でかい魔法を二発も放てば、さすがに防御壁に少し穴が開いてダメージを受けていた。
その様子を見たアルーは、見てられないとばかりに前に出る。
「ちょっと休んでいて。私だって魔力だけなら負けないんだから!」
サンダーストーム2発でかなり魔物は倒したはずなのに、まだまだ油断ならない状況にいたのだ。
「雷を魔法で再現っていうのはよく分からなかったけれど、あれだけ見せてもらえば十分だわ」
アルーはそういいながら、集中して魔力を高めていく。すると、体を取り囲むようにバチバチとしたものが現れ始めた。
「……なるほど、これが魔力で再現した雷っていうものね。確かにちょっと痺れるような感じがするわ」
十分に体に魔力をまとわせたアルーは、魔物たちへと視線を向ける。
その視線の先には、まだまだおびただしいまでの魔物が迫ってきている。思わず目を背けたくはなるが、このままではクルスの街に被害が及びかねない。
アルーはぐっと拳に力を込める。
「……サンダーストーム!」
自分がちゃんと新しい魔法を扱えるか心配になりながらも、アルーは魔物たちへ向けて魔法を放つ。
すると、ミズーナ王女にも劣らないすさまじい電撃の嵐が魔物たちへと襲い掛かった。
次々と断末魔の叫び声を上げながら、魔物たちは海へと落ちていく。
「あはは、思ったより魔物を倒すのって気持ちいわね」
「アルー、それ、メチルたちの前では言わないでね。気が触れたとか言われるわよ」
「むぅ……、確かにそうね」
魔物を大量に一掃したものの、怪しい笑顔なんて浮かべたためにミズーナ王女から指摘されてしまうアルーである。
「でも、少々弱体化しているとはいえ、転生者の私たちと変わらないほどの魔力を有しているのは、驚きといったところかしら。さすが魔王復活の触媒にされるだけはあるわね」
「あーあー、思い出したくなーい」
ミズーナ王女が褒めてるのかどうか微妙なことを言うものだから、アルーはその耳を両手で塞いでいた。
しかし、そんな漫才めいたことをしている場合ではなかった。
「まったく、キリがありませんね」
「本当……。どこからこんなに湧いてくるのやら」
サンダーストーム三発でかなり沈めても、まだまだ魔物はわらわらと懲りずに押し寄せてきていた。
「こうなったら地上のエスカたちに頼らざるを得ませんね」
「そうですね。でも、できる限り倒してしまいましょう」
どんどんと迫りくる魔物たち相手に、ミズーナ王女とアルーは立ち向かうのだった。
その頃の地上では、エスカとメチルの二人で何かをしていた。
「ちょっと、非常識すぎません?!」
驚くのはメチルである。
それもそうだった。目の前でエスカが闇魔法で水をかき分けているからである。二人の目の前の海が、まるでどこぞの奇跡のようにどんどんと割れていっている。
「メチル、呪具の方向は分かるかしら」
「え、ええ……。もしかして海底を歩いて探すつもり?!」
驚くメチルにエスカはにっこりと微笑む。どうやらそのつもりのようだ。
「魔物に期待しようかと思ったんだけど、ちょっと面倒な状況みたいだからね。空の魔物の数がまったく減らないみたいよ」
「確かに、さっきから何発も魔法を放っていますものね」
バリバリと光る空を見上げて、メチルはエスカの言葉に納得している。
「去年の建国祭がなんともなくて、今年はこの状況。その間に何かあったとなれば四天王を倒したことくらいだわ」
「ええ、そうですね」
「だから、四天王を倒す事が、この呪具の発動条件になっているのかもしれないわね」
「となると、テトロがこっそりミール王国に来ていたと?」
「可能性は十分あるわ。大体呪具はテトロしかまともに扱えないのでしょう?」
「それは確かに……」
海を割りながら進んでいくエスカとメチルは、いろいろと推測を話し合っている。
やがて、メチルが肩を抱えて大きく震える。
「かなり近くにありますよ。エスカ、警戒して下さいね」
「了解。せっかくイケメンを捕まえたんだから、こんなところで死ぬわけにはいかないわ」
腕まくりをする勢いで腕を擦るエスカ。
そして、海を割って進んだその先から、禍々しいまでの邪気を放つ物体が姿を見せたのだった。
「何をしているの?」
「クルスの街からこっちを見えないようにしたのよ。盛大にぶっ放すから、気付かれちゃうだろうからね」
邪気を防ぐと同時に光と音も漏らさない壁を展開するミズーナ王女は、今度こそと魔物たちを睨み付ける。
「光の壁に反射して、あなたたちの姿がよく見えるわ」
いつになく怖い顔をしているミズーナ王女。その両手には、バチバチと電気がほとばしっている。
「海の藻屑となりなさい! ついでに邪気もね」
ミズーナ王女は両手を掲げて魔法を放つ。
「サンダーストーム!」
凄まじい電撃の嵐が、夜の海に荒れ狂う。
魔物たちは悲鳴を上げながら、次々と痺れて海へと叩きつけられていく。追い打ちをかけるように、ミズーナ王女はもう一発サンダーストームをお見舞いする。
「あー……、吐きそう」
瘴気にまでは至らないまでも濃度の濃い邪気に満たされた空間だ。でかい魔法を二発も放てば、さすがに防御壁に少し穴が開いてダメージを受けていた。
その様子を見たアルーは、見てられないとばかりに前に出る。
「ちょっと休んでいて。私だって魔力だけなら負けないんだから!」
サンダーストーム2発でかなり魔物は倒したはずなのに、まだまだ油断ならない状況にいたのだ。
「雷を魔法で再現っていうのはよく分からなかったけれど、あれだけ見せてもらえば十分だわ」
アルーはそういいながら、集中して魔力を高めていく。すると、体を取り囲むようにバチバチとしたものが現れ始めた。
「……なるほど、これが魔力で再現した雷っていうものね。確かにちょっと痺れるような感じがするわ」
十分に体に魔力をまとわせたアルーは、魔物たちへと視線を向ける。
その視線の先には、まだまだおびただしいまでの魔物が迫ってきている。思わず目を背けたくはなるが、このままではクルスの街に被害が及びかねない。
アルーはぐっと拳に力を込める。
「……サンダーストーム!」
自分がちゃんと新しい魔法を扱えるか心配になりながらも、アルーは魔物たちへ向けて魔法を放つ。
すると、ミズーナ王女にも劣らないすさまじい電撃の嵐が魔物たちへと襲い掛かった。
次々と断末魔の叫び声を上げながら、魔物たちは海へと落ちていく。
「あはは、思ったより魔物を倒すのって気持ちいわね」
「アルー、それ、メチルたちの前では言わないでね。気が触れたとか言われるわよ」
「むぅ……、確かにそうね」
魔物を大量に一掃したものの、怪しい笑顔なんて浮かべたためにミズーナ王女から指摘されてしまうアルーである。
「でも、少々弱体化しているとはいえ、転生者の私たちと変わらないほどの魔力を有しているのは、驚きといったところかしら。さすが魔王復活の触媒にされるだけはあるわね」
「あーあー、思い出したくなーい」
ミズーナ王女が褒めてるのかどうか微妙なことを言うものだから、アルーはその耳を両手で塞いでいた。
しかし、そんな漫才めいたことをしている場合ではなかった。
「まったく、キリがありませんね」
「本当……。どこからこんなに湧いてくるのやら」
サンダーストーム三発でかなり沈めても、まだまだ魔物はわらわらと懲りずに押し寄せてきていた。
「こうなったら地上のエスカたちに頼らざるを得ませんね」
「そうですね。でも、できる限り倒してしまいましょう」
どんどんと迫りくる魔物たち相手に、ミズーナ王女とアルーは立ち向かうのだった。
その頃の地上では、エスカとメチルの二人で何かをしていた。
「ちょっと、非常識すぎません?!」
驚くのはメチルである。
それもそうだった。目の前でエスカが闇魔法で水をかき分けているからである。二人の目の前の海が、まるでどこぞの奇跡のようにどんどんと割れていっている。
「メチル、呪具の方向は分かるかしら」
「え、ええ……。もしかして海底を歩いて探すつもり?!」
驚くメチルにエスカはにっこりと微笑む。どうやらそのつもりのようだ。
「魔物に期待しようかと思ったんだけど、ちょっと面倒な状況みたいだからね。空の魔物の数がまったく減らないみたいよ」
「確かに、さっきから何発も魔法を放っていますものね」
バリバリと光る空を見上げて、メチルはエスカの言葉に納得している。
「去年の建国祭がなんともなくて、今年はこの状況。その間に何かあったとなれば四天王を倒したことくらいだわ」
「ええ、そうですね」
「だから、四天王を倒す事が、この呪具の発動条件になっているのかもしれないわね」
「となると、テトロがこっそりミール王国に来ていたと?」
「可能性は十分あるわ。大体呪具はテトロしかまともに扱えないのでしょう?」
「それは確かに……」
海を割りながら進んでいくエスカとメチルは、いろいろと推測を話し合っている。
やがて、メチルが肩を抱えて大きく震える。
「かなり近くにありますよ。エスカ、警戒して下さいね」
「了解。せっかくイケメンを捕まえたんだから、こんなところで死ぬわけにはいかないわ」
腕まくりをする勢いで腕を擦るエスカ。
そして、海を割って進んだその先から、禍々しいまでの邪気を放つ物体が姿を見せたのだった。
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